BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

2010年 RECAPITULATION

2010-12-30 21:52:52 | Boxing
☆ Fight of the Year ☆

○ ジョバンニ・セグラ VS イバン・カルデロン セグラの8ラウンドKO勝利

意外に思われただろうか?
BoxingScene.comのCliff Roldとセレクションがかぶってるとか言わないでください。
偶然の一致です。
日本からでも手が届く階級。
安定王者の陥落。
技術vs根性という分かりやすい図式。
メキシカンvsプエルトリカンという構図もドラマティック。
ベテランと中堅という年齢差も哀愁を誘う。
ボディへの執拗なアタックと顔面へのカウンター勝負。
さあ、どっちが先に倒れるかというひたすら手に汗握る展開。
とにかくボクシングの魅力満載の一戦だった。


次点:西岡利晃 VS レンドール・ムンロー

次々点:ビック・ダルチニャン VS 挑戦者 ロドリゴ・ゲレロ


☆ Knockout of the Year ☆

○ セルヒオ・マルチネスがポール・ウィリアムスを2ラウンドKO
 
観戦記でも書いたとおり、パッキャオvsハットン、ドネアvsダルチニャン、
ターバーvsジョーンズを超えるワンパンチノックアウト。
ボクシング史にまた一つ、衝撃的なKOシーンが加わった。
連打によるレフェリーストップが多い中、
10カウントまできっちり入ったのもポイント高し。
唐突に見えて伏線が散りばめられた濃密な4分間だった。
巨木がゆらりと崩れ落ちるその瞬間に右手を高々と掲げるマルチネス。
目を見開いたままうつぶせで失神するウィリアムス。
ボクシングの勝者と敗者の強烈なコントラスト。
とにかくMARAVILLA(マラヴィーヤ)なノックアウトだった。


次点:フェルナンド・モンティエルが長谷川穂積に4ラウンドTKO勝利

次々点:ルシアン・ビュテがエディソン・ミランダを3ラウンドKO



☆ Decision of the Year ☆

○ 長谷川穂積がファン・カルロス・ブルゴスに判定勝利

心臓に悪いことこの上ない試合だった。
普通に考えて年間最高試合でもいいのかもしれない。
突然の連続KOで一躍その名を馳せた王者がKOで陥落、
新たな階級で世界を奪取した試合だから。
しかし、管理人的には長谷川のバンタム防衛ロードに不満があったのだ。
それは上述の突然のKO増加。
12ラウンド見せろ、というのはある意味で矛盾したファン心理。
コアなファンとは往々にして選手自身にとっても歓迎すべからざる存在である
ことは理解しているつもりだ。


次点:アンセルモ・モレノがネオマール・セルメニョに判定勝利(2試合)

次々点:亀田大毅が坂田健史に判定勝利


☆ Upset of the Year ☆

○ 李冽理がプーンサワット・クラティンデーンジムに判定勝利  

予想が外れて爽快な気分になるのは珍しいことではない。
なぜならその方がボクシングを楽しめるから。
しかし、この試合(&粟生の試合もか)に限っては、
御見それしましたと言うしかなかった。
戦力的に圧倒的に上と予想されるファイター型チャンピオンに
一階級下げて挑戦するという図式に、またかという念を抱いたファンも多かったはず。
自分もその一人。
しかし、現王者が挑戦者として見せたボクシングはゲームプラン、
コンディショニング、集中力、決断力、判断力のすべてをフル稼働させた、
まさに最近の日本ボクシングの中では傑作と呼べるものだった。
ガムシャラな特攻がもてはやされる傾向が依然続く日本において、
そのガムシャラさを正しいベクトルに向けた好個の一例にして、
多くの識者、ファンの予想を鮮やかに裏切った点でこの試合は特筆大書される。


次点:ジャン・パスカルがチャド・ドーソンに負傷判定勝利

次々点:シルビオ・オルティアーヌが亀田大毅を追い詰めた……??


