BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA暫定世界バンタム級タイトルマッチ

2009-10-27 00:25:38 | Boxing
王者 ネオマール・セルメニョ VS 挑戦者 クリスチャン・ミハレス

セルメニョ 判定勝利

考察 ~セルメニョ~

なにもかもが温いボクシングに見えるが、
非常にプロ向きなアマだったのだろう。
ポイントゲームが大好きというか、ポイントの取り方を知っている。
パンチを強く打つのではなくしっかりと打つのが持ち味で、
インパクトの瞬間に拳を握り込むのではなく、
肘から先をリラックスさせながらナックルを返す。
パンチの引きは早くないが連打をまとめられるのはこれによる。
打たれる前に打ちまくることで相手の攻撃を封じるのもディフェンスで、
打ってこられるとすぐに足を使うのもアマらしいプロの姿勢。
ミハレス戦しか観ていないので確定的な評価を定めるのはまだ先になるが、
アグベコやムニョスをあっさりと空転させそうな雰囲気も漂っている。
四角いリングを円く使うのはボクサーの常道だが、
これができる選手は実は少ない。
モレノを攻略できそうな日本人ランカーも見当たらないが、
セルメニョを攻略できそうな日本人ランカーもまた見当たらない。
長谷川や西岡?
もうそんな路線には興味はないね。

考察 ~ミハレス~

なにもかもが悪くなってしまっている。
右リードがさっぱり出ず、持ち味の手数は川嶋、アルセ戦の頃の
半分程度に減ってしまっているのではないか。
また距離勘も狂っているようで、以前よりシューズ一足分相手に近く立っていた。
少々打たせても強く打ち込みたい意識の現れなのだろうが、
ミハレスの武器はパンチ力ではなく手数とMatrix Defense。
そのディフェンスもよりブロッキングに依存するようになり、
ガードに忙殺されながら手数も出せなくなるという悪循環。
ボディワークはガードよりもスタミナをロスするように思えるが、
実際は逆で、上半身と脚はリズミカルに運動させることで
呼吸のリズムも一定になり、結果的にスタミナ消費は少なくなる。
ブロッキングは瞬間瞬間で腕、肩、腰、脚の筋肉を収縮させ、
酸素の消費量を増してしまう(あくまでミハレスのような体の場合)。
前進しているように見えてリング中央をうろうろしているだけという展開は
かつて自身がアルセに味わわせた戦い方で、いかにfrustrationが溜まるか理解したと思う。
論語に「己の欲せざるところ人に施す勿れ」と言うが、
ボクシングに恕(思いやり)など不要なのだ。

現役続行の決断についてメヒコの友人曰く、Mijares is now gonna get fed to young lions.
「これから若き獅子たちのエサにされるだけだ」
被弾癖をなんとかしないことには栄光ではなくダメージを得ることとなってしまうが…

WBC世界Lフライ級タイトルマッチ

2009-10-26 23:17:31 | Boxing
王者 エドガル・ソーサ VS 挑戦者 オマール・ソト

ソーサ 6ラウンドTKO勝利

考察 ~ソーサ~

地味な風貌に武骨なボクシング。
毎試合打ちつ打たれつの戦いになっているが、
胴が太く、首も太く、顔もメキシカンにしては彫りが深くなく扁平で、
これらも打たれた際のダメージの低減に寄与している。
ディフェンス技術に特筆すべき事柄はないが、
アッパーだけはきれいにもらわない姿勢を保っている。
ブロッキング、あるいはパーリングの名手は
往々にしてアッパーで崩される傾向があり、
陣営、選手ともにはそのことを弁えている。
アップライトのファイターは結構打たれる/打たせるが、
選手寿命はなかなか長い。
だがアップライトで武骨に戦える選手は思ったよりも少ない。

考察 ~ソト~

軽いパンチをまとめるのは悪いことではない。
逃げ足全開で打ちに行くのも悪いことではない。
ただしこれにはナックルの返り、あるいは印象的な見せ場作りが
前提となっている。
王者のスロースタートと自身の右クロスで序盤のリードを作ったが、
パンチの無さ以上に打たれた際のひ弱さが目立った。
がむしゃらに打ち、がむしゃらに逃げるのはsympathyよりもcompassionを
呼ぶような戦い方で、プロボクサーたる者、冷静沈着にプランを実行せねばならない。
まあ、地元の人気王者にKOで散って観客・視聴者の期待に応えた点は評価できる。

