BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界ウェルター級王座決定戦 アンドレ・ベルトVSミゲール・ロドリゲス

2008-08-25 23:52:07 | Boxing
ベルト 7ラウンドTKO勝利

本人が意識してなのかトレーナーの願望なのか、
見事なまでにMayweather wannabeになってしまったね、ベルト。
なんでこんなアウトボクサーに成長したのだろうか。
左ジャブの速さと踏み込み、右クロスをカウンターでかぶせるところなど、
随所に目を見張るような場面を作るが、粗の方が目立って仕方がないのは
管理人がベルトに対する偏見で凝り固まっているからだろうか。
何度も指摘してきたが、メンタル面がひ弱過ぎる(ように見える)。
おそらく生まれ持った性格(実際に黒人に多い気がする)なのだろうが、
正真正銘の根性勝負を経験したことはこれまでないのではないか。
パンチングパワーは頭抜けていて、このパンチが決まりさえすれば
相手は倒れると自分も周囲も確信させるだけのものは持っている。
が、それは慎重なマッチメークで培われてきたもののように思えてならない。
相変わらずパンチをヒットさせるたびに目で相手の反応を確かめており、
「お、効いたな。攻め続けるぜ!」
とか
「効いてないな。よし、打ってこい、守るぜ!」
とか、ごちゃごちゃ考えるのが癖になっている。
(以前にも全く同じこと書いた気がする)
攻め込まれたときにはあっさりロープまで下がり、L字ブロックでしのぐところまで
メイウェザーをコピーしているが、メイほど相手の動きを冷静に観察できていない。
右ショートアッパーで相手を追い出す術を持ってはいるが、それだけに頼り過ぎで、
頭と頭をこすり合わせた状態から相手の体重移動を察知してサイドステップできる、
あるいはカウンターを放てるようにならないとメイの後継者にはなれない、
というとさすがにハードルが高すぎるが、最低でも打ち合いの中での拳の感触で
相手の状態を推し測れるようにならないと、団体統一戦はできない。
単純に比較することはできないが、
ジャブのスピードで優るアイク・クォーティ(今何やってるの?)や
一発で眠らせてくれるパンチの持ち主カーミット・シントロン、
問答無用で詰めてくるアントニオ・マルガリートにはまだまだ及ばない。
強豪ではあるが本物ではない、伸びしろはあるがそれほどではない、
というのが管理人の印象である。
コットに対しても思っていたが、実況・解説が絶賛するほどの力の持ち主には見えない。
我が目の不明を恥じるようなスーパースターに育ってほしいが・・・

WBA世界ミドル級タイトルマッチ フェリックス・シュトルムVSランディ・グリフィン

2008-08-25 23:06:49 | Boxing
シュトルム ユナニマスディシジョンで防衛成功

管理人採点では115-113でシュトルムだが、118-110はありえない。
ピットマン戦の出来が良すぎたのか、今回の調整に微妙な失敗があったのか、
後半にあっさりペースダウンしたな。
11ラウンドは踏ん張ったが。
要所でガードの隙間からパンチをねじこまれていたとはいえ、
グリフィンのパンチ力から考えてそれほどのダメージを負うとは考えにくい。
相手のボディワークでリズムを狂わされたか?
生命線のジャブをガードの上からでも当てることがリズム作りになっていたのか。
金城湯池のガードも外の連打から内へのねじ込みには対応できないという
場面を晒してしまった。
アメリカでパブリックのさらなる踏み台になるのは報酬次第ではOKだろうが、
左でアゴを撃ち抜く技術に新境地を見出したアブラハムとの統一戦は時期尚早だ。

見方によってはリフィンの勝利でもおかしくなかったし、本人は勝った気でいたに違いない。
リズミカルに動くと少々パンチをもらってもペースを握った気分になることがあるのだが、
そこでポイント計算が狂う場合がある。
着実にダメージを与えてはいたが、見栄えの点でシュトルムのジャブには劣り、
そのあたりが勝敗の分かれ目になったと見る。
ミハレスやメイウェザーのupper body movementは常に相手の打ち終わりを
狙うための戦術だが、グリフィンの場合はリズムに乗っただけの感が残った。
それにしてもドイツの観客は盛り上がり方を知ってるなあ。
1~10ラウンドまでを独自に採点しつつ、
11ラウンド1分過ぎからの攻防の主導権の入れ替わりを的確に読んで、
場面ごとの両選手の心理状態までも把握してないと、ああいうふうには盛り上がれない。
日本の観客の目指すべきボクシングの観戦姿勢がそこにある、
とは口が裂けても言えないが、ボクシング観戦のひとつの規範にはなっている。

