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急性腎不全 急速進行性糸球体腎炎 張琪氏漢方医案1(腎病漢方治療323報)

2014-04-12 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

始めに:2013511日から523日にかけて、7報の急速進行性糸球体腎炎の漢方治療についてご紹介しました。

腎炎、腎不全の漢方治療120報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)1

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130511                           

RPGNの概念、組織病理学所見、分類、中医の認識、論治原則、治法運用

(宣肺解表、清熱解毒法)

腎炎、腎不全の漢方治療121報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)治法2

治則運用続き:益気養陰 益気養陰清熱降濁法、温腎健脾 解毒祛邪降濁法)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130514

腎炎、腎不全の漢方治療122報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)医案1

1976年症例 中医弁証:風湿邪毒鬱遏三焦 処方:加味神芎導水湯)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130515

腎炎、腎不全の漢方治療123報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)医案2

1987年症例 何炎?氏 火灼傷陰案)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130516

腎炎、腎不全の漢方治療124報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)医案3

1976年症例 ?俊氏医案 三焦鬱閉案)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130518

腎炎、腎不全の漢方治療125報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)医案4

1998年症例 宝厚氏医案 湿熱蘊阻案)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130521

腎炎、腎不全の漢方治療126報 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)医案5

2001年症例 陳以平氏医案 脾腎衰微 熱毒瘀湿案)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130523

197080年代の医案が4例、2001年の症例が最後の陳以平女史の症例でした。RPGNの概念や治療法についてはほぼ解説しましたが、今回のシリーズでは1991年から2006年の張琪氏の症例報告(医案)をご紹介します。中西医結合治療の近年の現状を覗いて見ましょう。

( )内に、随時コメントや印象を入れます。

患者:曲某 9歳 女児

初診年月日19941010

病歴

患児は十余日前、感冒発熱により現地で抗生物質治療を受け、体温は下降したが、肉眼的血尿、全身浮腫、乏尿~無尿が出現、精神萎糜、遂にハルピン市某西洋医学病院小児科に入院。検査を経て急速進行性糸球体腎炎、急性腎不全と診断され、血液透析が計画された。知人の紹介で張氏病院腎内科に転院となった。

初診時所見

来院時患者は既に乏尿3日間、24時間尿量200300ml、肉眼的血尿、全身浮腫、悪心嘔吐、大便質希、柏油状(アスファルト状)、体温37.4℃、精神萎糜疲倦、目不欲?目を開けようともせず)、鼻出血少量、下肢に浮腫が著しい。腎機能:Cre521.2μmol/L(5.79m/dL)、BUN23.07mmol/L(138.42m/dL)、血圧11/5.8kPa82.5/43.5mmHg)。脈滑数、舌質紫少津。急性腎不全に対して西洋薬で対症療法治療後に、小便の量は増加、浮腫は大消。しかし悪心、嘔吐が止まらなかった。

(病勢が甚だしく危篤状態です。更に進展すれば尿毒症は避けられず、死亡の可能性が高い状態です。西洋医が血液透析を準備したのは現在では当然の行為ですが、張琪氏の腎内科に紹介転院となった背景を考えれば、過去に同様の症例の治療経験を氏が有することを、西洋医側が知っていたことと、患児の親族に氏と知り合いが存在し、氏を信頼していたからでしょう。

20年前の症例ですが、当時も、現在も日本の医療現場では考えられないことです。そもそも実力のある漢方医がいないことに加え、西洋医も漢方を知らず、漢方医も西洋医学の勉強をしていなく、万が一、患者が死亡するようなことになれば医療訴訟は避けられず、原告側の弁護士も、裁判官も、裁判員制度で選ばれた民間人も、3者同様に漢方を知らないことが日本の現実です。また証人として証言する漢方の臨床医もいません。)

中医弁証:熱毒蘊于血分、損傷及腎

西医診断:急速進行性糸球体腎炎 急性腎不全

治法:清熱解毒、活血瀉毒法を急ぐ

方薬解毒活血湯加減:

大黄(活血通腑泄濁)10g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)20g 連翹(清熱解毒利湿)20g 葛根(舒筋活絡 活血化瘀)20g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)20g 生地黄(養陰清熱)20g 紅花(活血化瘀)15g 当帰(活血養血)20g 柴胡(疏肝清熱)15g 丹参(活血祛瘀)20g 牡丹皮(清熱活血涼血)15g 甘草(調和諸薬)15g 藕節(収斂止血)20g 焦梔子(清熱解毒止血)15g 川黄連(清熱解毒利湿)10

水煎、毎日1剤、2回に分服。

(解毒活血湯は清代の王清任の「医林改錯」中に記載されている方薬です。原方の主治は“蘊毒??、気血凝結、上吐下瀉”であり、組成は、連翹 葛根 柴胡 当帰 生地黄 赤芍 桃仁 紅花 甘草です。)

二診

服薬2剤後、患児の体温は正常化し、悪心嘔吐は明らかに減少した。肉眼的血尿は消失、尿量増加し24時間尿量は8001000mlに達した。更に3剤を継続服用し、悪心嘔吐は止まり、24時間尿量は1500mlに達し、食欲が出て、大便の色は黄、精神状態も好転した。上方継続20余日。

経過

入院治療一ヶ月、服薬30剤、悪心嘔吐は止まり、浮腫は全消し、小便は増多。腎機能再検:Cre110.6μmol/L(1.25m/dL)、BUN6.8mmol/L40.8m/dL)、大便2/日、食欲正常、尿量は乏尿から多尿に転じ、最大3000ml/24hrに達し、2日間続いたが、その後正常になった。ただし、尿蛋白±~+、尿RBC2030/HP、治療を清熱涼血止血剤に改め、治療2ヶ月で、顕微鏡下血尿転陰、治癒退院となった。2年間の追跡調査を行い、治療効果が固められたことを確認した。

ドクター康仁の印象

病因は異なるが病機は相同であると張琪氏は判断し、解毒活血湯を採用し、大黄 丹参 牡丹皮 焦梔子 藕節を加味した結果、服薬30剤で顕微鏡下血尿を除いて、病情が穏定し、2ヶ月で血尿も消え治癒退院の運びになったのは見事な仕事でした。RPGNの組織診断が無くても、他の西洋医学的データが無くても、弁証論治のみで治癒を得たのは素晴らしいことです。

まさに、「治法:清熱解毒、活血瀉毒法を急ぐ」が的を得た治療結果でした。日本では到底、漢方治療を実現できないであろうと思われる症例です。実に見事な仕事です。

2014412日(土)