BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界ライト級タイトルマッチ デビッド・ディアスVSマニー・パッキャオ

2008-06-30 23:50:59 | Boxing
パッキャオ 9ラウンドTKO勝利

実はパッキャオ大苦戦を予想していたのだが、見事に裏切られた。
これほど自在に右を振るうパックマンは初めてのような気すらしてしまう。
1ラウンドにいきなりディアスのレバーに左をめり込ませたところで
パッキャオの勝利は決まっていたと言えるだろう。
ひょっとしたらサウスポーは苦手なんじゃないのかという予感もあったのだが、
左を的確にレバーに突き刺し、右のフック&アッパーで顔面をズタボロにしていく様は、
その残酷さとは裏腹にリズムとライムにあふれた詩のようだった。
これほど急激に階級を上げながらスピードとパワーを維持するのは
並大抵のことではない。
Sフェザーから始まったデラホーヤの6階級制覇以上の偉業かもしれない。
同時にスーパーなメキシカンの強さも再確認させられる試合でもあった。
バレラ、モラレス、マルケス、このあたりのボクサーはやっぱり本当に強いんだ。
それを次々に撃破し、1試合で軽く億を超える金額を稼ぎ出す。
まさにアジア発のアメリカンドリーム、フィリピンの人間国宝だ。
日本のボクサーもこれに続かないといけない。
長谷川の目指す感動って、きっとこういう気持ちなんだろうな。

ディアスも戦前は「モラレスの二の舞にしてやるぜ」と鼻息は荒かったが、
ハンドスピードとフットワーク、そして肝心のパワーでも圧倒されてしまった。
名レフェリーの評価を高めつつあるドラキュリッチだったが、
もっと早くストップを勧告してもよかったのでは?
しかし、最後の鮮やかな左カウンターで膝をつき、顔面から崩れ落ちるディアスを見ると、
残酷な感想だが、このフィニッシュこそが観衆と視聴者の求めていたものだったのだろう。
それを見事に導き出したレフェリングだったと評価すべきなのだろう。
それにしてもディアスの今後が心配だ。
散々肝臓をえぐられ、顎を突き上げられ、右瞼は切り裂かれ、左目はどす黒く腫れ上がり、
最後はキャンバスを舐める失神KO。
冗談抜きで心も肉体も破壊されたかもしれない。

アンダーカード

2008-06-30 22:13:48 | Boxing
ヘビー級10回戦 タイ・フィールズVSモンテ・バレット

バレット 1ラウンドTKO勝利

とろいジャブにとろい左ストレートだなと思っていたら
あっさりバレットのカウンターを被弾。
解説に指摘されたとおり、ひとつの壁にぶつかった感がある。
フィールズの今後についてはさっぱり展望が見えないが、
ミドル級のジョン・ダディのようなポジションに落ち着くのではないか。
バレットは世界戦線にまた一歩前進。
ワルーエフ狙いか、クリチコか、それともデビッド・ヘイの踏み台にされるか。

WBC世界S・フェザー級暫定王座決定戦 ウンベルト・ソトVSフランシスコ・ロレンソ

ロレンソ 4ラウンド失格勝ち 

この裁定は不可解だ。
この程度でdisqualificationとなるべきではない。
ダウン中に後頭部をヒットしたと言っても小突く程度だったし、
最高5分のリカバリータイムをロレンソに与え、ソトに注意か減点1で良い。
なんらかの力が働いたのだとは考えたくないが・・・

WBA・WBC世界S・フライ級王座統一戦 アレクサンデル・ムニョスVSクリスチャン・ミハレス

2008-06-23 23:45:45 | Boxing
ミハレス スプリットディシジョンで勝利

この内容で採点が割れるとは・・・
ミハレスとスプリットディシジョンはもはや切っても切れない関係なのか。
1~3は明白にムニョス。
8~12は明快にミハレス。
4~7ラウンドをすべてムニョスに与えても減点1があるため
どこかに10-10をつけるラウンドが必要だが、それにしても不可解だ。
まあ、実はリアルタイムで見てたし、直後にboxingscene.comでも
WBAが派遣したジャッジによるものと書き立てられていた。
WBAとしてはスーパー王者とレギュラー王者が並立した方が儲かるんじゃないの?
何がしたいんだか・・・

