前回のブログ●では、「虚即補其母の基本方剤」である参苓白朮散について紹介しました。今回は「実即瀉其子の基本方剤」である左金丸についてご紹介します。
肺が弱ったら、肺の母の脾を丈夫にしなさい。そうすれば子供の肺まで丈夫になりますよ。 というのが「虚即補其母」の考え方です。そんなものかとうなずけますね。
でも 「実即瀉其子」の場合
「実即瀉其子」の場合は、肝のお母さんがストレスが溜まって怒りっぽくなって、心(しん)の子供まで具合が悪くなることがあるので、そういう時は、さっさと子供の方を治療しましょうという考え方で、お母さんの病気を治す原因治療ではありません。中国語の語感では、「虚即補其母」と対をなす治療原則ではなくて、「そういう場合もあるんですよ」ぐらいに捉えておけばいいのだと思います。
それにしても
実症、虚症の捉え方が、現代の日本漢方では、極めて曖昧です。まったく定説というものがありません。極めつけが、体力がある場合は実証だとか、体力がない場合が虚症だとか、あきれるような虚実論です。
虚実は「正気にもあれば邪気にもある」と考えるほうが正しいのです。そして、虚とは足りずに、不足している、実は満ちていて、溢れるような意味に捉えると間違いがありません。
左金丸は「肝火犯胃」の治療方剤です。
肝火犯胃とは、主としてストレスが高じ、わき腹の張った痛み、口の苦味、いらいら、怒りっぽいなどの「肝郁化熱」の状態が胃に及んで、胸焼け、すっぱい胃液の逆流、吐き気、嘔吐などの胃気上逆を起こすようになった病状を指します。脈は弦でやや頻脈、舌は赤く、舌苔がやや黄色い特徴があります。
中国女性と韓国女性の場合は?
日本女性と違って、ストレスが抑うつ、悲しみに変わるよりも、ストレスが火、怒りに変わることが多い気がします。実際に見聞きしたことですが、小生が30台のころ、韓国漢方、中国漢方に興味を持ち、何度か中国や韓国を訪れているうちに数人の現地の友人ができました。その友人仲間の人間関係で気がついたことですが、必ずといっていいくらい、まったく「肝火犯胃」の症状を呈する女性を見たことです。吐き気が止まらず、乾嘔を繰り返す女性です。原因は男女関係のもつれです。親子の愛憎劇もありました。
左金丸の組成
黄連と呉茱萸が6:1で配合されています。
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黄連(おうれん)
苦 寒 心肝胃大腸が帰経 清熱解毒瀉火燥湿に働きます。
四川省産の川連が有名ですが、この度の地震で入荷が遅れています。
特に心熱と中焦肝胃に作用し、大腸も特異的に作用します。抗菌作用は黄芩 黄連黄柏中で最強で抗ウイルス作用もあります。最近の研究では抗不整脈の功能もあることが報告されています。
肝火による肝胃不和の際に肝火、胃火の治療に用いられます。ちなみに、
心火が高じれば口舌生疱ができ易く、胃火が高じれば口中潰瘍ができ易くなります。抗菌作用は細菌性の大腸炎に有効です。
中国では、排便してもまた下腹部に熱感と痛みを伴い、再び便意を催す里急後重(りきゅうこうじゅう)がある場合は80%が湿熱があると診断し、黄連を清熱解毒(抗菌)燥湿の目的で使用します。木香と配合した木香黄連丸が市販薬として有名です。結膜炎、或いは皮膚の化膿症にも効果があります。
漢方を勉強したい方のために、黄芩 黄連 黄柏の比較を簡単に示しておきます。
共通の作用 清熱 燥湿 瀉火 解毒 | |||
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黄芩 |
黄連 |
黄柏 |
帰経の特徴 |
特に肺胆腸 |
心肝胃大腸 |
特に腎 膀胱 (下焦) |
治療対象 |
肺熱 胆腸湿熱 |
清心火除煩 清胃熱止? 大腸湿熱 |
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