リナレス陥落その他の海外記事

2009-10-25 00:12:29 | Translated Boxing News
お馴染みMr. Jake Donovanの記事です。氏の手によるBoxingScene.comの記事は
今後自由に翻訳しても良いとの許可を頂きました。やや時期を逸した訳ですが、
示唆に富むものと判断したのでお届けします。
ここでいう示唆に富むとは、ものの見方の可能性の話であって、
私が記者氏の見解のすべてに無条件に賛成しているわけではありませんので。
ちなみにこの記事では今後のWOWOWの放送予定試合の結果を含んでいますので、
それを知りたくないという方は読み飛ばされることをお勧めします。
原文はhttp://www.boxingscene.com/?m=show&opt=printable&id=22852を参照のこと。
誤訳の類はすべて管理人「涼しい木星」の文責に帰します。

The Difference Between What we’re Told and What We See
”耳に入ってくる評価とこの目で見ての評価の違い”

目にするものの半分を信じよ。そして耳にするもの一切を信じるな。

人生におけるシンプルすぎる教訓である。もしもあなたが幸運にも幼い頃に折り目正しく育てられたのであれば、
この教訓は年少時に教わったであろう。人は言いたいことを言えるものである。だが百聞は一見に如かず、だ。
実際に一見したとしても、そこにはさらなる観察眼が求められる。

さる10月10日月曜日はコロンブス・デーであった。我々の大半にとってはもはや馴染み深い記念日ではない。
教えられなくてはそうとは気付かないぐらいだ。ほとんどの人は会社へと出勤し、多くの子どもは学校へ行く日なのだ。

コロンブスが「1492年に蒼き海を渡った男」という英雄として称揚された時代と現代の記念日の在り方には相当の
隔たりがある。彼はアメリカを発見した。我々は過去数世紀にわたってそう教えられてきた。だが実際によくよく調べてみると
事実はそうではないことが明らかになった。彼の名誉を祝う記念日としてのコロンブス・デーの重要性の何たるかを
我々は知ったわけだ。

より多くの観客を会場に呼び込み、より多くの視聴者をテレビ画面にくぎ付けにさせるためとあらば、
ボクシングほど臆面なく話を大袈裟に語るものはない。

暫定ベルトが絡む試合はすべて世界タイトルマッチであると我々は教えられてきた。
そしてそれに出場するまあまあのレベルのボクサーは奇貨であるとも。なぜならそのボクサーは
いまだ黒星を喫していないからである。テレビ放送でたびたびスポットライトを浴びているボクサーは
スーパースターへの階段を駆け上がっているのだ、と我々は信じ込まされていることは言うまでもない。

心の奥底では我々はそれがナンセンスだと気付いている。だがいつの間にかファンは自分の頭で考えることを
止めてしまったのだ。プロモーターがボクシングメディアとボクシングファンに「ボクシング界のためにネガティブな
面についてあれこれ考え続けるのはやめよう。それよりポジティブな部分に集中しようではないか」と呼びかけている
現状が今の事態を招いたのかもしれない。

なにかを鵜呑みに信じてしまう。我々がそうなってしまった瞬間から本当の負の面があらわになったのだ。
我々は浮かされ踊らされていたと気付いた時には、ボクシング界の暗躍者たちは次に本物として売り出すべき
ボクサーをすでに用意しているのだ。

現代ボクシングはスターを育てようというビジネスではなく、むしろスターの装束が最も似合う男からスターを
作り上げようというビジネスに変化してしまっているのだ。

近い将来、そして今後数年の長きにわたってボクシング界の主役となるであろうと語られてきた2人のボクサーが
10月第2週の週末、試合を戦った。ファン・マヌエル・ロペスとホルヘ・リナレスである。

両者とも土曜日にそれぞれ別々のタイトルマッチに別々の大陸と島国でリングに登場したが、わずか16時間足らずの
間に両者のいずれもが自身の戦績に不釣り合いとも言うべき結果を出すこととなった。

ロペスは過去最強の相手と戦い、僅差の、しかし十分に勝利と見なせるに足る判定をロジャース・ムタグワ相手に得た。
試合は誰から見ても名勝負であり、確実に年間最高試合候補であった。

未知数だったロペスの精神力がこの試合でチェックできたと見るか、それともこれほど僅差の試合になること自体おかしいと見るか。
いずれにせよ、プエルトリカンは無敗を守り、突如として魅力的な報酬を得られる選択肢に恵まれた周辺階級では今もビッグネームである。

それでも、下位ランカー相手に僅差の判定を強いられたことで、ボクシングファンはこのプエルトリカンの戦績を詳細に
吟味するようになった。この男は本当にラベリング通りの強さを持っているのだろうか、と。

