BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

IBF・WBO世界ヘビー級王座統一戦 ウラディミール・クリチコVSスルタン・イブラギモフ

2008-02-26 21:54:35 | Boxing
クリチコ ユナニマスディシジョンで勝利

体格面のハンディキャップは技術でどれぐらい埋められるのか?
待ち構える姿勢の相手をどのように崩すのか?
この試合の両者の明確なテーマだ。

イブラギモフの牽制の右を左ではたくクリチコ。
早い段階でクリチコの右を見切りたいイブラギモフ。
まったく噛みあわない展開に見えるが、
リング上の両者にしか分からない駆け引きが盛んに行われていた・・・はず。

右ジャブがはたきおとされるならばと、右フックで入るイブラギモフだが、
クリチコのバックステップが巧みで届かない、当たらない。
時に右ストレートでイブラギモフを棒立ちにさせたが、
左の返しを放たなかったのはkiller instinctが無いからだろう。
足りないのではなく、無い。

世間で言うところの典型的塩試合だが、一番の見所は両ボクサーのメンタルだ。
観客のブーイングなどどこ吹く風。
自らに課したゲームプランを忠実に実行することしか頭に無かった。
パブリック戦で自分のボクシングを見失ったテイラーとは対照的だった。

最後に一つだけ。
ドイツで育ったクリチコだけにMSGじゃなくてドイツの大きい箱でやったほうがよかったんじゃないのかなあ?

ミドル級10回戦 ジョン・ダディVSワリド・スミチェット

2008-02-26 21:53:54 | Boxing
ダディ マジョリティーディシジョンで勝利

非常に好戦的な両者。
ダディは主にボディ狙い、スミチェットは主に顔面狙いで、
ディフェンス能力は両者とも高くない。
とにかくダディは左のガードが低すぎる。
ジャブも突き刺す、あるいは突き飛ばすような威力を持っているわけではなく、
ペチペチと叩くだけのものだ。
どつき合いで最後まで行くのは危険すぎると察したのだろう、
中盤からはアウトボクシングに切り替えたが、
ガードもボディワークも中途半端だった。
本当に近い将来、パブリックとやるの?
PPVは売れそうだが・・・

それにしても、白人ボクサーに往々にして見られるこのメンタルタフネスはどうなっているのだろうか。
彼らのruthless aggressionはアジア人ではかつてのコリアンファイターにしか見られず、
現代の日本人ボクサーが忘れてしまったものだ。
そのことの是非にはここでは深く立ち入らない。
が、今でも不意に吐き気に襲われ、物が二重に見えることもあるというThe Thunder ガッティや、
先日、脳死に陥った崔堯三のことも忘れてはなるまい。
この試合の1~2ラウンドに見られたような殴り合いは見る側の心を熱くさせるが、
見る側は盛り上がるだけでいいのか。
我々がボクシングの”技術”の部分をもっと楽しむようにならない限り、
文字通り命を削るような試合がこれからも続くだろう。
しかし、そのような試合が今日のボクシング人気を形作ってきたのは否めない事実。
いかなる試合が行われようとも我々は敬意を払ってボクサーたちの戦いを見るしかない、
ということをこの試合を観ながら考えた。

L・ヘビー級12回戦 ロイ・ジョーンズVSフェリックス・トリニダード

2008-02-18 21:54:51 | Boxing
ジョーンズ 判定勝利

実況、解説がやたらジョーンズを持ち上げてたけど、超人の面影は完全に失われていた。
脚は動いていたが、かつての膝と足首の柔らかさというか自由自在な体捌きはもうなかった。
昔とった杵柄というよりは、ナチュラルな体格差で勝負が決まった感がある。
あとはブランクの差か。
次はカルザゲvsホプキンスの勝者とでもやる?

