BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC・WBO世界ミドル級タイトルマッチ

2010-01-31 10:39:42 | Boxing
王者 ケリー・パブリック VS 挑戦者 ミゲール・エスピノ

パブリック 5ラウンドTKO勝利

考察 ~パブリック~

長身からの打ち下ろしのワン・ツーはほとんど出せず仕舞いだったが、
代わりにショートのジャブと右ボディ、左右アッパーが冴えた。
ディフェンス技術に突出して秀でた部分は見当たらないが、
接近戦でのスタンス、微妙なサイドステップ、パンチの引きは、
生粋のインファイターかと思わせるほどハマっていた場面もあった。
相手は自分よりリーチが短く、ゴリゴリのファイトを望んできたので
受けて立ったという面もあろうが、アブラハムやシュトルム、ウィリアムス、マルチネスら
と対峙した時にも相手の土俵で戦うのだろうか。
あるいはスーパーシックスの連中相手では?
打ち合い上等のattitudeはファンを惹きつけるが、
この選手は自身のパワーとmindsetのバランスが壊れたときに
崩れ落ちる予感が漂う。
パブリックが時折見せるその危うさを魅力に感じる者も多いだろうけれども。


考察 ~エスピノ~

相手が身長とリーチで大幅に上回るということ以上に、
自身のフィジカルの特徴を前面に押し出し、そして散った。
短いリーチゆえにミドルレンジからは一切打たず、
ガードを上げたまま右で相手のジャブをchop気味にストッピング。
相手がワン・ツーを基調にしたファイターだけに、
ここはバッチリ呼吸が合ってインサイドへ潜り込むことに成功した。
が、フック系の連打の合間に鋭角的な右と左右アッパーをねじ込まれた。
ゴング後の加撃にやや低めのボディ攻めはダーティーテクというよりも
アドレナリンの分泌過剰がなさしめたもので、減点1などなんのその。
going down in a blaze of gloryというファイトプランはこのマッチアップにして可能となり、
中途半端なタイミングのストップにより、あっけない幕切れとなった。
だが、レフェリーにまでNo Mercyを求めるのは酷というもの。

健康と疾病

2010-01-28 19:30:44 | Private
右眼が飛蚊症になってしまいました。
網膜剥離の予兆?
殴り合いなんてもう10年以上ご無沙汰なのになあ。
頭痛が随伴したので昼休みに眼科を受診。
病理診断(確定診断)を下されたわけではないけれども、
長い付き合いになりそうな病気のようです。
というか飛蚊症自体は極度の近視と加齢によるものだそうで、
問題はICのirisへの沈着で、これの意味するところは・・・
糖尿病性網膜症でなかったのが唯一の救いか。
ステロイド点眼薬を薬局で購入したが、沁みるのなんの。
これは立派な疼痛だわ。

ボクサーならずとも眼疾は起こりえます。
眼は脳神経の障害や頭蓋内圧亢進を測る重要な器官。
失明よりも恐ろしい事態もありうるのだ。
診察その他で保険を使って約1万円の出費は痛かったが、
眼に異常があるボクサーは(ボクサーならずとも)必ず病院に行きましょう。
私の疾患はもっと根本的で長期的で、なおかつ症状としては軽いものだけれど。

NABF・NABO北米S・ウェルター級タイトルマッチ

2010-01-27 20:54:33 | Boxing
王者 ウィリー・リー VS 挑戦者 バネス・マルティロスヤン

マルティロスヤン 3ラウンドTKO勝利

考察 ~リー~

カルマジンに勝ったブネマに勝っただと?
セルヒオ・マルチネスはサウスポーであること以上に
スピード、カウンター、リズム、フットワークと技術でブネマを圧倒したが、
この選手はどうやって勝利したのだろう。
構え、スタンスからしてカウンターパンチャーだが、
相手のハンドスピードとアグレッシブさに呑まれ、
逆に自分がカウンターで沈んでしまった。
この手の選手はスリッピングあるいはスウェーで避け切ろうとする傾向が強く、
勝つことよりもきれいに戦うことを好んでいるように思う。
この試合だけ見れば、負け役に過ぎなかった。


