?仁和氏医案 (遼寧中医雑誌 1996年 第9期より)
患者:魏某 61歳 男性
主要症状:
腹部張痛、労動で症状悪化、休息後に軽減、顔面眼瞼に浮腫が出現することもある、納食不馨(食べても美味しくない)。舌は淡暗胖大、苔白潤、脈弦滑。超音波検査:多発性嚢胞腎、BUN9.8mmol/L(58.8mg/dL)。
弁証:
証は肝気不舒、気滞腰脇、横逆犯脾、痰湿内生、脾腎不足の体内に流注したものである。
方薬:
加味四逆散加姜半夏 陳皮各10g 茯苓20g 佩蘭10g 澤瀉 沢蘭各20g 丹参30g 狗脊15g 牛膝20g。
経過:
7剤後、症状は大減した。基本方の加減4剤で、症状は殆ど消失。Creは77.6μmol/L(0.87mg/dL)、BUN 4.2mmol/L(25.2mg/dL)、超音波検査にて嚢胞は縮小。
評析
肝気不舒、気滞腰脇、横逆犯脾、痰湿内生、腎に流注し、腎嚢胞が増大した。調和肝脾、健脾補腎、利湿消腫から治療する。気機流暢、脾健腎強、水湿は小便から去り、増大した嚢腫は小さくなる。主方の加味四逆散は傷寒論の四逆散(柴胡 枳実 白芍 甘草)を基礎にして加味変化させたものであり、?氏は加味四逆散を使用する。柴胡は酢で炒めると肝経に素早く入りやすくなり、赤芍、白芍は同じく柔肝養肝、涼血活血に作用し、枳殻、枳実は鬱滞の気を上から下に下ろす。若し、枳実を単用し下気破結のみでは、中上焦の気機が下降せず、下虚上実の状態になる。加味四逆散の組成は醋柴胡6~8g、赤芍白芍各15~30g、枳殻 枳実各3~10g、炙甘草6gである。本案の治療思路は明晰で、方剤も簡便、効果も速く、多発性嚢胞腎の治療に新しい途径(路、手法)を提供するものである。
ドクター康仁の印象
?仁和氏の加味四逆散については、すでに糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症で紹介しました。
http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat12492413/
評析の「若し、枳実を単用し下気破結のみでは、中上焦の気機が下降せず、下虚上実の状態になる。」を私流に解説すれば、枳実は破気作用があるので、気の観点からすれば下焦は気虚になり、中上焦の気鬱はそのままで残るという意味でしょう。しかし、このような理屈は、あくまで解釈で、それ以上のものではありません。
「肝気不舒、気滞腰脇、横逆犯脾、痰湿内生、腎に流注し、腎嚢胞が増大した。」これは解釈の問題ではなく、信じるか信じないかの話です。
2013年7月24日(水) 記
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます