BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

Sフェザー級8回戦

2010-08-30 00:09:31 | Boxing
大沢宏晋 VS アブラハム・ロドリゲス

大沢 マジョリティディシジョンで勝利

考察 ~大沢~

軽いジャブにでも律儀に反応してくれる相手だけに
ジャブを出したいだけ出せれば易々と懐には入られずに済んだはずだが、
序盤から中途半端な距離のジャブに半呼吸遅れた右クロスをぶち込まれ、
本来の射程からシューズ一足分だけ外からジャブを打たされたように見えた。
つまり、ジャブの威力と精度をいきなり殺がれたわけだ。
手持ちの第一武器を封じられたことでいきなり額をこすりつけあっての打ち合いを
選択するあたり、若い……というよりも稚拙だ。
フックが右しか出せず、しかも張り手、オープンブローで、
あれではクリーンヒットに解釈してもらえない、というかされるべきでない。
また、手数勝負に関してもコンスタントに2発の差をつけられていた。
気持ちの勝負は体力と戦術で差がつかない局面を決するもので、
手持ちのカードがいきなり尽きたからといって、
根性勝負に活路を見出すのは、本当の根性勝負ではない。
それはただの苦し紛れだ。
セミの伊波パブロvs伊藤のように、最終ラウンドゴング前に二人とも
口元ポカーンでゼーぜー状態での手数と肩、でこのぶつけあいを根性勝負と呼ぶのだ。

ちなみに管理人採点では77-75で明白にロドリゲスの勝ち。
3ラウンドまでは大沢、以降は全てロドリゲス。
まあ、地元判定というやつですな。


考察 ~アブラハム~

スキンヘッド、精悍な顔つき、メヒカーノ、世界ランカー、名前がアブラハム、。
あらゆる脅威の要素を兼ね備えた選手で、戦いぶりは風貌通りのbody snatcher。
ジャブを払うこともせず、ブロックすることもせず、スリップするでもなく、
いきなり半呼吸遅れた右クロスで返してくるところなど、
葛西vsバスケスの初回を想起させてくれた。
無論そこまでの決定力はなかったが、潜り込んでからのボディ連打の回転は際限なく、
この手数と攻勢でポイントをもらえないのは一にも二にも敵地ゆえ。
また相手をロープに押し付けてからのディフェンスはダッキングからのホールドで、
そのダッキングは腰を安定させたものではなく、膝の屈伸によるもの。
これは中距離の探り合いでも見られた動きで、
距離が詰まった際にはTVカメラがことごとくズームしたので、
下半身の動きが見られなかったが、両の膝を支点にした連打型ファイターであると推定される。
上半身の筋肉量から、下半身=腰(正確には大腿)ではなく脚をバランスの要にしており、
だからこそロープに詰めてからしか連打できない。
両足がスキーの小刻みなパラレルターン状態になっているだろうからだ。
前に出る力と連打力が一致しない、同時に発揮されないのだ。
この齟齬を補うための技術的な奥行きがあるのかどうかは判断の外。
なぜなら大沢がそれを放棄したため。
明確にこちらの勝ちと見えたが、この選手自身が、まぁ世界ランカーとしては穴なので。

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ

2010-08-27 00:05:46 | Boxing
王者 ビタリ・クリチコ VS 挑戦者 アルバート・ソスノウスキー

クリチコ 10ラウンドTKO勝利

考察 ~クリチコ~

心臓血管外科医の須磨久善はオペ前に入念なimage trainingを
行うことで知られているが、現実(reality)は必ずどこか食い違うと語る。
その時にどう修正するかを考えること、つまり判断力(jundgement)が重要になると主張する。
外科医とボクサーはこの点で驚くほど似通っている。
自身のイマジネーション通りに試合が進むというのは完璧な集中力とコンディショニング、
陣営の水も漏らさぬ戦術、相手との相性、その他諸々の要素が必要になってくる。
そんなことはありえないと断言できる。
では、なぜ時にそれを実行できる(とこちらが思わされる)選手が出てくるのか。
それは上述の外科医さながらのimagination, planning, perception, judgement, operation,
などの要素を持ち合わせているからに他ならない。

両のガードをだらりと下げるそのスタイルはパンチが飛んできても大丈夫という自信以上に、
パンチを見る、あるいは受けさえすれば軌道も角度もタイミングも
読み切れるという確信があるかのようだ。
実際にジャブは数発しかもらわず、
単発で左フックと右ストレートは被弾したが、
連続では被弾せずピボット、ショルダーブロック、サークリング、パリー、スウェーを駆使し、
cm単位どころかmm単位で避けていたのではないかと感じさせる。
レフェリーの位置もしくはリングサイドにいればもっとこの絶妙な距離感を測定できそうだ。

オフェンスはディフェンスマインドほど精緻ではないが、
左のグローブが横から下からとにかく邪魔で、
時に腰から肩を入れて槍の如く突き刺してくるのが厄介でしょうがない。
D・ヘイはいかにビタリから逃げるかを算段しているに違いない。
弟の方がまだチャンスはあるだろう。
右はワン・ツーに特化しすぎとも思えるが、やはりドクターさながらに右で相手を触診している。
ビタリほどのインテリかつ器用な人物であれば
整形外科医か形成外科医、または歯科医にもなれたと思わせるに充分。
引退後はウクライナ政治の腐敗を外科的に摘出するのだろうな。


考察 ~ソスノウスキー~

自身の左下へのダッキングからスイング気味の左フック、
左のジャブの打ち出しに先行する右ストレートのクロスなどが
単発ではヒットしたものの、早くも品切れ、もとい弾切れ=out of ammo(ammunition)。
米空軍用語でwinchesterと言うんだったか。
弾薬をでは何種類用意すれば良かったのか。
おそらくビタリ攻略には70種類のパンチが必要であると勘定される。
粟生が9種類、長谷川が20種類のカウンターで迎え撃つと宣言していたが、
これらに基本パターンのパンチを加えても総計40~50だろう。
単純に1.5倍のパンチが必要とされるわけだが、
たとえ教え込む相手がlogical contenderとはいえ、
どんなトレーナーがどれだけの準備期間を要するだろうか。
ここからは純粋な想像(今までの数字は推測)となるが、
パンチを20覚えさせるのに4年、40では7年、70となると10~13年が必要かと思う。
それだけの労力を誰が誰に費やせる?

話を現実的な方向に戻すならば
ソスノウスキーの勝機はビタリの左足を踏んでの右ボディ攻撃の一択のみ。
無論、明快に反則である。
自分が潜在的トレーナーとして以下に外道で無能かを痛感する。

IBF世界Sミドル級タイトルマッチ

2010-08-27 00:05:11 | Boxing
王者 ルシアン・ビュテ VS 挑戦者 エディソン・ミランダ

ビュテ 3ラウンドKO勝利

考察 ~ビュテ~

テクニシャンのカウンターパンチャーでありながら、
攻撃的にリングジェネラルシップを握ろうとするその姿勢は
当然ながらL・アンドラーデとの第一戦の反省から来るもの。
リマッチの鮮やか過ぎるKOはそこから来ており、
この試合でもその方針は堅持された。

この選手は目のフェイントに長けており、
「打つぞ」という威嚇と「打ってこい」という挑発を
瞬時に使い分けることができるのだと思われる。
そう考える根拠は防御のテクニック。
勘ではなくあくまで目で相手のパンチを避ける、あるいはガードするタイプで、
たとえばダッキングの際にも瞬間的に相手を威嚇し、
打たないフェイントを交えていた。
ボディへの効果的なダメージの蓄積は、ひとつには角度・タイミングがあり、
その裏には相手に打ってこないと思いこませるフェイントの布石があった。
ビュテはリーチにはさほど恵まれてはいないが、
それが逆に自身にとっての最適な距離とアングルを構築するための
試合運びを見せるようになった要因でもあるだろう。
攻め込むよりも呼び込む方が自身のボクシングスタイルに資するし、
実際にフィニッシュは呼び込んでの一撃だった。

この勝利でスーパー6のレベルと遜色ないことを見事に証明したと言える。

PS.
今日現在の情報でM・ケスラーが眼の負傷によりスーパー6から撤退決定、
A・グリーンも撤退の憂き目に遭うかもしれないという噂があり、
一挙に残る選手でセミファイナルを開催するのか、
それともこのビュテを口説き落とすのか、
SHOWTIMEの決断が注目される。

考察 ~ミランダ~

一撃必倒のパンチの持ち主も被弾即倒では勝てない。
開始早々から相手の目力(某カリスマホストではなく)に押され、
打とうにも打てず、サークリングに終始するしかなかった。
ハイガードになってみたり、大仰なスリッピングアウェイをしてみたりと
打たせて隙を作るしかなかったが、駆け引きでは遥かに後塵を拝してしまった。
もともと防御にルーズなところもあるが、
攻防のつなぎでダックした状態からアップライトに戻るところを
試合前から見抜かれており、面白いように上下に打ち分けられてしまった。
2ラウンド後半のボディへのカウンター被弾で右を溜めざるを得なくなり、
3ラウンドにはハイガードで潜れずにガードも上半身も弛緩したまま
アップライトになった瞬間にストマックに叩き込まれた。
効いてないぜ!というジェスチャーは効いていることの証明に他ならず、
王者は無論それを見逃さない。
顔面からバタンというあのシーンは私的knockout of the yearになりうる。

