BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC暫定世界フェザー級タイトルマッチ オスカー・ラリオス VS マルロン・アギラル

2008-09-29 22:56:47 | Boxing
ラリオス 7ラウンドTKO勝利

相変わらずパンチを撃ち込むときの肩の入れ方が少しおかしいラリオス。
右ストレート、右フック時に特に顕著で、通常は背筋と胸筋で肩を入れて、
パンチにもうひと伸びを与えるのが、ラリオスの場合、左肩がちょっと沈んで、
右肩がちょっと浮く感じに見える。
ボクサーには各々の生まれ持った骨格や間接の可動域、
あるいは鍛え上げた筋肉の質の違いがあるので、
ある選手にとって窮屈なフォームもある選手にとっては理想的となり得るし、
その逆もまた然り(vice versa)だ。
Sバンタム時代に比べて、馬力や手数は明らかに衰えてきた。
打たれ強さも間違いなくダウンしている。
しかし、ラリオスもキャリアを終えるに当たって歴戦の勇者の美学を全うしてくるはずで、
リナレス戦で見せた闘志をもう一度燃え上がらせてくるに違いない。

粟生のインタビューは勇ましかったな。
『死に物狂い』
使い古された陳腐な表現だが、これこそがラリオス戦での粟生に求められる姿勢だ。
粟生が才能豊かなテクニシャンだというのはもうみんな知ってるよ。
だから、殊更に技術できれいに相手を攻略しようとしないでいいんだ。
日本タイトルの防衛戦では華麗に勝とうという意識が強すぎだ。
危なげない試合運びもあったが、相手の気迫にウンザリさせられる場面もあった。
日本タイトル挑戦者でも『死に物狂い』なのだ。
粟生が挑むのは世界、さらにその先だ。
美しく勝ってやる、などと思うな。
勝った者が美しいんだ。

IBF世界Sフライ級タイトルマッチ ディミトリ・キリロフ VS ビック・ダルチニヤン

2008-09-29 22:38:32 | Boxing
ダルチニヤン 5ラウンドKO勝利

まあ、セシリオ・サントスに大苦戦のドロー防衛では、この結果はある意味で当然か。
左ジャブと右ストレートで組み立てる計算はあったのだろうが、
相手のパンチの迫力に押されっぱなし。
良いカウンターはいくつか取れたが、相手の勢いを殺すまでには至らなかった。
自らの目の良さに自信があり、ボディバランスも優れており、
ボクシングの技術とインテリジェンスも身に着けていた。
が、相手の脳味噌は頭ではなく左拳にあったという感じ。
とことん、噛み合わなかったね。
技術や精神面でまだまだ世界のトップシーンで戦えるだけのものはあると思うが、
負け方が酷すぎる。
四団体統一の機運が確実に高まっているSフライでは、しばらくチャンスは無い。
かと言ってバンタムに上げるのもフライに下がるのも現実的ではない。
結局、ホセ・ナバーロ的ポジションに落ち着くしかないのか。

二階級制覇達成のダルチニヤンだが、次戦のミハレスは厳しそうだ。
アッパー、フック、ストレートと、左のパンチは重くて切れるが、
それだけで倒せる、というかそれだけを当てられる相手ではない。
畢竟、リードのバリエーションが求められるが、
そこから最も遠いボクシングをするのがこのダルチニヤンだ。
ドネアに敗北後、強引にアルセ戦にはつなげられなかったのだろうか。
フライ時代と何一つ変わっていないのを見て、なぜか安心してしまったが、
これじゃドネアとリマッチしても結果は前回と同じになるだろうな。