考察 ~マルティロスヤン~

ミドルレンジを好むストレート系ヘッドハンターか。
ダルチニャンともアブラハムとも違うタイプで、
ボクサーは指導者、環境でいくらでも変わり得ることを証明している。
日本はなぜか激闘型が多い気がする。
この選手の今後は明白だ。
Sウェルターのランカーを吟味して倒していくこと。
アゴ、スタミナ、精神力、コンディショニング能力などあらゆる未知の課題が
その過程であきらかになっていくだろう。
S・マルチネスに挑戦するのは時期尚早。
やや似たタイプであるK・シントロン、
あるいはショートで勝負してくるA・アングロとの激突が待たれる。
その結果によりラインラントだけでなくアメリカでもアルメニアンファイターが
respectを得る日が近いかどうかを判断できるだろう。

WBA暫定世界バンタム級タイトルマッチ

2010-01-27 19:57:55 | Boxing
王者 ネオマール・セルメニョ VS 挑戦者 アレハンドロ・バルデス

セルメニョ 11ラウンドTKO勝利

考察 ~セルメニョ~

卓越したパワーもスピードも回転力もないが、
クリーンヒットを奪うことができる。
ふわふわ腰が軽く見えるが、本人にとってのリズム作りになっていて、
さらに上体の柔軟さも利して猫さながらのパンチの連打をまとめる。
これはミッキー・ロークの猫パンチということではない。
猫を飼ったことのある人ならばお分かりいただけるものと思う。
サウスポーを巧みに攻略したというよりも、
好戦的なボクサーのリズムを狂わせたことで攻め落とした。
フィニッシュ後の加撃はおそらく再三のバッティング同様intentionalで、
敵地でこれをやるということはプレッシャーなどどこ吹く風なのだろう。
観るたびに厭らしさを増すこの暫定王者はミハレス以上のハポネキラーになりうる。
大場、下田、亀田三男ではなすすべなくひねられるだろう。
それにしてもひざ蹴りとはレアなfoulを・・・

考察 ~バルデス~

効き手の左右にかかわらず身長、リーチで上回る場合、
ワン・ツー主体でペースを握るのが常道となる。
相手は独自のリズムで出入りとサイドステップを繰り返すので、
冷静にリードから組み立てるプランが求められるが、
執拗なバッティングに精神的にかき乱されたように見えた。
追い掛けることで強みを発揮する選手、弱くなる選手といるが、
バルデスは追いかけても強いタイプ。
ならば何故敗れた?
それは追いかけたのではなく、駆り立てられたから。
メキシカンらしからぬクールさで勝負することで本領を発揮できると思うが、
あらゆる面で後手に回っては、神経戦の達人には勝ち目なし。
今後はL・マルドナド的ポジションに落ち着くか。

WBO世界Sライト級団体内王座統一戦

2010-01-23 00:27:39 | Boxing
正規王者 ティモシー・ブラッドリー VS 暫定王者 レイモント・ピーターソン

考察 ~ブラッドリー~

カーン、マイダナが台頭するSライト級で一歩抜け出したかな。
ジョー小泉はP・ウィテカーの左右を変えてエネルギッシュにしたようだと評するが
私にとってはactiveでbusyなメイウェザーを見るようでもあり、
往年のモハメド・アリのfloat like a butterfly, sting like a beeの
再現VTRを観るようでもあった。
サイドステップを駆使し、左を的確に打ち分けていく様はスピードの差というより
板垣vs星ばりの体感時間のズレにさえ思える、はさすがに大袈裟か。
左でコツコツ叩きながらダックしてのサイドステップは華麗すぎるmaneuverだが、
これを12ラウンド続けるには地味すぎる練習を積み重ねるしかない。
リズミカルに動けば疲れないとはジョー小泉の言だが、
リズミカルに打ち続けても疲れないのだ。
そしてそれは打たれずに打つからこそ可能な業で、
体重も重からず軽からずと、減量苦もないのだろう。
ストイックに練習に打ち込み、ノリノリで戦うボクサーは当節貴重な存在。
マリナッジと戦わせてみるのも面白い。
実現しないかねえ。


