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中石和良・著“サーキュラー・エコノミー―企業がやるべきSDGs実践の書”を読んで

政治資金規正法違反にも拘わらず法律に抜け道があって、政治家は逮捕起訴できない、という。元々、政治家は逮捕されないように作った法律だ。だが先週も言ったが、日本の税法にはほぼ抜け道はない。どうして税金で食っている政治家は脱税で逮捕できないのか、不思議だ。
そもそも政治家が収支報告書に記載するべき要件を知らないということは、どういうことなのか。法律の立て付けも知らずに法律を作る仕事をしているのか。いかにも不思議な方々だ。この国はそういう不思議で成り立っているのか?
そのくせ2世、3世議員が多すぎる。これはもう利権の世襲なのだ。政治家は本来アマチュアリズムで成り立つもののはずだが、政治が金儲けの本業家業になっているのだ。そこに選挙民とのなれ合い関係が出来上がっているのだ。その典型が“桜を見る会”なのだ。地元選挙民のタカリの構造でもあり、それを権力者が税金で賄うアベ的なものの典型なのだ。
その悪徳権力者を逮捕できないこの国も不思議の国なのだ。

ある関西芸人の不祥事が大きくなっている。どうやら同じような事例が多過ぎる。当初、クソ週刊誌の“書き得く”との声が大きかったが、騒ぎの対象が8人?にまで拡がってきている。コリャァ、もうアカンのチャうか?!どうやら若手芸人に“お膳立て”させる業界内ヒエラルキーを使っての不祥事に呆れる話だ。相当薹の経った若手もいるようだがそれだけに情けなく、ムナクソが悪くなる。当初、“事実無根”としていた事務所側も腰が引け始めている。 
関東の芸人からも、素人相手セコイ!との批判が出ている。
これは現象論的には“五輪不祥事”疑惑に始まった“悪事の「アベ的な露呈」の一環”ではないかと思う。つまりアベの“お守り”呪縛が解けた世間での騒ぎなのだ。

EV事業が“死の谷”?or“ダーウィンの海” ?に入ったのかも知れないという。テスラが決算で不調の気配なのだ。日本のニデック(旧・日本電産)も決算でEV関連で不調のようだ。
未だEVの将来は確定していたのではなかったのか?やっぱり未だ、トヨタの全方位開発が間違いのない戦略なのか。

1月23日の新幹線事故、予防保全が不十分であることが判明!“JR東によると、破断したロッドは昭和60年に設置。耐用年数は約30年とされるが、38年間使用していた。” 
耐用年数が過ぎている個所は厳重な点検をするべきであったはずだが、やったのか?JR東日本はひょっとして“予防保全”を知らないのではないか?それを知らずにハイテクであるべき新幹線を運営しているとなれば驚くべきことではないか。それを知らずに実行もせず“安全第一”を唱えているのか?


さてここで、“サーキュラー・エコノミー”の紹介本の紹介としたい。これまでRoHS指令やREACH規則で日本の電器メーカーが規制され、さらには車ではHVよりもEV車だなどとヨーロッパが動いて、日本メーカーを競争の土俵から外そうとしてきたが、今度は“サーキュラー・エコノミー”で製品規格を策定して日本製品に規制をかけようとしているという話が聞こえてきているので、それが一体どういう内容になるのか、気になり読んでみた次第だ。とにかく欧米の白人どもは実は日本を外すことに躍起になってきているのだ。
一先ず、以下にこの本の出版社内容情報と紀伊国屋書店による本の紹介情報を提示する。

出版社内容情報 
作って捨てる「一方向(リニア)」型経済から、使い続ける「循環(サーキュラー)」型経済へ。
これは、選ばれ続ける会社の「成長戦略」である。
本書では、ミシュラン、グッチ、アディダス、アップルなど、各業界を牽引する最先端企業による「SDGs実践の方法」「サーキュラー・エコノミーの取り組み」を紹介。環境と経済を有機的につなげ、まったく新しい発想で商品やサービスを生み出す、魅力的かつ野心的な取り組みを追う。

紀伊國屋書店情報によれば次の通りだ。
【内容説明】
「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」とは、環境への負荷を最小限に抑え、同時に最大限の経済効果を得るための新しい経済・産業システム。企業におけるSDGsの実践方法としても注目を集めている。本書では、先端企業による業界別の取り組みを通して、新しい発想や仕組みづくりを提案する。

