goo blog サービス終了のお知らせ 

gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ネフローゼ症候群の漢方治療 医案2 腎炎、腎不全の漢方治療130報

2013-05-29 00:15:00 | ネフローゼ症候群

杜雨茂氏医案 腎陰欠虚 水湿留滞 挟有瘀熱案

?西省名老中医経験?萃 第3?より)

Key words: ネフローゼ症候群 再発 ステロイド離脱

患者:袁某 20歳 男性 工員

初診年月日1997628

病歴

昨年(1996年)4月中旬水腫にて某市病院に入院し治療を受けた。診断はネフローゼ症候群。シクロフォスファミド、プレドニゾン及び中薬治療を224日間受け、病情は減軽、帯薬退院となった。本年の6月初旬病情が加重、現地の病院では上記の治療を繰り返したが効果に乏しく、杜氏を受診した。

(コメントを交えながら進んでいきます)

初診時所見

顔面及び下肢の浮腫。軽度に陥没性である。頭昏(頭がくらくらし)乏力を自覚する。腰酸痛、小便黄少、脈細弦、舌紅苔黄厚、顔面に少数の痤瘡あり、面色は発紅している。(顔面の潮紅を意味しているのでしょう)

検査:尿蛋白(3+)顆粒円柱(5~8)白血球(+)赤血球少数、上皮細胞少数。

中医弁証

久病水腫、病情起伏、腎陰欠虚(腎陽虚の寒がりなどが見られなく、脈細、痤瘡、顔面の潮紅などから腎陰虚と弁証したのです。水湿留滞、挟有瘀熱(瘀血に関しては久病挟瘀の理論からの判断であると思います。明らかな瘀血の証は有りません)

治則

滋腎利水 清熱化瘀

処方

生地12g 枸杞子12g 牡丹皮g 澤瀉12g 茯苓12g 車前子12g 懐牛膝g 魚腥草30g 連翹18g 当帰12g 生益母草30g 桑寄生12g 白茅根30g 水煎服用 1日1剤。1週以内に西洋薬を中止し、中薬治療のみとした。上方を基本として、病情にあわせ一二薬を増減した。

コメント:牡丹皮 澤瀉 茯苓は六味地黄丸の三瀉薬です。車前子と牛膝は牛車腎気丸の牛車の組み合わせです。益母草牛膝の共通点、相違点については過去の記事をご覧下さい。涼血祛瘀通経が共通点です。http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121105

桑寄生は祛風湿強筋骨薬に分類されます。補肝腎利湿に作用します。やや燥の性質を持ちます。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121114

経過

84日、32剤の服用にて浮腫は全消し、腰不痛となったが、口干と疲労後の腰酸のみが残ったが、その他の自覚症状は無く、脈沈緩、舌淡紅苔白微膩。

コメント:舌質が紅から淡紅に変わり、苔が黄厚から白微膩に変化したことは熱証が軽減したことを意味します)

検査:尿蛋白(-)上皮細胞と白血球少数、その他(-)

コメント:免疫抑制剤やステロイドを中止して約25日で蛋白尿が消えたということになります。ステロイドから離脱できたという意味がインパクトです。

前方を守り、益腎に重きを置き、清利の品は減少させた。

処方:地各9g 山薬12g 女貞子12g 枸杞子12g 澤瀉12g 牡丹皮


ネフローゼ症候群の漢方治療 医案1 腎炎、腎不全の漢方治療129報

2013-05-28 00:15:00 | ネフローゼ症候群

?云翔氏医案 腎虚不固 脾虚下陥 肺気失宣案

?云翔医案より)

患者15歳 女性

病歴

1967年患者はネフローゼ症候群を患い、全身浮腫、胸水、腹水もあった。治療を経て浮腫は消退したが、多年に及び蛋白尿が消えなかった。

初診年月日1975522

病歴は既に8年、夜間尿が多く(3回)、下肢に僅かに浮腫が有り、咳や痰も少しある。胃納一般、脈細、苔白。尿検査:蛋白(2+)、赤血球少、白血球少、血圧100/70mmHg

中医弁証

腎虚不固、脾虚下陥、肺気失宣

治則

補腎固摂、健脾補気、宣肺化痰法を着手した。

治方健脾固腎宣肺方

枸杞子12g 菟絲子15g 潞党参15g 綿黄耆12g ?芡実9g 懐山薬12g 雲茯苓9g 全当帰9g 青防風3g 玉桔梗3g 炙甘草3g

注:生薬の産地名のつけ方

当地薬剤 上海産は ?フー 山東省産は魯ルー 広州産は粤ユエ 河南省産は晋、四川省産は川チュアンというように産地名を示す漢字の次に薬剤名が続きます。潞党参の潞(ルー)は現在の山西省産を意味します。

