前戦の展開からどれだけ変化が生じるか、あるいは生じないのかを観たかったが、
残念ながら変化したのは展開ではなく両選手のconditionとmotivationだった。
王者 名城信男 VS 挑戦者 ウーゴ・カサレス
考察 ~カサレス~
予想を裏切る素晴らしいperformanceで完勝ですね。
川嶋ミハレスでも陣営にいた太っちょのオジさんは
メヒコにツキを呼ぶ男なのだろうか。
1~3ラウンドの闘い方に違和感を覚えた。
なぜスロースターターの相手を敢えて出させるのか、と。
計量時の王者の声の張り、肌の色つや、表情、反応などを仔細に研究し、
コンディション不良と計算したわけではあるまい。
つまり、全ては練り上げられたプランだったわけだ。
中盤以上はほとんどサウスポーを選択したが、その際に左ストレートは封印。
これは前戦で大いにバランスを前後に崩すパンチで
名城の右の距離、タイミングに資するパンチだったが、見事に修正してきた。
さらに呼び込んでの左アッパーも封印、というか使う必要もなかった。
左フックと左アッパーが中間距離で面白いようにヒットし、
そのリズムとともにスウェー、ダック、ショルダーブロックが活きた。
単発の右はそこここで被弾したが、踏み込みのないパンチ故にstuffless。
一発もらうたびに倒れることはないとの確信を深めたことだろう。
この新王者は軽いパンチをまとめてくるタイプで、
ガチャガチャ大好きの河野では攻略は難しいと考える。
ラバーマッチもありうるが、その場合はメキシコ開催となろう。
この新王者はオファー次第では今後の来日もあるので、
いつの間にかピークが過ぎてしまいそうな中広、
あるいは亀田戦が見通し不明な坂田をぶつけてもらいたい。
考察 ~名城~
3ラウンド以降の失速した戦い方をいかに解釈するべきか。
手数、追い足とも発揮できず、ガードを上げるのすら辛そうに見えたのは
減量・調整の失敗によるものか、挑戦者の見えないプレッシャーによるものか、
それともスタミナ配分・ゲームプランのミスによるものなのか。
おそらく上のすべてが原因と思われる。
でなければ左の拳の負傷。
足の可能性は低いと思う。
なぜなら足を踏んでいたのは名城の方だから。
つまるところ解説の徳山の言う通り。
左がないと右が活かせないのだ。
右フックのカウンターの残像でも刻みつけられたか。
それとも見入ってしまう悪癖というか習性が抜けきらないのか、
キャンバスを踏みしめて戦うのは結構だが、
腰も足も軽い相手を負うにはジャブ、フェイント、追い足で
欠けていた部分を埋めてきたと信じていたが、
見事にスタミナと根性だけを鍛えてきたようだ。
ブロックの上を打たせるのは構わない、どんどん前に出ろというのは
まさに旧日本軍のスピリットで、風貌のみならずスタイルでも退化してどうする。
この試合で最も気になったのは名城の視力というか視界。
左をポンポンもらっていたから右目に眼疾がと疑っているのではない。
ガードの隙間、あるいは半身でのダッキングから覗く際に
相手が視えているのだろうか?
攻防のtransitionの遅さがこれまでで最悪だった。
眼疾ではなく、相手のside by sideの動きについていけなかっただけだと思いたいが、しかし・・・
13ラウンドから開始なら自分の勝ちと戦前に豪語していたが、
おそらく前日計量時、第0ラウンド目のゴングですでに負けていたのだろう。
今晩はまる徳でやけ食いし、嫁の胸で泣き明かせ。
そしてボクシングがしたくなるのを待てばいい。