BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界Sフライ級タイトルマッチ

2009-09-30 22:45:24 | Boxing
王者 名城信男 VS 挑戦者 ウーゴ・カサレス

名城 スプリットドローで防衛成功

考察 ~名城~

有効打は当てたものの自分も有効打をもらっては意味がない。
コンビネーションがまったくと言っていいほど出なかったのは何故だ?
まるで粟生とラリオスの第一戦を見ているようだったな。
一発をしっかり打っていく(≠当てていく)ボクシングは相手の手数と試合運び次第では
採点が相殺されるということは河野戦で身をもって学んでいたはずだ。
カサレスを数度ぐらつかせたものの、ヨッシャとばかりにグローブをsmackするのではなく
すかさずジャブで詰めて得意の右を当てていかないといけない。
終盤は肩をいからせて詰める場面が多く見られたが、ジャブは一貫して出そうとしなかった。
出せなかったのか、出さなかったのか、それは分からないが、
旺盛な手数はagressivenessとring generalshipに最も大きく貢献する。
ガムシャラに打つのではなく、有意義なジャブを打つことで、
間合い・タイミングの測定、牽制、誘引、被弾減、観客・ジャッジへのimpressionが可能になる。
詰めようというときに頭を下げ過ぎな場面もたびたび見られ、
軽快な連打、またはストレート主体の出入りで被弾を減らし、かつ、もっと楽にダメージを当てられたはずだ。
残念ながらまだまだキャリア不足。

指名試合を生き延びた点は評価できるが、安定政権を築けるかは疑問視される。
幸か不幸か、来年はアメリカでドネアと統一戦?

考察 ~カサレス~

本人は勝ったと思っただろうが、ごまかしのテクニックだけではunanimaousなポイントは取れない。
スイッチは上手いが、オーソドックスでは柔軟で角度のついた左を連打できるが、強打は打てず、
サウスポーではつんのめるようなワン・ツー主体になるという器用なのか不器用なのか、
よく分からないボクサーだ。
カルデロン戦では走る相手を追いかけまわすという展開を繰り広げただけに、
ひたすら前進、その時々の両足の角度でスイッチするタイプだと思い込んでいたが、
ベネズエラ人のようなボクシングに終始した。
近距離でのパンチと軌道と上体の動かし方がランダエタを彷彿させる。
あれだけ打たれて倒れないということは腰が軽そうで、実は結構受け流しているのか。
それとも王者のパンチが無いからか。
管理人採点ではドローだったが、12ラウンドを10-8にすれば負け。
挑戦者という立場にしてみれば敵地で分の悪いドローをもらったということで納得してくれたまえ。

PS.
予想大ハズレ… いや、ある意味的中に近いか?
納得のドローだけに近い将来のリマッチはなさそうだ。
名城はこれで次の次あたり坂田と?
さて、テレビ東京(テレビ大阪)なのかTBSなのか。
最近は日テレも含めて地上波放送局の実況が的外れすぎじゃないですか?
選手ではなく試合内容を評価する(=do the fight justice)。
スポーツ中継とはそうあるべきだと信じている。

WBA世界Sフライ級タイトルマッチ予想

2009-09-29 22:42:33 | Boxing
王者 名城信男 VS 挑戦者 ウーゴ・カサレス

予想:名城 スプリットで陥落

冨山戦、さらに王座決定戦の河野戦の出来がいま一つで、
さらにムニョス戦からの明確な成長の跡も感じられないのが
管理人的にマイナスな王者。
名城に欠けているものは明白だ。
柔軟な戦術選択、つまりadjustabilityだ。
河野戦ではがちゃがちゃに巻き込まれ、
終盤にアッパーで盛り返した末の辛勝、
冨山戦は序盤、中盤にダウンさせられるなど苦闘、
カスティーリョ戦とてカットで流血させるまでは
ペースを掌握していたとは言い難い内容だった。
様子見、スタミナ配分など本人としては説明できるだろうが、
見ている側に伝わらないようでは結局単なるキャリア不足。
王者になって劇的に変貌するタイプではなかっただけに、
2度目の防衛ロードも苦難が予想されてならない。

