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慢性腎不全 漢方薬 7(八大治法 4 清肺胃利湿熱法)(腎病漢方治療 391報)

2014-06-19 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

先ず、清肺胃利湿熱法の漢字表現は、清肺胃 利湿熱 法と分割すると解りやすくなります。利は動詞で、利するとは、「祛」に置き換えることができます。祛湿、祛瘀に有るように、湿、瘀血を除くという意味で使用されており、平易に言えば、利湿熱は湿熱を除くという意味になります。利の使い方は、例えば「利小便実大便」の「小便を通利し尿量を増やして、大便を形のあるものにする」もっと平たく言えば「小便を増やし、下痢(泄瀉)を止める」の意味にあるように利益、通利、利便の利の使い方とは趣を異にしています。湿だけでも、利湿、祛湿、燥湿、除湿、化湿といろいろな用語があります。混同しやすいので、本稿ではこれ以上、論を進めません。<o:p></o:p>

 

尿毒症期も含め、慢性腎不全の病機には脾の運化失常があります。一般的には甘寒の薬剤は脾の運化を妨げる意味で使用はよろしくないとされます。但し、一部の患者では脾胃陰欠、湿熱運化阻害の証が現れます。即ち、臨床症候として、口干、舌光(少苔或いは舌苔が無く鏡面状)、不欲飲、悪心嫌食、胃脘灼熱隠痛、胃部不快、五心煩熱、脈細数。口臭、呼気に尿臭、鼻血あるいは歯肉出血などです。<o:p></o:p>

 

方用 加味甘露飲(かんろいん:太平恵民和剤局方生地黄(甘苦/寒 養陰清熱)15g 熟地黄(甘/微温補肝腎養血滋陰、補精益髄)15g 茵陳蒿(苦/微寒~寒 清熱利湿退黄)15g 黄芩(苦/寒 清熱解毒利湿)10g 枳殻(苦/微寒 理気下降)15g 枇杷葉(化痰止咳、和胃降逆)15g 石斛(甘、微寒 帰経胃、腎、功能 養胃生津)15g 天門冬(甘苦/大寒 清肺降火 滋陰潤燥)15g 麦門冬(甘微苦/微寒 潤肺養陰、益胃生津、清心除煩)15g 沙参(甘/微寒 清肺養陰、益胃生津)15g 天花粉(苦甘/寒 養陰清熱利咽)15g 芦根(甘寒 清熱生津清胃熱)20g 萹蓄(利水通淋)20g 麦芽20g 佛手辛、苦/温 疏肝、理気、和中、化痰 開胃醒脾 緩急止痛)10g 水煎服用<o:p></o:p>

 

方中、二地(生地黄 熟地黄)、二冬(天門冬 麦門冬)は脾胃の陰を滋養し、陰虚はまた熱邪が耗陰するが故に、黄芩 茵陳蒿を用い、所謂、清熱存陰をはかり、枇杷葉は逆気を降ろし、枳殻は行気和胃に働き、天花粉は潤肺生津に作用し、麦芽 佛手は開胃醒脾に働き、甘寒薬物の合用による滋膩と脾の運化の妨げを防ぐとする方剤論です。陰虚にして湿熱を挟む弁証に対応する方薬です。<o:p></o:p>

 

甘露飲加減方の症例での使い方については以下に紹介してありますのでご参照ください。とても誠実な医案です。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131115<o:p></o:p>

 

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2014619日(木)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 6(八大治法 3 活血解毒法)(腎病漢方治療 390報)

2014-06-18 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

湿熱毒邪が血分に入ると、血絡瘀阻が主体となり、臨床症候としての、頭痛少寝、五心煩熱、心神が落ち着かず、悪心嘔吐、舌紫少苔或いは瘀斑が有り、舌下静脈が紫暗、顔色に艶が無く、脈弦或いは弦数等は、慢性腎不全、高凝高黏状態に符合し、表現は血瘀証であり、治療は清熱解毒活血化瘀法が宜しいのです。<o:p></o:p>

 

