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「辺境」日本の世界史的な意味(2)城壁なき都市を作った唯一の国

2020年04月17日 | 相対主義の国・日本
日本は確かに地理的には「辺境」の島国であり、そのためか、これまで「世界標準」や「普遍的な文明」を生み出すことはなかった。大陸で生まれた「世界標準」をひたすら吸収してきた。しかし、日本と大陸を隔てる海は、古代の技術でも渡航困難なほどには広くないが、しかし大規模な移民や軍事攻撃を組織的に行うには広すぎた。もし渡航したとしても、軍団はバラバラに到着し、統一行動がとれない可能性が高かったであろう。大陸から適度に隔てられた日本は、高度な文化や知識は流入し得ても、短期での大量移民や大規模な軍事攻略は困難だったのである。

先進文明との適度な距離と列島としてのまとまりという稀有な条件が、日本の歴史に決定的に影響した。大陸から「狭くない海」で隔てられていたことは、日本を異民族との戦争のない平穏な社会にした。

一方、人類が大陸の大河の流域などで農業を始めた頃、その周囲には多くの遊牧民が勢力をもっていた。農耕民は、遊牧民から生命と財産を守るため、強いリーダーの下に結集し、攻撃を防ぐ施設を備えなければならなかった。つまり、城壁で囲まれた都市国家が生まれていったのである。中世以前の都市は、アテネ、ローマ、ロンドン、パリ、フランクフルト、バグダッド、ニューデリー、北京、南京など、すべて堅固な城壁で囲まれていた。

ただ日本だけが城壁で囲まれた都市がなく、城下町はあっても城内町は存在しなかった。日本列島は、険しい山と狭い平野は遊牧に適さかったし、海を越えて遊牧民が侵略してくることも、蒙古襲来以外にはなかった。異民族に侵略され、征服され、虐殺されるというような悲惨な歴史がなかった。明治維新に至るまでは、異民族との闘争とはほぼ無縁であり、だからこそ日本人は、「城壁のない都市」をつくったほとんど唯一の民族なのだ。

《引用・参考文献》
(3)『日本とは何か』堺屋太一著、講談社、1991年
(4)「日本文化の選択原理」小松左京著(『英語で話す「日本文化」』講談社インターナショナル、1997所収)
《関連図書》
日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)
ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
日本の曖昧力 (PHP新書)
日本人の人生観 (講談社学術文庫 278)
古代日本列島の謎 (講談社+α文庫)
縄文の思考 (ちくま新書)
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
山の霊力 (講談社選書メチエ)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
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