ボクシングあれこれ雑感

2008-08-22 21:55:32 | Boxing
本来ここは観戦日記ので、その趣旨に沿わない事例は極力扱わないようにしている。
が、色々と思うところがあるので、遅きに失した感があるがものしてみようと思う。

亀田ジムの設立・・・
日本ボクシング界はアホの集まりなのか?
亀田一家がジムを設立することが問題なのではない。
そのジムを承認する過程が決定的におかしいのだ。

あの夜のパフォーマンス自体は、まあ、ギリギリ許容範囲内か。
ロッカールームで長谷川に挑戦状を手渡した徳山の例もあるので、
インタビューを遮らず、リングに上がらず、挑戦の意思を表明したのであれば、
個人的には高く評価できるのだが。

無駄とは思いつつ7月31日、8月1日にJBCに電話をしてみた。
女性スタッフが丁寧に応対してくれたが、肝腎なところははぐらかされた感が残った。
埒があかないと思い、手紙(抗議ではなく質問状の形式)も送った。
当然、現在まで返事はない。
協会の方にも投書なりでコンタクトをとってやろうかと思ったが、それは断念した。
無駄だと思ったから。

案の定、亀田ジムは一部の反対の声を押し切って特例で承認。
unanimous decision、つまり全会一致をもって可決するという原則まで崩した理由が、
「今のままでは、何か問題があっても協会として何か言うこともできない。
早く独立を認め、(亀田側に)話ができる状態にした方がいいという話になった」
という大橋会長の主張と、
「亀田の人気を業界全体のプラスにする方向で考えた方がいい」
という渡辺均会長の主張。

アホかっての。
理由が理由になっていない。
問題が起きた時に協会で指導できるようにするために承認?
問題を起こすことが前提なのか?
亀田の人気を業界全体にプラス?
目立つのは自分たちだけでいいというスタンスを貫き通したあの一家で?
結局、どういう理屈をこねてもいいから承認したということなんだな。
反対派の一人にTAIKOH小林ボクシングジムの小林弘会長がいた。
TAIKOH小林ボクシングジムは管理人の住む場所から目と鼻の先で、
大学を卒業してすぐの頃に見学させてもらったことがある。
駅近くだというのにどこかうらぶれた雰囲気があったが、
でかいオランダ人とアメリカ人と一緒に練習・・・
まあ、それは懐かしい思い出ということで措いておこう。

問題の根源は協会による亀田ジム承認が「出来レース」だったこと。
これが何を意味するのか、協会やJBCのお歴々は理解しているのか。
協会内部の政治的な思惑が一般世間と乖離しているということを暴露しただけではない。
ボクシング自体が「出来レース」なのではないかという認識を持たれる危険性がそこにある。
亀田が出来レースなのではない、ボクシング自体が、なのだ。
もちろん、勝負に駆け引きはある。
度を越した工作ではなく、ちょっとした嫌がらせ程度なら日常茶飯事だ。
秤に細工するなどは言語道断だが(そういえば徳山が韓国ではめられそうになったな)。
強豪の調整試合のためにリングに上がる負け役も実在する。
が、あまりにも負ける気満々なのは困るということで、
JBCはタイ人選手の招請を一部禁じるという措置を取ったではないか。
協会には、JBCにはわずかに残っていた良識が、もはやひとかけらもないのか。