経過

40剤服用後、夜尿減少、量は多くても1回、下肢の浮腫は消退、咳は止まった。尿蛋白は安定し(+)、効いているので処方を変えず、再度20剤服用後、自覚症状消失、尿検査では蛋白は安定し微量となった。その他の症状は正常になった。原方を継続して、治療効果を固めた。

評析

水腫病は肺脾腎の三臓と関係し、その機能を整和回復させることが、水腫病治療の鍵となる。有効方薬を常服し、緩やかにゆっくり治療し、急がないで自然に効果を待てば水腫は自然に消え、急ぎすぎると反って目的に到達しないという治療上の心得が必要である。

?氏の健脾固腎宣肺方は水腫の病機に合致し、肺脾腎の三臓の効能を調理し、効能を健康にすれば、水腫は自ずと消えるとするもので、臨床応用の効果は頗る佳である。

ドクター康仁の印象

西洋医学的な対応が見付からない中医案の典型ですね。見付からないということは、反って中医治療の有効性があるということです。

?氏は処方箋の薬剤名を3文字に統一しているのでしょう。その方が「見た目」が美しいからです。こだわりの一種ですが、医学とは無関係です。

腎虚不固、脾虚下陥、肺気失宣の弁証のうち、腎虚不固は腎気不固と同意ですが、次の脾虚下陥については、とってつけたような弁証ですね。先ず、何を以って腎気不固とするのかは難しいところです。よく、「近頃は小便をするとよく泡が立つようになった」と訴える患者さんがいます。腎気不固の証の一つです。「腎気不固」という概念は、気の固摂作用の腎での低下失調を意味します。①血液を固摂する②尿液を固摂する③精液を固摂する④帯下を固摂するの、おおよそ4つですが、蛋白尿も糖尿も腎気の固摂作用の低下(腎気不固)の拡大として考えます。泡が立つのは、生体に本来必要な精微物質が尿に洩れて出てくるためと考えます。

本方では芡実(けんじつ)が配伍されています。

蓮子肉金桜子芡実について、中医薬理学から説明を補記します。

蓮子ハスの種子の中身です。蓮肉、蓮子肉とも称する。帰経は脾、腎、心 効能補脾止瀉、益精固腎、養心安神で、脾虚による慢性下痢、食欲不振に用いる代表方剤が参苓白朮散です。腎虚による遺精、滑精にも用いられ、金鎖固精丸(医方集解)の組成は沙苑蒺藜 芡実 蓮須 龍骨 牡蛎 蓮になります。

芡実:スイレン科オニバス Euryale ferox SALISB.の成熟種子

蓮子とともに、性味は甘渋平です。功能は蓮子とほぼ同じですですが、蓮子のような安神作用はありません。帰経に心を欠いています。

金桜子:バラ科のナニワイバラ Rosa laevigata MICHXの成熟果実

性味は酸渋平で酸味があることが特徴です。帰経は腎、膀胱、大腸であり、功能は上記の蓮子、芡実の固精、渋腸止瀉と類似しますが縮尿と表現される功能が加わります。遺精、滑精、遺尿、頻尿、白色帯下に用いる。金桜子は酸渋収斂で、固渋の要薬であるとされます。最近は、金桜子が糖尿病によく使用されているようです。

水生の芡実と陸生の金桜子の2生薬を配伍した水陸二仙丹(証治准縄):金子 芡実は丸剤であり、遺精、頻尿、混濁尿、白色帯下などに用います。

中気下陥は一般的な中医学用語ですが、その「下陥」を付けて「脾虚下陥」とは納得しにくいですね。下痢が続き、腹張があり、食欲不振で(ところが病歴には胃納一般とありますね)、面色萎黄、おまけに痔持ちというくらいなら脾虚下陥と弁証してもいいと私は思います。脾失健運による水湿停滞から生じる水腫も加わっているという意味で、付け足したのでしょうか?脾腎両虚固摂不能の方が蛋白尿、水腫共に感覚的に分かりやすい弁証なのですが、?氏は「長いのは美しくない」という美学から、脾虚下陥と4文字熟語にしたのでしょう。