カサレスはメキシコのメル友曰く、かなりの自信とプレッシャーを感じているらしい。
最近のメキシコ勢はE・ソーサを除いて元気がなく、
マルケス兄の敗戦はしゃーないとしても、
ここでカサレスまでもが敗れるようならかつての威信は完全に地に堕ちると
メキシコの熱心なファンの間では囁かれているとか。
なにもカサレス本人はそこまで気負うことはないと思うが。
アウェーの経験が豊富なこの男が大阪の地で戦うとなると
ぜひ生観戦したかったが… 録画観戦で我慢するしかないのか(涙)。
下から上げてきたといっても体格面では互角。
クリチコ兄が散々強調していた"経験の差"が出る予感がする。

まあ、スプリット予想は遠回しに予想を回避しているものと思ってください。

WBA世界Sフライ級暫定王座決定戦

2009-09-28 22:20:07 | Boxing
ノニト・ドネア VS ラファエル・コンセプション

ドネア 判定勝利

考察 ~ドネア~

One the line is the vacant WBA interim superflyweight title.とはどういう意味だ?
名城は何が何でもカサレスをセンセーショナルにノックアウトし、
このcontentionに割って入らねばならない。

精神状態は忖度するしかないが、おそらく序盤は「関係ないね」、
中盤以降は「汚ねーぞこの野郎」という感じではなかったか。
この試合で課題云々を論ずるのはすこし無粋というものか。
足も動かせて、バンタム超の相手にも張り合えるところを
見せてもらっただけで個人的には充分だ。
今までは体格で互角以上を誇っていただけに、
自分よりも明らかに重い相手と戦うのは初めてではなかったか。
間合いの見切りとパンチのキレで勝負するタイプだけに、
パワーで追いまくられると得意のカウンターも効果は半減した。
だがこの理不尽な試合をキャンセルすることなく、怪我もなく生き延びたことで
さらなる成長が期待される。
そろそろアルセ、ミハレスら凋落中のメキシカンを喰い、
第二のパッキャオへの地位固めを始めねばなるまい。
ペニャロサ2世もいぶし銀だが、この男はさらに上を目指すべき。
間違ってもフィリピンの中広(生え際的な意味で)になってはならない。
中広は日本のドネアになってもいいけどね。

PS.
WOW FESの宣伝はもうさすがに食傷気味。
この試合をダイジェスト扱いするなどWOWOWも分かっていない。

考察 ~コンセプション~

4.5lbオーバーとは言語道断、曲事だ。
キャッチウェートの試合は許せても、
意図的な計量オーバー、しかもバンタム級超となると
ハンディキャップマッチに等しい。
今後同様の犯行(敢えてそう表現する)を犯した者には
グローブハンデ、USA全州サスペンド、ファイトマネー没収などの
措置が取られることが望ましい。

減量によって動きがキレるようになるのはありうることだ。
だがそれは体内循環を狂わす諸刃の剣でもある。
いかにそれを克服しコンディションを作り上げるかは、
リング内の戦術と同等かそれ以上の意味を持つ。
ボクサーのプロフェッショナリズムは50%が計量パスにあると言ってもいい。
そこを回避するのはファンへの裏切り、階級制度への冒涜である。

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ

2009-09-28 21:14:26 | Boxing
王者 ビタリ・クリチコ VS 挑戦者 クリス・アレオーラ

クリチコ 10ラウンドTKO勝利

考察 ~クリチコ~

メイウェザーを目の当たりにしたばかりの我々にとってはスロー過ぎたが、
スピードは常に相対的なファクターなのだ。
ビタリの迫力は言わずもがなだが、だらりと下げた両腕からのパンチが流れることもなく、
スムーズにスウェーもしくはバックステップに移行できるのは相手がよく見えることと
自身のボディメカニクス理解が深いからだ。
流れるように、リズミカルに動くことでスピードが乗り、スタミナも温存される。
左フックに一瞬狼狽する場面も見受けられたが、
5ラウンド以降は相手の左に自身の右肘を合わせてパンチをかちあげて防御した。
はじめの一歩で宮田がOPBFチャンピオンにやられた技術だった。
ブラッディクロスだったか?
ビタリはそこからパンチをねじ込んでは来なかったが。
ジョー小泉がアレオーラにポイントを振り始めた頃からビタリ優勢から勝勢に
移り変わったように見えたのは私だけだろうか?
デビッド・ヘイやワルーエフなど放っておけ!
やはり究極の兄弟対決しか残されていない。

