BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC米大陸Sウェルター級タイトルマッチ

2011-11-21 23:08:01 | Boxing
アルフレド・アングロ VS ジェームス・カークランド

カークランド 6ラウンドTKO勝利

考察 ~カークランド~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を学んでへんのかい!?」
石田戦でいきなりダウンし、守ることを忘れ、
カウンターを浴びまくった悪夢の再来を思わせたが、
クリンチはできずとも"Protect yourself at all times"の
ポリシーは身に付けたか。
1分30秒時点ではホールドが空振りし、コーナーで連打を浴び、
ストップは目前かと思われたが、パンチは見えてはいたようで、
ディフェンス意識とアゴへの疑問はそのままだが
回復力は証明したと言えるかもしれない。

ボクシングでは往々にしてあることだが、
自分が効いてトラブルに陥っている時ですら、
相手に効いた瞬間が訪れれば即座に立場が逆転することもある。
真っ先に思い出されるのはやはりコラレスvsカスティージョ。

攻撃力の高さに定評はあったものの、ディフェンスに難ありというのはよくあるタイプで
技術的な欠点は修正されているようには見えなかったが、
敗北から精神的に教訓を得たところの評価は大きい。
人間なかなか変わらない(変われない)というのが管理人の持論だが、
こういうふうに”精神的に”変わった姿を見るというのは衝撃的で、
カークランド評とともに自分の考えの方も変わってしまいそうだ。

石田へ雪辱せずに世界戦というのは自他共に納得できないだろう。
もしくは世界タイトル初防衛に石田を選ぶというシナリオか。
それにしても試合枯れでfade outしつつあった石田の株が
ここへ来てまた急上昇してきた感がある。
これは私的にFight of the Year候補。
来年まだまだカークランドには頑張ってもらわねばと思うのだが、
精神面の次は技術面を磨かなくてはテクニシャン相手に競り負けそうだ。
そのあたりはアン・ウルフに期待するとしよう。


考察 ~アングロ~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を知らんのかい!?」
実際にクリンチの必要性など知らず、無造作に勝ち、
そして無造作に負けてきたことでカークランドと明暗別れたのかな。

元々ガードの置きどころが悪く、打たなければ打たれていたし、
無造作にスイッチしてシャープさに欠ける右ジャブにカウンターを
かぶせられたりしていたが、タフネスひとつで乗り切ってこれたのは
そのタフネスを上回る攻撃力の持ち主とぶつからなかったという幸運のおかげだったようだ。
シントロン戦で一瞬効いた素振りを見せただけで、
アゴの強さは階級出色だと思っていたが、歴戦のダメージがあったのか?
そこまできついマッチメークをこなしたキャリアではないにしろ、
パンチというのは食えば食っただけ微小なダメージが蓄積する。
それが一気に噴き出すのはやはり精神的に負けを認めてしまった瞬間だ。
今後のトレーニングとマッチメークは相当慎重に行う必要がある。

ここで少しワイルドな妄想をすると、
このアングロに完勝したシントロンを2度にわたって正面から押し潰したマルガリートを
完膚なきまで叩きのめしたパッキャオ……と3度伍したJ・M・マルケスと考えると、
やはりボクシングには相性というものが存在するらしい。

それにしても最後のCancunのファンのブーイングは何だったのだろうか?
まさか早いストップで不満というわけはあるまい。
ならばストップのタイミングが遅かったということに対する不満か。
レフェリーの仕事というのはつくづく難しい。

ミドル級10回戦

2011-11-21 22:33:48 | Boxing
ピーター・クイリン VS クレイグ・マクイワン

クイリン 8ラウンドTKO勝利

考察 ~クイリン~

ジョー小泉は「スリルがある」と評するが、管理人の感想は異なる。
うまい表現がなかなか出てこないが、
なんというか人が死なない2時間サスペンスドラマのような
煮え切らなさ、もどかしさを観ていて感じてしまう。
killer instinctが足りないというよりも精神的な余裕の無さなのかな。
断言はできないが、今後ステージが大きくなり相手のレベルが上がれば
どんどんカウンターパンチャー化が進んでいくと考えられる。
売り出そうとすればするほど地味になっていくのだろう。
ただしそれは全体として見た場合で、パーツを取り上げていけば
随所に光るところがある。
たとえば右の打ち出しと引きの速さは、黒人特有の速筋云々というよりは
ボクシングをするために生まれてきたとしか思えない鮮やかな軌跡を残す。
来年には本人も観ている側も震え上がるような、
サスペンス溢れるマッチメークを期待したい。