ミハレスにいつものような旺盛な手数が見られなかったが、
これは相手がムニョスだからだろう。
川嶋やアルセほどの隙は作らず、ナバーロや菊井のような軽いパンチでもない。
実況、解説ともにムニョスを評して「しなりでパンチを打っている」と言っていたが、
まさにその通りで、パンチに伸びがあると同時にパンチの引き自体が次のパンチのバネになる。
リズミカルに強打を連打できるが、それゆえに打ち終わりにカウンターをもらうこともある。
しかし、これは誰にでも出来る芸当ではなく、ミハレスのelusivenessでこそ可能になる。
この試合を見て感心したのは、ミハレスのクリンチの意外な上手さ。
組んだ瞬間に相手を押して前に歩く、あるいはクルッと体を入れ替える、
頭を相手のアゴに押しつけるなど、メキシカンの嫌らしさを持っていることも証明した。
相手にかぶられた時にさっさと膝をついてしまうところなど実に小憎らしい。
ボディワークは相変わらずで、メイウェザーが引退した今、
グスマンと並んでナンバーワンと言ってもいいかもしれない。
かといって避けることに「夢中」になるわけではなく、
攻め込まれた際には果敢に打ち合うハートも持っている。
接近戦ではアルセ戦や川嶋戦で見せた右肩をで相手のアゴを跳ね上げての左アッパー、
いわゆる武恵一アッパーを多用するのかと思ったが、
中間距離で効果的なパンチを当て続けるプランを持っていたようだ。
年末にもモンティエルとの三冠統一戦が実現するか。

ムニョスはメキシカンに勝てない星の下にでも生まれてるのか。
日本人相手だと妙な強さを見せるのだが。
お国柄、高地は苦にしないだろうし、敵地での戦いも経験豊富。
7ラウンドからの失速はダメージというよりも減量苦か。
打たれた時にこれほど簡単にアゴが上がるということは
ミハレスのパンチが見えていなかったのだろうか?
パンチ力では格段に優っていたが、ディフェンスとリングジェネラルシップでは完敗。
しかし、この敗戦もボクサーとしての価値を極度に低下させるものではない。
今後は階級アップも考えられるが、個人的には得策とは思えない。
案外、来年の今頃は王座に返り咲いているかもしれない。

WBC世界フライ級挑戦者決定戦 フリオ・セサール・ミランダVSオマール・サラド

2008-06-23 22:00:27 | Boxing
ミランダ 5ラウンドTKO勝利

ちょこまかスイッチするが、ミランダの主武器である左フックは
オーソドックスのスタンスからは右ジャブをダブル、トリプルで繰り出してから、
サウスポーのスタンスからは右を真っ直ぐ突き出した勢いを乗せた返しで放たれる。
威力・迫力とも十分の左フックだが、体ごとぶつけていくために返しの右がついてこない。
まあ、この一発で明確なダメージを相手に与えられるからこれはこれでいいのかもしれないが、
サイドステップに長けた内藤にヒットするかな?
スタミナにも難がありそうだ。
元気なうちは好きなだけ打ちっぱなしの状態を作れるが、
一度呼吸を乱してしまうとガクッとペースダウンしてしまう。
サラドがダメージを我慢して死に物狂いで反撃してきたときに
真っ直ぐ後ろに退いたり、ガードを上げたりするところなど
根はかなり素直な人間で、内藤の巧みなフェイントに引っかかる可能性大。
内藤の指名挑戦者としては比較的楽な相手となるのではなかろうか。

むしろサラドの方が内藤にとっては厄介な相手となる危険性は高かったように思う。
奇襲を受けて面食らったしまったため、序盤はガチャガチャに付き合わざるを得なかったが、
3~4ラウンドは自分のリズムで戦えていたように見える。
肩と膝でラテンの音楽のリズムを刻みながら戦う相手は内藤にとっては未知。
得意の変則時間差攻撃に惑わされなければ接戦になるかもしれない。
しかし、invicto = undefeatedほどの安定感は感じられず、
もしこちらが勝ったとしてもやはり内藤にとっては比較的楽なタイプだったと見る。

NABO北米S・ウェルター級王座決定戦 ジェームス・カークランドVSエロモシール・アルバート

2008-06-23 20:50:06 | Boxing
カークランド 1ラウンドTKO勝利

なんじゃこりゃ。
単調なヘッドハンターに見えるが、
自分よりも長身の相手にぐいぐい向かっていけるのは魅力。
つーかゲイリー・ショーもこんなんプロモートするよりも
ドネアをしっかり売り出さないと。
幸いドネアはfree agentになったが、ダルチニヤン戦から防衛たった1回は
ショーの職務怠慢としか言いようがない。

