診療情報提供書
●森▼男殿 処方内容と治療原則
① 非代償性肝硬変
肝機能の保持、肝細胞破壊の防止、繊維化阻止、高アンモニア血症改善
合併腫瘍発生増大の防止 血小板減少の防止(脾機能亢進の抑制)
腹水、胸水の軽減、NK活性の最大限の増強、直接的漢方抗がん作用の応用
(以上の観点からの治療薬の変移については省略します。経時的に複雑多岐にわたるため)
② 心室性(上室性)期外収縮
(これに関する漢方薬の組成変移についても省略します。経時的に複雑なので)
③肺結核症
以下に漢方治療原則の概略を述べます。目標:CRP陰性化、無排菌化、特に、肝不全を有する場合には、肝機能の保持を第一とし、静(殺)菌的抗結核治療を行い、患者の生命維持に全力を尽くす。1~4のすべての要素を吉森氏は持っています。また病期により日々変化します。漢方用語と生薬の薬理学の基礎知識の造詣が必要ですが、概略は
(1)肺陰虧損
【症状】乾咳、少痰、痰に血を帯び、胸痛、潮熱頬赤、咽乾口燥、舌は質紅、苔は薄黄少津、脈は細数である。
【漢方的証候分析論】癆虫傷肺、陰虚肺燥、宣粛失常のため、咳をみる。虚火が津を灼し、痰が生じたために、乾咳、少痰をみる。久咳で肺絡が損傷されるために、痰に血が混じり、胸痛が現れる。津液が身体上部を滋潤することができず、咽乾口燥をみる。潮熱頬赤、舌が質紅、苔が薄黄少津、脈が細数は陰虚内熱の症候である。
【治療法】滋陰潤肺。
【方薬】百合固金湯加減。百合、麦門冬で潤肺生津、玄参、生地黄、熟地黄で滋陰清熱、党帰、芍薬で濡潤養血、桔梗、貝母、甘草で清肺化痰止咳の効能を求める。
功労葉、百部を加え、清虚熱、殺癆虫の効能を期する。
重度肺陰虚の者に、沙参、玉竹を加え、養陰を期する。
喀血の者には、白及、阿膠、白茅根、仙鶴草を加え、止血をはかる。
胸痛ひどい者には、郁金、延胡索を加え、通絡止痛の効能を期する。
潮熱頬赤の者に、銀柴胡、地骨皮、青蒿、亀板、白薇を加え、滋陰清熱する。
(2)陰虚火旺
【症状】骨蒸潮熱、寝汗、五心煩熱、不眠多夢、煩躁不安、少痰、或は黄色粘稠な痰、反復性の多量の鮮紅色の喀血、胸脇痛、遺精、舌質は紅絳、脈は細数である。
【漢方的証候分析論】肺病及腎、肺腎陰傷、陰虚火旺のため、骨蒸潮熱、寝汗をみる。水不涵木、肝陽偏盛のため、煩躁不安をみる。心肝火炎のため、五心煩熱、不眠多夢をみる。肺燥不潤のため、多量の鮮紅色の喀血、胸脇痛をみる。痰熱内郁の場合は、黄色粘稠な痰をみる。相火偏旺、精室妄動のため、遺精をみる。舌質が紅絳、脈が細数は陰虚火旺の症候である。
【治療法】滋陰清火
【方薬】秦艽鼈甲散加減。鼈甲、知母で滋陰清熱、当帰で養血和血、秦艽、(銀)柴胡で清熱除蒸、烏梅で斂陰止汗の効能を求める。
寝汗が多い者には、浮小麦、五味子、鍛龍骨、鍛牡蛎を加え、滋陰斂汗を期する。
遺精の者には、亀板、山茱萸、芡実、金櫻子を加え、滋腎渋精をはかる。
煩躁不眠の者に、梔子、夜交藤、棗仁、真珠母を加え、清熱安神を期する。
黄色粘稠な痰の者に、桑白皮、馬兜鈴、瓜?仁、黄芩、蛤粉を加え、清熱化痰を期する。
出血の者に、十灰散を加え、涼血止血を期する。
(3)気陰両虚