ダニエル・ポンセ・デ・レオンを初回KOに葬ってアルファベットタイトルを獲得した出世試合では、
彼は確かに戦績に見合うだけの強さは見せた。

それ以来、我々はポンセ・デ・レオン戦という彼が大差で勝利するとは予想されなかった唯一の夜の幻想から
抜け出せていなかったようだ。負け役ばかりを相手にした一連の防衛戦は彼の戦績を本当の意味で前進させる
ことはなかったし、HBOのBoxing After Darkシリーズ登場という貴重な機会をもたらしはしたものの、
Sバンタムまで上がってきたジェリー・ペニャロサを一方的に叩きのめしたからといってキャリアの
上積みになったわけでもない。書類上の成績からはそう判断するしかない。

それでも彼は今もって無敗であり、タイトル保持者であり、スター選手としての力量は疑問視されたものの
試合には勝利した。

同様のことがホルヘ・リナレスに当てはまるというわけではない。同日のより早い時間帯に、彼はすでに
無敗の、そしてその時点まで真の強豪との試合経験のないファン・カルロス・サルガドに衝撃的な敗北を
喫したからである。

リナレスがカルトレベル以上のボクシング視聴者の目に最初にふれたのは2年と少し前のバーナード・ホプキンス
がウィンキー・ライトに勝利したHBOのペイ・パー・ビューの露払いとしてであった。ベネズエラの天才児は
暫定世界タイトルマッチと銘打たれた試合で、すでに衰えの見えていた元王者オスカー・ラリオスとの対戦に臨んだのだ。

10ラウンドTKO勝利は若き天才がそこから獲得したタイトルの一つ目をもたらした。フェザー級王者としての
旅路は2試合だけ、ラリオス戦の勝利とガマリエル・ディアス戦の防衛成功でブレイクイヤーとなった2007年
の試合活動を締めくくるも、度重なる負傷2008年の大半を戦うことなく無為に過ごすことを余儀なくされた。

復帰後のリナレスに待っていたのはSフェザー級の暫定アルファベット王座の決定戦。対戦相手は世界挑戦資格が
疑問視されたワイベル・ガルシアで、昨年11月にリナレスはこれを5ラウンドで降し、2つ目の空位のタイトルを
奪取した。

アルファベット承認団体があらゆる局面でますます信用を失いつつあるこの時代においてさえ、
リナレスは二階級制覇王者として身に余る称賛を浴びた。それほどの称賛を浴びるほどの地位に
いかしにて辿り着いたのかという疑問の声は称賛にかき消された。

それでも彼の戦いぶりは素晴らしかったし、対戦が相手が誰であるかを考えさせないほどのパフォーマンスを
多くのファンに見せつけたのだ。

少なくとも日本の東京で行われた土曜日の試合までは。テンプルにもらった左フックは彼の王座への在位と無敗記録の
終わりの始まりをマークしたのだ。

24歳という年齢なら、リナレスにとって状況を好転させ、自らがかつて浴した天才という大仰なラベルに
真に見合うだけの実力者であると証明する時間はたっぷりとある。証明する、という言葉に重点を置かれたい。
なぜならば有望株の売買取引に最も熱を上げるような人間は、今でも彼を見逃すべからざるスーパースターと
見なす愚を犯す恐れなしとしないからである。

リナレスは予定されていた栄光への極みに到達するまで墜落炎上した誇大広告ファイター(the first hyped up fighter
to crash and burn *fighterはボクサーと戦闘機、両方の意味を持つ)の先鞭では決してない。2009年はそのクラスで
最高だと聞かされていたボクサーたちが次から次へと弱点をあらわにした、あるいは我々が自分自身の目で見て百聞は一見に
如かずを思い知った年であった。彼らがどう巻き返すかは今後次第であり、まだ今年は終わっていないが、現時点ではともかく
そうだと判断せざるを得ない。

ビタリ・クリチコへの敗北は、ヘビー級の頂上に陣取る旧東側ブロックの一角を打ち壊すことを期待された直近のアメリカ人ボクサー、
クリストバル・アレオラにとってはこの上もない学習経験になるかもしれない。当時無敗だったこのカリフォルニアっ子はアドバイザーの
アル・ヘイモンとのコネによってテレビ放映のメインを何度も飾ったが、トップクラスの選手に対してゴーサインが出せるような
対戦相手はそこにはいなかった。