考察 ~マクイワン~

いくらなんでもストップが早すぎる。
『効いた』というのと『勝負アッター』というのは全くの別物だ。

長身サウスポーというのは型にハマっていることが多いが、
この選手は悪い意味で期待を裏切ってくれる。
インサイドでガチャガチャやるのは本来の姿ではあるまい。
長い距離から打ち下ろすのが本来のスタイルだと思われる。
ただそれが通用しなくなるレベルに来たときに二枚腰で踏ん張れるかどうかか問題だ。
ミドルレンジで形勢不利ならばクロスレンジでの勝負を選択するのは必然とはいえ、
相手のハンドスピードから積極的に逃げた姿勢と言えなくもない。
クリンチ多用については管理人は擁護派だが、普通のファンは反対派だろう。
ただし、レフェリーはいかなる場合においても中立であるべき。
"Break"や"Walk out"の指示を出すときにレフェリーが近くにいないと
メイウェザーがオルティスに見舞ったlegal sucker punchが出るかもしれないし、
ホールディングに対してボクシング指示を出しながら、一度も正式な注意をしなかった。
度重なるクリンチの代償がこのタイミングのストップということなら
ボクシングの本質が変質しかねない。

WBO中南米フェザー級王座決定戦

2011-11-21 22:33:23 | Boxing
ファン・マヌエル・ロペス VS マイク・オリバー

ロペス 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ロペス~

初回から印象的な右フックを4発、左ストを2発食い、
さらに2回にも右フックを2度もろに被弾した。
前戦の内容からまず見るべきはディフェンスの技術と意識。
その部分に改善が見られなかったのは私生活のトラブルが原因なのだろうか。
倒す味を覚えて雑になったというのなら世界を獲る前に淘汰されていそうなものだが、
類い稀な攻撃力がそのタイミングを不幸にも遅らせてしまったのだろうか。
一発のない相手だから少々被弾してもOKというのは完全な間違いで
このままでサリドとの再戦やフェザー級トップ戦線復帰に臨むことは
歓迎すべき判断とは言えない。


考察 ~オリバー~

31歳でこの童顔はどういうことか。
ボクサーは別に見た目で相手を震え上がらせる必要はないが、
こういう相手を目の前にすると闘争心ではなく母性が湧いてきそうだ。
マシンガンというニックネームの片鱗は初回ほんの数秒だけ見せたものの、
あとは典型的な負け役のボクシング。
右フックに光明が見えたが、ルーズなディフェンスを突けるほどの
攻撃力は持っていなかった。
ただしこの選手が露わにしたロペスの穴にほくそ笑んだフェザー級ランカーは
中南米で十指に足りないだろう。

WBOインターコンチネンタル・Sフェザー級王座決定戦

2011-11-21 21:25:09 | Boxing
ローマン・マルチネス VS ダニエル・アッター

マルチネス 6ラウンドTKO勝利

考察 ~マルチネス~

目のフェイントでサウスポーを追い詰めたというよりは
パンチ力と強面で威嚇してコーナーに追い込んだという方が正確か。
最初のダウンは顔面へのスマッシュ。
右ストの突っ込みから小さくバックステップしてからの
右の戻しの反動で打ったサンデーパンチ。
サウスポー崩しの定石を打つというよりは
その場で対してみての感覚を重視するタイプなのかな。
凝視の瞬間に軽い左ストを食うのはお約束。
サウスポーへのスイッチは癖なのだろう。
普通に長い右ストレートとインサイドでの印象的な左右ショートアッパーで
王座返り咲きはタイミング次第で充分可能。
ただしディフェンスに関して課題を残すので長期防衛については
否定的な見方をせざるをえない。
内山の将来の対戦候補として実に興味深い。
英国へ出向くほどだからオファー次第で来日してくれそうだ。


考察 ~アッター~

ナイジェリアと聞くだけでワクワクしてくるのは
アフリカという未知の大陸への
アフリカでもガーナや南アフリカはボクサー産出国として
地位を確立しているが、ナイジェリアはサミュエル・ピーターぐらい。
日本の大輔現象を考えると後継ボクサーはあと10年から15年後に登場か。

