BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ

2010-11-27 21:57:55 | Boxing
王者 デビッド・ヘイ VS 挑戦者 オードリー・ハリソン

ヘイ 3ラウンドTKO勝利

考察 ~ヘイ~

どこのK-1の試合かと思ったが、ヘビー級タイトルマッチだった。
サウスポーどうこうとかは相手が木偶の坊では意味が無い。
スピードを称賛されているけど、ビタリには綺麗にアッパーのカウンター喰いそうだし、
ウラディミールのジャブとクリンチを攻略できるとも思わない。
それにしてもどの口であれだけのbig mouthをたたけるのか。

この試合でただ一つ分かったこと、それはヘイはどちらのクリチコと戦っても
大差判定負けするということ。


考察 ~ハリソン~

ヘイ陣営に子どもを人質に取られていたなどという笑えない冗談が
ネットにあったが、そう思われても無理はない無気力ぶり。
英国はテニス、ゴルフ、サッカー、ラグビー、競馬が盛んだが、
テニスをするには鈍重過ぎ、ゴルフをするにはインテリジェンスが足りず、
ラグビーをやるにはスピードが足りず、騎手になるには体がでかすぎる。
アマボクシングの世界で生きていけば良かったのかな。

IBF世界Sミドル級タイトルマッチ

2010-11-27 21:00:04 | Boxing
王者 ルシアン・ビュテ VS 挑戦者 ジェシー・ブリンクリー

ビュテ 9ラウンドTKO勝利

考察 ~ビュテ~

ディフェンス第一のプランは一つには過去の教訓から来るもの。
もう一つには自身のスタイルに最適なstrategyであるということ。
右ガードでもボディワークでも相手のパンチを外して打てば
全部カウンターになるんだ。
特筆すべきはカウンターの反動で上体を動かし、さらなるカウンターを狙う姿勢。
パンチ力全盛の時代からスピードと技術にシフトした現代ボクシングの中でも
技術面では最高峰に近いかもしれない。
8ラウンドのダウンを奪ったアッパーははじめの一歩の真田の飛燕に似てたね。
同じカナダをホームとするパスカルよりも人気・実力の両方で頭一つ上回るかな。
アンドレ・ウォードとの対戦なった暁には超ハイレベルなフェイント合戦が期待できそうだ。


考察 ~ブリンクリー~

スキンヘッドの白人と言えば面構えに凄味があるのが相場だが、
この選手は瞳がつぶらでやや奥目なのでどこか愛嬌を感じさせる。
しかして、そのボクシングはワン・ツー、ワン・ワン・ツーを基調にした
素直なボクシングで、それは本人の性格によるものであろう。
ビュテのような海千山千の王者の距離でフェイントを
吟味してしまっては手数が出るはずもない。
ただし、ランカーとして見た場合、決定的な悪いところも見当たらず
特に6ラウンド、レバーブローをブロックした右でそのままアッパーを突き上げ、
左フックにつなげる、8ラウンドには左アッパーに合わせた右ストのカウンターで
一瞬ではあったがビュテを嫌がらせたり、光る場面は随所に見られた。

現在のSミドル級はスーパーシックスの混乱と停滞はあるものの、
やはりファンの関心は王者、元王者連中同士の星のつぶし合い。
ビュテ一人でランカーの世界戦線を引き受けている現状は
世界ランカーにとってチャンスでもありノーチャンスでもある。
それにしてもアホなレフェリングのおかげで余計なダメージを蒙ったね。