【目次】
序章 リニアからサーキュラーへ―新たなビジネスモデルと日本の現状
第1章 製品に「サービス」という価値を付加する―フィリップス/ミシュラン/エレクトロラックス/ダイキン工業
第2章 斬新な発想で、廃棄物の概念を変える―ナイキ/アディダス
第3章 ゼロカーボンで覇権を争う米国の巨人たち―グーグル/アップル/マイクロソフト/アマゾン/フェイスブック
第4章 プラスチック、「責任ある消費方法」を模索する―テラサイクル/ユニリーバ
第5章 「環境の破壊者」ファッション業界の変貌―ケリング・グループ/グッチ/プラダ/エルメス/ステラ・マッカートニー/ザラ/H&M
第6章 リソース・ポジティブと食ビジネス―スターバックス/ミツカングループ
第7章 家具、寝具、信頼できる暮らしまわりの製品―イケア/イワタ
第8章 紙の無駄にビジネスチャンスあり―グーフ
終章 日本の産業と、サーキュラー・エコノミーへの移行

【著者等紹介】中石和良[ナカイシカズヒコ]
松下電器産業(現パナソニック)、富士通・富士電機関連企業で経理財務・経営企画業務に携わる。その後、ITベンチャーやサービス事業会社などを経て、2013年にBIO HOTELS JAPAN(一般社団法人日本ビオホテル協会)を設立。欧州ビオホテル協会との公式提携により、ホテル&サービス空間のサステナビリティ認証「BIO HOTEL」システムを立ち上げ、持続可能なライフスタイル提案ビジネスを手掛ける。2018年に「サーキュラーエコノミー・ジャパン」を創設し、2019年一般社団法人化。代表理事として、日本での持続可能な経済・産業システム「サーキュラー・エコノミー」の認知拡大と移行に努める。

この本では、目次に示したように様々な企業のサーキュラー・エコノミーへの先端的活動を紹介している。
先ず序文ではスウェーデンの家電メーカー・エレクトロラックスの始めたロボット掃除機のリース事業の紹介をしている。掃除機は“「所有」よりも、部屋をきれいにするための「機能」や「性能」を第一に求めていた”はずで、そういう真のニーズをリース事業によって満たして行こうとするもの。この掃除機にはインテリジェント・センサーが付いており掃除した面積や頻度、場所、床特性(フローリング等)を記録し発信してユーザー行動のデータを把握して、リースによってメーカー側が次の製品開発に生かせるメリットがあるというもの。
こうしたことは、様々な家電で今後も行われて行くだろうとフィリップス等の実例を挙げて紹介している。こうするためには、製品寿命を長くして“丈夫で長く使える耐久性”を持たせ、修理や整備をしながら長期間貸し出して、作り直しや廃棄物を減らして生産による環境負荷軽減を図ることに意義があるのだ。

“世界銀行の報告書によると、現在、年間20億トンの廃棄物は、2050年までには年間34億トンに達すると予測されている。さらに、年に3億トンにも及ぶプラスチック廃棄物はそのうちの800万~1200万トンが海へ流出し、海の生態系を脅かす海洋プラスチック廃棄物問題に発展している。”とも指摘している。
また、“欧米企業の間ではサーキュラー・エコノミーがSDCsの目標を達成するための具体的な「方法論」として注目”している。このように“サーキュラー・エコノミーは産業界のグローバルスタンダードになりつつあり、ディストピアを回避するには、もはやこの選択肢しか残されていない”と言っている。

ここで、サーキュラー・エコノミーの定義として紹介された文章は次のようである。
“再生可能エネルギーに依存し、有害な化学物質の使用を最小化・追跡管理した上で、製品・部品・材料・資源の価値が可能な限り長期にわたって維持され、資源の使用と廃棄物の発生が最小限に抑えられる経済システム。”

一方、サーキュラー・エコノミーに対立する概念としてのリニア・エコノミー(直線型経済)とは、従来型の経済で、“地球から資源やエネルギーを奪い、製品を製造・販売し、使い終わったら廃棄する一方通行”の直線型経済のこと。