☆ MVP ☆

○ セルヒオ・マルチネス

この一年のミドル級奪取と防衛は、その内容の鮮烈さと相手のネームバリューも手伝って
最高殊勲選手の栄に浴するに文句無し。
来年はコット戦も視野に入っているらしいが、
実はシュトルム戦やピログ戦の方が管理人は興味がある。
まさかのパッキャオ戦、もしくはメイウェザー戦実現ともなれば
現地まで飛ぼうかな。
 
次点:西岡利晃

次々点:マニー・パッキャオ

WBA世界Sライト級王座統一戦

2010-12-30 21:51:56 | Boxing
正規王者 アミール・カーン VS 暫定王者 マルコス・マイダナ

カーン 判定勝利

考察 ~カーン~

すべてのパンチがキレキレで目にも止まらぬ速さのコンビネーションを放つが、
闇雲にハンドスピードを重視するだけでなく、隙間も見えている。
打っては離れ、離れては打ちは自身の身体能力と疑問視されるアゴにマッチしており、
肝臓にめりこませた一発はパッキャオがマルガリートに効かせたのと同じコンビ。
左右の違いはあるにしてもローチの指導に間違いない。
それにしても惚れ惚れするスピードですね。
ジャブ、ワン・ツー、フットワークのいずれもが超速で、
連打のフィニッシュはしっかり体重を戻して引きの速さにもつなげている。
これでは打ち終わりを狙うのは難しい。
かといって始動を狙うのも難しい。
なぜならスピードボクサーに対峙した選手は往々にして見入ってしまうから。
先天的な要素のスピードを極限まで利したボクシングで、
なるほど28歳で引退したいと常々表明するわけだ。

欠点を挙げるならばバックステップ時のガードの置き所。
相手の追い足のなさも手伝ってのことだが、
スウェーも交えることができるはずなのにそれをしないのは
やはり一発を被弾することの恐怖が沁みついているのか。
誰かが喝破していたと思うが、ガードを上げるのは臆病さ、ガードを下げるのは勇敢さ
というを主張には素直に首肯できないが、カーンのようなボクサーを見ると
それも真理かなと思えてくる。
パッキャオと対戦しない(できない)のはここらへんにも理由がありそうだ。


考察 ~マイダナ~

puncher's chanceという言葉通りに、一発で相手を追い詰めたが、
惜しむらくは自身にもダメージが深く蓄積されていた。
抜群の回復力もやはり無尽蔵ではないということか。
10ラウンドの詰め時の単発アッパーへの固執を批判する向きもあろうが、
あれはあれで正解。
なぜならマイダナ自身のイズムだから。
ちまちまガードの上を叩いて隙間にぶち込むなどというのは
凡百のボクサーの仕事。
勝っても負けても価値が上がるボクサーというものは不変の哲学を持つべきだ。

それにしても見るほどに一撃に特化したボクサーで、
やや低めのピーカブーでタイソン風にのっしのっしと歩き回り、
打ち合い時限定だが、前後に開き過ぎと思えるほどのポジションからダッキングと体の戻りで
パンチにつなげるのだから日本人選手のみならず世界的に異端ではなかろうか。
Sライト級は順調に淘汰されていっているが、その他のトップ連中も危ない。
俺ならあんなの喰わないよ、とか高を括っていると想像されるが、
実際に対戦相手に選ぶプロモーターもマッチメーカーもいないだろう。
では我らが亀海が乗り込むか、あるいは招聘してはどうか。
うーむ、徳山vs長谷川のような見たいけど見たくない、みたいな感じがしますなあ。

閑話休題。
レフェリングについては不勉強なのだが、
コルテスのあの減点1にはルールブックに根拠が記されているのだろうか。
対戦相手への反則、危害ではないと考えるのだが。
ご存知の方はコメント欄ででもご教授賜りたいと思います。

Sライト級10回戦

2010-12-29 22:57:20 | Boxing
亀海喜寛 VS ホセ・アルファロ

亀海 6ラウンドKO勝利

考察 ~亀海~

ディフェンスに秀でているのは巷間言われる通りで
注目すべきはオフェンスマインド。
スウェーからショルダーブロックまで全てが次の攻撃の伏線になっている。
現代のトレンドであるスピード型、連打型とは一線を画すが、
距離によるパンチの選択と相手の反応(主にカウンター)を予期した防御は
高域で融合しており、時にインサイドで被弾するのは偵察を兼ねてのものだろう。
攻防兼備のボクサーで、あとは世界へ打って出るためのより明確な勝利が欲しい。
木村ノリオ(一発変換できない)との対戦がなかったことがまことに悔やまれるところ。
その木村との関連で言えば、たとえばコテルニクと対戦した時、
相手の堅牢なブロックを破れるだろうか。
あるいは破れないまでも、手数と精度で上回ってポイントを奪取できるだろうか。
日本の山を超える機会を逸したのだから、東欧の山をぜひ登ってもらいたい。
現状のSライト級はタレントがそろっており、割って入るのは帝拳といえども容易ではない。
もしウクライナで元王者を前王者を破れば、西岡に並ぶ快挙となる。