WBC世界フェザー級王座決定戦

2010-11-26 23:50:51 | Boxing
長谷川穂積 VS ファン・カルロス・ブルゴス

長谷川 判定勝利

考察 ~長谷川~

このような打ち合いほど心臓に悪いものはない。
痛烈なKO負けの記憶が新しい再起戦ならなおさらだ。
7ラウンドにアッパーでアゴを跳ね上げられた瞬間に天に祈りを捧げたファンは多いと思う。
カウンターで切って落とすというプランが頭にあったが
肉体がイメージにコンマ数秒追いつかなかったというもどかしさ、
自らの手応えと相手の被ダメージの違い、
体格差からくるプレッシャーなどをすべて強引にねじふせた印象を持つが、
その姿に感動したファン7割、違和感を覚えたファン3割ではなかったか。
長谷川は本来タイミングを操るタイプのボクサーで
徳山のような距離感で戦うボクサーではない。
だからこそカウンターで効かせて連打でフィニッシュの予感を漂わせながら
それができないことに違和感を覚えた。
スタイルチェンジを試みているのにスタイルがチェンジできていないことに。
もっとも、この試合に入り込みすぎていたのが主因で、
母の死(考えただけで涙が出てくる諸賢のほとんどは男性と思う)を
乗り越えんとする様が感動を呼ぶのだけれども。

ここからは戯言なのであまり気にしないで頂きたいが……
ワン・ツーからの返しのスリー(右フック)がバンタム時代よりも
0.05~0.1秒遅く見えたのは気のせいだろうか?
体を見る限り上半身を増量したようには感じられず、
それならば下半身あるいは体全体ということになるが、
コンディショニングとは別の次元・領域で長谷川のボクシングが乱れていた。
メンタルの問題であってフィジカルの問題ではないと思いたい。
右目が切れてから自分のボクシングができなくなったとコメントしていたが、
逆ではなかろうか?
柔軟なボディワークと最適な距離を保つためのフットワークが見られたのだが。
それとも長谷川自身の意識と観る側の期待の乖離のせいか。
インタビューでも呼吸が荒く、accidental headbuttとはいえ
顔面は無残な状態だった。
12ラウンド言ったのはいつ以来かな。
スタミナはバンタム時よりも確実に伸びているはずだが、
今日の試合は確実にそれを上回るダメージをもたらした。
それにしても考えざるを得ない。
長谷川のオカンの願いは長谷川の激闘の末の勝利だったのだろうか。
それとも長谷川の身に大過なく試合が終わることだったのだろうか。


考察 ~ブルゴス~

長谷川のかつての対戦相手で言うならばA・バルデスを思わせ、
実際にアップライトに構え、ジャブの勤勉さでは劣るが、
ループするような左のアッパーは日本のファンの心胆を寒からしめた。
まあ、2ラウンドで終わった試合と判定まで行った試合の相手を比べるのも不自然な話。

メキシカンの例にもれず、打たせるが芯には響かせず、
連打でも単発でも左を強く打つ意識も技術もある。
ただ中盤以降の右眼の腫れに対応した戦いを見せられなかったのはキャリア不足。
即座にスイッチしたならば長谷川含め見るもの全ての度肝を抜いたに違いないが、
それを望むのはさすがに酷というもの。
おそらく長谷川の防衛戦を仔細に分析し、相手のカウンターを警戒しつつ、
距離の違いを利してストレート系で押すプランだったと推測するが
元王者の強引ともいえる仕掛けに対策がなくナチュラルに戦うしかなかった。
しかし22歳で25戦しているとはいえ、世界レベルのキャリアは皆無で、
打ち下ろしをイメージしていたところにいきなり相手のステップを殺すための
横なぎのパンチを打てと言われて実行できるわけがない。
この黒星は恥でもなんでもなく、実際に世界王者級にも自らのパンチが
当たることを自信として得たはず。
また異国での世界戦は特に日本人において飛躍が転落のどちらかの契機になることが多いが、
メキシカンにとっては圧倒的に前者であるように思われるし、実際に歴史もそれを証明する。
将来的にはU・ソトみたいなタイプを目指すとよいかもしれない。