ミドル級10回戦 フリオ・セサール・チャベスJr VS マット・バンダ

2008-09-29 22:19:58 | Boxing
チャベス スプリットディシジョンで勝利

100-90は言語道断のスコアだ。
97-93あるいは96-94でチャベスの勝ちと見るのが妥当ではないか。
前回放送のセラヤ戦からは明確な成長は見られなかった。
親父に相当絞られたからか、メキシコ国民の多大な期待か、
それとも自身の性格に因るものなのか判断できないが、とにかく堪え性がない。
相手をねじ伏せたくて仕方がないのか、雑な気質なのだろうか。
強くて巧いメキシカン共通の左の多彩さ、正確さ、力強さはまあまあ持っているのだから、
それを軸にして戦わないと。
ディフェンスもお粗末なままだった。
なぜ左をあそこまで下げるのか理解できない。
ショルダーブロックに長けているわけでもなく、ヘッドスリップもしない。
的確にカウンターを撃ち込むわけでもないのに、中間距離で不用意に被弾しすぎだ。
アントニオ・マルガリートやイスラエル・バスケスになりたいのか?
目指すとするならエリック・モラレスだと思うが・・・

負け役として期待されたバンダだったが、精神力とタフネスは特筆もの。
弱気の虫がうずきそうな場面もあったが、それを根性で「ねじ伏せた。」
現在のミドル級世界王者の顔触れからすると、このバンダにお呼びがかかることはない。
持ち前の根性で、敵地のホープに雄々しく噛み付くカマセ犬路線を歩んでいってほしい。

かなりどうでもいいこと

2008-09-27 21:45:09 | Boxing
ボクシングとは関係ないが、テレビをつけたらK-1を放送していた。
一方の選手が相手にラッシュをかけて、レフェリーがストップを宣告。
それはいいのだが、猛攻を仕掛けている選手の後ろで両手を交錯させてどうする。
体ごと割って入らないとダメだ。
最後に2発ぐらい余計な打撃があったぞ。
たまたま目に入った光景だが、吐き気を催すほど気分が悪くなった。
ボクシングは凄絶な競技だが、K-1は幼稚な残酷ショーという印象だ。
ああ、気持ち悪い。

IBF世界ウェルター級王座決定戦 ザブ・ジュダーVSジョシュア・クロッティ

2008-09-23 00:19:34 | Boxing
クロッティ 9ラウンド負傷判定で王座獲得

スーパー・ジュダーもそろそろ本格的に終わったかなと思っていたが、
実はまだまだ健在だったな、と思ったけど、やっぱダメかも、という印象。
quicknessとagilityはウェルター級でも間違いなくトップだが、
集中力とスタミナでは他のトップファイターたちとは比ぶべくもない。
右ジャブをダブルで突きながら、あるいは右フックの引っ掛けから、
反時計回りでリングを円く使うのはサウスポーの定石のひとつ。
時に相手の懐に潜り込んで、ダッキングをウィービングから
左右の連打をボディに、左アッパーをアゴに叩き込んだが、
明確なダメージを与えられたのは7~8ラウンドだけだったように思える。
やはりおウェルター級のトップシーンではパワー不足なのか。
コットと同じくスーパーライトにリターンしてみてはどうだろうか。

勝利したクロッティも危ない場面があったね。
序盤のスーパー・ジュダーを五分以上で乗り切ったが、
これはクオーティ同様の堅いガードとナチュラルに備えているフィジカルの強靭さによる。
筋肉質でありながら「しなやかさ」を持っているんだ。
猫科の猛獣のようでもあり、大平原を駆けるインパラのようでもある。
黒人選手は気の小さい選手が多い傾向にあると常々感じていたが、
この選手もその例に当てはまるような気がしてならない。
が、地力はかなりのものを持っているし、キャリアも十分に積み上げてきた。
マルガリートとのリマッチも興味深いが、WBCのA・ベルトと激突するのも面白い。
P・ウィリアムス同様に、ウェルター級戦線を盛り上げてくれそうで、大いに期待したい。

WBA世界ライトヘビー級王座決定戦 ウーゴ・ガライVSユーリ・バラシアン

2008-09-22 23:35:52 | Boxing
ガライ ユナニマスディシジョンで王座獲得

筋骨たくましいボディにワイルドに振るわれるパンチ。
ストリートファイターとしてならば、このガライは相当なハードパンチャーだが、
こういうのはボクサーとしては実はイマイチなスタイル。
スタミナの消費が激しい割りに、見た目ほど相手にダメージを与えられないからだ。
実際、ビシビシ当たっているように見えても、ナックルの返りが甘い場面が多かった。
10ラウンドに左フックで効かされて以降は、左右ストの連打で突き放しにかかったが、
相手のファイトスタイルのおかげで何とか凌いだという感じ。
迫力はあっても実のない攻撃の半面で、ディフェンスは結構良かった。
ボディワークが良いということは下半身の土台はできているわけで、
迫力はそのままで、攻撃の威力と精度を高めていくのがトレーナーの使命。
でも、このスタイルで防衛できるのかね?
迫力だけの今のスタイルより、かつてのコスタヤ・チューのようなボクサーを
目指すべきだと思うのだが。
実際、ヘアースタイルには通じるものがあるんだし。