考察 ~アルファロ~

ボディを露骨に嫌がる姿勢は誰が見ても明らかで、
ガードも高く上げてはいるが、小堀の左フックを被弾したように
ディフェンス意識も高くなく、視界も広くない。
パンチ力に依存した一発屋と呼ぶのが適切なファイターで
まさに踏み台となるにふさわしい。
毎ラウンド開始の30秒~1分は攻勢を心掛けるものの続かず、
回を重ねるごとにボディへのダメージを募らせ、精神も擦り減っていった。
ボディが効いた時どうするか。
手数で相手を止める。
カウンターで止める。
足を使う。
様々なプランがあるが、そのどれも実行できなかった。
最後のダウンは嫌倒れで、続行可能な状態ではあっただろうが、
カウントされている最中にレフェリーから視線を逸らすのは愚の骨頂。
王座への返り咲きは不可能と断言する。

Sフェザー級10回戦

2010-12-27 19:01:20 | Boxing
ホルヘ・リナレス VS ヘスス・チャベス

リナレス 4ラウンド終了TKO勝利

考察 ~リナレス~

精神的なダメージから回復し、階級アップも視野に入れていることから
肉体的なコンディションも良かった。
高速ジャブからの左右ショートアッパーの切れ味を今回は試すプランだったかな。
ダメージングブローというよりは牽制かつジャッジへのアピール的な意味合いが濃そうだが
「左を制する者は世界を制す」のだから、これでいいのだ。
バックステップの際のガードの置き所もルーズにならず、
この方向でのスタイルチェンジもある程度完成したといえる。
これはA・カーンと共通点を持つ。
すなわち、自身でも自覚している「初回の体の冷たさ」は完全に解凍、
じゃない解決されていないということだと思うが、敢えてそれを試す必要はもはやない。
だが初回終了間際の連打は体の硬さの方が目立つようだった。

今回初めて目についたのがリナレスの左右の耳の腫れ、潰れ具合の違い。
左の方がやや程度が悪いね。
サルガドに喰った左は右テンプルだった。
右の顔面はもらい慣れてないのかな。
その点をテストする必要もやはり無いと思うが。


考察 ~チャベス~

ガードの置き所すら決められず、まさにスピードに翻弄されっぱなしだった。
打たれ慣れているとはいえ、打たれるほどに脳内麻薬全開となるような年齢でもメンタルでもなく、
トレードマークの左、とくにアッパーとフックは「昔取った杵柄」たりえず。
当たるパンチと当てさせてくれないパンチと当てさせてくれるパンチが
自分でも容易に分かっただろうが、だからといって遮二無二勝ちに行く姿勢はなかった。
単に生き延びるためのtrickならばいくつか隠し持っていただろうが、
それを使おうとしないあたりもある意味で矜持。
豊富なキャリアを誇る選手ゆえに受けて立つようなボクシングになりやすく、
経験豊かでかつ今後も視野に入れているからこそ見切りも早くなるのかな。
怪我のしやすさとどう付き合うかを今後はテーマにするのだろう。
再来日はないと思うが、あるとすれば亀海の世界前哨戦かな。

WBA世界Lフライ級暫定王座決定戦ローマン・ゴンサレス VS フランシスコ・ロサス

2010-12-27 18:15:46 | Boxing
ローマン・ゴンサレス VS フランシスコ・ロサス

ゴンサレス 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ゴンサレス~

当て勘に優れるのは新井田戦前から判明していたことだが、
打ち合いの最中のみならず、仕留めにかかるシーンでもその実力がいかんなく発揮された。
腰のタメと膝のバネが連打に効いていて、豪腕のみならずセンスも感じさせる。
F・モンティエル的と言えばいいのかな。
レバーブローは重く、コンビネーションはキレキレ。
2回のダウンを獲った、それぞれの連打見た?
ニカラグアはコンスタントとは言えないが、実に特徴的な選手と輩出する。
ただし、実力を安定して発揮しているだけのメンタルと調整法を持っているかどうかは
今後2~3戦を見てあらためて判断することになる。
ジョバンニ・セグラとの対戦なった暁には凄絶な打撃戦となりそうだ。


