中国で最も有名な方剤は六味地黄丸です。補腎陰に作用しますが、知母と黄柏を加えた知柏地黄丸は腎陰虚内熱に使用する有名方剤です。さて、腎病での使用のされ方についてご説明します。
( )内に私のコメントを随時いれます。
医案に進みましょう。
患者:于某、42歳 男性
初診年月日:1988年7月10日
病歴:慢性糸球体腎炎病歴半年余
初診時所見:
腰酸腰痛、手足心熱、口干咽干、耳鳴、両目視物模糊、倦怠乏力、脈象細数、舌質紅、薄白苔。尿蛋白2+、RBC30~40個/HP、WBC1~2個/HP。BUN、Cre正常。
中医弁証:腎陰不足、虚火妄動、傷下焦血絡に及ぶ。
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:滋陰補腎降火
方薬:知柏地黄湯加味:
知母20g 黄柏15g 熟地黄20g 蒲公英15g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓15g 澤瀉15g 亀板20g 阿膠(養血止血 養陰潤肺)15g 甘草15g 茜草(涼血化瘀止血)20g 旱蓮草(養陰 止血)20g
水煎、毎日2回に分服
知母 黄柏 亀板については以前の記事
http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat7092201/
をご参照下さい。
二診:
服薬6剤、尿RBC30~40個/HP、但し、口干咽干、手足心熱は顕著に好転。
継続服用20剤で、諸症は皆減軽、尿RBC3~5個/HP、尿蛋白+。上方加減治療を守りさらに1ヶ月、RBC2~3個/HP、尿蛋白(-)、口干咽干、手足心熱、耳鳴り、目花(視物模糊:物がぼやけて見える)共に消失、但し、時に腰酸、乏力有り、疲労後に明らかになる。(脈象細数、舌質紅→脈細、舌質淡紅への改善。経験があればすぐに記憶できます。)
ドクター康仁の印象
古典的には「壮水之主、以制陽亢」といいます。蒲公英は清熱解毒、旱蓮草は養陰清熱涼血止血に作用します。女貞子と合わせれば二至丸ですね。本来の知柏地黄湯には山茱萸の益腎補陰があるのですが、本案では除かれています。配伍しても問題は無いと思います。山茱萸の温は牡丹皮の涼寒で相殺されるというのは「方剤学」での基本綱目のひとつです。
明日も知柏地黄湯加減についてご紹介するつもりですが、山茱萸は配伍されるでしょうか?張琪氏は山茱萸を除き、茜草、亀板、蒲公英を加え、方薬をより涼寒に傾かせたかったのでしょう。なぜなら、本案の顕微鏡学的血尿を「虚火妄動、傷下焦血絡に及ぶ」と(虚)熱証に捉えているのですからです。温薬を控えたいところですね。
以前の「虚熱論」をご参照ください。
http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat7307895/
2014年 3月3日(月)
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