考察 ~アレオーラ~

ジャブとフットワーク、カウンターを最高レベルに仕上げても
イブラギモフがウラディミールに塩漬けされたように、勝ち目はあるまい。
ならば手持ちの材料で戦うしかないが、上体を振るのは得策とは思えない。
この寸胴を振る方がよほどエネルギーを消費しそうだ。
ならばピーカブーでダックした状態からローリングするればいいのかというとそれも違う。
ただでさえ届かない的がさらに遠くなるからだ。
前に出ながらも実はリング内を周回しているだけという展開には自身も陣営も
フラストレーションしか溜まらなかっただろう。
巨体を利す、または巨体に資するスタイルの持ち主を崩すには、
それが苦手とするスタイル、それを上回るスタイルを採用するしかない。
もちろん可不可は別にしての話である。
だがヘビー級で渇望されるのはスタイルではなくタレントなのだ。
残酷なようだが、この男は時代が求めるタレントたりえなかった。

蛇足。
高柳氏の言う「クリチコ城の堀の高さ深さ」というのは広さ深さの誤りでは?

Sライト級8回戦

2009-09-28 20:23:58 | Boxing
エフレン・イノホサ VS ジョン・モリナ

モリナ 1ラウンドKO勝利


考察 ~モリナ~

140lbだからライト級ではなくSライト級と表記させていただく。
私が解剖生理学を学んでいる神経内科部長によると、
レバーブローによるKOはその効果に諸説あって、
単に肝臓だからというわけだけではないらしい。
このあたりは機会があれば詳述したいと思う。
対して右ボディでのダウンは比較的単純で、
肋骨へのダメージ、もしくはデルマトームによる。
どちらを打たれてKOされても、地獄の苦しみである。

考察 ~イノホサ~

まるでセサール・バサンのようだ。
野球などで「野球しかできませんので」という感じで
延々とプレーを続ける小宮山(お疲れ様)、メジャーならフリオ・フランコなど、
「いつまでプレーするんだ?」というのがちらほらいる。
ボクシングにおいてこういう選手は多くいるが、実は彼らは貴重な存在で、
露骨なカマセ犬では積めない経験の場を新鋭に提供する。

NUMBER ONE - NUMERO UNO

2009-09-21 23:13:39 | Boxing
フロイド・メイウェザーJr VS ファン・マヌエル・マルケス

メイウェザー 判定勝利

考察 ~メイウェザー~

実況・解説はしきりにスピードを強調していたが、
これはクルマでいえば加速・最高速性能のことだろう。
管理人はむしろメイの減速・制動性能に目を奪われた。
スピードを持て余す選手が多い中(ベルト、ジュダーなど)、
この男は完全に自らのスピードをコントロールしている。
スウェー、ダック、ローリング、バックステップのいずれもが超スピードだが、
だからといって闇雲に避けるわけではなく、止まりたいところできっちり止まれる。
ギアがローとトップしかないクルマを自在に運転するのは至難の業だが、
この男のボクシングはそれを実現しているかのようだ。
L字ガードは右グローブと左肩で顔面を、左腕でボディをカバーするが、
スウェーの速さとハンドスピードが常に相手にカウンターを警戒させる。
あそこからモンティエルも真っ青の軌道で、ドネア以上の左フック打たれたら、
マルケスならずとも手の出しようがない。
連打でフィニッシュできるはずなのにそれをしないのは
ディフェンスマインドゆえか、ポリシーゆえか。
アメリカでの商品価値は実のところどうなのだ?
2ポンド超過にこの試合運びではリング外の評価は上がらないだろう。
モズリーをはじめ、ベルト、コット、クロッティ、
さらに理想をいえばP・ウィリアムスとの対戦が期待される。

考察 ~マルケス~

手も足も出なかったが、それをもってこの男の評価を下げてはならない。
"I have a heart of a lion."という言葉通り、アステカの戦士の意地と誇りは見せた。
2ラウンドにぶちこんだワン・ツーが結果的に唯一の見せ場になったが、
試合にスリルとテンションを与えたのは紛れもなくマルケスだ。
左グローブを細かに動かし、常にフェイントをかけていたが、
それが通用しない初めての相手との対戦となった。
2ラウンドにもらった左フックはactualなフェイントになったとでも言おうか。
potentialなフェイントは相手の視野にパンチの軌道を植え付けるが
actualなフェイントは気付いた時にはパンチをもらっている。
日本語で表現しろと叱られそうだが、actualとpotentialにハマる語彙が見当たらない。
要するに打たずに見せるフェイントもあれば、
打たれたことで初めて気付くフェイントもあるということ。
フェイントとカウンターの当代一流の名手マルケスにして敗れたわけだが、
相手があれじゃあ仕方ない。