考察 ~ロサス~

急遽抜擢された代役ということで負け役の気配が漂っていたが、
首へのホールディングからあわやのノックダウンの演出など
どうしてなかなかの反骨精神の持ち主だ。
勢いのままに打ち合いに突入し、華麗かつ豪快に顔面にパンチを浴びる様は
そんじょそこらのカマセ犬にはできない芸当。
ロサスがカマセ犬だという意味ではない。
オーソドックスがオーソドックスの左アッパーが見えていないということは
そのアッパーの使い手の技量が称賛されなければならず、その逆はない。
井岡は記録狙いの世界戦よりも前哨戦にこれぐらいの相手を明確に退けた方が良い。

WBA世界バンタム級王座決定戦

2010-12-27 01:05:23 | Boxing
亀田興毅 VS アレクサンドル・ムニョス

興毅 判定勝利

考察 ~ムニョス~

かつての対日本人戦は今や参考にはならず、
復帰戦以降は見ることが出来なかったので
比較の材料になるのはミハレス戦、川嶋戦となる。
(相澤戦は論外)
それ以前のムニョスのパンチはミサイルの発射台さながらの下半身の強さとタメで
打っていたが、以降は上半身とリーチのしなりを活かしてヒットポイントを遠くすることで
打たせずに打つボクシングに変わっていた。
(それ以前はパンチ力そのものが威嚇になって挑戦者は打てなかった)

黒光りする肉体と意志のこもった表情はなく、
実際にパンチは伸びなかった、というより伸ばせなかった。
ミハレス戦では中盤以降、相手のボディワークに手を焼き、
川島戦では終盤(11ラウンド除く)に下がる相手を詰め切れなかったことからして
動く相手を追う足はなかったわけで、実際に追い足の無さを披露してくれた。
ボクサーは様々なカテゴリに分類でき、この選手はフィジカルで分けるなら瞬発力型。
スピード型と並んで年齢、そしてブランクが一番の敵となる。
経験と勘に優れるボクサー型はアウトボクサーとしての純度を高めるか、
あるいは省エネのためにあえてファイター型にシフトすることもある。
前者の代表例はW・クリチコ、後者の代表例はJ・ペニャロサ。
ムニョスにはしかし、いずれの展開もなかった。
なぜなら元々息が長いファイトスタイルではなかったから。
(身も蓋もないな)
パンチが威嚇にならず、射程も短く、ハンドスピードもないようでは
カウンターパンチャーの餌食となるしかない。
事実、完敗だった。

色々な重石もこれで無くなっただろう。
今後は日本の新世代のための良い踏み石になってくれるのだろうな。
今でもネームバリューだけは抜群ですから。


考察 ~興毅~

うん、素晴らしいパフォーマンスでしたね。
かつて日本のリングで猛威を振るった強打をことごとく防御。
基本に忠実な高いガードとモーションの小さな正確なカウンター。
ゆるい左ジャブに被せるサウスポーならではの右フック。
効き手のアッパーに連動して下がる左ガードを突いた右フックに左ストもポイント高し。
右の強打を常に念頭に置きながら、なおかつ自身の右フックにこだわりを持つのも
パッキャオを意識しているようで非常に見栄えがいいですねえ。
そしてホルトがトーレスとのリマッチをフィニッシュしたコンビネーションの
再現を見るかのような見事な12ラウンドのノックダウン。
前半のラビットパンチのアピールも最後に生きましたねえ。
レフェリーも人の子、貸し借りの感覚は必ずあるものです。
いやはや、様々な技の使いどころを心得てますねえ。
石橋を叩いて壊してきた相手に、石橋を叩いてもギリギリまで渡らないスタイルは
計算高さ、もといインテリジェンスの証明ですよ。