方用 加味活血解毒湯連翹(清熱解毒利湿)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 紅花(温経活血)15g 当帰(養血活血)15g 枳殻(理気下降)15g 葛根(舒筋活絡 活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 生地黄(養陰清熱)20g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 丹参(活血祛瘀)20g 柴胡(疏肝理気 清熱 升陽)20g 甘草15g 大黄(活血通腑泄濁)7g 水煎服用<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の多くは腎病が慢性化し、(その障害は)気から血にまで及び、腎絡痺阻が瘀に到ったものであり、唐容川1846-1897 清代中医学者 中西医?通医義で知られる)の言うように、所謂、離経の血が散じることなく瘀を形成します。慢性腎不全は、常に蛋白尿、血尿を長く治療しても治癒せず、次第に腎機能が悪化しても顕著な症状を呈さず、発病初期には皮膚に瘀点あるいは瘀斑、舌体青紫、面色蒼黒、肌膚甲錯、脈象渋、緊、沈遅等の症候を見るにようになります。活血化瘀の治療が必須であり、張琪氏の経験では、慢性腎不全の治療に活血化瘀法は最佳であるとしています。<o:p></o:p>

 

加味活血解毒湯方中、桃仁 紅花 赤芍 生地黄は活血散瘀、涼血清熱に作用し、慢性腎不全の高凝には、大黄 丹参 葛根等が必須です。葛根黄?(葛根フラボノイド)は血管拡張作用と同時に、解毒作用もあります。瘀血は慢性腎不全の病理産物であると同時に病情進行の因子の一つなのです。瘀血は生命体に長く留まり影響を与えると病機を複雑化させ、病情を遷延させ治癒困難にさせます。<o:p></o:p>

 

病理実験では、毛細血管内皮細胞の増殖、血小板凝集、フィブリノーゲン/フィブリンの滲出、半月体形成と瘀血には関連があり、活血薬を使用すると、確かに腎実質内の瘀滞を改善させ、病情発展を延緩させ、血流量を改善し、間質の繊維化を抑制し、腎不全の進展を延緩させ、中には腎臓病変を中止、ほぼ治癒させる場合もあります。<o:p></o:p>

 

典型的な血瘀の症候に乏しい場合には、ヘモダイナミクス(血流力学)に留意しながら投薬を進めることになります。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の治療には、芳化湿濁或いは清熱解毒、補益肝腎、益脾胃、補気血等全てに活血祛瘀を併用補佐すれば、良好な治療結果が得られます。<o:p></o:p>

 

本稿は慢性腎不全 漢方薬 3(善用活血化瘀法 2)(腎病漢方治療 387報)と一部内容が重複していますが、併せてご参照ください。<o:p></o:p>

 

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2014618日(水)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 5(八大治法 2 化湿濁 苦寒瀉熱法)(腎病漢方治療 389報)

2014-06-17 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

湿邪が蘊結し、慢性化すると化熱し、或いは体内の脾胃が平素熱を帯び、湿熱が相互に蘊結すると、すぐに脾胃の運化は受阻となり、湿熱痰濁中阻を形成します。この時、化湿濁と苦寒泄熱の合用をしなければなりません。臨床で多見されるのは、嘔悪、脘腹張満不欲飲食、口臭、呼気に尿臭、大便秘結或いは不爽、或いは、四肢に浮腫、舌苔は厚膩やや黄少津、脈弦滑等の症候です。<o:p></o:p>

 

方用 化濁飲(かだくいん):醋炙大黄10g 黄芩10g 黄連10g 草果仁15g 藿香15g 蒼朮10g 紫蘇10g 陳皮10g 半夏15g 生姜15g 茵陳蒿15g 甘草10g 水煎服用<o:p></o:p>

 

方中の醋炙大黄10g 黄芩10g 黄連10gは苦寒泄熱、(砂仁草果仁15g 藿香15g 蒼朮10g等は芳香辛開、駆除湿邪に働き、両者の薬剤は相互調済し、既に苦寒が傷胃することも無く、また、辛燥の品の傷陰の弊も無く、湿濁毒熱の邪を除くものになります。<o:p></o:p>

 

弁証にあたり注意すべきは湿熱の軽重であり、熱重の、便秘、口臭、舌苔厚膩の場合には、茵陳蒿、黄連、黄芩、大黄を重用します。黄芩 黄連の合用は心下痞満を除き、脾胃の運化に有利です。<o:p></o:p>

 

但し、湿邪が偏重の場合には、化湿濁の草果仁、半夏、蒼朮、藿香等を重用します。<o:p></o:p>

 