咳や痰が少しあるくらいで「肺気失宣」も大袈裟な弁証です。

ともかく、水腫論での腎脾肺に合わせるような弁証記載のような気がしてなりません。

現在進行中のネフローゼ症候群の医案でないことは確かですね。かつてネフローゼ症候群であったのは間違いないでしょうが。

当帰の配合は気血同源という理論から、久病であるが故に、一味は養血活血薬を加えたのでしょう。黄耆と防風の組み合わせは(白朮は配伍されていませんが)玉屏風散を連想させます。

使い道を考えて見ますと、(?氏も以下のような場合の定期処方としていたのかもしれません。)

ネフローゼ症候群が落ち着いても、減少した蛋白尿が持続する場合で、明らかな熱証や瘀血の証の無い慢性蛋白尿と軽度の浮腫を伴うような症例に?氏の健脾固腎宣肺方を試してみる価値はあると思います。

津液(しんえき)の代謝(生成と輸布)の中医基礎理論を復習しておきましょう。

津液は脾の水湿運化作用により水穀から小腸、大腸より吸収され、脾の昇清作用により肺に運ばれ、肝の疏泄作用とともに肺の主気作用、宣発粛降作用(通調水道作用)により三焦をめぐり、肺の宣発作用の一部として汗になるとともに、腎の気化作用により、利尿(降濁作用)によってその量が調節される。

以上が「水腫論」の基礎になるのですが、何処にも「蛋白尿」という用語は出てきません。

2013528日(火) 記


ネフローゼ症候群の漢方弁証論治2 腎炎、腎不全の漢方治療128報

2013-05-27 00:15:00 | ネフローゼ症候群

前稿では代表的な治療法の

宣肺利水法 温陽利水法 活血利水法

滋補肝腎 清化水湿法

以上の4法について説明しました。

本稿では

益気養陰法 行気利水法 分利湿熱法

についてお話します。

益気養陰法:気陰両虚証に適用します。

臨床症状:

全身浮腫、下肢に最も甚だしい。神疲気短を伴う。腹張納差、手足心熱、口干咽燥、腰酸腰痛、眩暈頭痛、舌質淡紅歯痕有り、苔薄、脈沈細或いは弦細。

症候分析:

久病で気陰欠虚、腎気虚損になり気化失常し、水溢肌膚、ゆえに全身浮腫、下肢に最も甚だしい。脾虚にて運化が失司し、故に神疲気短、腹張納差が出現する。陰虚内熱故に手足心熱、口干咽燥となる。腰は腎の府であり、腎虚にて腰が所養を失うと、腰酸腰痛となる。舌脈は気陰両虚の象である。

治方:

参耆地黄湯加味

党参 黄耆 生地 山薬 山茱萸 澤瀉 茯苓 牡丹皮 丹参 川芎

党参 黄耆は補気健脾に、生地 山薬 山茱萸 澤瀉 茯苓 牡丹皮は滋補腎陰に、丹参 川芎は活血し瘀血を防止する。

湿熱を有する者には黄柏 石葦を加える。

尿血の者には白茅根、茜草を加える。

    行気利水法:気滞水停証に適用します。

臨床症状:

全身浮腫は比較的重く、反復発作する。腹張顕著、胸悶気短、悪心嘔吐、尿少、尿黄、舌紅、苔薄黄、脈弦滑。

症候分析:

久病にて肝が疏泄を失い、肝の条達が失われ、三焦の気機が壅塞し、堰の開閉無権となり、水湿が内停し、肌膚に溢れ、故に全身浮腫は比較的重く、反復発作する。肝木乗脾のために脾は健運と和降を失い、故に腹張顕著、胸悶気短、悪心嘔吐となる。水湿内停、湿熱下注により尿少、尿黄となる。舌脈は気滞水停の証である。

治方:

鶏鳴散加減

檳榔 陳皮 蘇葉 生姜 木香 桔梗 車前子 柴胡

檳榔は行気化湿に、柴胡 陳皮 木香は疏肝理気に、蘇葉 生姜は宣散湿邪に、車前子は利水に働く。

尿血者には白茅根、茜草を加える。

湿熱の重い者には黄柏 石葦を加える。

気虚者には黄耆を加える。

コメント:用語解説:三焦

三焦とは何か?これは西洋医学的に三焦に対応する解剖学的なものが想定できないので中医学を学び始めたころに大変迷った腑の概念でした。そこで「機能単位」という不思議な概念を教えられたのです。