そして、ロンドンにあるエレン・マッカーサー財団*の提起した「サーキュラー・エコノミーの3原則」を次のように提示している。
“廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う。
製品と原料を使い分ける。
自然システムを再生する。”(ここで、「製品と原料を使い分ける」の説明の明示はなく意味不明。)

*グーグル、ユニリーバ、ナイキ、マッキンゼー・アンド・カンパニー等がパートナーとして参画。

この3原則の背景には“クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle=揺りかごから揺りかごへ=C2C)”というコンセプトがある。これはイギリスの社会福祉政策の“揺りかごから墓場まで(Cradle to Grave)”をもじったもの。“揺りかご(地球)から採った資源をゴミとして墓場(廃棄場)へ捨てていた従来のリニア・エコノミーから脱却し、揺りかごから採った資源は継続的に再利用して揺りかごで使い続ける、完全循環を目指したモノづくり”のことである。
現在世界でC2C認証を取得している製品は約600に及ぶが、残念ながら日本では2020年6月時点で認証取得製品は0。日本では認知度は低い、という。
さらには、バタフライ・ダイアグラムの説明もあるが、具体的ではなく何だか私には分かり辛くやたら概念説明ばかりになるのでゴタクはいい加減に止めたい。
ただ、リサイクル、リユースに関して厳格に検討して原材料を極力リサイクル、リユースすることを検討・研究する姿勢がいわゆる3R(リサイクル、リデュース、リユース)とはサーキュラー・エコノミーとは大きく異なる、ということのようだ。例えば“枯渇資源と再生可能資源は循環の仕方が異なるので混ぜてはならない”という原則があるというのだ。だが具体的に説明してくれないと良く分からない。

こうしてサーキュラー・エコノミーには5つのビジネス・モデルがあるという。
①循環型供給  ②シェアリング・プラットフォーム  ③サービスとしての製品  ④製品寿命の延長  ⑤資源回収とリサイクル
②は使い方でフル稼働させて無駄を排除するビジネス・モデルである。例えば車は買ってしまえばほとんど稼働せず駐車場で留め置かれる。これをフル稼働させて使い切るビジネス・モデルを作り出すこと。
③はスウェーデンの家電メーカー・エレクトロラックスの始めたロボット掃除機のリース事業のようなことである。同じようなことはタイヤ・メーカーのミシュランが試み始めているという。つまりタイヤを売るのではなくリースして様々な情報を集約して行く。勿論製品寿命の延長も考慮していくのが前提ではある。

この後は、ビジネス・モデルに従っての事例紹介となる。
だが、残念ながらナイキの事例は理解できずにいる。ナイキでは“使用する素材の約9割に廃棄物を再生利用”してシューズを作ったということ。“工場の床などに落ちている糸くず、つまり廃棄物を原料にしている”というのだ。その糸くずをナイキでは“宇宙ゴミ”と呼んでいたのでそのゴミでできた製品を“スペースヒッピー”というブランドにした、というのだ。それが本来のサーキュラー・エコノミーに適うことなのかと驚かされたのだ。
先ず、工場内でゴミが発生することが正常な工場経営となっていることが理解できないのだ。本来はゴミを発生しないように工場内をそのために清掃することを最小限にするためのプロセスや設備・装置の改善を進めるのが本筋のはずだが、それを放置してそのゴミを利用するというのは本末転倒だと感じるのだ。恐らく、日本の多くの工場経営者はそう考えるのではあるまいか。ゴミを発生しないようにして歩留まりを上げ、原材料生産の負荷を軽減することが先決ではないのか。それを放置して、逆に発生したゴミを原料にするというのは、ゴミを集める手間に余計なエネルギーもかかるし、自慢できる話ではあるまい。それをこの本の著者は絶賛しているのだ。何だか、この本全体が眉唾ではないかとさえ思える記述である。
著者は恐らく、コロナ禍のせいで現場を見ずにネット情報だけで判断し書いているのだろうとは思うが、基本は矢張り現場を直接見て記事にするべきだろう。また“汚い工場”ではサーキュラー・エコノミーどころではあるまい。下の下の話になる。海外の企業情報にはとんでもないことがありうると肝に銘じるべきだろう。だから、この本全体が心底信じ切れる内容かどうか疑わしくなるのだ。