長く君臨していた長谷川のバンタムを、長谷川と同じく飛び級で制覇するというのは
どこかしら運命的なものすら感じさせられますね。
フライ、Sフライだけじゃない。
バンタムだって日本のものだよという気概の表れと受け取りたい。
防衛2桁を目指してほしいですねえ。
それにしても対戦相手がムニョスというのも渋いですなあ。
日本のリングを荒らしまくった怨敵で、ファン、関係者の溜飲を下げてくれましたね。
そうそう、日本にはまたまた良いことわざがありますね。
「腐っても鯛」
つまり、衰えててもムニョスはムニョスってことです。
さあ、皆さん。
この前人未到の業績に惜しみない喝采をどうぞ。

PS.
トランクスを下げてローブローをアピールするって……
実況は頭がオカシイ。
忘年会を優勢して録画で見て正解だった。

WBA世界フライ級タイトルマッチ

2010-12-26 23:42:10 | Boxing
王者 亀田大毅 VS 挑戦者 シルビオ・オルティアーヌ

大毅 スプリットディシジョンで防衛

考察 ~大毅~

ジャブの引きの速さを意識するのは相変わらず兄貴の影響か、
それとも兄貴への憧憬か。
かっこいいボクシングをしようという意識があるのは
本人のものではなく家族、ファン、TBSの意向だろう。
ジャブに牽制もしくは威嚇の意図がこもっておらず、
圧力をかける際には右肩を固くした右ストのみに頼る。
斜に構えてカウンターを取ろうとするのは分かるが、
大毅にはそのようなセンスはない、というか似合わない。
相手を見れば見るほど、手数が減るタイプだから。
これは久高や以前の粟生と同じで、よろしくない意味での
エゴイスティックな面があることの証明になってしまう。
回を進めるごとに手数が減るのはジャブの使い方を知らないから。
つまり積極的に打ってくる、もしくは駆け引きしてくる相手との試合経験と
スパー経験が圧倒的に欠けているのだ。
坂田戦のパフォーマンスの素晴らしさは研究の成果であって
ボクサーとしての能力の証左ではなかったという結論を下さざるを得ない。
兄弟全員に当てはまるのかもしれないが、格下か徹底的に研究した相手でないと
持ち味が出せないのかな。
元々そうなのか、それともぬるいマッチメイクを通してそうなったのかは
今となっては判断できないのだが。
世界フライ級王者としての日本での歴史的位置づけはかなり微妙なところに来る。


考察 ~オルティアーヌ~

115-113で挑戦者の勝ちかと思ったが、118というスコアには首を傾げる。
王者の姿勢を圧力と称してポイントを振るならば、河野vsロハスはもっと競ってもよかった。
また徳山もペニャロサ相手に失冠していたはず。
もしくは川嶋はvsミハレスⅠに勝っていた。
まあ、スプリットという判定はある意味で納得しなければならない。
なぜなら徳山も川嶋もスプリットで生き延びた経験があるから。
オルティアーヌに話を戻すと、注目すべきはadjustability。
序盤は王者のパンチ力とハンドスピードに敬意を表し、
中盤の入口で始動モーションと軌道を見切るや、手数とフットワークにシフトした。
見切ったと考えられるのは下の3点。

①カウンターの左フックはまずボディに来ない
②右ストレートは射程は長いがヒットポイントは近い
③スウェーには効果的なバックステップが伴わず、2~3発目は当たる

つまり、出入りのタイミングさえ大失敗しなければ手数でポイントは稼げる。
事実、そのようなボクシングになった。
こう書くとアマチュア的なエッセンスにあふれるボクシングのようだが、
resourcefulness=臨機応変さが求められるのはプロなのだ。
(アマチュアに必要なのはメンタルとフィジカルのstability)
ルーマニアというとヨーロッパへの亡命ルートが確立しているそうだが、
フライ級にも門戸が開放されていることに驚きを覚える。
今度来日するとすれば日本のSフライ級連中の世界前哨戦になるのかな。