WBA世界ミドル級タイトルマッチ フェリックス・シュトルムVSジェイミー・ピットマン

2008-06-16 22:28:46 | Boxing
シュトルム 7ラウンドTKO勝利

リング中央のガチャガチャの打ち合いにではなく、
すれ違いざまの一撃に対して歓声が沸くところなどさすがにドイツだ。
それにしても今日のシュトルムはやけに塩分が薄かった。
鉄壁のブロックはいつも通りだが、これはA・アブラハムとは一味違うブロック。
アブラハムの腕力と体幹の力をベースに置いた脇をしぼるブロックに対し、
シュトルムは相手のパンチの間合いとタイミングを見切って瞬間的に受け止める、
またはそこからボディワークに移行するタイプ。
ピットマンの速いワン・ツーに苦もなく対応したが、これは豊富な練習量と
積み上げてきたキャリアの証明だ。
これは攻撃においても当てはまる。
瞬時にパンチの当たるポイント、角度を見切り、インパクトの瞬間に拳を握り込んでいる。
一発の力においてはアブラハム、パブリックに劣るが、
インテリジェンスの面では3人の中では一番上と見る。

ピットマンはオリンピアンなだけあって高速のワン・ツーを基調にした良いボクサー。
だが、相手との相性が悪すぎた。
これまでは中間距離でビシビシ気持ちよく打ち込んで勝ってきたのだろうが、
それが通用しないと分かった途端に軽いパニックに陥った感がある。
3ラウンドのクリンチの際の右足の引っかけがそれ。
こういうメンタリティーでは世界タイトルは奪い取れない。
獲ったとしても防衛はできない。
使える武器を増やす必要がある。
右リードをダブル・トリプルで繰り出すとか、なにか工夫が欲しい。
中に潜り込まれた途端にナックルの返らない猫パンチを無闇に振り回すなど、
完全に若さを露呈してしまった。
一皮向ければすぐにタイトルマッチ戦線に戻ってこられるだろう。

WBC世界S・フライ級挑戦者決定戦 ホルヘ・アルセVSデビッド・ナコンルアンプロモーション

2008-06-16 22:11:27 | Boxing
アルセ マジョリティーディシジョンで勝利

聞き間違いか、レノンJrがsuperplumaの挑戦者決定戦だと紹介してた?
スーパーフライはsupermoscaだが、まあ、管理人のスペイン語もまだまだなので
管理人が間違っている可能性もあります。

8ラウンドの公開採点に従えばスプリットドローだろう。
管理人採点では114-113でデビッド。
地元判定と言ってしまえばそれまでだが、これでミハレスに再挑戦?
またタコ殴りのうえ血ダルマにされるだけだと思うが・・・

それにしてもトラビエソは終わってしまったのか。
サウスポーが苦手どうこうではなく完全にパワー不足。
Sフライで世界王座を奪取するにはよっぽどの幸運が必要だ。
自身の左の強さに自信があるのだろうが、バリエーションには乏しい。
ロングの左アッパーに光明を見出せそうな場面はあったが、
もともとスピードやタイミングで勝負するタイプではない。
ならば馬力で捻じ伏せるしかないが、ナチュラルなSフライウェイト相手には通用しない。
ボディもデビッドのブロックに阻まれ思うようにはヒットしなかった。
パンチを打ちやすい体勢を作りたい意識が強すぎるせいか、
カウンターを一発もらうたびにガードをアゴに置くが、またすぐに下がる。
で、カウンターもらう、の繰り返し。
辛うじて挑戦権は獲得したものの前途多難としか言いようがない。

デビッドはウィラポンの弟弟子だけあって終始ポーカーフェイス。
相手が効いても自分が効いてもプランに乗っ取って戦う=命懸けで勝負した。
アルセのアウトサイドから振り回してくるパンチに対して
インサイドから真っ直ぐに伸びるカウンターは実に効果的だった。
8ラウンド終了後の公開採点を受けて、一挙に攻勢に出たが地元判定に敗れてしまった。
クロスレンジでは小さく振るう左右のショートアッパーが印象的。
ミドルレンジでは、フェイントを多用するわけではないが、
相手の脳裏にカウンターの残像を刻みつけ、小まめなヘッドスリップで主導権を握った。
その左カウンターは2種類。
タイミングを重視した真っ直ぐと、左肩ごと相手にぶつけていく威力重視の真っ直ぐ。
特にヘッドスリップで相手のパンチを肩の上にかすらせながら
カウンターを放つ様は教科書に載せたいほど。
単なる出会い頭ですらカウンターと称される現代ボクシングにおいて
これほど純なカウンターパンチャーは貴重ですらある。
ドイツのリングでキリロフと戦ってみると面白いかもしれない。

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 長谷川穂積VSクリスチャン・ファッシオ

2008-06-12 21:00:32 | Boxing
長谷川 2ラウンドTKO勝利

予想大ハズレ。
長谷川チャンピオンに謝罪したい。
KO狙いを公然と宣言していただけに、もはや恒例となりつつある12ラウンドのガチャガチャを
中盤からやるのかと単純に予想していたが、持ち味であるスピードとタイミングを活かしたね。
ガチャガチャは見てる分には面白いのだが、打ち合っている者同士とすると
打たれることが分かっているから耐えられるんだ。
よっぽど破壊力があるか、耐久力があるか、または急所をとらえないと
ガチャガチャできれいに決着がつくことはない。
長谷川にそれだけのパンチ力が無いのは事実。
大幅なスタイル改造を予想していたのだが、良い意味で見事に裏切ってくれた。
ベガスでビッグマッチが実現するといいね。
アルセなら楽勝だよ。