いまや、どのジムも経営は厳しい。
殿様商売でやってきた帝拳ですら安穏とはしていられまい。
ましてや東京、大阪周辺以外の地方ジムになると、いつ潰れても不思議はないわけで、
現に天熊丸木ボクシングジムは潰れ、グローバル協栄は興行ドタキャンの大失態。
プロスポーツなのだから人気や知名度が必要なのは当たり前だし、
カネを稼げるだけ稼ぎたいというのは当然の欲求だ。
だが、それも一線を越えなければ、の話だ。
仮に亀田が何も問題を起こすことなくボクシングキャリアを全うしたとする。
ボクシングが注目を浴び、関係者もそれなりにカネを稼げたとする。
その後はどうなるのだ?
世間の流行の消費は恐ろしいほど早い。
去年テレビに出演しまくっていたタレントが次の年にはもう干されていた、
などというのは当たり前で、個人あるいは少数の人間に依存した人気は、
けっして長続きしない。
そもそも亀田でボクシング人気が再興するとは思えない。
何を言っても、何をしゃべっても、もはや演技としか見てくれないだろう。
内藤にしても同様で、一個人が人気を博すのと、そのスポーツが人気を博すのは
似て非なるものだ。

今、本当に為すべきは、ごく一部のプロモーターやマッチメーカーに依存し、
メジャー四団体のうち二つまでしか公認していない日本ボクシング界の構造改革だ。
スターが生まれれば、誰もがそれにあやかろうとする。
辰吉とともに昇り、辰吉とともに沈んだ90年代と言われるが、
それが古き良き時代だったとは思えない。
むしろ、辰吉という悲劇のヒーロー(に見せかけられた時代の犠牲者)を生んだだけだ。
そして彼は今なお戦おうとしている。
何と?
自分自身の肥大化したエゴと、だ。
極度のボクシング馬鹿と言えばそれまでなのだが、
今の辰吉のファイトを見たがっているファンは少ない。
一部のボクサーを通じてボクシングを見るのではなく、
ボクシングという競技を通じてボクサーを見られるようにしなくてはいけない。
世界タイトルはスポーツとしては一つの到達点であり、ビジネスにおいては道具なのだ、
というボクシングの現実を知らせなくてはいけない。
リングの上で行われているのはただの殴り合いではなく、
体力と気力と技術のぶつかり合いだということを知らせなくてはいけない。
ボクシングにおける1勝あるいは1敗の重さは他競技とは比べ物にならないのだ、
ということを誰かが語らなくては。
日本ランクでも東洋ランクでも世界ランクでもいい、ランクが一つ上がり下がりするのが、
ジムやボクサーにとってどれほどの喜びであり落胆であるかを知らせなくては。
負け役は確かに存在するし、必要とされている。
だが、ほとんどすべてのボクサーは文字通り命懸けで闘っている。
血みどろで這いつくばったわけでもなければ、
骨折や靭帯を断裂したわけでもない。
それでも、たったの10カウント以内に立てなかっただけで試合は終わってしまうのだ。
ボクシングはそれほどシビアなのだ。

激しい打ち合いを好むファンもいれば、地味なテクニシャンに魅了されるファンもいる。
両者に共通しているのは、勝者に称賛の拍手を送り、敗者にねぎらいの拍手を送るところだ。
なぜなら、ファンはボクシングにおける勝利と敗北、それぞれの重みを知っているからだ。
勝利するために見せる技術、体力、精神力に胸を打たれるからだ。
リングの主役はボクサーたちだ。
しかし、それもボクシングという枠の中で試合が行われるからだ。
街中でボクシングをすれば、ローブローやサミングなどしなくても、即逮捕だ。
その枠を躊躇なく飛び出すような人間をボクシング界に迎え入れるべきではない。
ビッグマッチが出来る、金銭的な魅力に抗えない、というのは理解できるが、
日本ボクシング界には踏み止まってほしかった。
内藤X亀田大の前にある人に言われた言葉が今も忘れられない。
「内藤、本当に負けちゃうの?」
八百長や出来レースがまことしやかに語られてしまうようなボクシングに魅力などない。