9月26日は彼がまったく理想の自分に届いていなかったことを証明した。クリチコ兄にほぼ毎ラウンドポイントを取られ、
11ラウンド開始後にスツールから立つことを許可されなかったのだ。敗北は肉体的なダメージと同等のダメージを精神にも
与えた。ストップ直後にアレオラは泣き崩れた。その夜クリチコのパンチを300発以上浴びた顔面は醜く腫れ上がっていたが、
そんなことはお構いなしに彼は涙に暮れた。

3か月前、同会場のステープルズ・センターではもう一人の若きカリフォルニア出身選手が崩れ落ちていた。Sライト級世界ランカー、
ビクトル・オルティスがマルコス・マイダナとのノックダウン応酬の大激戦で、5ラウンド終盤に捕まり、6ラウンド開始早々に
ギブアップ(quitting)したのだ。

余計な口を叩かなければ、オルティスと関係者はその夜の戦いを肉体的なダメージをもって得た教訓だと素直に心にしまいこむことも
できたはずだった(*オルティスは「俺はquitterじゃない」と発言し、メディアの批判を倍加させてしまった)。先に3度のダウンを
奪ったことでスコアカードの上ではリードしていたが、その後の相手の攻撃を捌き切ることに失敗し、最後は笑ってしまうほど強烈な
パンチを浴びてしまった。

良い教訓になったと発言するかわりに、彼は大きな怪我なく現役を終えたいという意向を明らかにした。もしそれがマイダナ相手に
早々とギブアップしてしまったということの理由ならば、こちらとしては「そうか、それは仕方がなかったな」と言うしかない。

売り出し中の選手を買うか否かを決断する前にさらなる確証が必要なのではないかという時点で、ボクシングファンはこれまでに
何度も大損をしている。そのことに気付くのに、上の例で述べたようないくつかの屈辱的な敗北が常に必要だとは限らないのだ。

いまだ無敗でアルファベット承認団体のベルトを保持しているにもかかわらず、アンドレ・ベルトはウェルター級の将来を担う選手だと
今でも信じ込んでいる者は業界にはほとんど見当たらない。

サイズで劣る負け役相手に連続防衛記録を築くということはそのボクサーが保護されていることを意味する。可もなく不可もない
ウェルター級世界ランカーのルイス・コラーゾにカミソリの刃一枚の差の論議を呼ぶ判定勝利は、ベルトは標準以上のウェルター級
にはなれないということを示しているように思われる。ベルトに必要なのは自らの価値を証明することだ。あれだけのファイトマネーを
要求するからにはそれも当然のことである。

2010年1月開催が提案されているシェーン・モズリー戦に勝利すれば、売り出し文句どおりの逸材であることを正当に証明する
長き道程の第一歩を踏み出すこととなろう。現時点ではベルトの大差勝利を予想する者はほとんどいないのだが。

言い換えれば、ファンは信じんが為に目撃せねばならないということだ。

アンドレの名を持つもう2人の元オリンピック出場選手たちは似たような状況に置かれている。だが見方を変えれば、彼らは自らの
力を証明する絶好のポジションについているとも言えるし、自らの手に余る難しいポジションについているとも言える。

アンドレ・ウォードとアンドレ・ダーレルは2004年の合衆国ボクシング代表のチームメイトで、両者ともメダルを本国に持ち帰る
ことに成功した。ダーレルは銅メダルを入手し、ウォードは五輪金を獲得。ウォードは現役アメリカ人ボクサーでは唯一この偉業を
誇れるボクサーである。

両者の華々しいアマキャリアは米国のプレミアCATVネットワークShowtimeで頻繁に放送されるに足るものだった。

だがそれを以てしてボクシングファンは彼らのどちらもが本物であると納得することはできないし、プロとして今日まで築き上げた
戦績もまた然りである。

今後18か月にわたって健全な量のリアリティチェックが行われることとなろう。彼ら2人は来たるSUPER SIX Sミドル級トーナメント
に参加することが決定しているからである。

全勝すれば前評判を完全に覆すことになるだろう。彼らは2人ともトーナメント制覇者予想から最も遠いところにいるからだ。事実、
彼らは2人とも予選ラウンド初戦の勝利すらも期待されていない。ダーレルは敵地イングランドのノッティンガムでフロッチと対戦し、
ウォードは来月故郷のオークランドでトーナメント開催前の下馬評ナンバーワンのミッケル・ケスラーと対戦する。

2人とも、あるいはどちらか一方でも勝利、もしくは強さを見せての敗北となれば、彼らが本物か紛い物かの判断を決断を迫るための
動かぬ証拠をファンに与えることとなろう。どれだけプレスリリースを開催してもプレビュー映像を流しても役には立たない。
リング内で残した結果だけが結論となるのだ。

