本日も参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療をご紹介します。( )内に私のコメントを随時いれます。
医案に進みましょう。
患者:張某 43歳 女性
初診年月日:2003年12月17日
病歴と初診時所見:
2002年にⅡ型糖尿病、蛋白尿が出現。珍菊降糖カプセルを服用し、血糖は基本的に正常範囲にコントロールされたが、尿蛋白は持続し2+~3+、腰痛、浮腫(-)、時に眩暈、舌質紅、苔白、脈沈。血圧正常。尿蛋白3+、RBC6個/HP、尿潜血+、空腹時血糖5.5mmol/L(99mg/dL)、腎機能正常。
(珍菊降糖カプセルは中成薬で成分中に西洋薬の血糖降下剤が含まれている可能性があります。本案はいわゆる糖尿病性腎症ではないと思います。)
既往歴:十二指腸潰瘍、頻尿、尿の切れが悪いのが7~8年
中医診断:腰痛、脾不統摂、腎失封蔵、固摂失司、精微外泄
(中医学的には精微外泄には尿糖、尿蛋白も含まれます。)
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:脾腎双補
方薬:参耆地黄湯加減:
熟地黄20g 山茱萸20g 茯苓15g 澤瀉15g 牡丹皮15g 黄耆30g 太子参20g 枸杞子20g 玉竹20g 莵絲子20g 金桜子15g 芡実15g 女貞子20g 五味子15g 桃仁15g 赤芍15g 丹参20g 紅花15g 益母草30g
14剤 水煎服用。
(山薬を配伍しなかった理由は血糖に留意したのでしょう。枸杞子も20g程度であれば血糖は上昇しません。熟地黄20g 山茱萸20g 茯苓15g 澤瀉15g 牡丹皮15g 黄耆30g 太子参20gまでは山薬を除いた参耆六味地黄湯です。人参は補気生津の太子参を使用しています。枸杞子 玉竹は養陰、桃仁 赤芍 丹参 紅花は活血祛瘀、益母草は活血利水消腫(本案では浮腫は有りませんが)、莵絲子は補陽、金桜子と芡実の組み合わせは水陸二仙丹で益腎固渋剤で、精微外泄を意識、五味子はおそらくは生津斂陰、安神の目的で配伍されたのでしょう。)
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