それでも、なんだかんだで見続けるんだろうなあ、ボクシング・・・

WBC世界S・ウェルター級タイトルマッチ バーノン・フォレストVSセルジオ・モーラ

2008-08-19 15:54:32 | Boxing
モーラ マジョリティーデシジョンで勝利

毒蛇VSラテンの蛇だが、毒を持っていたのは後者だった。
動きの一つ一つのパーツは様々な選手に見ることができるもので、
たとえば右ストで飛び込んでクリンチに行くのは徳山、
飛び込みざまと離れ際に左フックをダブルで放つのは新井田あるいは鬼塚、
相手に正対した状態でせわしなくフェイントを繰り出しながら打つ突然の右は内藤、
パンチが鼻先をかすった時にニヤリと笑い反撃に出るのはクレイジー・キム、
中間距離でくにゃくにゃ上体を動かすのはあきべぇ戦の上石のようだ。
けれど全体を通してみるとボクサーとして一本筋が通ってるんだ。
全てのムーブが勝つという目的に収斂されており、ブーイングもなんのその。
パンチに対する恐怖感など微塵もなく、まさに「当たらなければどうということはない。」
どういう練習、どういう試合を積み重ねていけばこんな選手が誕生するのだろう?
デラホーヤの引退試合の相手にもリストアップされているようだが、
やめておいたほうがいいだろう。
空回りした上、絡み付かれて毒を打たれて終わりになる可能性が高い。
サントスがSウェルター統一希望を持っているようだが、
案外このモーラがこの階級をまとめてしまうかもしれない。

フォレストはピッチリッロと対戦した時から陥落の予感はあったが、
その時は正統派を崩し切れずにズルズル行くものと思っていた。
が、こんなところにこんな伏兵がいたとはね。
右ストレートも左フックも当たらない。
フラストレーションも溜まるし疲労も溜まる。
強いパンチを的確に当てていこうとするのは現代アメリカンボクシングの潮流の一つだが、
この日のフォレストはジャブを軽視しすぎていた。
良いパンチとは命中するパンチであり、パンチを命中させるには下準備が必要。
モーラのようなelusiveな相手ならなおさらだ。
つまるところタイミングと間合いの問題なのだが、
9月の再戦までに修正はできないと見る。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ カルロス・キンタナVSポール・ウィリアムス

2008-08-19 14:36:20 | Boxing
ウィリアムス 1ラウンドTKO勝利

鮮やかに雪辱を果たした、と言えば聞こえはいいが、
一時的にせよマルガリート>コット>キンタナ>ウィリアムス>マルガリートという
図式を成立させてしまった罪は重い。
キンタナの出入りに反応できなかった前戦は一体なんだったのか。
今回ナチュラルタイミングで左を当てることができたのは、
鍛錬によるものなのか、前回は油断していたからなのか。
ウェルター級戦線を盛り上げてくれなくては困る存在だが、
キンタナとの1勝1敗という戦績はどこかでケチがつけられそうだ。

キンタナにはご愁傷様としか言えない。
前回同様の出入りのボクシングを展開するつもりだったとは思うが、
ジャブをかいくぐったところで左が飛んできてドンピシャで命中。
事実上、そこで勝負ありだった。
両者の力関係も技術も戦術も大きくは変わっていない。
ただウィリアムスが右ジャブだけでなく左もナチュラルに出せるようになっていたというだけ。
ラバーマッチを行ってもいいだだろうが、その機運が盛り上がるのはいつになることやら。
コットまたはシントロンの再起戦の相手にちょうどいいかもしれない。
ウェルター級プエルトリカンで生き残るのは誰だ?

