趙紹琴氏医案 中陽不足 兼血分鬱熱案(糖尿病性腎不全症例)
(趙紹琴臨床経験?要より)
患者:梁某 62歳 女性
初診年月日:1993年8月17日
病歴:
糖尿病歴10余年、毎日インスリン注射にて血糖値をコントロールしてきた。1年前尿中の蛋白が陽性となり、持続して減少せず、糖尿病性腎症と診断される、半年前、CreやBUNの顕著な上昇出現。ここ1ヶ月来、顔面の浮腫が下肢にも及び、乏力が甚だしく、皮膚掻痒、悪心嘔吐、腹張張満、食欲減退、検査にてCre440μmol/L(4.97mg/dL)、BUN19.3mmol/L(115.8mg/dL)、二酸化炭素結合力19mmol/L(正常域:20~30mmol/L。
(コメント:既に腎不全状態です。代謝性アシドーシスも存在します。Cre値に比較してBUNが高値なのは中医案の一般的特徴で、中国人の豚肉を中心とする食生活の影響でしょう)
初診時所見:
舌胖苔白膩、脈象濡軟、按じて有力、面色蒼白浮腫、下肢水腫、按じて陥没して元に戻らない、小便短少色白、大便不暢、夜寝夢多、心煩急躁。
中医弁証:
中陽不足 さらに 血分鬱熱
(コメント:聡明なる読者は違和感を持つはずです。陽気が不足すれば寒証になるのが自然ですね。それが血分鬱熱という熱証とは、ちぐはぐな感じを持ちませんか?評析に期待しましょう。)
治則:
益気行水 涼血化瘀
処方:
生黄耆30g 荊芥6g 蘇葉10g 防風6g 白芷6g 生地楡10g 炒槐花10g 丹参10g 茜草10g 白茅根 芦根各10g 冬瓜皮30g 茯苓皮30g 大腹皮15g 檳榔10g 大黄2g
経過:
7剤服薬後小便増多、大便暢行、顔面の浮腫は既に退いて、下肢の水腫も大半が消退した。悪心嘔吐は減軽、皮膚の掻痒は残存。舌白苔膩。脈なおも濡軟沈滑、前方加減を継続
処方:
黄耆30g 荊芥6g 蘇葉30g 防風6g 白芷6g 生地楡10g 炒槐花10g 丹参10g 茜草10g 地膚子10g 白鮮皮10g 草河車10g 冬瓜皮10g 大腹皮10g 大黄2g