永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

町の風景。町の情け。人の町。

2010-03-05 18:41:58 | 日記・エッセイ・コラム
いつもより夕飯を早めにすませて、なまったからだに運動をする。近くの門司球場のバックネット裏手の広場でシコふみと股割りしていたら、80歳ちかい女性が両手にスーパーの買物袋を持ちフウー、フウー息を切らしながら坂道を登ってきた。ぼくのすぐ近くにくると、フェンス垣根のところに座りこんだ。ぼくがもくもくとシコを踏んでいると、その人は「お若い人はいいね。元気だから」と声をかけてきた。ぼくはとまどいながらも、「いえ若くないですよ。歳ですよ」。「今の時間にお買物ですか。たいへんですね」とぼく。あたりはそろそろ暗くなりはじめている。話しを聞いていると、門司駅近くの丸和で買物をして桃山方面に帰ると言う。どうも独り暮しらしく三日に一度くらい買物に下におりるという。話しからすると、きょうは買物が遅くなったと言う。女性は戸の上山の方角を見上げながら、球場のすぐ近くの家や周囲を指差し、「このあたりはマンションが増えて、何だか町全体がのぺっとした風景になってしまって、何か昔と違ってしまったよね。そこの家には20年前まで、牛が10頭ほど飼われていたのよ。門司球場では港まつりの時は花火大会があってたのよ」と、いろいろ地区の自慢話しをしてくれた。ぼくも長いこと30年ほど、この町に住んでいるからそのことは知っているのだが、だまって相づちをうった。その女性は話しを終えると「年寄りの話しを聞いてくれてありがとう」と言ってゆっくり立ち上がり歩きはじめた。「これから通りは不用心になるから、気をつけてください」女性の背中に声をかけた。「はいはい、ありがとうね」。自分の町自慢を年長者の人が一生懸命話しをしてくれる。北九州市は都市ブランド戦略と言うスローガンをかがけ、どこの都市とも同じようにパブリシティをうっている。こういう年長者の暮しの中の人の情けというか、この町を知っている人の生きざまと人そのものが町のブランドなのではと、ふと思った。