好むと好まざるにかかわらずにニキビの患者さんは多い。
日常診療から「にきび」に対する私の診療をご紹介する。
患者さんが診察室に入ってきた時から観察がはじまる。
便通を問う。それからにきびの性状に眼を向ける。
便秘傾向 或いは 軟便下痢傾向か?
喜冷飲 或いは 喜熱飲か?などが参考になる。
脈診も舌診も欠かさない。
ほとんどの患者さんは、ミノマイシンの服用をしているが良くならない。
患者さんの年齢にもよる。思春期はどうしても「にきび」ができる。老人になってからのにきびはまれである。
血熱タイプ
顔面赤色丘疹 口鼻周辺 眉間に多発 顔面紅潮 灼熱感
顔面の毛細血管拡張 月経前の増悪
「温清飲(うんせいいん 万病回春)(当帰 熟地 白芍 川芎 黄連 黄芩 黄柏 山梔子)(各等分)」と「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)森道伯(もりどうはく1867~1931)の創始した一貫堂の方剤を使います。温清飲に連翹 ?芥 防風 薄荷 枳殻 甘草 柴胡 桔梗 白芷が配合されています。皮膚の痒みや化膿が目立つ場合に適します。祛風剤の?芥 防風はどちらも辛微温で皮膚の痒みを除き、防風は「風薬」の中の「潤剤」といわれ、燥になることはないのが特徴です。清熱解毒薬の連翹は「瘡?の要薬」であり、原因を問わず、赤く、腫れて、盛り上がっている皮膚病変に対して有効です。薄荷は疏散風熱と透疹に作用し、桔梗は排膿に働き気機の上行に作用し、対薬として枳殻は下気に働きます。白芷にも消腫排膿作用があります。柴胡は解熱に作用すると考えられます。森道伯の発想が、温清飲(四物湯+黄連解毒湯)の加味方であることは確かです。
こういうタイプは食事の指導をおこないます。親元を離れ一人暮らしの若い男女に多い。肉食系とキムチ系に偏っている食事が多い。肉は鶏肉に限って可とする。わさびは良いが、それ以外の香辛料は禁食とする。うなぎ、あなご、太刀魚も避けたほうがいい。他に魚はいくらでもあるので、長くて鱗の無い魚はやめたほうがいいと指導する。パクチー系の香辛料は特に禁食とする。チョコ系も控える
肺熱タイプ
顔面粟粒大の赤色丘疹 鼻周囲に好発 口鼻の乾燥感
舌質紅 黄苔 脈数
枇杷清肺飲(びわせいはいいん 医宗金鑑)炙枇杷葉 沙参 桑白皮山梔子 黄連 黄柏 炙甘草の配合。枇杷葉は苦涼で帰経は肺胃、化痰止咳、和胃降逆に作用する。臓腑熱の進化中の表に枇杷葉を肺熱、胃熱の治療薬として加えるべきか迷っている。荊芥連翹湯 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう 万病回春)防風 荊芥 連翹 山梔子 黄連 黄芩 薄荷 川芎 白芷 桔梗 甘草 枳殻が配合。以上の合方加減になる。
肺熱といっても「漢方医の感覚」によるものが多い。自分の勘を信じる。
胃熱タイプ
顔面粟粒大の赤色丘疹 丘疹頂点の黒点 口周囲に好発 胸背部に
見られる 口臭 食欲亢進 舌質紅 黄苔 脈滑数
調胃承気湯(ちょういじょうきとう傷寒論 大黄 芒硝 甘草)加減に
なることが多い。胃熱という概念が西洋医学にないので、説明が難しいが、大まか状態は改善する。胃陰を補うと共に、泄熱通便するのが原則である。
瘀血タイプ
暗色あるいは紫紅色の丘疹(ニキビの色が青みががった紫色である) 丘疹硬結あるいは色素沈着 毛包の角化 瘢痕化 月経痛 経血中の血塊 紫舌 瘀血点 瘀斑
通竅活血湯(つうきょうかっけつとう医林改錯):赤芍 川芎 桃仁 紅花 麝香 老葱 生姜 大棗
桃仁、紅花、川芎、赤芍は活血化瘀、麝香、生姜、葱白は温通脈絡の効能をもつ。瘀血タイプ頭痛を併発している場合もある。せんじ薬になるので、やや面倒くさいが、青黒い芯がなくなってきて綺麗になる。
気血両虚
顔面部の散在性の淡紅・正常色の丘疹 内部で化膿圧迫しても潰壊
しない 治癒しがたい 疲れやすい 顔面唇の血色不良 軟便あるいは下痢っぽい者が多い。舌質淡 脈虚弱
補中益気湯 帰脾湯加減が多い、気血両虚が原因で「にきび」が出
たというよりも、にきびを有する個人の証が気血両虚を思わせるといえば正確なところだ。
帰脾湯(きひとう済生方):茯神 酸棗仁 白朮 黄耆 人参 木香4.5当帰 遠志 炙甘草3竜眼肉9
補中益気湯(ほちゅうえっきとう脾胃論):黄耆が君薬
黄耆15~30人参9白朮9炙甘草6 柴胡3升麻3 当帰9陳皮6
私の好きなマリリン モンローのニキビ面を見たことがない。その写真が残っていないというのが真実であろう。
Marilyn Monroe with no acune vulgaris original wood cut by Dr. Kojin
左頬の赤みはイタズラで桜の花びらを置いたものです。ニキビではありません。
ドクター康仁 記