BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

OPBFフェザー級タイトルマッチ

2009-10-10 18:38:41 | Boxing
王者 細野悟 VS 挑戦者 榎洋之

細野 判定勝利

何度でも言うぞ。
何故この試合がダイジェストなのだ!

分析は措いてレフェリーによるドクターチェックの判断について考察する。
両者とも重篤なカットや腫脹もなしに眼のチェックを促すのは珍しい。
が、適切かつ理にかなった措置であると評価したい。
あれだけ激しく打ち合えばダメージが溜まるのは必然。
ボクシングにおけるダメージで最も恐ろしいのは脳への衝撃。
だが脳のダメージをCTやMRIなしに的確に判断するのはかなりの手間がかかる。
そこで医師が行うのがボクシングファンならば馴染みの目の前に手または指をかざして
それを眼で追わせるテストだ。
脳神経は12対あり、そのうち眼の運動を司るのは第Ⅲ、第Ⅳ、第Ⅵの
動眼、滑車、外転神経で、それぞれ脳底前面から数字通りの順番に並んでいる。
つまり、顔面への衝撃は脳神経のなかでも眼に関する部分に集中しやすいわけだ。
あれは目が見えているかどうかの確認であると同時に、
眼が動かせるかどうかの確認でもあるわけだ。
また、よく「脳が揺れる」と表現されるが、脳へのダメージは揺れだけではない。
実はより深刻というか頻度が高いのは血管障害。
これもパンチの威力により血管が破れるのではなく、
パンチをもらうことで様々な神経伝達物質(アドレナリンが有名)が分泌され、
血管が収縮し、その部位の血流が減る。
つまり脳の機能が低下または障害されるわけで、
その際にセロトニン?の作用で、視界に火花や星が飛ぶと言われている。
いずれにせよ、ボクシングは危険度ではモータースポーツや登山に勝るとも劣らない。
レフェリー、セコンド、そして観客・視聴者もボクサーの健康管理には
充分な理解を示す必要があると考える。

WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ

2009-10-10 18:10:42 | Boxing
王者 ホルヘ・リナレス VS 挑戦者 ファン・カルロス・サルガド

サルガド 1ラウンドTKO勝利

考察 ~サルガド~

本当にバレロ戦を回避したのか?
ジャブもしくはストレートの距離から左フックを撃ち込んできたが、
これは狙い通りだったに違いない。
相手の左については事前にラリオス、ディアス、ペレスなどから
情報収集していたことは間違いなく、速さはあるが威力は標準的だと
ファーストコンタクトで確認できただろう。
メイウェザーがマルケスからダウンを奪った左はフェイントからの
両脚での飛び込みだったが、サルガドは左足の踏み込みからフックを着弾。
普通ならスイング気味になりそうなパンチだが、
決して大振りにならず真っ直ぐ伸びてきた。
Nコーナーで待つ様も、飛びかかる時にも、ポーカーフェイスを崩さず、
planとdeterminationをもって臨んだことがよく分かった。

インタビューの受け答えも好青年然としていてポイント高し。
世界は広い。
強くて謙虚な奴がかしこにいるのだ。


考察 ~リナレス~

浜田氏の言う左のスピードに注目したが、
さほどスピードは乗っていなかった。
ガマリエル・ディアス戦の初回にも右で大きくグラつかされ、
その後のWOWOWのインタビューでも「問題は初回。まだ体が冷たいから」
と答えていたが、その課題は解消されていなかったようだ。
米国でのトレーニングによるパワーアップを強調していたが、
リナレスのボクシングの骨子はスピード、フットワーク、コンビネーション、そしてカウンター。
プレッシャーをかけて相手を圧殺するスタイルでは決してない。
体が温まっていない状態、緊張感、不慣れなスタイルの採用が敗因か。
最初のダウンで1ラウンドKO負けを覚悟したのは管理人だけではあるまい。
デラホーヤに誘われ米国でのビッグマッチが現実味を帯びてきていたが、
それもすべて雲散霧消してしまったかもしれない。
凱旋はつくづく難しい。

休養を経て立ち上がるしかあるまい。
日本語を操るハンサムな天才ボクサーという仮面など捨ててしまえ。
「サルガド、ツギハブチコロスヨ」と言えるようになってくれ。

WOW FES 予想

2009-10-09 23:10:21 | Boxing
WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ
王者 西岡利晃 VS 挑戦者 イバン・エルナンデス

西岡 KO防衛を予想

WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ
王者 ホルヘ・リナレス VS 挑戦者 ファン・カルロス・サルガド