ロッキー・フアレスとどちらが先に世界を獲るのか、妙な意味で楽しみになってきた。

WBC・WBO世界バンタム級タイトルマッチ

2010-08-23 23:01:25 | Boxing
王者 フェルナンド・モンティエル VS 挑戦者 ラファエル・コンセプション

モンティエル 3ラウンドKO勝利

考察 ~モンティエル~

フェイントからのKOパンチはもともと持ち味だったが、
こうまで面白いように決まるのは長谷川戦勝利の精神的余韻もさることながら
拳に明確な意思が込められているため。
はじめの一歩で猫田と鴨川会長が回想し、鷹村と千堂が実演して見せたアレだ。
カスティーリョ戦、長谷川戦以上のフェイントとパンチのキレは
次戦の相手を大幅に絞り込む。

長谷川とのリマッチなれば、日本であれば5000万円を要するものと予想される。
今の日テレにはそこまでの資本をつぎ込む余裕はなさそうだ。
スポンサーの後押しとなればどうしてもメキシコ開催は免れず、
長谷川の勝ち目はますます薄くなる。

噂されるドネア戦はまさに興味津津。
フェイントとカウンター、当て勘の全てにおいてハイレベルな攻防が期待される。
相手が強ければ強いほど本領を発揮する傾向にあるモンティエルも、
時に気が抜ける瞬間を作り、転がされてきた。
ドネアはドネアでディフェンシブな相手には攻めあぐねるところも見せるが、
打ってくる相手とはバチバチに噛み合うことは証明済み。
両者の激突は「左を制する者は世界を征す」の格言の究極の証明になりそうだ。


考察 ~コンセプション~

なんでコイツがまた世界戦に出てくるの?
ドネア戦ではバンタムリミットも超過していたはず。
承認団体の腐敗っぷりには今さら言葉はないが、
やるならせめてSバンタムでやってくれ。
とは言うものの笑ってしまうぐらいにパンチを浴び、
コロコロと転がり、減点も喫し、最後は失神した。
溜飲が下がった向きは全世界でも多いと思われる。

Sライト級10回戦

2010-08-23 22:16:39 | Boxing
ロバート・ゲレロ VS ホエル・カサマヨル

ゲレロ 判定勝ち

考察 ~ゲレロ~

ワン・ツーだけでボクシングができるのかと思うが、
ハイレベルであればそれだけでボクシングができるのだ。
ゲレロにはショートの右フックと左アッパーもあり、
呼び込んでのカウンターも撃てる選手だが、
フェイントとカウンターの巧みさは素直に相手に譲り、
「突き放す」と「突き刺す」の中間を目指したボクシングで
主導権支配に見事に成功したと言える。
Sライトもウェート的には馴染むとは思うが、
やはり順番通りライト級に殴りこんでほしい。
ディアス、ソト、マルケスと名のある相手はいっぱいいるよ。
リナレスとの激闘が期待されながらなかなか実現しないが、
来年こそは実現を願いたい。

考察 ~カサマヨル~

あまりにも渋く老獪すぎる試合運びを見せるが、
序盤に強かったこの選手がその序盤にあっさり捕まったということは
老眼による動体視力の衰えが出てきたのかな。
この選手は全てのパンチをショートストレートで打つ。
フックでもジャブでもストレートの軌道。
相手と自分が相対したときに自身のパンチが常に鋭角になるように
位置と角度を微調整し続けている。
最終ラウンドにダウンを奪ったジャブが良い例で、
ヘッドスリップとピボットを組み合わせた見事なmaneuverだった。
一瞬の輝きだけでボクシングが構築できるのもベテランの妙味。
パーリング、ストッピング、小さなバックステップはすべてこの文脈に沿ったもので、
相手のストレートは再三もらったが、左右フックは一発も喰わなかった。
得意の(観客・視聴者には)見えないフェイントも機能したが、
打ちたい時に打てないようになったということは精神面が成熟しすぎたか。
古豪というポジションは数年前から揺るぎないが、
こうやって段々と若手のstepping stoneになっていくのかな。