考察 ~ピーターソン~

右の一発の威力は最後の最後まで期待感を持続させたが、
強く打ちたい意識が強いあまりにわずかなテークバックのモーションを
正規王者に見切られた。
リングを両足親指で噛み、背骨を伸ばした状態から打つパンチは
癖のないモーションだが、特徴の無さそれ自体が見切りを容易にし、
フェイントも上体の振りもなしに当てるにはスピード差がありすぎた。
視界の外から巻き込むフックはこれまでの相手ならばもらってくれたが、
王者級ともなればさらに内側から捻り込み、また1発に対して2発を返してくる。
インサイドでは意外に打つ場所が見当たらず、あれこれ考えながら打った時には
相手は目の前から消えていただろう。
ミドルレンジでは詰めたい、右を打ちたいという意識に囚われ、
時に上体からつんのめるような格好にもなり、
また相手の余裕のスイッチにも心理を乱されたように見えた。
プランAのみで戦いに臨み、プランBを持たずして敗れた試合の典型だった。

WBA・WBC世界Sフライ級タイトルマッチ

2010-01-22 22:51:40 | Boxing
王者 ビック・ダルチニャン VS 挑戦者 トマス・ロハス

考察 ~ダルチニャン~

フィニッシュは鮮やかだったが、
たまたま当たったという感が無いでもない。
左に無類の威力を秘め、空振りだけで相手を後退させるのはお見それしました
と言うしかないが、これでドネアとのリマッチに向かえるのかね?
卓越したカウンターパンチャーにはまたキャンバスを舐めさせられると思うが。
それでも踏み込みの速さ、力強さは出色で、
脇を締め、肘をたたんで待ち構える相手の懐に一息で飛び込むのだから
過去の2敗は運が悪かったぐらいしにか感じていないのだろう。
結果オーライのKOでも堪能できてしまうのが面白いところ。
ムニョス戦の精神力の弱さを克服しているのなら、
名城とのマッチアップは実に興味深いものとなろう。


考察 ~ロハス~

左アッパーを有効に使うプランは温めていたが、
相手の踏み込みの迫力に押されっぱなしだった。
打ち下ろしの左も相手の強振につられて、
自らもバランスを崩すほどに打ち込んだ。
相手はリズムを作らないボクシングで波に乗り、
自らはリズムを崩されて崩れ落ちた。
長身サウスポーは魅力的だが、トップレベルには遠かった。

ウェルター級10回戦

2010-01-19 23:09:32 | Boxing
ビクター・オルティス VS アントニオ・ディアス

オルティス 6ラウンド終了TKO

考察 ~オルティス~

復帰戦としてはまずまずの相手だったと思うが、
自信を取り戻したかどうかは未知数。
なぜなら打たれたから。
元々打たれるのを嫌うスタイルだと見受けられるが、
どこか勝負を急ぎすぎる性癖があるように思う。
前戦の敗北を戒めにしながら自分にブレーキをかけている感じで、
ワン・ツーはキレるが、そこからたたみ掛けるのに躊躇がある感じ。
マイダナの一撃がいまだに刻み込まれている。
Sライトでは一方の雄となれるが、
カーンやブラッドリーに挑むのは時期尚早。
コテコテのファイター相手に10ラウンドフルマークで勝利するぐらいの
テストマッチが欲しいところだ。

考察 ~ディアス~

中堅以上古豪未満のメキシカンで、
左を強く振るうのも定石通り。
サウスポーをなべて苦手とするところも、いかにもメキシカン。
きっとトレーナーが意識して作り上げたのだろう。
風貌からファイターを連想させるが、
この日はボクサースタイル寄りだった。
この階級にはマルガリート(リターン…してくるのか)もいるが、
やはりウェルター級ともなれば頭打ちか。
新鋭に喰われるベテランという構図はどこか物悲しさを感じさせる。

WBOインターコンチネンタル・ライト級王座決定戦

2010-01-16 23:10:22 | Boxing
ケビン・ミッチェル VS ブレイディス・プレスコット

ミッチェル 判定勝利

考察 ~ミッチェル~

不器用なアウトボクシングで逃げ切ったが、
どこが不器用なのかと訝る向きもあるだろう。
上手いアウトボクサーはクリンチが巧み。
これが管理人の持論。
打ってこない時に打ちに行くのは定跡で、
問題は打ち込まれた際の対応にある。
背中を見せるような体勢を作ってしまうのは
及び腰になっている証拠で、
リング中央ではにらみ合いをしながら常に後手だった。
相手がリードを多用しない、というより全く使わないタイプなので
要所のカウンターでジャッジにアピールできたが、
この試合に限ればdestroyerはさすがに名前負け。
英国外で戦った途端に手足が委縮してしまう典型的内弁慶ボクサーに見えた。