リナレス KO防衛を予想

東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ
王者 細野悟 VS 挑戦者 榎洋之

細野 KO防衛を予想

WOWOWは細野VS榎を放送しないとは…
予想・分析する気力が萎えてしまうよ。

WBA世界フライ級タイトルマッチ

2009-10-06 23:18:41 | Boxing
王者 デンカオセーン・カオウィチット VS 挑戦者 亀田大毅

デンカオセーン 判定勝利

考察 ~デンカオセーン~

右の拳に故障でも抱えているのかというほど
upstairsへのパンチはナックルが返らなかった。
下がる相手、脚を止める相手には腕も拳も伸びるだろうが、
大毅のように上体を高いガードに丸めこむ相手には
さっぱり通用しなかった。
一方でダメージングブローになりえなかったが、右ボディを効果的に打ち、
相手の左の切り返しをスウェーで外し、相手の攻撃はもみ合いとクリンチでしのいだ。
メリハリのなさゆえにポイントは取れなかったが、逆にポイントを渡すこともなかった。
世界王者としては不細工にもほどがある戦い方で、
徳山の洗練された膠着戦、坂田のイケイケ泥試合と比べ明らかに質が落ちる。
6ラウンドでガス欠になったことから練習不足は明々白々。
Cliff Roldが大毅の中盤以降のTKOを予想したのもなんとなく肯ける。
ただひとつ王者らしさを見せたのはring generalshipの面。
クリンチから相手の背後にたびたび回り込むムーブを見せたが、
これは時に余裕を印象付ける(本人にそんな意図はないだろうが)。
若き挑戦者が再三首を傾げていたのと合わせて、
臭いラウンドを呼び込むことに結果的に成功したようだ。

清水ではどこかで捕まると思ったがあっさりポイントアウトできるかも。
久高もリベンジに燃えていることだろう。
サウスポーならばランクさえあれば翁長が挑んでも面白い。
もちろん興毅も打倒デンカオセーンの候補となりうる。

考察 ~大毅~

勝つためにあらゆる手段を尽くした。
その点は認めざるを得ない。
残念なのは勝つための手段が王者よりもさらに限定的だったこと。
左フックを力強く奮うのはデビュー以来一貫したスタイルで、
右が成長したとの戦前のコメントは左に継げる右を撃てるようになったの意で、
発言の趣旨は西岡と同じくしていた(つなぎはぎこちなかったが)。
ただ、ガードを保つために上腕三頭筋に力が入りすぎており、
得意の左もフォームの力強さとは裏腹にインパクトが弱い、
というよりもlaunchからconnectまですべて100%で打つため、
硬い、あるいは痛いだけで効かせられない。
パンチ力がないのではなく、パンチ力を活かせていないのだ。
以前にも述べたが、日本タイトルを目指し、ライバルと呼べる人間を持つべきだ。
一足飛びに世界を狙っても、今のままではキャリア不足。
robustなフィジカルだけではどんな穴王者であろうとも善戦止まりになってしまう。
それはあまりにも惜しい。

この男は一度失神KO負けしてみるのがいいのかもしれない。
長谷川とガチスパでやり合い、目が覚めた時にはスツールで介抱されていた、
という経験を積むべきだ。
真の強者との実力差を思い知り、悔し涙を流すことで本物の成長を遂げる気がする。
とにかく大毅はあの父親から独立不羈を勝ち取るべきだ。

NABO北米S・ライト級王座決定戦

2009-10-05 23:43:55 | Boxing
ファン・ディアス VS ポール・マリナッジ

ディアス 判定勝利

考察 ~ディアス~

ディアスのボクシングを一言で評すれば「渾身」だ。
相手が大きくなろうが、自分の体がだぶつこうが、
我がボクシングありきのattitudeはいっそ清々しい。
セコンドはジャブを強調していたが、あれはジャブと呼べるのだろうか?
ジャブは威力においてフック、ストレート、アッパーには劣り、
速さにおいてそれらに優り、使用頻度において通常は最上位に来る。
ディアスの場合はジャブの威力、速度、頻度の3点がその他のパンチとほぼ変わらず、
"Keep your jab."というコーナーの指示は、ジャブを打つ際に構築されるposture、
すなわち両足のスタンスと右グローブの置き所を作れ、という意味に置き換えられそうだ。
自分が効かされても相手が怯まなくても、常にテンポとリズムとスタンスで展開するボクシングは
エキサイティングかつスリリング。
だが、階級の壁を思い知らされる日は遠くないと考える。
ブラッドリーにはストップ負け、マイダナにはKO負け、コテルニクには判定負けと見る。
ライト級でマルケスにリベンジを図るのが吉だと個人的には思う。