IBF世界S・ミドル級挑戦者決定戦

2010-08-23 22:16:01 | Boxing
サキオ・ビカ VS ジャン・ポール・メンディ

ビカ 反則負け

考察 ~ビカ~

カメルーンといえばサッカー代表を思い出す。
気分屋な性分はボクサーでも変わらず、
反則打を繰り出した後のあのシレっとした表情は
全く反省していないことをうかがわせる。
ワイルドに戦っていいのはストリートまでだが、
かのカルザゲを一瞬追い詰めた力は買い。
なんだかんだで来年はビュテと対戦できるんではないの?
スーパー6で暇してそうだしね。

考察 ~メンディ~

フランスの中重量級の星というが、
軽量級のアスロウム以外とんと仏ボクシングにはご無沙汰ですなあ。
あ、ミハレスに瞬殺されたのもいたか。

フェザー級12回戦

2010-08-23 15:10:53 | Boxing
イスラエル・バスケス VS ラファエル・マルケス

マルケス 3ラウンドTKO勝利

考察 ~マルケス~

初回から打ち合いに応じる構えを見せたのも
自身と相手の前戦の内容を踏まえていたからに違いなく、
当然のように蓄積されたダメージは自身の方がはるかに軽かった。
とはいうものの、以前の戦力で変わらず残っているのはパンチ力のみで、
こちらのキャリアも風前のともしび一歩手前だろう。

右肩を残すようなストレートは半身のスタンスと合わせて
ディフェンス意識の表れに他ならず、
2ラウンドからは連打の嵐を吹かせたが
初回のリアクションを忘れてはならない。
先にぐらついたのはマルケスだった。
次戦はダルチニャンとやりたいだと?
Toshiaki Nishiokaというハポネスには興味がないのか・・・


考察 ~バスケス~

左フックの軌道にかすかな希望を抱かせたが、それも束の間。
闘志に肉体が追い付かず、脚も格段に衰えた。
顔面は部位によって皮膚の厚さが大きく異なるが、
わけても目の上、眉毛、額のあたりは頭蓋骨が迫っており切れやすい。
なかでもまぶたのvulnerabilityは他の追随を許さない。
そこをカットしやすいのは激闘型の宿命と言えば言えるが、
バスケスのそれはもはやプロのリングで戦うことを許可できるレベルにはない。
あの嫌倒れに見えるダウンも意識が無意識にねじ伏せられてしまったもののように映った。

網膜剥離は治したとはいえ、眼自体のトラブルは残っているのでは?
中心静脈あたりが塞栓を起こしやすくなっていて
視力自体もじわじわと低下しているとしか考えられない。
まぶたのカットのしやすさよりも遥かに深刻な問題で
マネージャーが引退を決断したのも当然だ。

PS.
レノンJrがレフェリー紹介で
「ラウール・カイーズ・スィ…ジュニア~!」
と咄嗟に言い直したのが印象的だった。

IBF世界バンタム級タイトルマッチ

2010-08-23 15:10:20 | Boxing
王者 ヨニー・ペレス VS 挑戦者 アブネル・マレス

ペレス マジョリティドローで防衛

考察 ~ペレス~

強く大きく振ってくる相手に対して、
対策通りでもあるし、いつもどおりでもある鋭角なパンチ。
外からのパンチには内から撃ち抜くのは、
アップライトかつリーチに長けた選手の基礎とはいえ、
それだけでボクシングをするにはもうひとつの武器が必要。
それは圧倒的なスピード、もしくは距離感。
徳山はそのいずれもを持っていたが、
そんな選手は世界的にも稀有だろう。
この王者は黒人選手にしてメンタルが強く、
迎え撃つ気質がこの結果を招いたものと思う。
もしもゴングから弱気にアウトボクシングでポイント荒稼ぎで
もっとあっさり勝利したものとも思える。
アグベコ戦と同じボクシングをしたはずなのに
まったく異なる選手に見えてしまうのがボクシングの面白いところ。

考察 ~マレス~

序盤の立ち上がりは素晴らしく、出入りに強打と軽打を交え、
特にいきなりタイミングの合った大振り気味の左右のカウンターは
自身のリズム構築に大いに貢献した。
しかし、その分スタミナの配分に少々誤算アリ。
足を使うのは悪いことではなく、戦術の一環として採用するのならば
展開を支配するのに役立つ。
ただし、そのこと自体が自分のリズムを崩すこともあり得る。
足を使いながらパンチを打つのは容易なことではなく、
実際にこの選手もさほど上手くはなかった。
足を踏みしめての連打は対照的に肩から肘の連動が効いていて、
やや軽めの自身のパンチの威力を軌道でカバーしている。
しかし、このファイトスタイルは確かに長谷川のような
カウンターパンチャーにはかなり分が悪そうだ。
GBPのホープは割とひ弱そうな印象が付きまとうが、
この若者はどうしてなかなかスピリットを感じさせてくれる。