これはボクシング業界全体がとっくの昔に学んでいてしかるべき教訓である。だが今さらとは言うまい。何事にも遅すぎるということは
ないのだ。近年の期待はずれのホープたち、真に頂上へと登りつめるスターの不在は、我々が次代の大物という言葉を耳にした時に
まずはその目で見るまで信じるな式のアプローチを採用せよとの警告をようやく大衆に届かせたのである。

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ

2009-10-20 23:01:39 | Boxing
王者 ビアチェスラフ・センチェンコ VS 佐々木基樹

センチェンコ 判定勝利

考察 ~センチェンコ~

詰めてくる相手にお構いなく無情まジャブ、ストレートを当て続けたが、
特に有効だったのは左フックだったと見る。
長身でアップライトなスタンスからやや高めのガードを保ち、
肘の位置と高さそのままにpronationとrotationで放つ左フックは
ウィービングにもダッキングにも対応できるパンチだ。
コンビネーションでパンチをまとめるというより、
連打はすべてroutine workに思える。
決まったパターンを丹念かつ安全に繰り出すタイプで、
アマらしさが残るというよりアマチュア全開のボクシング。
だがウクライナというボクシングのsuperpowerが育て上げたこのボクシングは
管理人の嗜好ともマッチし、さらに欧州の伝統にも忠実で、
今後のユーラシアのボクシングのmain streamになる可能性を秘めている。
こういう地味で渋い選手はアメリカ人ボクサーに喰われそうで、喰われない。
ネイティヴアフリカンのボクシングではどうだろうか。

考察 ~佐々木~

攻めのバリエーションだけを磨き、防御のバリエーションをおろそかにしてしまったか。
序盤は相手の手数に翻弄され、手数が出せず、
中盤は相手との間合いを詰め切れず、先に打たれた。
得意の左フックも一種のタメとテークバックがあっては世界レベルでは当たらない。
ノーガード、アゴ突き出しの挑発も風向きが怪しくなりかけた時に出しても効果は薄い。
事実、相手はまったく誘いに乗ってこなかった。
数値以上にリーチ、身長差があり、必然的に踏み込みと鋭角なパンチが必要となるが、
そんなことは当たり前田は広島カープ。
いっそのこと相手以上のアウトボクシングと出入りを見せても面白かったかもしれない。
cool as iceなチャンピオンの頭脳を惑わすには普通の奇策では駄目なのだ。
頭を低く入り、ローブローもいとわぬボディ攻撃も敵地でこの相手ならありだ。
レフェリーの注意や減点など気にしてもしょうがない。
ノックアウトしに来たのだろう?
奇策を奇策として繰り出しても意味がない。
正統派の攻撃に策を織り交ぜてこそ奇策なのだ。
結局、実力も奇策も日本・東洋レベルだったと認めるしかないのか。

Sライトの木村に続き、またもアマ上がりのテクニシャンに
日本のトップがひねられたが、これは今後のトレンドになるのだろうか。

WBA世界Sミドル級タイトルマッチ

2009-10-20 23:01:05 | Boxing
王者 ミッケル・ケスラー VS 挑戦者 グスミル・ペルドモ

ケスラー 4ラウンドTKO勝利

考察 ~ケスラー~

指名試合だか何だか知らないが、ケスラーなれば調整試合。
本人の意識としては違うかも知れないが、ファンはそう感じるのだ。
左ジャブの強さと鋭さは相手の左右に関係なく健在で、
踏み込みも頭の位置のブレもないのにパンチが伸びてくると
相手にしてみればこの上なく厄介なものだ。
以前にケスラーの技術ではなくフィジカルを絶賛したが、
「俺の眼力もなかなか」と勝手に悦に入っている。
一発一発を強く打つ選手はヨーロッパに中南米にもいるが、
一発一発を強く当てる選手はこのケスラーぐらいか。
グローブの置き所を心得ており、フットワークも眼も良く、
パーリングも冴える。
SUPER SIXの本命の座は揺るぎない。


考察 ~ペルドモ~

しなやかな右ジャブだけだったな。
ダブルで打つ、サークリングしながら打つ、
時にフリッカーっぽく打つなどの特徴をつけなければ
ケスラーほどの相手には通用しない。
ひっかける右フックから左につなげるような技もなく、
仕留められるのは時間の問題だった。
最後のストップは本人にしてみれば不本意なタイミングだろう。
だがファンの目線で言わせてもらえば、
残虐シーンを未然に防いだナイスレフェリングでしかない。