WBOインターコンチS・ミドル級タイトルマッチ カロリー・バルザイVSホセ・アルベルト・クラベロ

2008-08-19 01:27:28 | Boxing
バルザイ 5ラウンドKO勝利

ドイツでキャリアを育むからテクニシャンになるのか、
テクニシャンだからドイツの指導者やプロモーターに見出されるのか、
鶏と卵ではないが、いつも考えさせられる。
管理人は大学時代に寮に住んでいたが、思い起こせばドイツ人は理詰めだったな。
掃除などには手を抜きまくっていたが、日本語の勉強には熱心だった。
特に漢字の偏旁と意味、共通になる音読みなどに敏感だったな。
アメリカ人は漢字に無頓着で、とにかく名詞と動詞を覚えまくるタイプが多かった。
指導者が理詰めならファンも理詰め、理詰めのボクサーがドイツから陸続と生まれるのも必然か。
オープニングから左ショートアッパーをピンポイントでヒットさせるのだから、
バルザイの空間把握能力は高い。
ルシアン・ビュテと同階級ということもあり、格好の比較対象となるが、
ボディワークを多用するビュテと違い、バルザイはガードとステップワークが防御の主体。
アンドラーデのようなタフでビジーなファイタータイプ、またはA・アブラハムのような
豪打爆発タイプにも対応できるか?
シュトルムのようなタイプに成長するのだろうが、何か一つ物足りない。
左ショートアッパーを一発ヒットさせてサイドステップするのではなく、
機会さえあれば一気にアゴに3~4発ぶちこんでみるのもいいかもしれない。

クラベロと言われても誰と比べろと?
などというダジャレは置いといて、ただの引き立て役だったね。
左アッパーからの右の返しは一発ずつしか来ないのだから、
気合いで耐えて頭から突っ込むぐらいでも良かった。
頭を振っても相手が全く動じず、止めた瞬間にパンチが飛んでくるものだから
打つ手なしだった。

IBO S・ライト級タイトルマッチ リッキー・ハットンVSファン・ラスカノ

2008-08-12 21:43:07 | Boxing
ハットン ユナニマスディシジョンで勝利

やっぱり無敗選手が初黒星を喫すると変わってしまうんだね。
ラスカノに左を当てられた時にメイウェザーのカウンターの左フックの残像が
ハットンの脳裏に幾度となくよぎったようだ。
あのTKOはそれまでにコツコツ当てられたダメージの蓄積と、
コーナーポストに頭からめり込んだことのダメージが大きかったのだと思うが。
この試合でもやはりKO負けの記憶がフラッシュバックしているとしか思えない場面が見受けられた。
右ストレート、左フック、左ボディアッパーを駆使し、力士の如く突進とクリンチを繰り返すのが
ハットンの持ち味だったが、あからさまにラスカノの左をもらった場面以外でも動きが止まることが多かった。
相手のパンチの質・重さではなく軌道や残像それ自体に臆した感じ。
ボディへの被弾でダメージを隠そうともしなかった点なども含め、
以前のような突貫ファイトスタイルを取り戻すのには時間がかかりそうだ。

ハットンVSマリナッジを想定してみる。
マリナッジのパンチの軽さからしてハットンがKOされることは考えづらい。
ただし、マジックマンの左へのサイドステップから真っ直ぐ自身の右に繰り出される左フック、
ちょうどパッキャオがマルケスとの再戦でダウンを奪ったような左、ハットンがこれをもらう、
あるいは、これにビビるようなら判定でマリナッジ勝利も十分に考えられる。
コット戦の敗北を乗り越えた(ように見える)マリナッジと
メイウェザー戦の敗北に今後も悩まされそうなハットンの差が出そうな予感。

IBF世界S・ライト級タイトルマッチ ポール・マリナッジVSラブモア・ヌドゥ

2008-08-12 02:26:51 | Boxing
マリナッジ スプリットディシジョンで防衛成功

断髪した9ラウンドから明らかに動きに軽快さが戻ったね。
千葉ロッテのコバヒロのコーンロウはOKだが、
マリナッジのコーンロウは完全にアウト。
実況・解説も指摘していたが、戦闘の支障になるような髪形は論外だ。
ボクシングスタイルに着目すると、相変わらずのパンチ力の無さが目につく。
特に左ジャブは妙な伸びとリズムがある反面、悲しいほど威力に欠け、
ヌドゥが自信満々で右クロスをかぶせてきた。
その左ジャブは両足を広げたスタンスから放たれるが、
特に右足親指でリングを噛んだり、左膝の屈伸を伴ったりはしない。
時折、ダックした状態でジャブをボディにも散らすが、
上体を微妙に前傾させることでジャブの伸びを生んでいるのか?
そのあたりがMagic Manの二つ名の由来なのだろう。
勝つには勝ったが、これでハットンと激突?
盛り上がるのはイギリス周辺だけのような気がする。