考察 ~プレスコット~

長身、容貌、カーン初回KOレコードと、
対戦相手を縮みあがらせる要素を複数兼ね備えているが、
あまりにもボクシングの地固めが少ない。
右から左フックの切り返しでカーンを踊らせたと記憶しているが、
ここまでフッカーだとは思っていなかった。
フッカーゆえに相手を入らせず、アッパーを突き上げられることもあまりないが、
逆にインサイドからの鋭角的なパンチは結構被弾する。
アゴの強さに自信を持つのは構わんが、トップ相手には致命傷となる。
アンドラーデやマルガリートですら沈むのだ。
リードパンチを使わないタイプは現代ボクシングでは淘汰される(アブラハムは例外)。
結局、こういう南海の黒豹タイプはE・ミランダ的ポジションに落ち着くしかないのか。
カーンからのリマッチ要請は当分ないね。

WBA世界Sライト級タイトルマッチ

2010-01-16 22:23:03 | Boxing
王者 アミール・カーン VS 挑戦者 ディミトリー・サリタ

カーン 1ラウンドTKO勝利

考察 ~カーン~

リナレスを沈めた時のサルガドのようだったが、
そう表現すると不吉だろうか?
相手のKO率約5割という数字に安心感を抱いていたか、
それともメンタルの成長を見せたのか。
いずれにせよ、まだ真の意味で試されていない。
今年夏までにマルコス・マイダナとの激突が期待される。
F・ローチは消極的のようだが、さて。

考察 ~サリタ~

ベテランゆえに様子見モードで入ったが、
こういう試合では何を得るのだろうか。
経験? 教訓? 絶望?

それにしてもハメド太り過ぎ…
デュランもそうだし、徳山もやっぱりSウェルターぐらいありそう。
ボクサーとしての最低限のダンディズムは維持してほしいもの。

NABO北米Sライト級タイトルマッチ

2010-01-16 22:06:30 | Boxing
王者 ファン・ディアス VS 挑戦者 ポール・マリナッジ

マリナッジ 判定勝利

考察 ~マリナッジ~

ジャブに特徴を持つが、それは軌道ではなく起動。
左手ないしは右足を小刻みに震わせて打っていくと
読みやすそうで読みにくい。
マリナッジがこれをやる時は時計回りにステップしているときで
オーソドックスがオーソドックス相手にこれをやるのは
自身のハンドスピードと反射神経に自信があるのと同時に、
相手の左フックから遠ざかる意味合いもある。
また体を左にあずけながら打ちつつ、ジャブの距離から左フックを
リードにすることもできる。
相手はテンプルにガードを置いて低い姿勢から左を振るってくるので、
アッパーが有効になるが、それをロングで打ってくるとは思わなかった。
効かせるたびに莞爾としてペチペチ打つのは非KO主義者ゆえだ。
この日はマジックマンというよりはマタドールだった。

考察 ~ディアス~

この階級で無理がありすぎるのはビール腹からも明らか。
ライト級では減量がきついという話だが、
減量苦から解放されて体が重くて動かないでは笑い話だ。
ディアスの持ち味は手数と突進力だが、
前に出られない展開となると単発強打に頼るしかないが、
一発の威力には先天的に恵まれてはいない。
ジャブとストレートは届いたが、フックが届かない。
相手の間合いのコントロールに翻弄された感もあるが、
原因はやはりウェイトだろう。
ストレート系はキャンバスを踏みしめて打てても、
フック系はキャンバスを蹴らないと打てない。
中間距離ではハンドスピードで劣り、
近距離でも密着連打させてもらえなかった。
わずか5ポンドの差でボディメカニクスを狂わされたわけだが、
これでライト級にリターンしてもマルケスは再戦を受けてはくれまい。