WBA・WBO世界ライト級タイトルマッチ

2010-08-02 23:26:18 | Boxing
王者 ファン・マヌエル・マルケス VS 挑戦者 ファン・ディアス

マルケス 判定勝利

考察 ~マルケス~

打つアッパーが効果的で、見せるアッパーは有効で、打たないアッパーはフェイントとして機能した。
距離の違いから威力よりも微妙なタイミングを重視していたように映ったが、
リナレスのそれと異なり、能動的かつ引っかけのためのアッパーも織り交ぜられており、
キャリアに裏付けられた試合途中でのadjustabilityの高さも証明した。
以前まではキレで魅せるパンチにも重みがついたようにも感じられる。
フェザーもしくはSフェザーが今でもベスト階級だと思うが、
シャープさを保持したままパワーアップに成功したのだろう。
ウェルター級でのメイウェザー戦も無駄ではなかったということか。
ディフェンスは確かにジョー小泉の言うとおり衰えを見せているように思う。
ただし、これは意識の低下や歴戦のダメージによるものではなく加齢からくる視力の低下が原因ではなかろうか。
ボクシングはおそらく裸眼視力が0.5あれば何とかなると思う。
日本のプロは0.7が基準だったかな。
ここで言いたいのは目が悪くなった=パンチが見えないではなく、
前とは見え方が変わってきたというわずかに意識の端に上る程度の違和感があるのでは?ということ。
攻撃面に目を転じると、ワン・ツーのツーをクロスカウンターとして無数にヒットさせるなど、
相手のモーションの癖から呼吸の大小、心理状態までも読み切っているのではと思わせるカウンターも健在。
スタミナ配分も上手く、被弾までも計算に組み込んだ先行ポイント奪取だったのだろう。
打ち下ろしの右と死角からの左フックと合わせて、メキシコ三羽烏の最後の砦の技芸と技巧を存分に堪能した。

ライト級でパッキャオとのラバーマッチ(と敢えて云おう)が実現すれば
Fight of the decadeが実現するに違いない。
Sライト、ウェルターでは捻り潰される可能性が大である。
けれど、そもそもパッキャオはMarquez Trilogyには興味なさそうだしねぇ。
現実的には次はカチディスと激突ですかね。

考察 ~ディアス~

前回はアッパーで流れをせき止められ、アッパーでフィニッシュされた。
ならば今回はそのアッパー対策が重要になるが、その答えは?
ざっと思いつく解答はクロスアームブロック、もしくはピーカブースタイル、
スクエアスタンスからのL字ブロック、果ては奇策のサウスポーへのスイッチなどが考えられるが、
ディアス陣営の回答は「シューズ半分だけ距離を置く」だった。
その意図は悪くない。
アッパーカットは両刃の剣で、当たれば効果抜群、外れれば隙が大。
しかし相手の全体像さえ見えていればそう簡単に喰わない。
それゆえに半歩~一歩の間合いでかなりはずせるようになる。
その距離まで伸びてくるアッパーカットの名手はそうはいない。
過去のボクサーで言えばエデル・ジョフレ、現役で言えばスーパーな時のザブ・ジュダー。
(前者をリアルタイムで見ていたわけではないが… 動画サイト様々である)
弱点を修正するプランとして悪くはなかったが、自身の距離をも潰してしまう結果になり、
それ以上に負けが込んできた自身のキャリアから来るブレーキの影響もあったと思われる。
胴の太さを短所とせず、むしろその胴体を軸に回転の効いた連打を打ち込むスタイルはまさにBaby Bull。
だがボクシングにおいて優先度が高いのは手数よりも距離。
(手数と距離の重要性の関係は自身と相手双方のスタイルに因る)
そこを取り違えての再戦でリベンジならずは当然の帰結と言える。
とはいうもののファイトスタイルそのものが限界に近づいているとの見方もできる。
ジャブをトリプル以上のflurryで繰り出し、マルケスの右眼上にかなりヒットしたが、
相手の効き目はかなりの確率で左だろう(効き手が右であれば効き目は90%の確率で左)。
またその体格的な特徴からuprightからのジャブは体重が乗りきらず数で補ってもキラーパンチにはなりえない。
ボクサーのピークがどこに来るかは人種、階級、ファイトスタイル、メンタリティ、
トレーニング、戦績、遺伝的要素、未婚か既婚かなどで様々に異なってくる。
残念ながらディアスのピークは過ぎたと判断するしかない。