メイウェザー VS マルケス 144lb契約 予想

2009-09-19 18:54:16 | Boxing
メイウェザーの判定勝利を予想する。
もうひとひねりある予想をしたかったが、これが限界。

契約体重に関して一悶着も二悶着もあったようだが、
メイウェザーの146lbには正直呆れてしまった。
そこまでして勝ちたいのか、と思ったが、そうなのだ。
メイウェザーはそこまで勝ちにこだわる男なのだ。
勝利と同時に自身の商品価値にもこだわる男ゆえ、
消極的なタッチボクシングは許されない。
かといって自分から仕掛けるのもリスクはある。
たとえ下の階級から無理やり上がってくるマルケス相手でもだ。
いや、マルケス相手ゆえに・・・か。
いずれにせよ故意の計量失敗はマルケスの怒りに火を点けるための策略だろう。
リッキー・ハットン戦の洗練されたバージョンを期していると見る。

マルケスは攻勢でポイントを拾い集めていくしかないが、
メイウェザーのディフェンスとパンチスピード、カウンターを
あと一歩で崩せず、で終わるだろう。
契約体重については管理人はかなり楽観視していた。
メイウェザーはパワーを活かすタイプではなく、
むしろ今でもSライトが適正だと考えていたからだ。
だが、罰金承知のリミットオーバーで来たとなると、
マルケスにとっては相当の試練と苦難が予想されてならない。
メイウェザー自身がそこがベストウェイトと考えているなら、
事実そこがベストウェイトなのだろう。
カウンターのスキルは互角でも、コンディショニングの面で劣ると判断せざるを得ない。
マルケスが141lb前後でパスする(実際は142)というのは想定の範囲内。
リバウンドして143~144lbだろう。
悪いウェイトではないが、最適からは程遠い。
まさかマルケスがパッキャオさながらに躍動できるとは考えられない。
良くてマジョリティディシジョン負け。
悪ければ僅差~中差のユナニマス負けだろう。

予想はしてみたものの、待ち望むのは予想以上の試合、予想を超越する試合だ。
Mexican Legend が Mexican Miracleたりえるか、楽しみに待ちたい。

WBC世界フライ級暫定タイトルマッチ

2009-09-15 22:17:17 | Boxing
王者 ポンサクレック・ウォンジョンカム VS 挑戦者 升田貴久

ポンサクレック TKO勝利

考察 ~ポンサクレック~

初回に升田の左のフェイントから右のボディへのスイングを敢えて受けてみせたが、
あまりのパンチの無さに拍子抜けしたのではないか。
慣れたリング、気候、時間帯、声援とあらゆる要素が味方したが、
それを抜きに考えても無慈悲なアッパーのコンビネーション、
右フックと槍さながらの左ストレートボディは健在だった。
ポンサクレックで最も印象的なのは静と動の間。
コンビネーションは練習通りのものしか試合で出せないが、
それを当てる下準備は間合い、踏み込み、フェイントと色々とある。
ポンサクレックは目のフェイントと動体視力に優れ、
懐に飛び込む、あるいは呼び込めば面白いように手数が出せる。
今回の相手の不調を差し引いても、世界トップクラスの力量はあると見て間違いなかろう。

考察 ~升田~

試合背景は当ブログのリンクの一つ、バンコク愚連隊氏のブログに詳しい。
そちらの当該エントリのコメント欄でも私見を述べさせて頂いたので
敢えて繰り返さないが、試合を観た今思うことは、なぜ升田陣営は
2ラウンドでタオルをしなかったのかということだ。
ボクサーの調子の良し悪しを見分けるポイントはパンチの振り抜きまたは引きの速さ、
腰と肩のリズム、パンチへの反応、表情、肌の色つやなど無数にあり、
またボクサーごとのタイプ、対戦相手との相性などもあって一定の基準はないが、
この日の升田の腰の軽さは尋常ではなかった。
2ラウンドのクリンチで前に出ながら引きずられるような足運び、
繰り返すスリップダウン、戻りのバネに欠けるダッキング、
さらに4ラウンド終了時に帰るコーナーを一瞬間違えたが、
なぜこの状態で戦わせ続けるのか。
世界のチャンスまであと一歩まで迫り、それを逃した。
そこに舞い込んできた暫定への誘い。
喰らいつきたくなるのは理解できるが、ボクシングは命懸けの競技なのだ。
「死んでも戦う」などというのは力石で終わりにしてもらいたい。