ティトもデ・ラ・ホーヤ、ホプキンス、バルガス戦を(録画で)観て夢中になったあの頃とは別人だった。
生命線の左フックを出せたのが最初の2ラウンドだけだったもんなあ。
バレラやモラレスみたいに闘争心が燻っているうちならまだ大丈夫だったろうけど、
一度は消えた闘争心を高額なファイトマネーとビッグネームとの対戦だけで再び燃やしたが、
それだけで戦えるほど甘い世界じゃなかった。
デ・ラ・ホーヤと再戦?
無価値。
江戸の敵を長崎で討つわけではないだろうが、これ以上ボクシング版モルツ球団は観たいとは思わない。

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ ルスラン・チャガエフVSマット・スケルトン

2008-02-18 20:59:23 | Boxing
チャガエフ 判定勝利

マット・スケルトンのボクシングはウロダルチェクそっくりだな。
打たれ強さとフィジカルで相手を消耗させる。
ウェートを乗せた”パンチ”ではなく”体重そのもの”で相手を攻める。
スピードの無いリッキー・ハットンで、イギリス(自分のホーム)以外で支持される闘い方ではない。
頭をぶつけた勢いでクリンチに行くこと自体は否定はしないが、それじゃ世界は獲れないよ。
相手を疲れさせることはできても、倒すことはできない闘い方だった。

チャガエフもワルーエフに勝ったことで、妙な自信があったのかな。
それともやっぱり初防衛戦の緊張か。
コンビネーションブローを持っていない相手なのだから、
ポイントアウトに徹すれば楽勝だっただろう。
相撲をしてくる相手に相撲で対抗する必要は無かった。
まだまだヘビー級の混迷は続きそうだ。

OPBF・日本Sフライ級タイトルマッチ 河野公平VS相澤国之

2008-02-16 21:35:20 | Boxing
河野 ユナニマスディシジョンで勝利

河野の場合、相手との距離を詰めていくなかで繰り出す連打に見るべきものはあるものの、
額と額をこすりあわせての近距離、あるいはリング中央での中間距離でのパンチの応酬がやや弱い。
この部分はソンソナ戦から特に改善されてはいない。
まあ、でもこれはこれでいいのだろう。
河野みたいなタイプは何かひとつ手を加えると全体のバランスが崩れる恐れがある。
手数の多さは一発の弱さを補うためのもので、攻撃力自体はかなりのものだ。
ただ、punches thrownとpunches landedの割合で見てみるとどうか。
それでも世界は・・・うーん、狙ってもいいとは思うが、では誰に挑戦するのか?
リング中央で、あるいはコーナー、ロープに押し込んでガチャガチャ打ち合うのはいいが、
上下の打ち分け、パンチの緩急という点ではミハレスには数段劣る。
ボディワークの無さも致命的とまでは言わないが、思わぬpitfallになる可能性がある。
本人が公言しているように、ムニョスに挑むのなら、川嶋がヒントをくれたように、
強いパンチをボディに叩き込む必要がある。
この試合ではクロスレンジで肘を折りたたんで左右フックを連打するところを見せたが、
これの威力と精度を高めることが課題になる。

相澤はさすがにあの世界戦で晒した醜態の汚名返上を期してきたが、
相変わらずメリハリが無い。
中盤はカウンターを効果的にヒットさせていたが、なぜガムシャラに詰めていかなかったのか。
自分のボクシングに酔うタイプのボクサーとは考えられないが、一瞬一瞬の攻防で
どこか満足していないか。
もう一度世界戦をしたいなら、一回死んで生まれ変わりましたと姿を見せないと駄目。
今日の試合では「河野、恐るるに足らず」という気概は感じ取れなかった。

OPBFウェルター級タイトルマッチ レブ・サンテイリャンVS佐々木基樹

2008-02-16 20:24:04 | Boxing
佐々木 6ラウンドTKO勝利

1ラウンドの先制攻撃と執拗なバッティング、これが勝負を決めた。
序盤に再三見せた右ストレート>左フックのコンビネーションを
中盤から見切られつつある中でよく決めたと思う。
額の骨の硬さを第三の武器にしており、左フックの後に右をつなげることで
レフェリーからの注意を巧みにさえぎった。
さすがに4ラウンド以降はかなり注意されたが・・・
左フックにフアン・ディアスを思わせる迫力があるが、
フアンほどスタミナには恵まれていないと見る。
しかし、自身のリーチの短さを理解しており、良い意味で攻防を分離させている。
さらにキャリアを積み上げてひとつ下の木村に再挑戦するのもいいかもしれない。

WBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ ジョアシム・アルシンVSアルフォンソ・モスケラ

2008-02-04 22:06:41 | Boxing
アルシン 12ラウンドTKO勝利

やっぱり初防衛戦は特別なんだな。
モスケラみたいなコテコテのファイターならリーチと体格差だけで
あっさり料理できると思ったが、ここまで苦労するとはね。
クラウチングから放つ右ストレートは伸び・威力とも抜群だが、
心と身体がほぐれるのが遅すぎた。
相手が弱ったところを見せると急に元気になるボクサーは多いが、
展開としては似たようなものだった。
頭で思い描くイメージに身体がついていかなかったみたいだが、
次戦ではロープに押し込まれることも無いだろう。
ただし、連打型ではなく一発強打型のボクサーには要注意と見る。
ロープ際で左右フックの応酬に果敢に応じていたが、
相手のパンチ力の無さを知っていたから応じたのか、
自分に自信があったから応じたのか。
全盛期のトリニダード相手なら左フック一発で沈められた可能性が高い。
4団体統一が可能な選手だとは個人的には思わなかった。

IBF世界J・ウェルター級タイトルマッチ ポール・マリグナッジVSハーマン・ヌゴージョ

2008-02-04 21:01:57 | Boxing
マリグナッジ 判定勝利

肩から両腕までを小刻みに震わせながら、左をフリッカー気味に振るうが、
これはしならせるパンチではなく突き刺すパンチ。
しかし、悲しいかな、パンチ力の無さが災いして、積み重ねていけばポイントは取れるものの、
いくら積み重ねても相手にダメージは与えられない。
右をアゴの下に置きながらも、カウンターを一切撃たないという珍しいボクサーだ。
ダックしながら突き刺していく左と後半になって見せたアッパーに見所はあるが、それだけ。
初防衛戦のプレッシャーで本来のパフォーマンスが発揮できなかったのかもしれないが、
KO率2割の片鱗は見せた。
KOできないなら判定で明確に勝てばいいのだが、
今日見た限りでは穴が多すぎる。
右ストレートを磨いて相手を後退させるワン・ツーを身に付けるか、
左のフェイントを餌に右のカウンターを撃てるようにならないと短期政権で終わってしまう可能性が大だ。

ヌゴージョもスタミナに難があるところ、気が小さいところがアンドレ・ベルトそっくりだ。
スタミナ切れは様々な理由で起こるし、誰でもスタミナ切れを起こすことはある。
それでも相手が弱みを見せたら一気に襲いかからないと駄目。
しかし、スタミナが切れてから本領発揮する徳山というボクサーは
本当に特異な存在だったんだなとあらためて感じた。

東洋太平洋S・フェザー級タイトルマッチ 内山高志VS山崎晃

2008-02-03 07:59:32 | Boxing
内山 10ラウンドTKO勝利

内山のパンチは一つ一つにスピード感こそないもののかなりの重さを感じさせる。
中間距離ではジャブで突き飛ばす、近距離では左ボディで突き飛ばす。
フットワークや牽制のフェイントではなく、パンチ力自体で相手との距離を
コントロールできるだけのパンチを持っている。
S・フェザーにしてはやけに身体も分厚いしね。
4ラウンドからは近距離でアッパーも巧打。
相手のタフさに少々面食らった部分もあるだろうが、
そのことで自らのボクシングを崩すことも無かった。
最後は左ボディの連打からワン・ツーを契機にストップを呼び込んだ。
ただ、中間距離で不用意にジャブ、ストレートを食い、アゴを上げられる場面もあった。
どれだけ試合を支配していても10秒立てなかったら終わりなのがボクシング。
アゴを引く意識を常に持ち続けて欲しい。

山崎も実にタフだ。
フィジカル面もさることながらメンタルタフネスも証明した。
パンチ力に勝る相手に、たとえその戦い方しか選択できないとはいえ、
いくら突き飛ばされても果敢に飛び込んでいく勇気には脱帽。
ファーストコンタクトで力量差は文字通り肌で感じただろうが、
後楽園を沸かせたのは山崎の健闘によるところが大きい。
また東京のリングで観たい。

内山は、階級が全然違うが、タイプ的にはミッケル・ケスラーを彷彿させる。
山崎のように愚直に前に出てくるボクサーとは噛み合うだろうが、
カルザゲのように手数、フットワーク、フェイント、リングジェネラルシップで
幻惑しに来たときに対応できるかどうか。
勝つ見込みがあるかどうかは別にして、マルケス兄VS内山を来年は見てみたい。