部位的には、横隔膜から上の胸部を指す「上焦」、横隔膜からへその間の腹部を指す「中焦」、胃以下の部位を指す「下焦」に分けられます。 

上焦は心、肺を含み、中焦は脾、胃を含み、上焦、下焦とつながり、体内物質の昇降の中心です。その生理機能は飲食物の消化、栄養分の運搬(運化)をつかさどることとされていますので、西洋医学での膵臓の外分泌作用部分は中焦の機能単位に入るでしょう。下焦は小腸、大腸、腎、膀胱を含み、その生理機能は食物残渣や余分な水分の下部への移動や体外への排出を行うこととされています。では、膵臓の内分泌作用のあるインスリンの作動部位は三焦のどこかと言えば、三焦全体に及ぶことは勿論のことです。

今のところ。中医基礎理論では、「三焦全体としての生理機能は、気の移動(気の昇降出入)の経路であり、体の根本的な気のもとである「元気」は腎から三焦を通じて全身へ広がり、各臓腑の機能を維持し、かつ津液の代謝は、肺、脾胃、腸、腎、膀胱など多くの臓腑の共同作用により行われ、三焦はその際の水道となり、正常な津液の移動が可能となる」と定義づけをしています。解剖学的な対応はありません。

    分利湿熱法:湿熱壅滞証に適用します。

臨床症状:

全身浮腫、面紅気粗、口苦口黏、口干不欲飲、或いは痤瘡感染、或いは瘡癤が続発し、小便短渋、大便不暢、舌尖辺紅、苔薄黄膩、或いは苔黄、脈滑数或いは弦数。

症候分析:

水湿が三焦に瀰漫し、肌表に外溢し、気機の昇降が失常し全身浮腫となる。水湿が化熱、湿熱が壅滞し、津液が上承不能となり、口苦口黏、口干不欲飲、面紅気粗となる。津欠腸燥となり大便不暢となる。湿熱下注し小便短渋となり、湿熱が化毒し、肌膚に外発し痤瘡感染、瘡癤を生じる。舌脈は湿熱壅滞の象である。

治方:

?飲子(そさくいんし)(済生方、世医得効方)加減

羌活 大黄 商陸 澤瀉 赤小豆 川椒目 檳榔 大腹皮 茯苓皮 甘草

原方の疏鑿飲子の組成は以下になります。

(世医得効方):疏鑿飲子

羌活 秦艽 大腹皮 茯苓皮 生姜 澤瀉 木通 椒目 赤小豆 商陸 檳榔

処方中の羌活、秦艽は疏風透表に働き、表にある水気を汗にさせて疏解する。大腹皮、茯苓皮、生姜は羌活、秦艽に協力して、肌膚の水を取り除く。澤瀉、木通、椒目、赤小豆を用い、商陸、檳榔と協同して、二便を通利し、裏にある水邪を下せる。

全身水腫の治療方剤です。

大便不暢の原因を津欠腸燥とする説や、三焦の気機が閉塞されて二便が不通になるという理解しにくい説もあります。治療は表裏分消の法となります。表裏分消を説明すると、

商陸は瀉下逐水で、二便を通利し(大便 小便)、檳榔、大腹皮は行気導水し(小便)、茯苓皮、沢瀉、木通(最近は腎毒性のために使用されません)、山椒、赤小豆は利水袪湿で、裏の水が二便から除かれる。
羌活、秦艽、生姜は疏風発表で、水湿を肌膚から排泄する。
諸薬は協同して表裏の水湿を体表と小便、大便から除去するという意味が表裏分消です。

皮膚瘡瘍が熱を持ち腫れている者には金銀花 地膚子を加える。

大便乾燥不通者には大黄を倍量にして火麻仁を加える。

商陸に関しては以前の記事を参照してください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130309

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130227

「だんじり」も「暴走バイク」も騒音であるという意味では同じ

「だんじり」の囃子の響きの中で思考するのは無理ですね。

部屋が暑くなってきたので夜半から窓を開けたら、暴走バイクの騒音で煩くてたまりません。

小型核爆弾を日本国内に持ち込む爆発テロや原子炉攻撃も想定内にして警備が必要だ

伝染病のように、日本人であることが強姦や殺害される対象になった理由は韓国の反日政策にあることは確かでしょうが、殺意という火に油を注ぐ事件が起こってしまいました。

広島、長崎への核攻撃は「神の懲罰」と言い放った韓国誌の論説委員がいるのです。

新聞社は個人的意見であるとしていますが、言い訳できない限度(一線)を越えてしまいました。「核攻撃」を「人が行う軍事攻撃」ではなく、どの神かは知らないが人知を超える存在である「神の意思による懲罰」としたことには「極大の傲慢さ」を感じます。