Petty Talk

2009-10-17 19:41:48 | Private
某病院の元・現入院患者の方々の旅行にボランティアとして参加させて頂いた。
これで同ボランティアへの参加は2度目である。
今回はなんと日本ボクシングコミッションドクターのドクターFも参加されていた。
府立体育館や松下IMPに足繁く通うファンならばご存知の方も多いかと思う。
飲めない酒を無理やり飲まされてしまった(といってもビール2杯)が、
おかげで貴重なお話の数々を伺うことができた。
先生の話の概要はhttp://www.jbc.or.jp/rls/2009/0711.htmlでも確認できる。
日本の場合、スポーツが原因での死亡者数(≠死亡率)ではボクシングを上回るものには、
ハンググライダーなどのスカイスポーツ、海水浴、乗馬・競馬での落馬、登山、モータースポーツが
挙げられるが、これらによる不幸な死は100%事故である。
対してボクシングは楽しむことよりも「倒すこと」を目的にしているという意味で、
リング禍は事故とは見なせない側面があるとのことである。
また、脳や眼の障害ばかりが取り沙汰されるボクシングであるが、
腕、肩、腰に慢性的な障害を抱えたままグローブを吊るす若者も多いそうだ。
ボクシングというスポーツの性質上、すべての不幸、悲劇を喰い止めることは難しい。
だが、出来ることはあるのだ。
それにはまず、レフェリーの観察眼の向上、セコンドの生理学の知識の増進、
そして両者の判断力と決断力の一層の強化が求められる。
関西ボクシングの医事講習はまだ端緒についたばかりで(関東では定期開催)、
業界関係者たちの知識が絶対的に不足している部分が多いと先生はおっしゃった。
辰吉について伺おうと思ったが、それは叶わなかった。
代わりに今年の春に横死を遂げたボクサーの話を伺うことができた。
彼には何度も何度も直接会い、その都度引退を勧告していた。
しかし翻意させることはできず、かつ周囲も制止することはできなかった。
なかばさじを投げていたところへ某有名ボクサーとの対戦が決定。
だが試合を待たずして非業の水死。
リング上で殺されなかったことになぜか安堵を覚えているとのことだった。

プロボクサーは基本的にコミッションドクターが嫌いらしい。
医師と会うということはイコール引退勧告だからだそうだ。
看護師としてボクシングそしてボクサーを手助けできるでしょうか?
という問いに、然りの答えを得ることができた。
看護師ならばボクサーも医師に対するほどに警戒しないだろう、と。
また、知識の普及、ボクサーのフィジカルイグザミネーションとアセスメントは
揺るがせにできない事項で、その道を選ぶのは良いことだと有難いエールも頂けた。

ちなみにJBCは手当たり次第に実績のある医師に声をかけているようだが、
コミッションドクターの成り手は全く見つからないらしい。
JBCは文科省に働きかけ、厚労省そして医師会に協力を要請することを
真剣に検討してみてはどうだろうか。

BEST FIGHT BOXING

2009-10-13 21:49:05 | Boxing
Sミドル級8回戦
松本晋太郎 VS ルートサヤーム・ポーティティマ

松本 1ラウンドTKO勝利

順調にいってクレイジー・キムの後釜に座れるだろうか。
強いジャブとリラックスした返しの左を活かせるようになるには
地味な練習と地味なマッチメークが必要。
本格的に後楽園で人気を得るのは10戦ほどこなしてからか。

67.6kg契約8回戦

出田裕一 VS 二見広信

出田 判定勝利

二見はやや空間把握能力に欠けるかな。
ジャブで測るというより左を伸ばしながら距離を見るタイプだ。
左右ともガードの置き所が中途半端で、面白いようにフックをもらう。
だが優男で不器用なボクサーというのは好感が持てる。

出田はアゴを引いてるくせにジャブ一発できれいに顔面が跳ね上がる。
フックの連打では右のショートの打ち下ろしが良い。
左では右のガードが常に低く、本人は打ちやすさを意識しているのかもしれないが、
防御勘はあまり良くなく、あれではランカーにはKOされる。
脇の締めが甘いのだ。
トレーナーは脇の下に物を挟ませる練習を積ませるといいかもしれない。

OPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ

2009-10-13 00:06:22 | Boxing
王者 細野 悟 VS 挑戦者 榎 洋之

細野 判定勝利

考察 ~細野~

以前に川嶋勝重が「左フックは小指から当てるよう心掛けている」と語っていたが、
細野にも同じトレーナーについているのだろうか。
ナックルの返りを意識した打ち方を練習しているのだろう。
打ち合った時のディフェンスはブロッキングもボディワークも冴えるが、
11ラウンドだったか、足を使った時には結構打たせる。
打たせると言うより、もらってしまうという感じかな。
右眼窩底骨折とのことだが、ふさがった右目でよく戦った。
細野はclose rangeでの勘が良く、パンチの当て方も受け方も知っている。
日本人はアッパーを単発もしくは短いコンビネーションのフィニッシュに
持ってくる傾向があるが、細野はショートアッパーを連打でき、
また軽いコンビネーションにアッパーを交えることもできる。
粟生よりも遥かに強さと魅力を兼ね備えているが、
直接対決してみると大差判定負けしそうな雰囲気もある。
まあ、帝拳がそんなサバイバルマッチに粟生を送り出すとは考えられない。

それにしても大橋ジムも懲りないね。
八重樫のアゴ骨折でも止めないぐらいだからある意味予想通りと言えるが、
眼だけは本当に注意すべき(脳は専門家でないと判断が難しい)。

考察 ~榎~

序盤の公開採点はやや奇異に思えたが、ジャッジの目には躍動感の分だけ
細野にポイントを振りやすかったのではないかと思う。
ジャブこそが榎の生命線で、構えたグローブの位置から迷いなく伸びるその左は、
地味ではあるが貴重なダメージソースとなる。
反面、粟生、李との試合でも証明されたようにそれだけでは勝ちきれない。
5ラウンド以降はジャブを打たず、ワン・ツーを多用してきたが、
フォームが整ってきたというか大人しくなってしまったね。
ガードの高さも標準的で、カウンターもそれほど取らない。
打ち合いでは的確さか迫力かのどちらかに絞れず、後手に回ることも多かった。
心にも肉体にもダメージが沁みついたかな。
飯田は充実した表情と評していたが、管理人にはかつてE・モラレスが
D・ディアス戦で見せたサバサバした表情に見えた。


124ポンド契約8回戦
下田昭文 VS セーンヒラン・ルックバンヤイ

ナ~イスパンチ!

全てが理想的に運んでいれば西岡の先遣としてカバジェロに挑み、
壮絶KOに散るも、確かな収穫を帝拳にもたらす筈だった男・・・
日本王者時代より体が固くなったか?
次はディフェンスに確かな成長を見せることのできる試合を期待したい。

デンカオセーンVS大毅 海外記事

2009-10-12 02:47:46 | Translated Boxing News
Daiki Kameda Falls to Kaovichit In Second Failed Title Bid
by Jake Donovan

お馴染み北米メディアの反応です。アップするのを忘れていました。ちょっと王者に甘過ぎ、かつ、挑戦者に厳しすぎのような気もしますが、日本以外の国のジャーナリストが日本注目の試合をどのように見たのかを知るのは決して悪いことではないでしょう。ドノヴァン氏からは快く翻訳と掲載の許可をいただきました。my gratitude to Jake!原文はhttp://www.boxingscene.com/?m=show&opt=printable&id=22643を参照のこと。翻訳ミスは涼しい木星の文責に帰します。



「亀田大毅、2度目の世界挑戦もカオウィチットに屈す」

3度目の挑戦は魅力的な試合になるかもしれない。もし3度目が今後起こるのであればの話だが。

亀田大毅はタイのデンカオセーン・カオウィチットに0-2判定負けでフライ級での世界挑戦で0勝2敗となった。試合は日本の大阪、大阪市中央体育館で火曜日夜(現地時間)に開催された。

ジャッジのレヴィ・マルチネスとシルベストレ・アルバインザのスコアは115-113で現王者を支持、その一方でセルヒオ・カイーズは114-114のドローという驚くべきスコアを提出した。

試合は世界タイトルマッチとしては審美眼に耐え得るものでは決してなかった。というのも試合後半には現王者の過度のクリンチで膠着状態に陥ったからだ。カオウィチットは前半飛び出し、コンビネーションブローで亀田の攻撃を封じ込め、前半でポイントをリードした。

試合が進行するにつれ、亀田はボディ攻撃に活路を見出したが、その時点ですでにスコアに差をつけられ、挽回のためのラウンドも使い果たしつつあった。日本人挑戦者が近距離へ潜り込もうとするたびにベテランのカオウィチットはキャリアに裏打ちされた誤魔化しのテクニックでクリンチに持ち込み、後半の追い上げの攻撃を無効化した。

公式採点は実際以上に接戦を物語っているようにこれは事実ではない。敵地に訪れたチャンピオンはタイトルを手放してしまうような危険な状況に陥ることは見た限りではなかったからだ。