WBC世界Sフェザー級タイトルマッチ

2010-11-26 22:28:12 | Boxing
王者 ビタリ・タイベルト VS 挑戦者 粟生隆寛

粟生 判定勝利

考察 ~タイベルト~

アマキャリアが豊富故に引き出しの数が多いのではなく
むしろアマキャリアの豊富さゆえに応用力を欠いたボクサーの典型か。
サウスポーを苦手とするわけではないが、サウスポー対策が全くハマらず、
手持ちの札を交換せずに勝負し続けるポーカーを見るような思いだった。
フック、特に左フックを主武器に対したが、ジャブにかぶせる意識もなく、
フットワークを駆使した効果的な位置取りからの攻撃もなく、
さりとて一撃に特化しているわけでもない。
要所でストレートの連打で挑戦者の顔面をきれいに捉えていたが、
下半身が前に出ながらのパンチは下がる相手には届いても当たった効果は薄い。
たとえばM・ケスラーのような4連打は踏み込みからワンの反動がフォーまで持続するが、
この王者のパンチにはそのような優れたボディメカニクスの裏付けはなかった。
その証拠に唯一ヒットしていた左フックは明らかに打ち終わりに体が流れ、
当たるか当てられるかの線上を行きつ戻りつ時間を過ごしていた。
実況・解説が強調するほどダメージがあったとは思わないが、
再三のスリップは元々のバランス感覚の悪さにも起因していたと考えられる。

なぜこれで世界王者なのかと次から次へ疑問が湧いたが、
そうした様々な疑問はこの日の挑戦者が初防衛戦に我々に抱かせた印象と同じで、
この選手もこれをキャリアの転機とするのかもしれない。


考察 ~粟生~

以前ら外野から見えないテクニック比べが大好きなんだと感じていたが、
どうもそういうところが影をひそめたというか、本質的には変わっていないが、
表面的には着実に変化しているようだ。
ダウンを奪った瞬間に例の滑稽なステップを踏むかと思ったが出なかったわけだし。

持ち味のお見合いが鳴りをひそめ、積極的に手数を出す姿勢は意識改革を物語る。
長谷川のオカンより西岡のWOWFESの方に刺激を与えられたと思いたいが、
テレビ的にはそういう方向に持っていきたいのは仕方ない。
それにしても当日体重が7kg増?
中間距離でのフェイントの掛け合いに時間を割かず、リードからの積極的な飛び込みが活きたのは
このリバウンドの成果か。
右ボディで王者の左回りを制したのはプラン通りで
左の上下の打ち分けはサウスポーファイターのセオリー通りの
右に体を預けながらの左、その反動を利用した2発目、
さらに左ストレートは右足を踏み込みと蹴りが従来より5割増しに見て取れ、
実際に威力も乗っていた。
ダウンを奪ったパンチは相手のパンチよりも短い距離を走るカウンターの見本のようだった。
そこからラリオス初戦のような展開も危惧したが、教訓を得ていたようだ。
もともとSフェザーの水に合っていたのかもしれない。
ただし、これまでの課題も課題として残った。
もちろんディフェンス。
本人としては避けているし、もらっても効いていないだろうが、
自分よりもカウンターが冴える、あるいは出入りが上手い相手にはやはり後手に回ると思われる。
またパワー、ディフェンスは現時点では内山の方が一枚上手と言わざるを得ない。
統一戦は考えられないだけに鬼門の指名挑戦者をクリアすることが求められる。

ダブル世界タイトルマッチ予想

2010-11-25 21:49:02 | Boxing
WBC世界フェザー級王座決定戦
長谷川穂積 VS ファン・カルロス・ブルゴス

予想:長谷川 判定勝ち

長谷川のアウトボクシングが鍵になる。
打ち合いもできるだろうが、KO負けの記憶が生々しく残る
今のままでは分が悪い。
初のフェザーであることも不安要素。
通常階級を上げればコンディショニングにはプラスになるが、
いきなり2階級上げて成功したのはパッキャオ、ホプキンスなど例が少ない。
ただ、バンタムで10度防衛の実績と日本人は往々にして過度の減量を
美徳とする誤った観念に取りつかれていることを考えれば、
フェザーがベストと公言する本人の言葉が一定の説得力を帯びる。
一ファンとしてそこを信じようと思う。

WBC世界Sフェザー級タイトルマッチ
王者 ビタリ・タイベルト VS 挑戦者 粟生隆寛

予想:タイベルト 判定勝ち

王者の情報をあまり持っていないのだが、
粟生はアマキャリアに優る相手に易々とペースを握らせる悪癖があり、
そこが修正されたという話は聞かない。
帝拳ゆえにチャンスを与えられてはいるものの、
他のジムならばこうは上手くいくまい。
粟生に必要なのは一皮むけること。
そしてそれを実現する最も手っ取り早い方法は先輩の西岡が教えてくれた。
すなわち、名王者に負けながらも食らいつくこと、敵地で華々しく名を上げることなどなど。
早い話が今の粟生では時期尚早ということ。

