漢方がん治療生薬 龍葵(りゅうき 中国語ロンクイ)イヌホウズキとは?
岡本康仁堂クリニックの卵巣がん方剤(ほうざい)の組成は
白花蛇舌草、半枝蓮、半辺蓮、重楼、拳参、土茯苓、龍葵、天葵子、威霊仙、栝楼根、野山人参、黄耆、白?、莪?、土?虫、川郁金、冬虫夏草、山薬を基本としている。
イヌホウズキ
龍葵(りゅうき 中国語でロンクイ)といっても日本では馴染みが薄いが、「イヌホウズキ」といえば「ああ、あの植物か」とうなずく方も多いのではないだろうか? 中国では、果実の格好から天茄子(天なすび)とか野茄(野ナス)の別称がある。日本では「馬鹿なすび」の呼称もあるらしい。かじってみてピリリと辛味があるので山海椒(さんかいしょう)、成熟期の果実の黒さから老?眼睛草{カラスの瞳(ひとみ)草}というような不気味な呼称もある。 さらに、形と色調から野葡萄(のぶどう)、つぶすと酸っぱいどろりとした液体がでるので酸漿草(さんしょうそう)などの別名がある。なぜ、和名がイヌホウズキなのかと言えば、「イヌ」とは役にたたない「役立たず」の意味らしいが、正確な語源は知らない。
学名はHerba Solani Nigriであり、英語圏ではBlack Nightshade Herb(訳して漆黒夜影香草とでもなるのか?)と呼ばれる。和名のイヌホウズキに比べて、英語の方が、感じがでている。
植物生態
1年生草本で30~100cm位まで成長する。球形の直径1cm弱の茄子に似た果実が実り(私には葡萄のように見えるが)、秋季に熟すると「カラスの瞳のような黒色」を呈する。平べったい卵形の種子がたくさんなる。この時期に地上部分を採取し、主として地上茎と葉を乾燥して薬用とする。田んぼのあぜなどの耕地はもちろん、路傍や荒地にも成育して、中国では全国的に分布している。弱酸性~中性の土壌を好むとされる。もともとは、主に綿栽培、野菜、豆類、イモ類、ウリ類などの収穫に損害をもたらす害草(雑草)であると認識されていた。日本でも、どこにでも野生していると思うが、漢方市場に現在のところ流通していない。毒草だから、危なっかしくて流通させられないのかもしれない。
茄子科 龍葵(りゅうき)イヌホウズキ
収穫期前の未成熟な果実
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8~9月の収穫期の黒い果実
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中国では老?眼睛草{カラスの瞳(ひとみ)草}と呼ばれ、
英語圏ではBlack Nightshade Herbと呼ばれる
「役立たず」のイヌホウズキであるが、中国では「薬に立つ」龍葵である
[含有成分] solanigrineなどの塩基類、solasodineなどのアミン類、グリコシド類、ビタミンC、樹脂などである。
四気五味:寒,苦、微甘(酸) 小毒
効能と適応症:
清熱解毒,利尿、鎮咳祛痰。皮膚の化膿症や湿疹、老人性慢性気管支炎、婦人の帯下病、前立腺炎、赤痢などに9?15gを、主として煎じて服用する。皮膚病変の場合は外用される場合もある。
抗菌作用は、龍葵煎じ液が、黄色ブドウ球菌、赤痢桿菌、チフス菌、緑膿菌、大腸桿菌に対して一定の制菌、抑菌作用があることによって細菌学的に証明されている。
また気管支炎に対する効能は、動物実験で龍葵のアルコール、クロロホルム抽出物が明らかな鎮咳祛痰作用(咳を鎮め、痰を切る)があることが確認され、人に対する古くからの使用方法が再確認されつつある。平滑筋興奮作用が龍葵抽出物に存在するとする実験結果も報告されており、気管支平滑筋に対する作用も推定されるが、筆者はまだその種の報告は眼にしていない。
また、煎じ液(水抽出液)には、血管の透過性亢進(炎症などの原因で血漿などが血管から漏れでること)を抑制し、血液の凝固性(固まりやすさ)を低下させる作用が動物実験で確認したという研究も存在する。
抗癌作用
中国では、近年、乳がん、卵巣がんに対して、西洋医学の治療方法と一緒に龍葵を使用する医療施設(腫瘤医院)が増えてきている。乳がん、卵巣がんの中西医結合療法(西洋医学と中国伝統医学の結合治療)で、腫瘤成長抑制効果が確認されており、龍葵を通常量を使用することは、日本の厚生省に当たる中国衛生局で許可が得られている。
大量投与時の西洋抗癌剤に似た毒性作用
大量投与を行うと動物実験で白血球減少、溶血(赤血球が破壊される現象)を引き起こす。通常量10~20gの人への投与では白血球低下、溶血はきたさない。
急性毒性中毒の報告
大量に用いると、(あるいは大量に食すると)、溶血(赤血球が破壊される現象)、頭痛、嘔吐、瞳孔散大などの中枢神経症状、初期の頻脈と後期の徐脈などの心筋興奮と抑制反応、精神の昏迷や錯乱などの精神神経症状などが中毒例として報告されている。
現代の中国ではありえない話であるが、貧困と飢餓の時代に、空腹のあまり、茄子(なす)あるいは食用の野葡萄と間違えて食べてしまったことがあるのではないのだろうか?
それとも、権謀術数うずまく中国の歴史の中で、毒殺用に研究された時期があるのかもしれない。
「毒を以って毒を制する」の由来は四文字熟語「以毒攻毒」であり、古代中国である。 まさに温故知新のイヌホウズキ抗癌療法の感がある。
続く、、