大黄の現代薬理研究:1.攻下泄毒導滞作用は尿毒素の一部分を腸道から体外に消除する;2.活血化瘀作用は腎不全患者の高凝固、高黏状態を改善する;3.糸球体細胞の増生を抑制する作用がある(上皮細胞なのか、メサンギウム細胞なのか、内皮細胞なのかの特定は今のところ確定はされていないようです。);4.人体の必須アミノ酸を維持あるいは増加させる;5.利尿作用を有する;6.腎臓の代償性肥大を抑制する(機能が残存している腎の高負荷、高代謝状態を抑える);7.腎不全時の脂質紊乱を補正する。<o:p></o:p>

 

大黄は慢性腎不全の有効な薬物ですが、弁証を結合させなければなりません。湿熱毒邪が壅結し、痰熱瘀血と弁証される場合であり、適宜使用されれば良好な治療結果をもたらします。大便は1日1~3回に保ち、(過量は不可で)、腸内毒素を排出させ、腸道を清潔に保ち、また血分の熱毒を清し、邪に出口を与え、かつ腎間質の水腫を軽減させ、活血化瘀、芳化湿濁の品を併用すれば、良好な効果を得られます。<o:p></o:p>

 

但し、脾胃寒湿者で、大便溏薄の場合には、湿毒内阻とは言え、また大黄の使用は不可です。(不用意に使用すれば)脾陽虚衰を加重させ、後天の源を障害し、病情の悪化を促進させます。所見は甚だ多く、扱いには注意を要します。<o:p></o:p>

 

化濁飲中の草果仁は方の要薬です。辛開湿濁薬中ではファーストチョイスされるもので、辛温、燥烈、善く脾胃の寒湿を除きます。慢性腎不全の高窒素血症期の湿毒内蘊には、(草果仁の如き)辛温燥烈の品には湿瘀化熱に対処する泄熱開痞の大黄、黄連等の併用配伍が必須です。<o:p></o:p>

 

化濁飲処方の症例については以前の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140103<o:p></o:p>

 

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2014617日(<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 4(八大治法 1 芳化湿濁法)(腎病漢方治療 388報)

2014-06-16 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

芳化湿濁法:脾は運化をつかさどり、水谷精微と水湿の両面を運化します。飲食物は胃に入ると、初期消化(中医学用語では腐熟)され、小腸に送られ「泌別清濁」され、其の中の精微なるものは、昇清(脾の散精とほぼ同意)され全身に布散され、人体の栄養の物質的源泉となります。脾は後天の本と称される所以です。この他に、脾は水液の運化作用を有し、「素問 経脈別論」に曰く:「飲入于胃、遊溢精気、上輸于脾、脾気散精、上帰于肺、通調水道、下輸膀胱、水精四布、五精併行」(敢えて和訳しません)。とあるように、津液の生成と輸布は複雑な生理過程であり、主要な機能は、脾の運化輸布、肺の通調水道、腎の気化蒸騰と三焦の気機の疏泄です。其の中でも脾の運化作用は人体気機昇降の要(かなめ)です。<o:p></o:p>

 

若し、脾気が衰敗すれば、則、運化機能が失調し、水液は正常に輸布されなくなり、(結果)湿濁内生し、三焦に瀰漫し、昇降をして逆乱させ、清濁が交じり合うことになります。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の臨床症状、悪心嘔吐、胃脘張満、口臭、頭昏沈、煩悶、舌苔白膩、脈緩等は消化管症状の「脾の湿困」の症候であり、化湿醒脾が必須であり、脾困を解除することが主治療となります。<o:p></o:p>

 

平胃化湿湯(へいいかしつとう)草果仁(温中行気燥湿)15g 蒼朮(燥湿健脾)15g 半夏(辛散温 化痰燥湿散結止嘔)15g 川厚朴降気、燥湿、消積、平喘)15g 紫蘇(止嘔燥湿)15g 砂仁(化湿行気和中)15g 陳皮行気和中化湿)15g 甘草15g 芦根(清熱生津清胃熱)15g 竹茹清化熱痰、除煩止嘔 泄濁)15g 生姜15g 茯苓健脾利水)15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