今時間が無いので取り急ぎこんな予想で。
それにしてもデビッド・ヘイ戦は様々な意味でひどかったな。

NABA・NABO北米ウェルター級タイトルマッチ

2010-11-15 20:39:11 | Boxing
王者 マイク・ジョーンズ VS 挑戦者 ヘスス・ソト・カラス

ジョーンズ 判定勝利

考察 ~ジョーンズ~

2ラウンドの猛ラッシュは下半身と上半身がバラバラで、
黒人特有のathleticismに支えられてのもので、
あれだけ息を止めて連打すればスタミナの消費は激しいが、
その後仕留め切れなかったことにあからさまに落胆した点でも
精神的なスタミナのなさを露呈した。
ここでもまた黒人選手のフィジカルの素晴らしさとメンタルの弱さという
管理人の固定観念をさらに強固にすることになった。
逆三角形に近い上半身に黒人で短髪の強面。
上腕や肩の筋肉は陸上選手を思わせる。
足りないのはキラー・インスティンクト。
天は二物を与えず、ってやつですな。


考察 ~カラス~

パンチにはスピードもパワーも乗っていないが、
脇を締めた状態からしなりの効いた左フック、アッパーを繰り出す。
その前段階としてジャブ的な右ストレート、またスイッチしてからの
左アッパーからスイッチバックしての左レバーブローなど、
メキシカン特有のムーブを随所に織り交ぜている。
また、両脇を締め両グローブをアゴにつけて離さないスタイルは
メキシコの中重量級のボクシング文法に沿ったもので、
たとえばA・マルガリートやL・アンドラーデなどパンチを受けとめる力を
持った者に使い手が多いスタイルだ。
タイソンは瞬発力を使い、また瞬発力を産むためにウィービングをしたが、
この選手は基本はダックあるいはスウェーのみで、
パンチをもらうことに慣れていることを物語る。
同時にタイソンスタイルがいかに馴染まないかも物語る。
人間の膝や腰は前後には動いても左右には動かないのだ。
ボディスナッチャーとして一段上のレベルに上がれれば、
世界挑戦はできるかもしれない。
奪取については現時点では懐疑的にならざるを得ない。

WBC世界Sウェルター級王座決定戦

2010-11-14 18:13:30 | Boxing
マニー・パッキャオ VS アントニオ・マルガリート

パッキャオ 判定勝利で6階級制覇

考察 ~パッキャオ~

1~2ラウンドと様子見に費やしたが、それは相手の出方を伺うというよりも
自身の調子、仕上がりを確かめるためのように思えた。
コット戦、ハットン戦を初回のみで相手を見切ることに成功したのは
その時は自身の準備が整っていたからで、今回は報道にあったように
満足のいくキャンプは送れていなかったようだ。
また、マルケス戦で攻められた左ボディ、コット、クロッティにガードを破られた
アッパーカットの被弾など、課題は課題として浮き彫りになった形。
それでもスピード、パワー、スタミナ、当て勘、メンタル、作戦遂行能力の
いずれにおいても傑出したパフォーマンスを見せるのはconcentrationの為せる業。

右リードのフックそのものにガードを縫っていくキレがあり、
フォローの左はガードの上からでも響くだけの重みがあるが、
それらはパンチの初動を読ませない軌道とハンドスピードにある。
パンチの物理的な威力そのものは限界に来ているかもしれない。
しかしそのインパクト(=効果)は生きている。

モズリーは身長とリーチがあるのでマルガリートの正面から
先にパンチを打ち込めたが、パッキャオはどうやっても体格的なハンデがあるので
打ち始めのフェイント、ジャブ、踏み込みが必要で、
同時に打ち終わりのサイドないしはバックステップが欠かせなかった。
それが逆に相手に対しての一種の目くらましになり、
もともとのスピードも加えて目の前から消えたように感じるのだろう。
また体幹のわずかな体重移動とひねりで強いパンチが打てるので、
押し込まれても反撃が可能、4ラウンドに効かせたレバーブローがその好例である。