PS.
鬼塚のヨイショは聞いていて不快というか気味が悪くなってくる。
TBSの実況はただただ不愉快。

Sバンタム級10回戦

2010-12-26 22:58:04 | Boxing
亀田和毅 VS ビチットチャイ・ツインズジム

和毅 3ラウンドTKO勝利

考察 ~和毅~

以前見た試合では中間距離の探り合いと譲り合いに終始した感じだったかが、
相手が格下になるや、良いボクシングをするなあ。
ディフェンスはブロッキングと上体の柔軟さに依存していて、
二枚腰を持っているのは強みになる。
初回一分以降に距離を掴んでからのリードがフックになるのも日本的でなく
ガムシャラな連打ではなく意図を込めたコンビネーションパンチャーの卵だ。
身体能力とボディメカニクスを意識した練習をしていることが分かる。
一方で連打はガチャガチャ感が抜けず、頭を低くして無理やり潜り込もうとするところは
幼少からの親父ボクシングが沁みついていることをうかがわせるが
額をすり合わせる距離になるとショートの左アッパーから崩しにかかるところは
さすがメキシコ帰りか。
日本人の8~10回戦では大振りフックをボディに集めるところで、
セオリーからして違う。
世界を獲る予感は感じないけれど。


考察 ~ビチットチャイ~

典型的負け役ですね。
バッティングにバッティングで応じれば気合いの持ち主と評することができるが、
それをすると今後日本に呼ばれなくなる。
サウスポーのジャブを使わなかったのは相手のフックのハンドスピードに
対応できないことを1分で悟ったからに他ならず、
あとはどう美しく散るかがテーマだったが、
タイ人はムエタイの素養があるからか体が柔らかい選手が多く、
ボディ以外では一発KO負けはしてくれない。
軽いパンチでころころ転がるのはマニアの審美眼には適わない。

大阪鶴橋焼肉探訪記Ⅱ

2010-12-26 14:14:45 | Private
2010年11月某日。
2度目の来店がまさか1年余りも後になるとは思わなかったが、
またも徳山の経営する「まる徳」にやってくる。
前回は男4人組みだったが、今回は男2人女2人。
さてさて何を食べようか。

余談であるが、焼肉屋の値段設定は大まかに二通りに分けられる。
すなわち、セットメニューの方が高くつき、単品注文の方が安く上がる場合と
セットメニューの方が安く上がり、単品注文の方が高くつく場合と。
どちらの値段設定にもそれなりの理由がある。
ま、そこは深く追求しないでおこう。
知り合いに焼肉屋さんがいたら尋ねてみてください。
思わぬ理由にはたと膝を打つかもしれない。

今回は肉もサイドメニューも単品で攻略にかかる。
カルビ、ロース系はハズレがない。
豚トロ(レモン汁)がないのは残念だが、
日本風焼肉を追求しようという気風と受け取ろう。
それもまた良し。
コリコリとな?
血管系はあまり食した経験はなかったが、これは思わぬ珍味。
コレステロールだとかそんなものは気にしても仕方なかろう。
歯ごたえと食感を存分に堪能する。
テッチャン、ホルモンを食べてあらためて思うが、脂肪の削ぎ落とし加減は
地域で決まると同時にその店の方針でも決まっているようだ。
噛むほどに口の中で脂が溶けていく感触を好む向きもあれば
腸そのものの味と咽喉ごしを楽しむ人もいるだろう。
関西でも関東でもこのあたりは地域性と同時に店のポリシーが出る。
ちなみに前者は関東、後者は関西に多い気がする。

会計では4人で25000円弱。
うーむ、食った量は前回とさほど変わらない、むしろ女性陣を交えていることから
より安く上がるかと思っていたが、5000円高くなった。
今後はセットで攻めるとしようか。
レジ打ちは待望のチャンピオンその人。
つーか、そうなるように階段の踊り場で待ってたんだけどね。
すかさず握手をしてもらい、記念写真の撮影もお願いする。
元王者は破顔一笑で快諾した。
(諸事情あってその写真がアップロードできません……)