バランシアンの闘い方にもやや疑問。
サウスポーということはそれだけでメリット/デメリットの両方があるが、
この選手にはそのどちらも感じなかった。
時計回りでも別にいいとは思うが、それなら左フックよりも右フックでは?
実際、ガライのジャブは威力・精度ともそこそこレベルで、
ちょっとしたカウンターパンチャーならいくらでもパンチをかぶせられそうだった。
攻防分離はひとつのセオリーとして確立されたスタイルで、
固いガードに柔軟なボディワークは相手の集中力とスタミナを確実にロスさせたが、
自身も同時に消耗してしまっては意味がない。
10ラウンドに畳み掛ければ仕留められた可能性は高かったが、
肉体に染み付いたディフェンスマインドが相手の苦し紛れのストレート連打に
律儀にガードで応じてしまった。
相撃ちでいいんだってば。

WBA世界ミニマム級タイトルマッチ 新井田豊VSローマン・ゴンサレス

2008-09-20 23:40:08 | Boxing
ゴンサレス 4ラウンドTKO勝利

ゲホン戦の印象が強く、一発頼みのファイターかと思っていたが、さにあらず。
左ボディフックを軸にしたコンビネーションが多彩で、カウンターも取れる。
ソリッドパンチャーでありながら、その拳は重く、硬い。
ガードはアームブロック主体だが、腕力も発達しており、
新井田のアウトサイドからの連打をほぼシャットアウト。
ボディワークはダッキング主体だったが、いろいろ身に着けるのは階級アップ後でいい。
この試合では必要なかったが、おそらくパーリングなどにも長けているのだろう。
完全に実力で新井田を上回っていた。
高山や八重樫では勝負にすらならない。

敗れた新井田だが、敗因は不調や調整ミスという類のものではない。
2ラウンドに喰った右クロスカウンターで、カウンターで主導権を取れないと悟り、
stand and fightでも相手のパンチの重さに体は弾き飛ばされ、心は気圧された。
八重樫がイーグルに喫した完敗以上の完敗。
見ているこちらも悔しく歯がゆいが、王者の無念はそれ以上に計り知れない。
再起を期待するのは酷・・・だろうか。

ライト級12回戦 ホエル・カサマヨルVSフアン・マヌエル・マルケス

2008-09-19 23:16:59 | Boxing
マルケス 11ラウンドTKO勝利

強打を連打できるのが一流メキシカンの特長であることは言わずもがなだが、
このマルケス兄もやはり一流メキシカンファイターだ。
リズムとカウンターで試合を支配してきたが、しかし、今回は相手の懐の深さに苦しんだ。
オフィシャルスコアカードがどうなっていたのかは分からないが、
WOWOW解説陣の採点は理にかなっていたと思う。
個人的に注目したのはマルケスの踏み込み。
踏み込んだ左足がカサマヨルの右足の外側、くるぶしあたりまで届けば、
そのラウンドはマルケスに、届かなかったラウンドはカサマヨルが取ったと思う。
猪突猛進あるのみのカチディスとは違い、中間距離で様々な駆け引きを
行っていたのが見て取れる試合で、こういう試合があるからボクシング観戦はやめられない。

敗れたカサマヨルだが、実に見事なパフォーマンスを見せた。
カウンターの名手であるということ自体がフェイントになり、
さらに徳山やJ・テイラーのようにリング上の対戦相手にしか見えない
フェイントも数多く繰り出していたことが分かる。
左アゴにそえた左の拳は常にカウンターを放つ雰囲気を放っており、
実際に命中したその左は、狙って放たれたものではなく、条件反射的に放たれたもの。
自らのパンチの間合いを熟知しており、呼び込む→迎え撃つ→間合いを取る、
という一連のsequenceを完全に確立している。
敗れたのは気迫の差か。