中盤以降はKOは時間の問題と感じられたが、レフェリーの判断、
相手の驚異的なタフネスと精神力、観客の温情、そして自身の躊躇から
KO勝利とはならなかった。
以前にバレラとのリマッチでもローチにKO指令を出されて
「彼はジェントルマンだから」と拒否したことがあったが、
この試合でも10ラウンド終わり際のカウンターの右フックに
耐えたマルガリートにその後は敬意を表したものと考える。
あれで倒れなければ一撃KOは不可能だ。
インタビューで"Boxing is not for, you know, killing each other."
「ボクシングは殺し合いじゃないんだからさ」と答えるのもむべなるかな。


考察 ~マルガリート~

初回のガードの位置、間合い、前進、プレッシャー、手数と
全てが固く控え目で遠かったことは、緊張感と作戦の両方から来るもの。
序盤の攻勢を許したのもある程度はゲームプランにしたがったものだったが、
4、5回に効かされた代償は大きく、また右目を潰されたのは痛手となった。
6ラウンドの左ボディ2発と8ラウンドのロープ際での攻勢に
かすかな期待を抱かせたものの、得意の相撃ちが満足に炸裂しなかった。
手探りのジャブを打っている時からスピード差は歴然で、
自分が打って相手を下がらせるよりも、自分から打たせて相手に
バックステップさせたところを追撃するのは良い作戦だと感じた。
コット戦ではジャブに対して相撃ちの右ボディを打つことで距離を詰めたので、
それを再現するかなと思ったからだ。
ただ、コットはサイドにせわしなく動きながら、つまり腰をあまり入れずに打ってきたのに対し、
パッキャオは正面から隙間を縫って打ってきた。
どちらに威力が乗る(≠威力がある)かは言わずもがな。
また先に打たせるという選択肢は正解だと言いたいが、
パッキャオのジャブが予想以上に少なく、強いリードをもらい続けることで
自身の距離が作れなかった。

プレッシャーをかけてロープを背負わせ、パッキャオが棒立ちになったところを
連打で弱らせ仕留めるプランを練り上げていたと思われるが、
あまりの的の速さに回を重ねるごとに打つ手がなくなり、
一瞬スイッチしてみせたが、即座に右をぶちこまれた。
9ラウンド以降は完全に手詰まりになり、遠近感もおかしく、
意識も朦朧とした状態でアゴをガードするしかなく、
力のないワン・ツーしか打てなかった。
左のフック、アッパーでは右を先にねじ込まれるだろうし、
ピーカブーで潜り込んでも右フックもしくは左アッパー被弾の危険性があった。
10ラウンドにはジャブからの右に決定的なカウンターの右フックを合わされたが、
なぜあれで立っていられたのだろうか?
またその後に自陣コーナーに帰る足取りの重たさにレフェリー、陣営は何を思ったのだろうか?
観衆は前座で打ち合いがなくなると容赦なくブーイングを飛ばしていたが、
12ラウンドにブーイングが発生しなかったのはメキシカンが多かったからではあるまい。

早い段階でボディを効かされたところは共通するが、
モズリー戦よりもダメージは甚大と見る。
なぜなら2ラウンド多く戦っているから(最終ラウンドは除外)。
またその試合では視界はふさがっていなかったが、
この試合ではほぼ右眼を潰されていたから。
またモズリー戦前はバンデージのスキャンダルを暴かれ動揺していたはずだし、
試合前からモチベーションが上がらず減量に苦しんだという話もあった。
今回は報酬、注目度、メキシコの報仇雪恨、自身の捲土重来と期するものが多く、
仕上がりは最高と聞いていた。
にもかかわらずの完敗。
試合後は病院に直行してCTを撮ったのだろう。
頭蓋への急性のダメージが懸念される。
またこれからの数日間は異状なくとも、今後30~60日の間は
慢性硬膜下血腫の存在を強く疑い、周辺の関係者は
マルガリートを注意深く観察しなければならない。

