本日も清心蓮子飲加減の慢性腎炎治療です。随時( )内に私の印象とコメントを入れます。
患者:楊某 44歳 男性
初診年月日:2006年6月14日
病歴:
腎炎を発症して3年。尿蛋白2+、反復して尿蛋白が出現。牛皮癬の既往あり。
(牛皮癬とは乾癬psoriasisを指し、銀屑病も同意で、慢性の皮膚角化疾患であり、何らかの免疫異常が考えられているが特定はされていません。)
初診時所見:
腰涼、下肢冷、陽痿(インポテンツ)、舌質紅、苔黄、脈滑、尿蛋白2+、血圧130/100mmHg。
中医弁証:脾腎陰陽倶虚、腎陽虚を主とし、挟有湿熱毒邪蘊蓄不除
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:益気補脾腎、温陽兼清熱解毒
方薬:清心蓮子飲加減:
熟地黄25g 山茱萸20g 黄蓍30g 太子参20g 石蓮子20g 地骨皮15g 柴胡15g 茯苓15g 麦門冬15g 車前子15g 白花蛇舌草30g 蒲公英30g 連翹20g 益母草30g 巴戟天(補腎助陽、袪風除湿)15g 淫羊藿(仙霊脾に同じ、補腎壮陽、祛風除湿)15g 鹿角膠15g 山薬20g 仙茅(辛/熱 有毒 温腎壮陽、祛寒除湿)15g 甘草15g
水煎服用:1日1剤、二回に分服
(仙茅:腎陽虚によるインポテンツ、尿失禁、腹部冷痛、腰や膝の冷えなどに、多くは淫羊藿とともに使用します。辛熱の薬性が強いのが特徴です。)
{鹿茸(ろくじょう)(補腎陽、益精血、強筋骨)より安価なものが鹿角です。鹿角を煮詰めて膠状にしたものが鹿角膠です。鹿角膠を絞った残りが、さらに安価な鹿角霜です。
過去の記事 猪 鹿 蝶と漢方 をご参照ください。}
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20120904
{印象:中医は大変な仕事ですね。44歳のインポテンツと蛋白尿、拡張期高血圧、冷え症まで全部まとめて面倒を見なくてはならないとは辛苦な話です。冷えがあるので明らかな苦寒薬である黄芩は清心蓮子飲から除かれたのでしょう。白花蛇舌草と益母草、柴胡の配伍は張琪氏にとっては清心蓮子飲そのものなのですね。浮腫が無くても、活血利水消腫の益母草の配伍があります。連翹は苦/微寒とする清書があります。同じく清熱解毒利湿作用のある白花蛇舌草も性味が微苦 甘/寒ですから、黄芩よりも苦寒の程度が軽いのでしょう。蒲公英も苦甘/寒ですね。
腰涼、下肢冷、陽痿(インポテンツ)、舌質紅から陰陽倶虚、苔黄から内熱は私でも弁証できますが、湿熱毒邪が蘊蓄し除かれない状態を挟むとまでは弁証できません。慢性糸球体腎炎?蛋白尿のみで血尿が無い腎病の病歴から、弁病的に付け足し弁証をするしかないのかも知れません。専門的になりますが、慢性糸球体腎炎という西医診断自体が間違っている可能性もあります。}
(印象続き:脾腎両虚となれば浮腫や下痢が出現しますが、浮腫も便溏も泄瀉もありませんので、脾腎陰陽倶虚、腎陽虚を主とすると丁寧に記載してありますね。)
(印象続き:温陽兼清熱解毒:清熱しながら助陽する、補陰しながら袪湿利水するというのは、素人論では、逆向きの治療ですから匙加減が面倒なのです。医案の続きに注目しましょう。初診の処方では養陰剤<<袪湿剤の印象があります。)
二診 2006年7月12日
7月11日の尿検査再検では尿蛋白3+、WBC5~8個/HP。再診時では尿検査陰性、{原文では現尿常規(-)}患者は偶に腰痛、大腿部疼痛を感じ、舌紅苔黄。
(印象:7月11日に尿蛋白3+が翌12日に陰性になるのは通常無いことですが原文ではそのようになっています。)
方薬:
熟地黄25g
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