穴の多い王者として見られているが、カオウィチットは今後も戦い続ける。33歳の王者は母国タイを離れての4戦目にして、日出づる国へ出向いての3戦目で48勝1敗1分(20KO)と戦績を伸ばした。

王者の先の2回の日本のリングへの登場は坂田健史を相手にしてのものだった。2007年11月の初戦では論議を呼ぶ判定でドローとなり、13ヶ月後に再び日本の地を踏んだ王者は坂田を2ラウンドで片付けた。そこから現在まで2度の防衛に成功している。

カオウィチットの唯一の黒星は今からおよそ7年前の彼の唯一の渡米にまで遡る。Showtimeが放送したタイトルマッチで、11ラウンドでエリック・モレルに屈したの喫した一敗のみである。

亀田はこれで15勝2敗(11KO)となり、連勝は5でストップした。

この試合は約2年前の亀田の世界フライ級王者内藤大助に対する気品のかけらもない戦い以来の世界戦であった。当時18歳だった亀田は初の敗北を判定で喫するとともに汚い戦術を繰り返したかどで1年の謹慎を申し渡された。

彼は順調に復帰した。10か月足らずで5連勝を積み上げたが、結局、10月6日火曜日のマッチアップではそもそも噛み砕けないものを呑みこむという失態を演じてしまった。

勝利していれば、兄の興毅次第では同一階級で兄弟同時にメジャータイトルホルダーとして活躍するという、ボクシングの歴史においても数少ない兄弟になれるチャンスが生まれていたはずだ。

興毅は来月末に真の世界フライ級チャンピオンの称号を懸けて内藤に挑戦する。しかし当然のことだが、大毅がベルトを保持していないという状況では、日本は埼玉で行われるファン待望のタイトルマッチでは弟の守役という役どころを演じる必要があろう。

もし兄の興毅が勝者となれば、大毅も翌年復帰し、兄の勝者の輪に加わろうと頑張れるはずだ。大毅はまだまだ若いのだ。

だが、大毅の選ぶことのできる選択肢は僅かしかない。日本はWBCとWBAのみを世界タイトルと認定している。つまり、それ以外のベルトに挑戦するということは、敵地へ乗り込むことが要求されるのだ。プロとして4年、日本でだけ戦ってきた大毅にはまだその経験がない。

プロデビューから4年足らずでまだ20歳という年齢からすれば、キャリアはまだまだ続くと考えるのが普通だ。しかし、亀田大毅はフライ級のトップレベルに属していると証明するためのチャンスをすでに使い果たしたと考えることもまた無理からぬことなのである。

WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ

2009-10-10 19:41:00 | Boxing
王者 西岡利晃 VS 挑戦者 イバン・エルナンデス

西岡 3ラウンド終了TKO勝利

考察 ~西岡~

この男の精神力の強さには感服せざるを得ない。
リナレスの衝撃の失冠の直後によくぞ…と思わせてくれた。

初回、相手を呼び込んで右サイドに回りながらの左アッパーダブルで
踏み込んで打ち抜く左ではなく、呼びこんでの左カウンターでKOという
場面が想像できたが、結末は本人の言うとおり消化不良気味。
だからといってその過程の価値まで否定はできない。
右ガードを高く保ちながら時に相手のボディを左でえぐり、
顔面を突き上げ、あるいは撃ち落とした。
センセーショナルなシーンこそ訪れなかったものの、
相手の振り回す左右パンチをきわどく鼻先で回避する様は
秘めたる闘志と冷静さの両立を物語っていた。
ビッグマッチへと踏み出す準備は整った。
統一戦ならJBCも許容する構えを長谷川に見せた。
況や西岡を也、だ。
他団体王者との激突も興味深いが、まずはあの男からだ。
マルケス弟よ、首を洗って待っていろ!


考察 ~エルナンデス~

この男のどこら辺がストレートパンチャーなのか分からなかった。
浜さんも鋭すぎるときとズレているときの差がありすぎる。
loopingなパンチを振るわざるを得なかったのは事前のシミュレーションで
boxingをしては勝てないということが分かっていたからだろう。
良い右が一発「だけ」当たったが、それで王者を倒せる器ではなかった。
毎ラウンド終了後にグローブタッチを呼びかけていたが、応じてもらえたのは一度だけ。
かなりアドレナリンが出ていたのだろうが、アゴの骨折を1分間耐えたのはそれによるものか。
来年の今頃、再帰戦に下田とやってくれないかな?