歴戦の雄ヌドゥだが、これだけチャンスをもらってモノにできないのは、
決定的に欠けているものがあるから。
それはkiller instinctだ。
良いパンチをヒットさせるたびに、そこで一回満足しているように見える。
たたみ掛けるべき場面でも相手の気迫に押され、体も押し込まれる。
挙句、パンチはオープン気味。
マリナッジとメンタルを入れ替えてみたらちょうどいいかもしれない。
身体能力、メンタリティ、ボクシングスタイルが噛み合っていない。
このまま名のある負け役、会場の暖気運転役を続けるよりも、
ティモシー・ブラッドリーにあっさり喰われたほうがボクシングファンの記憶に残るよ。

WBC世界S・ライト級タイトルマッチ ジュニア・ウィッターVSティモシー・ブラッドリー

2008-08-05 03:24:48 | Boxing
ブラッドリー スプリットディシジョンで勝利

この内容でスプリットになるのか。
ウィッターの持ち味の変則スイッチが全くと言っていいほど機能しなかった。
どれだけ頻繁にスイッチを繰り返してもブラッドリーが肩と膝で刻むリズムを
乱せなかったのが敗因。
あれだけリズミカルかつダイナミックに飛び込んでくる相手に
ウィッター自身のリズムが崩された感がある。
ほぼ無意識のうちにその場その時のスタンスでスイッチしていたが、
この試合では「今は右じゃダメか、なら左だ」とか「いや、やっぱり右か」と
自問自答しながら戦っていたように見えた。
タイプは違うが、同じ変則チャンピオンの内藤の首を狙う日本人ボクサーたちが
なんらかの光明を見出したかもしれない。

ブラッドリーもこの顔で24歳って本当なのか?
しかし、そのボクシングは若さと躍動感にあふれており、
体全体で奏でるリズムは最初から最後まで途切れることはなかった。
6ラウンドにダウンを奪ったパンチの軌道は『はじめの一歩』の木村が間柴に見舞った
ドラゴンフィッシュブローを彷彿させた。
執拗なボディブローで意識を下に向けさせたわけではないのにあれがヒットするのは
踏み込みの速さだけでなく、なんらかの伏線、予備動作がないと説明できない。
パンチの軌道なのか、出所なのか、タイミング、それとも事前のフェイント?
分からない・・・が、勢いだけではなく、スピード、瞬発力、ボクシングスキルでも
ウィッターを上回ったことは評価に値する。
アメリカの黒人選手は貧弱なメンタルの持ち主が多いが、英米対決の敵地・英国で
これほど伸び伸びとやれるのは大したもの。
一発屋で終わってしまわぬよう、トレーナー、マネージャーらには
大胆かつ繊細に教育してほしいと思う。

WBA世界バンタム級タイトルマッチ ウラディミール・シドレンコVSアンセルモ・モレノ

2008-08-05 02:54:51 | Boxing
モレノ ユナニマスディシジョンで勝利

シドレンコとすれば1~4ラウンド全部取られたのが痛かったと思う。
戦前からリーチ、身長の不利は理解していたはずで、
またコルドバ戦などサウスポーもドローとはいえクリアしていた。
何が敗因となったのだろうか。
おそらく相手のモレノの妙な前傾姿勢に「パンチが届きそうだ」と錯覚させられたのでは?
いつになく左ストレートがガードの隙間をすり抜けてきたが、
パンチを打ちたい衝動に駆られて脇の締めが甘くなっていたのか、
それとも長さはあっても威力の無いジャブに自信過剰になったのか。
いずれにしろ、モレノのような上半身のくにゃくにゃしたelusiveな相手に対して
捨てパンチを打たないスタイルが災いしたといえる。

モレノはこの顔で22歳!?
いや、風貌のみならず戦い方までが老獪というか老成しており、
若さというものが感じられなかった。
それが良いか悪いかはここでは断じない。
腰を曲げて顔を前に突き出すような姿勢から小気味よくジャブを放つが、
これは誰に対してもこうなのか、それともシドレンコ対策なのか。
前者だとすれば、かなりの試合巧者。
後者だとすれば、とんだ一杯喰わせ者。
WBAバンタム王者ということで、日本のボクサーの標的となるが、
まずは2試合ほど防衛戦を仔細に観察してからにすべきだ。