平胃化湿湯(へいいかしつとう)は温胆湯(うんたんとう)の基礎方に和胃化痰濁の品、草果仁 砂仁 生姜 蒼朮等の燥湿温脾、辛開痰濁、醒脾除湿の品;藿香芳香化湿)紫蘇 川厚朴等の芳化湿邪、消除痞満の品;芦根竹茹等の降逆止嘔の品を加えたものであり、共同して散湿除満、降逆止嘔の剤となります。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の弁証で、湿邪中阻、脾陽不振に属し、胃脘張満、嘔吐、悪心、眩暈身重、倦怠乏力、舌苔白膩、脈緩等の症候がある場合に有効な方薬です。<o:p></o:p>

 

藿香については過去の記事に詳説して有りますのでご参照ください。<o:p></o:p>

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121110<o:p></o:p>

 

温胆湯については過去の記事に詳説してありますのでご参照ください。<o:p></o:p>

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140325<o:p></o:p>

 

ヒトは水が無ければ3日、食べ物(水谷精微物質)が無ければ3週間しか生きられません。昔の摂取経路は経口です。したがって、脾胃の機能が、自然に大昔の最古の医学書「黄帝内経」で重要視されたのは、極自然な成り行きと言えますね。<o:p></o:p>

 

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2014616日(月)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 3(善用活血化瘀法 2)(腎病漢方治療 387報)

2014-06-15 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全に随伴する高凝血症の処理:慢性腎不全には大半の場合、血液の凝固、高黏血症を伴い、腎不全の加速因子の一つになります。故に、活血祛瘀は慢性腎不全の重要な治則となります。清代の「医林改錯」中、有名な血腑逐瘀湯の王清任の「解毒活血湯」の加味方(連翹20g 桃仁15g 紅花15g 赤芍20g 生地黄20g 葛根15g 当帰15g 牡丹皮15g 丹参20g 柴胡20g 枳殻15g 甘草10g 大黄7g)(等)」の大黄丹参の加味により、比較的良好な治療効果が得られます。<o:p></o:p>

 

活血解毒の薬剤と補脾補腎益気の薬剤の合用は、腎機能を改善させ、病勢の発展を弛緩させ良好な治療効果につながります。<o:p></o:p>

 

高窒素血症に解毒活血治療を施すことにより、BUNCreを下降させ、数は少ないものの、症例によっては、奏功してBUNCreレベルを、特にBUNは正常域にまで改善させることが不可能ではありません。活血化瘀泄濁法は慢性腎不全の終始一貫する治則です。<o:p></o:p>

 

腎不全で維持透析を受けている患者さんのシャントトラブル(何度も内シャント手術を繰り返し、人工血管のグラフトも複数回になるような場合)に対しても、私は丹参、大黄を中心に投与して良好な結果を確認しつつあります。問題となるような高カリウム血症も経験していません。また止血が困難になるような経験もありません。慢性腎不全があり、便秘を伴う症例に接すると、殆どの症例が、単なる軟便剤とセンナ由来の薬剤で治療されていることが多いのですが、「大黄」の配伍されている活血泄濁痛便剤がふさわしいと思うのです。<o:p></o:p>

 

活血化瘀と通腑泄濁の併用配合運用:中医学用語の「去苑陳」から説明申しあげます。出典は「素問:湯液醪醴論」で、莝とは陳旧性の雑草の如き汚水や汚物という意味で、それら水液廃物を削り取る、除去するのが「去苑」になります。<o:p></o:p>

 

次に「開後竅以利前陰」とは、後竅即ち大腸肛門系を開き(泄濁通便する)、以って、前陰(腎小便系)を利するという意味になります。<o:p></o:p>

 

具体的には、丹参 桃仁 当帰 紅花 川芎 草果仁等と大黄 蒼朮 半夏等を合用し、大便を通暢させ、腎機能を改善させる法を指します。現代薬理実験では、活血化瘀薬は血液循環を改善させる他に、免疫調整機能を有し、腎血管平滑筋を弛緩させ、腎血流量を維持或いは増加させる、抗感染及び抗凝固作用などの効果が確かめられつつあります。通腑泄濁薬は臨床観察により腎機能改善に寄与します。即ち、「去苑陳」の法であり、毒邪瘀濁を大便に排出させ、腸内を清潔に保ち、即ち開後竅以利前陰」にて腎臓の負担を軽減することになります。活血化瘀、通腑泄濁の合用は慢性腎不全の腎機能回復、腎機能低下の延緩に有効であるとする経験的理論です。<o:p></o:p>

 

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2014615日(<o:p></o:p>