考察 ~マリナッジ~

本人は勝ったと思っただろうが、良くてドローが関の山か。
試合前から散々GBPやテキサスジャッジに悪態をついていたが、
そんな言動が有利に作用することはスポーツではありえない。
初回と終盤は押さえたが、打たれて大して効いていないにしろ、
舌を出して挑発する様は確かにcockyだ。
ジャブの伸びはこの階級でトップだが、パンチが伸びるということは
水平方向わずかに上にパンチが放たれているわけで、
身長が同等の相手には有効に作用しても、
今回のように一回り小さい相手の入り端を叩くには不向きだったか。
フックは逆に上にも下にも強く振れて、それができればまた別の試合になるが、
相手に先にやられてしまった。
それでも顔面並びにメンタルのタフネスは衰えてはおらず、
サークリングからのジャブ、スウェー、ショルダーブロックは
瞬間瞬間にアウトボクサーの要素の極致を体現している。
N・キャンベルとの対決が個人的には期待される。

バサバサにほどける頭髪、ずり落ちてくるトランクスと、
ボクシング以外の要素があまりにcomicalだ。
ハットンに敗れてからは飢えた若手の餌になるのみと思っていたが、
どうしてなかなかしぶとくtop contentionに残っているし、
今後も返り咲きを狙えそうな予感すら漂う。

WBA世界フェザー級タイトルマッチ

2009-10-05 22:30:05 | Boxing
王者 クリス・ジョン VS 挑戦者 リカルド・フアレス

ジョン 判定勝利

考察 ~ジョン~

前回よりも左の手数は変わらなかったように思うが、
今回はよりインパクト(≠威力)と見栄えの良さを意識していたように見えた。
滑らかにぎこちないボクシングが持ち味の王者だが、
故ガッティを意識していたのか、アメリカ仕様なのか、
妙にaggressiveだったが、だからこそ最終ラウンドを生き延びたとも言える。
フェイントを交えず、コツコツと打ち込むスタイルも悪くないが、
それで相手にインサイドへの侵入を許すのはらしくない。
ショーとレンジのアッパー、フックは確かにジャッジにわかりやすく訴えるが、
この男の真骨頂は積極的に仕掛ける消極的なポイントゲーム。
見るたびに上体依存のディフェンスになっており、
マルケス兄と戦った頃のような、決して相手と噛み合おうとしない足捌きが
ここ最近めっきり影を潜めているのも気にかかる。

考察 ~フアレス~

こちらも見るたびに野放図さが失われているように思えてならない。
レフトフッカーという特徴もどんどん目立たなくなっている。
最後に王者をノックダウン寸前に追い込んだ左は、
かつての踏み込みとともに爆発した左とは異なり、
タイミングと角度の左だった。
試合全般を通してジャブを打とうか打つまいか逡巡しながら
ブロックを打たせながら距離を掴むとフックを振るうのは
スタイルとしてはありだが、プランとしては下策。
ジョンがクリンチに来るところで一発でいいので
威嚇のアッパーを打てていればその後の様々な布石になったことだろう。
が、それができたとしても二の矢三の矢を持っていないのがこの男の限界を物語る。
前回対戦よりも内容で接近しながら、
スコアではより明確な差をつけられてしまった。
運不運の問題ではなく、ボクシングの実力の問題である。

PS.
この試合の中盤をダイジェスト?
何考えてんのよWOWOWスタッフは?

思わぬ邂逅

2009-10-05 18:59:03 | Private
タイトルは仰々しいが、つい今しがたJR某駅ホームで
とあるボクサーに遭遇した。
その男の名は久高寛之。
やや浅黒い顔つきも精悍さはボクサーのそれに間違いなく、
好機逸すべからずの念で、失礼を承知で後ろから声をかける。
イヤホンをはずし怪訝そうな表情でこちらを見る彼に、
「久高選手ですか?」
「はあ、そうっす」と小声で朴訥な印象そのままの返事。
「あなたのファンです」と告げ両手を差し出すと、
少しはにかみながら右手を差し出してくれた。
両手で握らせてもらったその手は小さく柔らかかった。
なるほど、拳の硬さではなくハンドスピードで勝負するタイプに間違いない。
尼○亀●ジムからの帰りだということだった。
ゆらゆらとした足取りで電車に乗り込む彼の後姿を見送りながら
「若い女のファンちゃうんか」という落胆は感じられなかった。
疲れているところに不躾なあいさつになってしまったが、
今後ますます応援したくなる男だと感じた。

