BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC・WBO世界バンタム級タイトルマッチ

2011-02-21 22:07:55 | Boxing
王者 フェルナンド・モンティエル VS 挑戦者 ノニト・ドネア

ドネア 2ラウンドTKO勝利

考察 ~モンティエル~

トレーニングキャンプでのイメージ、減量、計量後の増量(134lb)のどこかに
ミスがあったとは感じられなかった。
なぜなら比較的静かでやや劣勢な立ち上がりは長谷川戦を彷彿させたから。
切るべきカードを切るタイミングを計っているように感じた観戦者は多かったはず。
最大の誤算はフェイントが早々に見切られたこと。
左右ともに微妙で微細なフェイントを入れていたが通用しなかった。
フェイントの要諦はリズムの構築とリズムの撹乱。
刹那の間隙を縫っての一発、当たりだしたら当たり続ける連打。
その始動を粉砕するカウンターを打ち込まれるのはもはや誤算ではなく予測の埒外の出来事。
ハプニングというよりもアクシデントと呼ぶ方が近いか。
よく「雷に打たれたような」と表現するが、
あの左フックを喰らった瞬間はまさに大脳に電気がビリビリッと来たことだろう。
管理人は数年前に一度だけてんかん発作の現場に居合わせたことがあるが、
不随意に四肢を痙攣させたモンティエルの様にそのことを思い出してしまった。
長谷川戦の鮮烈な戦勝そのままに今度は自身が倒されたわけだが、
モンティエルも長谷川も評価は下降しない。
挑戦者の力が王者を上回っていただけ。
”構図”や”結末”としては驚くに当たらない。
刮目すべきはその”衝撃”の度合いに対してのみ。


考察 ~ドネア~

Knockout of the Year決定の一発と2月の段階で断言しても異論はなかろう。
にらみ合いが続くと予想したが、結果はご覧の通りの大ハズレ。
初回から左がボディに2度突き刺さり、顔面にも一発入った。
心理的な駆け引きを拒否するかのようにスピードで煽り、スピードで打ち込んだ。
対戦者同士にしか見えない火花は確かに散っていたが、
実際のところはこのレベルの競技者でなければ相手の心情の忖度などできはしない。
微に入り細を穿った駆け引きだったからではなく、
その駆け引きを読み取ろうとするこちらの思考速度を遥かに上回る展開と
それにふさわしい唐突かつ計算されたフィニッシュ。
フェイントに反応しないというのは読み切っているからか、
(そもそもフェイントに気付かないというのもいたが)
己の眼によほどの自身があるかのいずれかだろうが、
ドネアの場合はその両方と見る。
テクニカルなカウンターパンチャーは虚実のあわいに対戦者を落とし込むが、
「フィリピンの閃光」はそれを超越する領域に到達したようだ。

因縁の名城は負け戦で勇名を馳せた真田幸村に扮して史実通りに玉砕したが、
その真田幸村つながりで評すれば、ドネアの閃光さながらのカウンターの左フックは
「其の速かなるは疾雷の耳を掩ふに及ばざるが如し」か。

武器で言えば日本刀、それも居合切り。

さらに日本のボクサー絡みで言うならば、亀田興毅、下田、西岡、長谷川の4名は
単にサウスポーだというだけでドネアに対しての勝ち目がないようにすら思える。

WBC/WBO世界バンタム級タイトルマッチ予想

2011-02-19 19:01:16 | Boxing
王者 フェルナンド・モンティエル VS 挑戦者 ノニト・ドネア

予想:マジョリティーディシジョンでドネア勝利

試合内容を予想する場合、通常は前戦の出来が大きな材料になる。
その点でドネアが一歩有利かとも思うが、
長谷川戦を一瞬でひっくり返したあの鮮烈さの記憶がいまだ新しいなか、
モンティエルを評価しないというわけにもいかない。
王者、挑戦者ともにノックアウト狙いを公言しているが、
管理人はそうはならないと考える。
その根拠は以下の通り。
ひとつに、両者ともにフェイントとカウンターの達人であるため、
見合うラウンドが長く続くものと思われる。
構図として同じだったカサマヨルとマルケスは恐ろしいほどのmix-upを見せたのは、
待ちのカウンターパンチャーに打ち合いのカウンターパンチャーが挑んだから。
モンティエル、ドネアともにこの試合では待ちの戦法はとらないと予想される。
畢竟、打ち合いになると予想されるが、両者の持つカウンター一発の威力は
マルケス、カサマヨルを(相対的に)超えており、
であるがゆえに距離の探り合いに対して慎重にならざるを得ない。
身長、リーチを利してプレッシャーで前に出た分だけ、
微妙なラウンドがドネアに与えられると考えて上の予想となる。
展開としては派手さはなく、観客には見えない火花が散らされ続けるのだろう。
ファンの評価は高くなく、関係者、専門家のみが高く評価する。
そんな試合になるような気がする。

WBC世界ミニマム級タイトルマッチ

2011-02-11 20:41:41 | Boxing
王者 オーレドン・シッサマーチャイ VS 挑戦者 井岡一翔

井岡 5ラウンドKO勝利

考察 ~オーレドン~

目を覚ましてホテルの窓から街を一瞥。
そこに広がるは舞い散る小雪と銀世界。
強豪タイ人にとって日本のリングは出向先のような感じだろうが、
これには胆を潰したのではなかろうか。

もともと腰高でせわしなく動きながら軽打と出入りを繰り返すタイプだったが、
この試合ではやけに鷹揚に構え、カウンター狙いに終始した。
しかし、強振に伴って体が流れるのは下半身の土台が崩れているためで
原因として考えられるのは減量失敗、トレーニング不足、モチベーションの低下あたりか。
序盤のうちからステップワークが少なかったということは
単に横着になっただけなのかもしれない。
ノックアウトの直前はその最たるもの。
強振しながらもパンチにも体にも引きの意識が無く、
伸びきってガラ空きになったボディにドスッ。
これもある意味で散り様の美学か。
戴冠したイーグル戦以降、実は観ていなかったが、
黒木戦のレポートを読んだ時にデンカオセーン的な予感を抱いたが、
それが半分当たっていた。


考察 ~井岡~

キレのある攻撃とポカを見せるディフェンス。
危うい特徴だが、かえってそれゆえに魅力的でもある。
陣営にガンボアの姿があり、トレーナーもキューバ人ということで
スピードと連打よりもクイックネスと的確な強打を目指しているようだ。
コンビネーションにアッパーを交えるのは威嚇的であり効果的でもあるが、
本職カウンターパンチャーもしくは生粋のインファイター相手には分が悪そうに思える。
サウスポーはオーソドックスの右アッパーが見えずらい時があるが、
自身の右ガードをルーズにするという副作用もある。
実際に王者の左フックをそこここで喰っていた。
そういうところもガンボア的かな。

4階級制覇を口にしたのは興毅への対抗心だね。
複数階級制覇よりもLフライでセグラ戦が観たいよ。
今年中にやれば叩き潰されそうな気がするが。

PS.

香川氏は24年前の井岡を思い起こし時の流れを実感しただろうが、
その後のドラえもんを見てキャラの声が思い出のなかのそれらと
まったく違うことにノスタルジックになったファンは多いのだろうか。
それとも少ないのだろうか。