WBA世界Sウェルター級暫定王座決定戦

2009-09-15 21:34:44 | Boxing
石田順裕 VS マルコ・アベンダーニョ

石田 判定勝利

考察 ~石田~

徳山昌守的なエッセンスにあふれるボクシングだ。
消極的な戦法を積極的に採用したというところか。
ジャブ、ジャブ、ジャブ、バックステップ、ダッキングで
構成するボクシングは一見して逃げを思わせるがさにあらず。
相手の右ストの追撃をかわすバックステップ時、
上体をのけぞらせず、左足を引くムーブを織り交ぜていたが、
あれはカウンターの左フックのフェイントとして機能した(打たなかったが)。
追い足に長けていない相手への威嚇・牽制として有効で、
金沢ジムで徳山を鍛えたトレーナーの手腕によるものだろうか。
テレビ実況によるとスパーを見た徳山が「パンチが切れている」と評したそうだが、
パンチ力はSウェルターとしては並み以下だろう。
徳山の言うパンチの切れとは、自身の哲学と同じく、タイミングと角度の意。
(だと解釈しているが…。今度本人に尋ねてみるか)
終始動き続けながらも膝、肩、腰を一定の高さに保ちながら放つジャブは
一度リズムにハマりさえすれば攻略不可能の武器と化す。
暫定世界王座?
サントス、マルチネス、ジンジルク、フォアマン、マヨルガ、マルティロジャン・・・
こいつらとの対戦の可能性が広がったことは歓迎すべきだ。

考察 ~アベンダーニョ~

前戦は観ていないが、背中から見るとマヨルガを連想させる。
ただ、凶暴さ、破天荒さが足りない。
ベネズエラ人はメキシカンのようなかっちりとしたスタイルや
パナマ人のような体形・身体能力依存のボクシングではなく、
奔放なボクシングをするイメージがある。
石田のアウトボクシングを崩すカギはヘッドスリップとボディへのフック、アッパー。
定石ではるが、定石を採用せずして相手の牙城を崩すにはアベンダーニョは
パワーもパンチもスピードも欠けている。
背丈・リーチともに劣る場合、潜り込むことが大前提。
ファイタータイプならばなおさらだ。
警戒すべきはショートアッパーと打ち下ろしだが、
そのどちらも来ないということは序盤で見抜けたはず。
作戦実行能力は決断力と判断力に支えられるが、もう一つ、勇気というファクターもある。
はじめの一歩でお馴染みのコンセプトだ。
ラテン、カリビアンという気質が磊落さを生み出す一方で、
勝負を仕掛けるタイミングをそのメンタルゆえに見逃してしまうのか。

日本スーパーフライ級タイトルマッチ

2009-09-15 20:19:27 | Boxing
王者 中広大吾 VS 挑戦者 本田秀伸

中広 判定勝利

考察 ~中広~

マルケス兄がカサマヨルを攻略できた要因の一つは
左足を相手の前足(右足)の外側シューズ幅一つ分に
踏み込めたことだが、中広にはそれができなかった。
オーソドックスのサウスポー対策の定石として
ジャブ、フェイント、捨てパンチ、フットワークなどがあるが、
この日の中広にはどれにも明確なテーマを見出せなかった。
粟生にも当てはまることだが、相手を動かすのと相手に動かれるのは似て非なるものだ。
右のカウンターはフックもストレートも軸がぶれず、最短距離を走るが、
どうも「カウンターのカウンターをとってやる」と考えているように思える。
パンチを打たせるのとパンチを出されるのも似て非なることであるのは言うまでもない。
この男に必要なのはレベルアップではなく、試合中のadjustabilityだ。

考察 ~本田~

これは僅差で本田の勝ちじゃないのか?
名古屋判定ならぬ広島判定… とまでは言わないが、
ある程度の情状が中広側にあったことは否めないだろう。
対サーシャのディフェンス一辺倒から確実な変化を見せたが、
ファイトマインドは従来通りだった。
胸鎖乳突筋の張りはスリッピングの意識を常に持っていることを物語る。
この状態では逆に首筋を固くしてしまう可能性もあったが、
右リードから左、そして右の返しを上下に打ち分ける様は
左右の体側と椎骨の安定を証明していた。
年齢を重ねることでファイター色を濃くする選手は結構いる(ペニャロサなど)。
そうする方が結果的に選手寿命が延びるわけだ。
ただし攻撃的なスタイルへの変貌により没落してしまったミハレスを忘れてはなるまい。
日本が誇るフライ、Sフライ戦線でまだまだ若手の壁として立ちはだかってほしい。