はるばるウルグアイからやってきたファッシオだったが、
6分足らずで試合が終わってしまっては・・・
パンチャーということだったが、右と左のリードの差し合いで勝負がついていた。
うーん、12ラウンド観る気満々だっただけにもっと粘ってほしかった。

追記

東洋太平洋Sフェザー級タイトルマッチ 内山高志VS坂東ヒーロー

内山 ユナニマスディシジョンで勝利

3ラウンド終了間際の坂東の右、これを見ただけで満足。
バレロと早くやりたいと言うだけあって坂東の勇気には脱帽する。
内山のパンチとくにジャブにいつもほどのキレが感じられなかったが、
打たれても打たれても前に出てくる坂東を見て迷いが生じたか。
ポイントこそ大差がついたが、良い試合だった。
欲を言えばもうすこし見たかったのだが・・・

バレロのインタビューが無かったり、色々と放送に注文を付けたいのだが、
まあ、こんなボクオタの意見など考慮する必要性はゼロ。
世間一般を対象にしたと考えればなかなか良い番組構成だったと思う。

WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ エドウィン・バレロVS嶋田雄大

2008-06-12 20:13:21 | Boxing
バレロ 7ラウンドTKO勝利

生き延びることはできても勝つことはできない、
浜さんは嶋田を評して「勝ちに行く闘い方をした」と言ったが、
自分にはそうは見えなかった。
右のカウンターに活路を見出したのは予想通りだったが、
あれほど腰の引けた打ち方をするとは・・・
相手に対して「これで倒れてくれ」と祈るようでは勝ち目はない。
明確な意思がこもったカウンターは6ラウンド冒頭に見せた右ストレートだけ。
時計回りのフットワークと執拗なクリンチでバレロの精神をかき乱す作戦は
3ラウンド途中までしか通用しなかった。
バレロ側からすれば楽だっただろうな。
こつこつパンチを当てていけば勝てるんだから。
ペースを上げもせず下げもせず、一発の力を頼みに淡々とミッションを遂行したという印象。

嶋田とすればあのタイミングでストップされたのは不本意だろうが、
あれほど消極的な闘い方だと、レフェリーもストップせざるを得ない。
36歳のベテランの技の冴えを随所に披露することはできたが、
死に物狂いで勝ちに行くという姿勢は見せられなかった。
何もバレロ相手にstand and fightをしろと言っているのではない。
カウンターの右をヒットさせたらその勢いで頭もぶつけてやるぐらいの勢いが欲しかった。
(あくまで「勢い」ね。本当にやったらそれはそれで問題)
一発ヒットさせるたびに「どうだ、効いたか?」と観察してしまうようでは
倒される前に倒してやるというdetermination不足だと批判されても仕方がない。
応援してたんだがなあ・・・

ワールドプレミアムボクシング予想

2008-06-11 19:36:58 | Boxing
エドウィン・バレロVS嶋田雄大

バレロ 中盤にKOまたはTKO勝利

嶋田が勝利する絵がどうしても思い浮かばない。
アッパー系のパンチを欠くバレロに超接近戦を挑むか、
徳山さながらの右ストレートを基調とした徹底した出入りをするしかないが、
それでポイントアウト出来るかどうかは疑問。
バレロとすれば一発を当ててしまえばいいわけで、
嶋田が仕掛けてくる闘い方に付き合う必要はない。
一階級落とすことには問題はないと考える。
まさかここで減量失敗はなかろう。
が、残念ながらベストコンディションで臨んでも勝利には程遠い。
実力以外の運が必要になってくる。
小堀には幸運の女神が微笑んだが・・・


長谷川穂積VSクリスチャン・ファッシオ

長谷川 中差判定で防衛成功

長谷川の勝利は揺るがない。
しかし、KO決着とはならない。
長谷川はもともとタイミングで勝負するカウンターパンチャー。
KOを狙って生み出すボクサーではない。
モンティエルや新井田レベルでもスタイル改造には相当の時間がかかる。
粟生にも当てはまることだが、過剰なKOへの欲求はきっぱりと断つべきだ。
あと、「観ている人を感動させたい」などというコメントはそろそろやめるべきだ。
前にも書いた気がするが、長谷川は『感銘』を与えるタイプのボクサーであって
『感動』させるタイプのボクサーではない。