BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

NABO北米S・ライト級王座決定戦

2009-10-05 23:43:55 | Boxing
ファン・ディアス VS ポール・マリナッジ

ディアス 判定勝利

考察 ~ディアス~

ディアスのボクシングを一言で評すれば「渾身」だ。
相手が大きくなろうが、自分の体がだぶつこうが、
我がボクシングありきのattitudeはいっそ清々しい。
セコンドはジャブを強調していたが、あれはジャブと呼べるのだろうか?
ジャブは威力においてフック、ストレート、アッパーには劣り、
速さにおいてそれらに優り、使用頻度において通常は最上位に来る。
ディアスの場合はジャブの威力、速度、頻度の3点がその他のパンチとほぼ変わらず、
"Keep your jab."というコーナーの指示は、ジャブを打つ際に構築されるposture、
すなわち両足のスタンスと右グローブの置き所を作れ、という意味に置き換えられそうだ。
自分が効かされても相手が怯まなくても、常にテンポとリズムとスタンスで展開するボクシングは
エキサイティングかつスリリング。
だが、階級の壁を思い知らされる日は遠くないと考える。
ブラッドリーにはストップ負け、マイダナにはKO負け、コテルニクには判定負けと見る。
ライト級でマルケスにリベンジを図るのが吉だと個人的には思う。

考察 ~マリナッジ~

本人は勝ったと思っただろうが、良くてドローが関の山か。
試合前から散々GBPやテキサスジャッジに悪態をついていたが、
そんな言動が有利に作用することはスポーツではありえない。
初回と終盤は押さえたが、打たれて大して効いていないにしろ、
舌を出して挑発する様は確かにcockyだ。
ジャブの伸びはこの階級でトップだが、パンチが伸びるということは
水平方向わずかに上にパンチが放たれているわけで、
身長が同等の相手には有効に作用しても、
今回のように一回り小さい相手の入り端を叩くには不向きだったか。
フックは逆に上にも下にも強く振れて、それができればまた別の試合になるが、
相手に先にやられてしまった。
それでも顔面並びにメンタルのタフネスは衰えてはおらず、
サークリングからのジャブ、スウェー、ショルダーブロックは
瞬間瞬間にアウトボクサーの要素の極致を体現している。
N・キャンベルとの対決が個人的には期待される。

バサバサにほどける頭髪、ずり落ちてくるトランクスと、
ボクシング以外の要素があまりにcomicalだ。
ハットンに敗れてからは飢えた若手の餌になるのみと思っていたが、
どうしてなかなかしぶとくtop contentionに残っているし、
今後も返り咲きを狙えそうな予感すら漂う。

WBA世界フェザー級タイトルマッチ

2009-10-05 22:30:05 | Boxing
王者 クリス・ジョン VS 挑戦者 リカルド・フアレス

ジョン 判定勝利

考察 ~ジョン~

前回よりも左の手数は変わらなかったように思うが、
今回はよりインパクト(≠威力)と見栄えの良さを意識していたように見えた。
滑らかにぎこちないボクシングが持ち味の王者だが、
故ガッティを意識していたのか、アメリカ仕様なのか、
妙にaggressiveだったが、だからこそ最終ラウンドを生き延びたとも言える。
フェイントを交えず、コツコツと打ち込むスタイルも悪くないが、
それで相手にインサイドへの侵入を許すのはらしくない。
ショーとレンジのアッパー、フックは確かにジャッジにわかりやすく訴えるが、
この男の真骨頂は積極的に仕掛ける消極的なポイントゲーム。
見るたびに上体依存のディフェンスになっており、
マルケス兄と戦った頃のような、決して相手と噛み合おうとしない足捌きが
ここ最近めっきり影を潜めているのも気にかかる。

考察 ~フアレス~

こちらも見るたびに野放図さが失われているように思えてならない。
レフトフッカーという特徴もどんどん目立たなくなっている。
最後に王者をノックダウン寸前に追い込んだ左は、
かつての踏み込みとともに爆発した左とは異なり、
タイミングと角度の左だった。
試合全般を通してジャブを打とうか打つまいか逡巡しながら
ブロックを打たせながら距離を掴むとフックを振るうのは
スタイルとしてはありだが、プランとしては下策。
ジョンがクリンチに来るところで一発でいいので
威嚇のアッパーを打てていればその後の様々な布石になったことだろう。
が、それができたとしても二の矢三の矢を持っていないのがこの男の限界を物語る。
前回対戦よりも内容で接近しながら、
スコアではより明確な差をつけられてしまった。
運不運の問題ではなく、ボクシングの実力の問題である。

PS.
この試合の中盤をダイジェスト?
何考えてんのよWOWOWスタッフは?

思わぬ邂逅

2009-10-05 18:59:03 | Private
タイトルは仰々しいが、つい今しがたJR某駅ホームで
とあるボクサーに遭遇した。
その男の名は久高寛之。
やや浅黒い顔つきも精悍さはボクサーのそれに間違いなく、
好機逸すべからずの念で、失礼を承知で後ろから声をかける。
イヤホンをはずし怪訝そうな表情でこちらを見る彼に、
「久高選手ですか?」
「はあ、そうっす」と小声で朴訥な印象そのままの返事。
「あなたのファンです」と告げ両手を差し出すと、
少しはにかみながら右手を差し出してくれた。
両手で握らせてもらったその手は小さく柔らかかった。
なるほど、拳の硬さではなくハンドスピードで勝負するタイプに間違いない。
尼○亀●ジムからの帰りだということだった。
ゆらゆらとした足取りで電車に乗り込む彼の後姿を見送りながら
「若い女のファンちゃうんか」という落胆は感じられなかった。
疲れているところに不躾なあいさつになってしまったが、
今後ますます応援したくなる男だと感じた。