2013527日(月) 記


ネフローゼ症候群の漢方弁証論治1 腎炎、腎不全の漢方治療127報

2013-05-25 00:15:00 | ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群を中医学では「腎病総合征」といいます。

ネフローゼ症候群の西洋医学的診断基準は以下のようになります。

(1)蛋白尿:1日蛋白量3.5g以上が持続する

(2)低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0g/100ml以下
(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量3.0g/100ml以下)

(3)高脂血症:血清総コレステロール値250mg/100ml以上

(4)浮腫

注意事項

(1)上記蛋白尿、低蛋白血症(低アルブミン血症)は本症候群診断のための必須条件である。

(2)高脂血症、浮腫は本症候群診断のための必須条件ではない。

(3)尿沈渣中、多数の卵円型脂肪体、重屈折性脂肪体の検出は本症候群診断の参考になる。

大量の蛋白尿>3.5/24hr 低蛋白血症<3g/dlが必須条件ですが、伝統的中医学では水腫(浮腫)が最も観察しやすい症状であるために、「水腫」の弁証論治が先に進みました。水腫の中には狭義の腎臓病以外の水腫もあります。

西洋医学的には原因疾患を原発性と続発性に分けています。

  • 原発性

    • 微小変化群(または微小変化型)Minimal change nephrotic syndrom:MCNS

    • 巣状糸球体硬化症Focal glomerulosclerosis:FGSまたは巣状分節状糸球体硬化症Focal segmental glomerulosclerosis:FSGS

    • 膜性腎症Membranous nephropathy:MN

    • 膜性増殖性糸球体腎炎Membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN

    • その他の原発性糸球体腎炎

  • 続発性

    • アミロイドーシス

    • 膠原病(SLEのループス腎炎など)

    • 多発性骨髄腫

    • ホジキン病

    • HIV感染、HBV感染

    • 糖尿病など

本稿では各種疾患によって大量の蛋白尿が出現するネフローゼ症候群についての中医学を述べていきます。伝統的な水腫論については、併記、或いは後記します。

1. 中医の弁証思路

腎病総合征は「風」「寒」「湿」などの因素が、正虚の基礎の上に誘発原因となり、肺、脾、腎の気化失調が生じ、水液の代謝が傷害されて生じると考えます。臨床症状には実証、虚証、或いは虚実挟雑の違いがあります。その中で、実証が多く、次いで虚証となりますが、虚証中に脾腎陽虚、肝腎陰虚および気陰両虚の区分があります。虚実の弁証は勿論のことですが、症候間に転化あるいは挟雑があることに注意してこそ、治療が可能になり、誤治が防げます。

2. 論治原則

ネフローゼ症候群に対する中医治療では、水腫が顕著であり、邪実を主として、まずその標を治療する、つまり祛邪を主として宣肺利水を施します。病変の過程中、正虚を主として、つまりその本を治療するにあたり、扶生を主として、祛邪を補助として、温陽利水、滋補肝腎、益気養陰の法を分別して施します。この他に、気化、気滞に注意し、湿熱を論治し、行気利水、分利湿熱の法を採用します。

3. 治法運用

では、代表的な治療法を紹介します。

宣肺利水法

温陽利水法

活血利水法

滋補肝腎 清化水湿法

益気養陰法

行気利水法

分利湿熱法

以上の様に分類されるでしょう。

    宣肺利水法:風熱犯肺証に適用します。

臨床症状:

全身浮腫、顔面が最も著明で、悪寒発熱を伴う場合もあり、頭痛身痛、咳嗽、小便不利、舌紅 苔黄 脈浮数。

症候分析:

風熱毒が襲表し、まず肺を犯し、肺は宣肺粛降を失い、水道不利となり、水は肌膚に溢れ、全身浮腫、顔面が最も著明となる。衛営不和にて悪寒発熱、頭痛身痛が生じる。肺気上逆し咳嗽となる。熱傷肺津にて咽干咽痛を起こす。津液枯燥にて小便不利となる。

コメント

確かに極度の脱水に近い津液枯燥になれば小便不利になりますが、宣肺利水法に補陰剤、養陰剤の併用があるとは限りません。津液枯燥→小便不利という公式は営血分証まで温病が進展した場合の公式だろうと思います。

舌紅苔黄、脈浮数は風熱犯肺の象である。

治方:越婢湯 合 麻黄連翹赤小豆湯加減

麻黄 石膏 魚腥草 黄芩 連翹 白茅根 杏仁