WBC世界Sウェルター級王座決定戦 予想

2010-11-13 21:29:07 | Boxing
マニー・パッキャオ VS アントニオ・マルガリート

予想 マルガリートの後半TKO勝利

前日計量でパッキャオ144.6lb、マルガリート150lbということだが、
これでSウェルター級王者を決めてよいのかという疑問が生じる。
同時にウェルターリミットを割るパッキャオに期待と不安も生じる。
期待できるのはスピードとスタミナ。
なにをもってもしてもまずはこれらがパッキャオの主武器となる。
コット戦のようにロープを背負ってボディへの攻撃を
あえて受け止めるような展開を作ってしまうと後々厳しい。
本人は打ち合うと言っているが、それは柔道家と組んで戦いたいと言うようなもの。
145lbがベストとローチが公言するのはスピードとスタミナに最適だからだ。
そこを信じる。
不安な点は当日の体重・体格差。
デラホーヤは前日145lb、当日147lbでリングに上がるというミステイクを犯したが、
マルガリートは軽く160lbを超えてくるはず。
またデラホーヤは顔面へはストレート系、ボディはフック系と律儀だったが、
マルガリートの頭部への打ち下ろしとボディへの突き上げの怖さは
コットのパンチの比ではない(loaded glovesがどうのこうのは関係ない)。
コット、クロッティはウェルター級としてはさほど大柄ではなく、
なおかつ相手の体力を自分の体格で削り取るような戦法も取らなかった。
マルガリートは遠慮会釈なくそうする。
パッキャオ陣営にとってはそれが最も恐ろしいことで、
スピードを持続するためのスタミナを失った時、
ローチはパッキャオがスツールから立つことを許可しないと思われる。

正直なところ、マルガリートの復帰戦の不出来は問題ではなく、
予想・分析の材料にはならない。
それはそれ、これはこれだからである。
パッキャオへの期待と不安の評価を行い、どちらの占める割合が大きいのかが
ここでの判断材料となっている。
そんなことをいうと、ライト級進出後のパッキャオは不安点ばかりなのだけれど。

WBC世界Sミドル級 Super Six Stage 2

2010-11-12 21:20:20 | Boxing
王者 カール・フロッチ VS 挑戦者 ミッケル・ケスラー

ケスラー 判定勝ち

考察 ~ケスラー~

ジミー・モントーヤといえばかつてのLAのMr. Undercardだったと
ドネアの初防衛戦だかでジョー小泉が解説していたかな。
前座の頃の自分まで見直そうという意気込みの表れだろう。

以前ならどっしり構えてジャブで慎重に距離を測定しつつ、
ワン・ツーとカウンターで試合を徐々に作っていったが、
前戦の反省と新しい指導者によって積極的かつアクティブなボクサーに変身した。
小刻みな前後のステップで距離を調節するスタイルから
小刻みなボディワークとフェイントを駆使するスタイルになったが、
まだ馴染んでいない、それとも元々馴染まないのか、
ケスラー自身にとってcomfortableなスタイルではなさそうだ。
5ラウンドに喰った右で倒れなかったのは生まれ持ったフィジカルの強さの賜物だが、
直後のインターバルでのトレーナーからの"Keep your head on a swivel."
(戦争映画やスポーツでたまに聞く)は文脈次第で2通りに解釈可能。
1つは「あらゆる角度からの攻撃に注意しろ」というもの。
もう1つは「意識をはっきりさせろ」という意味。
もしも後者の意味で言われていたとすれば、相当効いていたということ。
ケスラーにしてみればかなりストレスフルな12ラウンドだったろう。
コンスタントに前進し、明確に手数で上回り、ヒット率でも上回ったが、
相手の得体の知れない距離感と主導権支配に混乱させられ続けていた。

眼疾でトーナメント離脱は青天の霹靂だが、
ぶどう膜炎を患う者のひとりとしてケスラーの回復を待ちたいと思う。
心臓、腎臓、肝臓などの24時間365日働きっぱなしの臓器は別格として、
目、耳などの感覚器も1日17~18時間使うわけで、
ココが障害されるとたとえ軽症でも不安な気持ちでいっぱいになるのだ。


