益気滋腎、活血清利法
気陰両虚、湿熱瘀阻の証に対する治療法です。臨床症状は、面色淡黄、腰膝酸軟、手足心熱、口干喜飲、舌質は紅で歯痕があり、瘀斑や瘀点を認め、脈は沈細です。気虚の病位は脾にあり、陰虚の病位は腎にありますから、脾腎気陰両虚証ということになります。中医学的な問診、望診、切診での病態です。気と津液の関係は、以下の4点です。
1.気は津液を生むことが出来る
2.気は津液をめぐらすことが出来る
3.気は津液を固摂することが出来る
4.津液は気の母でもある
脾気虚、腎気虚が慢性化すれば、陰(津液)を損なうようになります。病因は1によります。陰が損なわれれば気も損なわれ(病因は4によります)悪循環に陥ります。この悪循環の証の一つが気陰両虚ともいえます。
津液の生成と輸布に戻ります。
津液は脾の「水湿運化作用」により水穀から小腸、大腸より吸収され、脾の「昇清作用」により肺に運ばれ、肝の疏泄作用とともに肺の主気作用、宣発粛降作用(通調水道作用)により三焦をめぐり、肺の宣発作用の一部として汗になるとともに、腎の気化作用により、利尿(降濁作用)によってその量が調節されます。脾の「水湿運化作用」の失調は気血生化の源が失調すると同時に、正常な津液でない病理産物である内湿が体内に生じてきます。やや、「こじつけ気味」になるのですが、腎陰虚が進めば、陰虚内熱の熱邪と内湿が互結して、湿熱の一部となり下焦に瘀阻します。湿熱の物理が確定されていませんので、「一部」と表現します。
さて瘀血の成因に戻りますと、瘀血とは?
体内における血液停滞、離経の血液など経脈と臓腑の阻滞した血の総称をさします。
気滞により血が十分にめぐらず血瘀が生じる。
気不摂血により出血し離経の瘀血が生じる。
気虚によっても血が十分にめぐらず血瘀が生じる。
(血寒によっても瘀血は生じる)
(血熱によっても離経の瘀血を生じる)(陰虚内熱でも然り)
以上でしたね。したがって、気陰両虚になると、瘀血の証が出てきます。津血同源です。このような思考回路は漢方医にとっては、至極自然に出来上がっていますが、「基礎理論に矛盾しないように説明しろ」と詰問されると難しいものです。
参蓍地黄湯加味方を主方とします。組成は六味地黄丸(小児薬用直決)加味方とも言えるもので、人参(あるいは党参)、黄蓍、生地黄、山薬、山茱萸、茯苓、牡丹皮、澤瀉のうち黄蓍、人参以外は、六味地黄丸の熟地黄が涼薬の生地黄に変化し、山薬、山茱萸、澤瀉、牡丹皮、茯苓は六味地黄丸そのもので、補腎陰に作用します。六味地黄丸加党参、黄蓍方に、さらに石葦、益母草、丹参、劉寄奴、白茅根を加味したものになっています。湿熱の熱邪がある場合には、温薬の人参より、党参が、熟地黄より生地黄が適していると判断しているものと思います。参蓍地黄湯加味方全体を分析すると、党参、黄蓍、茯苓は健脾益気に、生地黄、山薬、山茱萸は滋腎補陰に、益母草、丹参、劉寄奴は活血化瘀に、白茅根、牡丹皮、澤瀉、石葦は清利湿熱に作用すると解説されています。厳密には山茱萸には補腎湯、補腎陰の両方の作用があります。湿熱の証が強い者には黄柏、晩蚕沙(ばんばんしゃ)を、陽虚に偏するものには、巴戟天、菟絲子を加味します。私自身は晩蚕沙(ばんばんしゃ)の使用経験はありません。
上海中医薬科大学付属暁光病院腎内科の陳教授の慢性腎炎に対する方剤の基本骨格は、党参15丹参15黄蓍15-30生地黄15 山茱萸10 准山薬15でした。参蓍地黄湯加味方と共通します。ご紹介しておきます。
ドクター康仁 記
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