WBC世界Sバンタム級暫定王座決定戦VSナパーポン

2008-09-18 16:49:09 | Boxing
西岡 ユナニマスディシジョンで王座獲得

"Speed kills."
パッキャオがD・ディアズを破ったときにboxingscene.comに踊ったフレーズだ。
それがこの試合でも証明された形になった。
パッキャオはディアズを糸の切れたマリオネットさながらに斬って落としたが、
西岡はナパーポンをKOには仕留められなかった。
が、それはパッキャオと西岡の攻撃力の差よりも、ナパーポンのタフネスと
西岡自身が選んだゲームプランに拠るところが大きい。
常に一定の距離を保つ、打ち合いになっても頃合良しと見るやサッと引く、
機を見ればコンビネーションを当てていく、詰められればスピードを活かして距離を作る。
絶対に負けられない、何が何でも勝ちに徹するスタイルで、
相手の鈍重さもある程度手伝ったが、それが魅せるスタイルとも一致した。
バスケスとの暫定・正規統一戦が実現しそうにないのはラッキーかアンラッキーか、
それは何とも言えないが、なにはともあれ祝福したい。
下田あたりにとってもいい刺激になったことだろう。

ウィラポンから全てを受け継いだ男という称号は大仰に過ぎるが、
タフネスとデスマスクっぷりはまさにタイのトップファイター。
西岡の右ボディから顔面への左ショートフックが幾度となく突き刺さっていたが、
前進を止めることはなかった。
しかし、前進していると思っていたのは本人だけで、
実はリング中央で小さな円を描いているだけ。
完全に西岡にコントロールされていた。
世界のトップ戦線で戦うにはスピードが圧倒的に足りず、
今後、世界戦のチャンスが訪れるとは考えにくい。
下田の世界前哨戦にお呼びがかかるかもしれないが。
だが、鍛え上げた拳はホンモノで、ウィラポン伝授の右はスリリングな場面を
演出したし、西岡の左ストレートをまともにもらうことなく戦いきったのは、
自身の身長のゆえもあろうが、ウィラポンから教えられたことを吸収し、
マスターしていたことを伺わせた。
終盤の減点はベイリスが辛すぎで、ナパーポン自身はきっと素直な好青年なんだろうな。

WBA世界Sフライ級王座決定戦 河野公平VS名城信男

2008-09-18 14:21:39 | Boxing
名城 スプリットディシジョンで王座獲得

予想がはずれたからいうわけではないが、あの内容で名城が支持されるのか。
いくらなんでもクリンチしすぎだ。
徳山のような、フェイントで相手のフックを誘ってダッキング、
持ち上げた頭を相手の脇の下に持っていき、前に歩くという洗練されたクリンチと違い、
遮二無二しがみつくクリンチで減点とは言わないまでも、警告ぐらいなかったのだろうか。
あからさまに河野の突進を嫌がっており、インタビューで「ファイタータイプが怖い」
と答えていたのを証明してしまった。
ならばボクサータイプ相手に戦えるかというと疑問。
ミハレスやモンティエルには歯が立たないと見る。
それに、またムニョスが来たらどうするの?

河野も河野で荒くれ突貫小僧っぷりは評価できるが、
ガムシャラが通用するのは国内あるいは東洋まで。
不器用なら不器用でいいんだ。
アッパーを効かされたからといってジャブとサークリングを使ったりせず、
突貫するなら突貫を貫かないと。
解説の川嶋や現フライ級王者坂田には泥臭い美しさがある(あった)が、
この夜の河野には美を感じなかった。
個人的にはジャッジに恵まれなかった面があったと思うが、
仮に戴冠を果たしていたとしても、前途多難だろう。
が、パンチ力の無さを手数で補うのは定石通りで、
強めの左ショートフックを連発できるようになったのは確かな成長の証。
腐らずに前を向けば、チャンスは必ず訪れる。