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「辺境」日本の世界史的な意味(3)強力な宗教のない理由

2020年04月18日 | 相対主義の国・日本
もちろん日本人同士の紛争は多く経験しているが、同じ民族同士の戦争なら価値観を変える必要はない。しかし相手が異民族であれば、自民族こそが正義であり、優秀であり、あるいは神に支持されているなどを立証しなければならない。

他民族との戦争を通して、部族の神は、自民族だけではなく世界を支配する「正義の神」となる。そして「正義の神」相互の殺し合い、押し付け合いが行なわれる。社会は、異民族との戦争によってこそイデオロギー的になる。「普遍的な価値観」、「絶対的な価値観」によって戦いを合理化しなければならないからだ。

日本は、異民族との激しい闘争をほとんど経験してこなかったために、西洋的な意味での神も、イデオロギーも必要としなかった。強力な宗教やイデオロギーによる社会の再構築なしに、自然発生的な村とか農村共同体に安住することができた。絶対的な理念による社会の統合を形成せず、相対主義的な文化と社会に甘んずることができたのである。

だからこそ、縄文時代以来の「森の思考」、自然を貴ぶ宗教や文化が、本格的な農耕の始まった弥生時代にも引き継がれ、さらに高度産業社会の現代にまで生き残ったのである。日本文化の特異さとは、縄文的な要素を多分に残した農耕文化、しかも牧畜を知らず、遊牧民との接触もなかった農耕文化の特異さということであろう。そして、農耕文化が、縄文的な心性を残しながら連綿と続くことができた条件の一つが、大陸の異民族による侵略・征服などがなかったということなのである。

《引用・参考文献》
(1)「原型・古層・執拗低音―日本思想史方法論についての私の歩み」(『日本文化のかくれた形』加藤周一・木下順二・丸山真男・武田清子編、岩波書店、1991年所収)
(2)『日本辺境論』内田樹著、新潮新書、2009年
(3)『日本とは何か』堺屋太一著、講談社、1991年
(4)「日本文化の選択原理」小松左京著(『英語で話す「日本文化」』講談社インターナショナル、1997所収)
(5)『ユニークな日本人』グレゴリー・クラーク、竹村健一著、講談社現代新書、1979年
《関連図書》
日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)
ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
日本の曖昧力 (PHP新書)
日本人の人生観 (講談社学術文庫 278)
古代日本列島の謎 (講談社+α文庫)
縄文の思考 (ちくま新書)
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
山の霊力 (講談社選書メチエ)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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