WBA世界フライ級タイトルマッチ 予想

2009-10-04 22:51:26 | Boxing
王者 デンカオセーン・カオウィチット VS 挑戦者 亀田大毅

予想:デンカオセーン中盤KO勝利

いくらなんでもこれは意味不明のマッチメイク。
こんなマニアックなブログを読むような方なら
この試合がまとまった経緯もよくよく御承知のことと思う。
国内・海外ともにillogicalなマッチメイクが往々にして行われるが、
これもその流れに沿ったものとしてひとまず受け止めるしかないか。

デンカオセーンの調整・仕上がりの近・現況については
当ブログと相互リンクのバンコク愚連隊氏のgooブログに詳しい。
久高戦のような不甲斐ない出来はなさそうだ。
むしろデンカオセーンはアウェー向きとも思える。
アイルランドでB・ダンを粉砕したプーンサワットの存在も心強い。

大毅について思うのは減量は大丈夫なのかということ。
禊うんぬんはこの際どうでもいい(ということにしよう)。
体重超過をすれば坂田に王座を明け渡したパーラと同じ運命だ。
一発の力はあると見ていたが、ブンブン東栄戦でそれも怪しくなってきた。
内藤戦でも終盤はガス欠になったように見えたので、
今回は中盤までスタミナが持つかどうかも疑問視される。

とにかく噛み合う試合にはなるだろう。
専門誌のインタビューでは王者は異常に強気だったが、
これは調整が順調に進んでいた証左か。
王者の右と大毅の左の交錯に注目。
亀田家にとって悪夢のKO負けが見られそうだ。

Nashiro - Cazares : The Post-Fight Report Card

2009-10-03 00:35:14 | Translated Boxing News
名城信男 vs ウーゴ・カサレス:試合後の総括

クリフ・ロルド氏の記事をまたまた翻訳の上お届けします。
北米地域でのこの試合の評価は日本のコアなボクシングファンなら
興味がおありだと思いますので。
語訳その他の事実との齟齬は翻訳者の涼しい木星の文責に帰します。
原文はhttp://www.boxingscene.com/?m=show&id=22561を参照のこと。


スポーツには勝者と敗者が存在する。

そうではないケースもまれにある。

引き分けとは自分の妹にキスするようなものだと言い伝えられているが、今週水曜日、日本は大阪の地で
両者が血と汗を弾けさせながら壮絶に打ち合った死闘の後に、WBAのSフライ級「正規」王者の名城信男
(13勝1敗1分8KO)と挑戦者にして元世界Lフライ級王者のウーゴ・カサレス(30勝6敗2分22KO)
のどちらが妹にキスしたかなど論じられそうにない。

引き分けは好ましい結果ではないが、引き分けこそが次につながる最も公正な道となることも時にある。この試合が
それだ。全ラウンドの映像を求めてYouTubeを検索してみたが、1~8、最終12ラウンドのみフルで視聴でき、
9~11ラウンドはハイライトでしか観戦できなかった。ゆえにここでは試合の採点はしない。しかし、ハイライト映像と
殿堂入りも果たしたジョー小泉によるFightNews寄稿の素晴らしいレポートから分かるように、引き分けという結果はいかなる
論議にも利さない。

全ラウンド視聴可能な部分を観る限り、再戦のメリットはある。今年2月のファン・マヌエル・マルケス対ファン・ディアスの
桁外れのライト級王座頂上決戦には及ばないものの、名城vsカサレスはものすごい試合で今年の最高の試合の一つに位置づけられる。

両者の総括をしてみよう。
試合前の戦力比較                   試合後の戦力比較 
スピード:  名城 B+  ; カサレス B  /  名城 B+ ; カサレス B+
パワー:   名城 B   ; カサレス B+ /  名城 B+ ; カサレス B+
ディフェンス:名城 B   ; カサレス C+ /  名城 B  ; カサレス B
精神力:   名城 B   ; カサレス B+ /  名城 A  ; カサレス A