意外で驚きなのはファッション業界が“環境の破壊者”と世界的に見做されていることだ。“国連環境計画の試算によると、世界で排出されるCO2のうち約10%はファッション産業が排出している。これは国際線の航空機と海上輸送の船が出すCO2を足した量よりも多い。このままだと2050年までに26%をファッション業界が排出することになるとエレン・マッカーサー財団は指摘”している、という。水の使用量も“世界自然保護基金(WWF)の報告では、Tシャツ1枚を作るのに約2700リットルの水を必要とし、水の汚染と使用量では石油産業に次いでワースト2位。しかも国連欧州経済委員会と世界資源研究所によれば、毎年作られる服の85%が焼却や埋め立てなどで処分される”。“さらに罪深いのが、化繊は洗濯機で洗濯するたびに、海を汚染する大量のマイクロ・プラスチック(直径5ミリメートル以下の)を排出していること”であるという。この記述にはさすがの私も驚いたしかなり戦慄したのであった。
これにケリング・グループ(グッチやサンローランを傘下)がEP&L(Envioronmental Profit and Loss)という環境損益計算書を開発し環境負荷を数値化した。これは加工・処理、製造、組み立て、販売の各段階で、CO2の排出量から水の使用量、水質汚染、土地利用、大気汚染、廃棄物までのデータを収集し、考案した計算式で貨幣価値に変換して、自分たちの事業活動を把握・評価するものだという。
そしてケリングの会長兼CEOフランソア・アンリ・ピノー氏は2019年フランス・ピアリッツでのG7サミットで“ファッション協定THE FASHION PACT”を発表した。これは“2050年までにCO2の排出量ゼロを目指し、2030年までには参加企業が使用するエネルギーを100%再生可能なエネルギーに切り替える。また、過密飼育を行う農場からの素材調達を取りやめ、生態系や種の保存、土壌再生などを重視した農業を優遇する施策を取る。使い捨てプラスチックを2030年までに廃止するとともに、マイクロ・プラスチック汚染を抑制する新素材の開発を進める”という実践目標を掲げている。
これには、アルマーニやシャネル、バーバリが調印し、2020年4月時点で66社、250以上のブランドが参加している。

ファッション業界がこのような動きをするのは、“これからの買い手となるミレニアル世代(1981~1996年生まれ)とZ世代(1997~2010生まれ)の存在への意識が大きい”という。IT産業発展の中で育ったこれら世代は“いずれも大量な情報を選別し、SNSでの評判に耳を傾けながら、その真価を見抜いて、買う買わないの判断をする”はずだという。

だが、いくらITが発達してもフェイク情報が無くならないことは、現実が示すところだ。だから、簡単に“その真価を見抜いて、買う買わないの判断をする”と言っても実はこれが難しいことなのだ。様々な規格や協定が制定されても、それを忠実に実践できているかどうかを検証することがなければ、ウソがまかり通る結果になりかねない。そして規格や協定が複雑になれば、その実践状況の検証の手間が膨大になるのも確かではないかと思われる。検証の手間が膨大になれば誰も検証などするはずもあるまい。
現に日本のSDGsには“目標に掲げて行動している”と自己宣言さえすればお構いなしの傾向が街に溢れているのだ。例えば、関西では傘下の学校でSDGsに悖るような教育を行っていても、傘下の鉄道会社の車両にはSDGsの実践をアピールするデザインを掲示している。関西のお笑いのプロダクション会社がSDGsのリーディング・カンパニーであるかのようなPRも行われている。これら関西の会社の実際のパフォーマンスをどう評価するかは各自にお任せしたいが、現実はこんなことでも許される緩い社会状況なのだ。

世の中批判が飛び出したところで、この辺で終わりたい。サーキュラー・エコノミーにはどうやら業界毎の規格・協定の乱立が予想される気配は感じたが、それが統一的動きになってEU一円からグローバルなものになるかどうかは、これからのように感じた。規格・協定には、どうしてもSDGsにまつわる規定が必要になり、そうなればオール・ラウンドな縛りとなり、そうであれば肝心な規定が返ってぼやける傾向になるようであり、そうなれば規格・協定の意義も薄れるという矛盾に遭遇しているようにも感じられる。しかし今後の動向には要注意であろう。過度にまじめにならず、さりとて不真面目にもならず真摯に対応することが肝要のようだ。


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