BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC・WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦

2012-10-15 00:35:20 | Boxing
ドネア 9ラウンドTKO勝利

考察 ~ドネア~

一時期は慢性的な拳の怪我やプロモーターとの確執で不活発だったが、
やはりボクサーは、特に若いうちは、試合してナンボか。

カウンターの左フック一閃のイメージが強烈だが、
実際には左アッパーに右ストレートも重く、さらに切れる。

序盤は西岡のハイガードを突き崩すことはできなかったが、
自在に手数を出すうちに完全にリズムを作れた。
ドネアは元々ボリュームパンチャーではなく、
ワン・ツー・スリーからステップバックもしくはサイドステップで
様子見を繰り返すタイプ。
この試合でもそれは顕著だったが、とにかく相手のリターンがないので、
完全にリズムに乗れた。
バスケスJr戦はリターンにやや手こずり、
マセブラ戦では強引に詰める過程で不用意に被弾していたが、
そうした短所が修正されたのか、出なかっただけなのか。
とにかく西岡にとっては付け入る隙が見いだせなかった。

フィニッシュもロープを背にしながら実は相手を誘い込んで、
狙いすました右ストレート一閃。
クロスカウンターはスリリングだが、
このような正調カウンターには思わずため息が出る。

スピードとパワー、技術でも上回られ、経験においても互角以上だったか。
バンタム、Sバンタム近辺の日本ボクサーのリベンジなど夢のまた夢だろう。
リゴンドーとの真の頂上決戦が見たい。


考察 ~西岡~

ブランクの影響はないと予想していたが、
さすがにそれは楽観が過ぎていたようだ。
明らかに動きが切れておらず、減量苦があったようにも思えた。
軽量後に日の丸の旗に上半身を包んだのも皮膚のかさつきなどを
見られたくないという心理に基づくものだったのだろうか。

1ラウンドを観た時にパッと思い浮かんだのは、ミハレスに挑んだ菊井。
僅か1ラウンドでどう見ても勝ち目がないと見ている側に伝わった。
ジョニゴン戦では常に右ガードの高さを維持しながらも
打つ構えを見せ、実際には打っていた。
この試合では右ガードを維持することだけで精一杯だった。

ドネアの左フックはサウスポーの右ジャブに優るスピードで
飛来してくるので、不用意に右が出せないのは分かるが、
西岡ほどのメンタルタフネスの持ち主が臆してしまうのも解せない。
葛西トレーナーあたりが、
「俺はバスケス相手に不用意にジャブを出して倒された。
 いいか、お前は気をつけろ」とかいうアドバイスにならない
ことを言ったのかと勘ぐってしまうほどだ。

唯一の見せ場は6ラウンド。
ダックで回避しようとした瞬間に左アッパーが突き上げられた。
本人の意識の中では何をもらったのかさっぱりだったろう。
ダウン後に開き直って左ストレートを振るったが、
これには踏み込みがなかった。
あの2発でドネアも一瞬だけ怯んだが……

それにしても2度目のダウンのダメージは深刻だった。
軽いカウンターの右ストに見えたか、綺麗顔面にヒットし、
腰からストーンと落ちた。
ジョニゴン戦で喫したダウンは尻餅だったが、
このダウンでは腰がキャンバスに着いた瞬間に
交通事故でムチウチになる時に見られるような後頭部の上下動があった。

本田会長が言っていた「ダメージを受ける前に辞めたほうがいい」
という言葉そのままの、賢明なタオル投入だったと思う。

ありがとう、西岡。
同じ尼崎市民として、あなたの芯の強さを誇りに思う。

WBC・WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦 予想

2012-10-14 10:50:30 | Boxing
WBO王者 ノニト・ドネア VS WBC王者 西岡利晃

予想:ドネア 判定勝ち

ドネアと言えばダルチニャン戦、シドレンコ戦、モンティエル戦の
戦慄すべきKO劇ばかりが思い出されるが、
すべての試合でパーフェクトなパフォーマンスを
見せてきたというわけではない。

対して西岡の最近のパフォーマンスはどれも及第以上。
1年のブランクもマイナスに作用する可能性は低い。
逆にまぶたや拳の古傷にとってはプラスだろう。

この試合はtacticsよりもphysical & mental conditionの観点から
結末を予想すべきかと思う。
そこからすると五分もしくはドネアが僅かにリードという感じか。

ただ、ボクシングには時に相性というものが働き、
それがこの試合にも影響を及ぼしてくると思われる。
具体的にいえば、ドネアがサウスポー殺しであるということ。
これは背が高いとかリーチがあるとか、あるいはアゴが強い弱いなどの
所与の条件と同列に並べていいほどだと考えている。

西岡がドネアの左殺しの左フックをやすやすと喰うとは思わないが、
右のリードなしに西岡がドネアに左ストレートを炸裂させられるかが疑問。
ジョニゴンを吹っ飛ばした左の時に見せた二段階ステップは
ドネアの頭脳にインプットされていることだろう。

総合的にややドネア持ち。
しかし12ラウンドにわたってスリリングな展開が約束されているだろう。

ライト級10回戦

2012-10-09 00:21:36 | Boxing
ホルヘ・リナレス VS エクトール・ベラスケス

リナレス 判定勝利

考察 ~リナレス~

ファーストコンタクトで居着いてしまった弱気の虫が目を覚ましたか。
主武器の右のカウンターが縮こまってしまっている。
コンビネーションの速さは相変わらずのものがあるが、
相手のパンチをガードの上から無条件に立て続けにもらう瞬間があり、
パンチをじっくり見たい、躱しそこねて喰うよりはがっちりガードしたい
という欲求が透けて見えるようだ。
適切な喩えではないかもしれないが、往時のアンドレ・ベルトのような
メンタルになってしまったと考えざるを得ない。
蝶のように舞い、蜂のように刺すと言えば聞こえはいいが、
逃げのボクシングに見えてしまう。
自分からロープに退く、あるいは相手のプレッシャーに押される形で
背中をロープにつけてしまうなど、見栄えがよろしくない。

3階級目は正直厳しい。
打たれ弱いことがそのまま弱点になるのではなく、
打たれ弱いことを弱点だと自覚してしまったことが欠点となっている。
弱点は修正が効くが、欠点はそうではない。
メンタルの大改造が必要だが、
ベネズエラ生まれの日本育ちという背景がプラスに働くか否か。
この判断は猛烈に難しい。


考察 ~ベラスケス~

ラフファイター。
74戦というキャリアは伊達ではなく、
ハイライト映像で見るにパッキャオのパンチを浴びても
平然と打ち返し、逆にダメージを与えていた。
我が町・尼崎まで試合しに来た経験もあるなど、
骨の髄までjourneymanか。

この試合もいきなりパンチを頭を同時に打ち出していた。
相手が打たれ弱く、連敗中であることを見越し、
なおかつ開始早々には注意も減点もなかなか来ないと
分かっていて故意にやっているとしか思えない。
あと3年、12戦は戦うのだろうな。