カサレスは108lbでの対イヴァン・カルデロンとの二戦では減量で消耗しきっていたように見えたが、今では
115lbに完全に順応しており、スピードと構えにシャープさを増している。サウスポーの基本に忠実に戦いながらも、
リング中央での打ち合いにも長時間にわたって応じ、アップライトのスタンスから時にカウンターパンチャーに、
時に侵略者の如く攻め込み、試合の前半を戦ったカサレスは、最初の2ラウンドで名城を手ごわい相手だと悟った。
大きな右のパンチを数発もらい、インサイドでは印象的な左フックも2発ほど被弾した。3ラウンドまで名城のラッシュの
タイミングを測り、そこで一瞬王者にたたらを踏ませる場面も訪れたが、またもラッシュを止める努力を強いられた。
名城は第4ラウンドをきわどく押さえたが、カサレスはラフなアタックで5、6ラウンドを連取、試合をイーブンに戻した。

カサレスの勢いは7、8ラウンドにも持ちこされ、そして第8ラウンドに突入。アドレナリンの分泌にかけては今年最高の
3分間の一つとなったラウンドだ。左をリードにカサレスが切り込んでいくと死闘が幕を開け、両者互いに打ちつ打たれつ
を演じる。残り30秒でカサレスがスリップダウンをするが、これさえなければラウンドの流れからして年間最高ラウンド
だった。

いずれにせよ仮定の話である。9~11ラウンドのハイライトを見る限りでは優勢だったのは名城だった。より勢いのある
連打を繰り出し、クリーンなパンチを当てたのは名城だったからだ。だがカサレスも常に反撃していた。最終ラウンドには
名城が右の大砲2発をコーナー近くで命中させ、カサレスをぐらつかせた。メキシカンは判断を誤らずクリンチし、脚を動かし、
再び応戦したが、日本人王者は断固たる決意をいささかも緩めることなく戦い切った。

この試合が観衆が支払った円に見合う価値のあるものだったことは確実である。

パワー面では両者とも相手をぐらつかせたが、根性と顎のタフさ、そして両者とも一発KOアーチストではなかったという
幸運で耐えしのいだ。体格の割には両者ともハードパンチを振るったが、パンチのハードさはKOには至らず、
互いのグローブが交錯し続けるという展開にとどまった。ディフェンスでは名城が若干上回っており、腕と肩で相手の左を
何度も受け流したが、カサレスも主導権は握っていたものの、ショートレンジでは名城のパンチをもらってしまった。

両者を称えるならば、二人ともトレーニングでは得られない部分で最高点をマークしたと言える。両者とも精神力、プライド、
意志の力でラウンドを重ねるごとに激しさを増す試合を戦い抜いたのだから。また、緊張感が極限まで高まり、熱気がいや増すなか、
両者ともに屈することを最後まで拒んだのだから。

今後の展望

プロ5戦目でベテランの本田秀伸を打ち負かして以来、これまでに対戦してきた相手の質の高さを考えると
名城がこれでプロ14戦目を終えたばかりだというのは驚天動地だ。そこから足掛け11戦での対戦相手の成績を
合計すると260勝56敗5分、これには傑出した王者のマーティン・カステイーリョやアレクサンデル・ムニョスも
含まれている。そこへもってきて今度はカサレスである。

カサレスとは再戦が行われなくてはならない。

両者ともに自分が勝ったと興奮するに足る理由を数多く持っていたが、実際は誰の腕も勝者として高々と掲げられることはなかった。
再戦があるとすれば、より幅広い層、つまり我々アメリカ人にも視聴可能であることを願おうではないか。両者とも同階級に
三人のタイトルホルダーを認めているWBAとか言う団体の、いくら頭をかきむしって考えても釈然としない論理の元でリングに
上がったのだ。ヴィック・ダルチニャン(32勝2敗1分26KO)が同階級の本当の世界王者で、「スーパー王者」の称号を持つ
一方で、ノニト・ドネア(22勝1敗14KO)が「暫定」王者だという。不自然極まりないかもしれないが、ダルチニャンvsドネアⅡに
名城vsカサレスⅡもセットにしたカードはボクシングにとって最高の一夜となろう。

そのカードの勝者同士が激突するというのは論理的にも可能性の面からも大いに見込みがある話だ。

今でもボクシング界のプレミア階級の一つであるSフライ級の今後に希望を抱き続けようではないか。

追記
FightNewsのジョー小泉の記事に目を通してみたが、この人の英語は凄いね。
不自然なまでにナチュラルな英語になっている。
仕事以外でもかなりの英語の読み書きをしているのだろう。
英語に自信のある人はこの記事の原文とジョー小泉の記事、
両方を読んでみてください。
ボクシング記事かくあるべしという格好の見本になっている。
ボクビー、ボクマガの記者もこれだけのpassionとfashionで記事を書いてほしいものだ。