【症状】咳嗽、喀血、潮熱頬赤、自汗、寝汗、顔色が晄白、神疲、気が短く、声が低い、倦怠無力、食欲不振、舌質は光紅、苔は薄或は剥絡が見られ、脈は細無力である。
【漢方的証候分析論】肺陰不足、陰虚内熱、血絡損傷のため、咳嗽、喀血、潮熱頬赤、寝汗をみる。子病及母、脾気虚弱のため、気が短く、声が低く、顔色が晄白、神疲、倦怠無力、食欲不振をみる。舌質が光紅、苔が薄或は剥絡し、脈が細無力は気陰両虚の症候である。
【治療法】益気養陰
【方薬】月華丸加減。天門冬、麦門冬、天門冬、生地黄、熟地黄で滋陰潤肺、白部、獺肝、川貝母で潤肺止咳、殺虫、阿膠、田三七で止血和営、茯苓、山薬で健脾補気の効能を求める。
気短、無力の者に、人参、蓮心を加え、健脾補気を期する。
自汗の者には、黄耆を加え、固表止汗を期する。
食欲不振、軟便の者に、白扁豆、薏苡仁、砂仁、陳皮を加え、健脾止潟をはかる。
(4)陰陽両虚
【症状】咳、喀血、労熱骨蒸、寝汗、遺精、声嗄れ、極度の痩せ、寒がり悪風、自汗、喘息、息切れ、顔面浮腫、飲食量少、大便溏薄、舌質は光紅、少津、或は舌体が淡胖、歯痕を認め、脈は微細である。
【漢方的証候分析論】肺癆日久、陰傷及陽、陰陽両虚、肺、脾、腎三臓が損傷され、咳、喀血で肺陰が損耗、声道失潤のため、声嗄れをみる。肺気耗散、肺不主気、衛陽不固のため、寒がり悪風、自汗、喘息、息切れをみる。骨蒸日久、寝汗傷津、或は失精で精血空虚のため、極度の痩せをみる。子病及母、脾陽不振のため、飲食量少、大便溏薄、顔面浮腫、筋肉削弱が生じる。舌質が紅、乾燥は陰が枯れた症候であり、舌体が淡胖、歯痕は陽虚の症候であり、脈が微細は陰陽倶虧の症候である。
【治療法】填補精血、温補脾腎
【方薬】保真湯加減。黄耆、党参、茯苓、白朮、甘草、陳皮で補陽益気、調理脾胃、麦門冬、天門冬、生地黄、熟地黄、当帰、白芍薬、五味子で育陰養栄、填補精血、柴胡、地骨皮、黄柏、地母、蓮心で滋陰清熱の効能を求める。
重度の精血虧損の者には、紫河草、亀板膠、鹿角膠、冬虫夏草、或は、白鳳膏、補髄丹を加え、先天の精を培益することに努める。
四肢が冷え、脈が沈遅の者には、黄柏、地母、蓮心を取除き、肉桂を加え、温腎補陽を期する。
五更泄潟の者には、肉豆蔲、呉茱萸で温補脾腎、固腸止潟を期する。
現行治療内容
① 煎じ薬
治療対象は①③同時進行
人参 黄蓍 黄精 白朮 白芍 山薬 生甘草 猪苓 茯苓 女貞子 亀板
土鼈甲 麦冬 生地黄 百部 桑白皮 知母 黄柏 黄芩 栝萋根 黄連
梔子 龍胆草 玄参 丹参 牡丹皮 金銀花 連翹 蒲公英根 虎状根 霊芝
拳参 山帰来 魚腥草 敗醤草根 蛇舌草 半枝蓮 青蒿 茵陳蒿 仙鶴草
(薬用量:一日量 煎じ方法については省略)
② 散剤
治療対象は③>①(同時進行)
四川省貝母 他 清熱解毒、鎮咳袪痰 養肺陰剤の合散剤
③ 粉剤 主として①に対し
人参末 田七人参末 蛇胆 郁金末
④ 眠前服用薬:酸棗仁 延胡索
⑤ 抗不整脈 抗心悸薬:復方丹参麝香保心丸加減
何の返事も無い。本日の漢方市民講座以上
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