「チャンピオン、西岡選手は来たりしますか?」
『ああ、西岡なら昨日来たっす』
え……?
来るのが一日遅かったか……
尼崎あたりの方がばったり出会える確率は高いかもしれない。
「こないだチャンピオンになった李冽理なんかは?」
『ああ、先週来ましたよ。つーか、あいつはしょっちゅう来るっす』
これは朗報。
会えたならば握手させてもらおう。
『いやあ、あいつ凄かったすよね。自分、あいつは強くなる思ってたんすよ』
「後継者誕生ですね」
会計をカードで済ませ、店の外で記念撮影。
連れはほとんど訳が分からないまま私のはしゃぎっぷりを見ているが、
そのうち我も我もと記念撮影を王者にせがむ。
ふむふむ、布教活動は順調のようだ。
頃合いを見て撮影終わり。
「チャンピオン、ちなみに今はSウェルター級ぐらいですか?」
『いや、ミドル級っす!』
「SバンタムでA・モレノあたりどうですか?」
『いやいやいや(苦笑)』
店の経営も順調そうで本人も楽しそうなのだからこれでいいのだ。

WBA世界Sフライ級タイトルマッチ

2010-12-23 23:18:09 | Boxing
王者 ウーゴ・カサレス VS 挑戦者 久高寛之

カサレス 判定勝利

考察 ~カサレス~

真正直に追ってくる相手を得意とはしていても
ちょこまかと動き回る選手は得手としてはいない。
不得意、苦手というわけではないだろうが、
せっかく戦前に挑発したのに前に出てこないことで
名城ほどにはダメージを与えられなかった。
それでも5ラウンドだったか、終了間際のコーナーを背負っての
アッパーを交えたアゴへの3連打。
なかなかに魅せてくれますなあ。
スピード、パワー、スタミナなどのフィジカルの要素は全てわずかに
挑戦者に劣ると感じられるが、頭脳と技で勝負できるのがボクシング。
スイッチ後に挑戦者が時計回りを採用すると身をかがめての長射程のジャブ、
ストレートでの入り端に宝刀の左アッパー、
L字ガードに対しての上下の打ち分け、
下がる相手に上を意識させてボディへ突き刺すなど
なんでも器用にこなす能力を持っている。
技の引き出しをいつ開けるかを知っていて、それこそがキャリア。
それゆえに一芸に秀でてさえいれば攻略可能な雰囲気も漂わせるが、
かつてのミハレス、そして今後のロハスがそうなると予想されるように
日本人相手にオイシイ商売を続けていくのだろうな。
佐藤、粉川、名城、河野あたりでは誰もタイトル獲れそうにないのが悲しい。

数年前にミハレスが川嶋とのリマッチをKO決着した試合で
コミッショナーに「アリガトゴザマス」と流暢に話しかけたが、
カサレス本人も「ドモアリガト、オゥサカ」
陣営のマネージャー(?)も名城に「勝ったら次お願いします」
またメキシコの王者から親日家が誕生してしまったのか。


考察 ~久高~

口の端をわずかにゆがめ、期するところありげにほくそ笑む表情から
ついに一皮剥けたかとの印象を抱いたファンは多かったと思われる。
しかし、その期待は最初の3分間しか持続しなかった。
右ボディ、右ショートストレートは打ち出しも引きも速いが、
それゆえに威力も乗らず、また連打も出来ない。
それが悪いということではなく、そのスタイルがまだ完成していないのだ。
ロイ・ジョーンズやメイウェザーのmaneuverをパクるのは結構だが、
手詰まりになった際の持ち駒にオリジナリティがなければ
世界を勝ち取ること、ましてや勝ち抜くことなど思いもよらない。
カウンターの右ショートストレートとフックで中盤にチャンスは訪れたが、
それをものにできるほどの境地には達しておらず、また今後の成長も難しいかもしれない。
まさか右目の傷をヒッティングによるカットと判定されて
前に行けなくなったとかそういう落ちはないよね?
瞬間的な攻防のやりとりだけで明らかに満足しているようでは
ボクサーではなくパフォーマー。
センスあふれるボクサーをどうしてもトレースしたいというなら
やはりお勧めはセルヒオ・マルチネス。
ボクシングにおけるダンディズム、つまり自身の美学を手に入れてもらいたい。
もしくはN・ドネアもいい。
必殺の左で世界を獲るとか煽られていたが、結局その左は一切火を噴かなかった。
カサレスのスイッチの瞬間に左フックを(威嚇でいいから)ぶちこめていれば
少しは展開も変わっていたはずだ。
あの日あの場所で握らせてもらった君の拳から、まだグローブをはずす時ではない。