gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

羌活勝湿湯(きょうかつしょうしつ湯)の臨床

2008-06-30 00:38:23 | ブログ

梅雨時の漢方健康法

天気痛」という概念がある。梅雨時で言えば、「湿」と「冷え」「気圧の低下」が関節痛とくに慢性関節リウマチの症状の悪化、肩こり背部痛腰痛頭痛の発症につながる。

気圧が低下すると、ヒスタミンなどの炎症惹起物質が血管を収縮させ、交感神経を興奮させ、その結果、血行が悪くなり、病変部分の酸素不足や、疲労物質がたまることが、痛みの原因とされる。予防としては、筋肉のストレッチを行い、体を冷やさない事が大切という。交感神経の興奮は脳を血流は逆に増やすため、梅雨時には偏頭痛が出やすいともいう。しかし、抗ヒスタミン剤を飲んでも一向に効き目は無いようだ。強調したいのは、梅雨時に発症あるいは悪化する頭痛は偏頭痛だけではないということだ。言うまでもないが、部屋の気圧をあげることは普通の家庭では無理難題である。

梅雨時は精神的に憂鬱になる。「巷に雨の降るごとく、わが心にも雨ぞ降る」じゃないが、体の古傷が痛むのである。

体温の急な変動、特に冷え気をつけて、夏のエアコンは除湿にする。加えて風呂に入って、体をあたためることは浮腫みを軽減させ、関節痛の軽減に効果的だ。しかしこれは梅雨時に限る話ではない。ましてや自律神経を鍛えるなどといっても、それは絵空事に過ぎない。利尿作用のあるスイカや、カリウムが多いナスなどを食べるといいという説もあるが、体を冷やすという側面は語られていない。むしろ無視されている。多湿で知られる四川盆地の四川料理は辛いので有名だ。発汗により内湿を発散させるのが目的だと私の老師は話している。一方、中国東北部の冬は想像を絶する寒さである。東北部を旅行した後の全身の関節痛に対して、中国の漢方医はためらうことなくトリカブト(附子)を処方する。散寒止痛を狙った処方であり奏効する。

「群盲象をなでる」という。現象の微細部分にこだわっていては、全体像をつかめない。「天気痛」にしても然り。中国医学の知恵は、全体像を把握するところから始まる。今回は、梅雨時の羌活勝湿湯を紹介したい。

羌活勝湿湯きょうかつしょうしつとう)清代「内外傷弁惑論」

温薬は赤、寒涼薬はブルー、平薬をグリーンで示す。

組成は

羌活 独活 炙甘草 藁本 防風  ?である。

中国医学では関節痛、筋肉痛、神経痛を問わず、痛みを伴う運動器症候を「症(ひしょう)」という。羌活勝湿湯は寒湿が原因の症(ひしょう)や頭痛に用いられる方剤である。運動器症状と頭痛にたいする治療として同じ方剤に兼ね備えたものである。漢方医学的に診察して寒証が診て取れる場合には、適宜、干姜 肉桂などを加味すると頭痛、関節痛、冷えが共に改善する。頭痛、関節痛などの特徴は、冬季や雨天の際の増悪であり、舌苔が厚く白?苔(はくじたい)を呈することが多く、胸悶(むなぐるしさ)眩暈(めまい)などの他に、悪心や下痢または軟便、悪心嘔吐などの消化器症状を伴う。四肢には軽度の浮腫が見られることもある。

?子(まんけいし)は頭痛に効果がある風勝湿剤である。風湿頭痛という中国医学の概念があり、頭痛の特徴は物がかぶさっているような感じのする頭痛である。

このタイプの頭痛は、高温多湿な夏場に症状が悪化する場合が多く、冷えとは関係なく、この意味では「冷え」を主症にする頭痛の病態ではない。

苓姜甘湯 独活寄生湯 との比較 

苓姜甘湯りょうきょうじゅっかんとう) 漢代「金匱要略」

「金匱要略」の「腎着病(じんちゃくびょう)」に記載されている方剤である。

腰から下が水風呂に入っているように冷え、小便が近く、腰痛がある場合に使用された。組成は

茯苓 干姜  ? 甘草 である。方意は散寒除湿である。

茯苓の利水滲湿作用、白朮の健脾燥湿作用、甘草の益気健脾作用を総合すれば、中国医学でいう脾虚湿盛の浮腫みのある状態である。干姜の温里散寒作用をあわせれば、浮腫みがあって冷えがある場合に使用されると推測される。補陽薬、補腎薬の配合は無い。最も基本的な方剤である。梅雨時の関節痛にも応用できる。

腎着病の概念は、寒邪、湿邪の陰邪が腎の外腑の腰部に侵入するために①冷寒の感じ(腰中冷)②腰痛(腰以下冷痛) ③重い感じ(身体重)などの陽気が阻まれる為の証候と、④浮腫(形如水状)の脾虚の証候が出現する病の概念である。病は下焦(かしょう)に属するが腎の真臓ではなく外腑の腰部であるとする点が特徴で、結果⑤小便自利であるとする。腎気丸が虚労腰痛、小便不利に用いられるのと対照的である。

独活寄生湯どっかつきせいとう)唐代「備急千金要方」

独活 防風  細辛 桑寄生 肉桂 杜仲 牛膝 人参 茯苓 甘草 

当帰 熟地黄 生地黄 白芍  が組成である。方意は、