考察 ~フロッチ~

かつてフロッチはケスラーと距離が噛み合うと書いたが、
実際に戦ってみてやはり噛み合った。
見かけによらずスナッピーなジャブと半身での懐の深さ、
そして自身の右の長射程と、攻防ともに主導権を握ることができたが、
それがポイント奪取につながらないのがボクシングの面白いところ。
tale of the tapeで目立って差がつくところはなかったが、
相手の右ストは自身の左ボディにしか届かず、自身の右ストは相手の顔面に届く。
ジャブの手数で劣るも、距離では優り、同時に命中した際の威力では明らかに上だった。
相手は結構頭の位置を変え、自身はほとんど変えず、
なおかつ相手はガードをおろそかにせぜ、自身は左手をだらりと下げていた。
なぜこのスタイル同士のかみ合わせで距離と主導権を握れるのかは、
自身のスタンス、右グローブの置き所と威力によるフェイント、フットワーク、
リング内の位置取り、懐の深さと下半身と連動しない変則逆ワン・ツーなど、
あらゆる技術と戦術ののアレンジメントがある。
これはintelligenceというよりinstinctに属するもので、
練習自体は基本に忠実でスパーリングで勘と本能を研ぎ澄ませているのだろう。

この負けは本人にしてみれば到底納得いくものではなさそうだが、
採点競技は第三者視点で勝敗が決定されるもの。
観ている側から忖度させてもらえば、互いに相手のタフさに舌を巻いたのでは?
幸いと言えるのかどうか分からないが、名前もプライドもタイトルも取り戻す機会が
次にすぐに訪れるのがスーパーシックスの良いところ。
A・アブラハムとの激突はKO必至の一大決戦となりそうだ。

WBC世界ライト級タイトルマッチ

2010-11-11 20:28:15 | Boxing
王者 ウンベルト・ソト VS 挑戦者 リカルド・ドミンゲス

ソト 判定勝利

考察 ~ソト~

体全体にパワーがあふれ、長い四肢を振り回してもバランスが乱れず崩れない。
コンビネーションが多彩で、射程の長短のみならずリズムの長短を持ち、
スタッカートに喩えられるべきショートアッパーは命中せずとも威嚇力に満ちている。
防御におろそかな瞬間を作るせいで打たれ強さに注目が集まるが、
八の字ガードの裾を瞬間的に開閉させる様はセンスではなくキャリアに裏付けされた試合勘によるもの。
メキシコという国のボクサー育成の主眼の一つに試合数があることを改めて思い知らされる。
右ストレートの引きから体をひねりこんでの内側に抉るような右アッパーに惚れ惚れさせられた。
ジョー小泉はストレート主体の試合だから日本の指導者に参考になると言っていたが、
技術的には確かにそうだ。
けれど追いつき追い越せとなると日本の水や空気を変えないことにはどうしようもないかも。
嘆いても詮ないこと、テレビでかの地のボクシングを堪能できる時代と社会に感謝しよう。

ソトは肩幅こそないが、上背があり筋肉があり、30歳ということで時間もある。
バレラ、モラレス、マルケスよりもソトの方が4階級制覇に近い。
リナレス戦?
セニョール本田はまとめるつもりなどなかろう。


考察 ~ドミンゲス~

ストレート系のパンチがキレるが、カウンターの意図が浅い。
前進を止めるための牽制なのか、明確なダメージを与えるためなのか。
しかし、いずれの選択をしても相手がそれ以上の対応を見せたはず。
ボディ打ちはメキシカンの文法に則る角度の決まった左だったが、
相手が自分以上の歴戦のメキシカンだったがために
右の前腕尺側できれいに払われた。
右アッパーに左フックをカウンターで入れられれば面白かったが、
そんなことができるボクサーは今現在はN・ドネアとF・メイウェザーのみ。
こういうアホな(実現性の低い)攻略法を思いつくところが、
ジョー小泉に言わせると子どもなのだろう。
とりあえず観戦歴では自分の親父に追いつこうと…… 無理ですね、ハイ。

敗北を糧にするのはスポーツに限らず人生全般そうだが、
日本はそういう意味ではどんどん世知辛くなっている。
24歳で39戦できるメキシコの土壌と気風がうらやましい。
選手層の厚さというだけでなく、それを大過なく育て花開かせようという
その環境そのものがメキシコの文化なのだろうな。