サウスポーの典型というか気弱ボクサーの典型だった。
リードで左フックは来ないのだから、右ジャブでペースを取れたはず。
それができないのは顔面の迫力負けだろう。
バッティングアピール中にダウンを食らうところも哀愁を誘う。
5ラウンドあたりから出し始めた右ボディは効果的にヒットし、
実際に相手も嫌がっているように見えた。
もっと早い段階でこれができればと思わせるが、
追い詰められてからでないと反撃できないメンタルの弱さは
管理人の bias を reinforce する。
負け役としては充分な健闘か。

WBO世界Sライト級タイトルマッチ

2011-11-17 19:54:45 | Boxing
王者 ティモシー・ブラッドリー VS 挑戦者 ホエル・カサマヨル

ブラッドリー 8ラウンドTKO勝利

考察 ~ブラッドリー~

パッキャオ戦に目が眩んでキャリアの大事な時期に数ヶ月を無為に(敢えてそう云う)
過ごしたボクサーがここにも一人。
ブラッドリーのボクシングの本質は踏み込みと手数。
この両者が渾然一体となって、はじめてバッティングが容認される。
近年のボクシングはよりskillfulに、よりtacticalになること目覚しく、
ホプキンスがライトに食らわせたように、
ポンサクレックが亀田興毅に食らわせたように、
バッティングもカウンターで放つ選手が現れる時代だ。
そのような時代の趨勢に抗い、かつてのKorean fighterよろしく、
嵐のような手数と前に出る勢いの持ち主が、
この大人しいボクシングとは何事か。
ジョー小泉ではないが、パンチのない選手でも強くは打てるだろう。
しかし、それでは効かせられないのだ。
古豪をTKOしたのは事実だが、Sライトの統一路線を放棄した罪はこの程度では消えない。


考察 ~カサマヨル~

ララ、リゴンドー、ガンボアとCuban Sensationが躍進する中、
世代の筆頭たる意識はないのだろうか?
それとも負けぐせが染み着いてしまったか。
コラレス、カチディスを破り、マルケスと激闘を繰り広げた頃は
当代随一のカウンターパンチャーだったものだ。
試合前からバッティング対策に「アメフトのヘッドギアを着用する」とかいう
キューバンジョークを飛ばしていたが、カウンターで迎撃宣言できなかったところに
この選手の限界を読み取るべきだったのだろう。
実際の試合でもバッティングへの警戒の色は見えず、相手にその意図もなく、
にもかかわらず左ストのカウンターで止めきれなかったのは
ごちゃごちゃ考える癖がついてしまったからだ。
つまり普通のカウンターパンチャーになってしまったということ。
この選手の現状を見ていると粟生の将来像に一抹の不安を感じざるを得ない。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ

2011-11-13 16:28:53 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ファン・マヌエル・マルケス

パッキャオ マジョリティーディシジョンで勝利

考察 ~パッキャオ~

管理人採点ではドロー。
最初スコアが読み上げられた瞬間には「すわ、ユナニマスドローか?」
結果はパッキャオの勝利だが、これはかなり分の悪い勝利。
というかジャッジが好意的だったと言っていいかもしれない。

仕上がりが悪かったとは思わないが、良かったようにも見えなかった。
ベストなウェートであることは間違いないが、
ある意味それ以上に重要なメンタルのコントロールを狂わせた、
もしくは狂わされた影響が実戦にも顕れていた。
マルケスの言動やパフォーマンスTシャツに激怒していたと報じる記事を読んで
言い表しようのない不安を覚えたファンは多かったことだろう。
贔屓の選手の常ならぬ言動に変調を感じるのがファンだからだ。

試合では潜在的なカウンターへの恐怖感がところどころで顔を出していたように思う。
このレベルに達しても過去の亡霊が蘇ってくるのか。
また踏み込んでの左ストレートがことごとく空を切ったのは、
打ち出しのタイミングを読まれていたからだ。
おそらくほんのちょっとした目線の動き、爪先や肩、胸の筋肉の動き、
微妙な息遣いに至るまでじっくり研究、観察されており、
そのことを察知したがゆえの不気味さも手伝って、
あの異常なペースの踏み込みが最後まで見られなかった。
ただし小さい右フックはそこここで当たっており、
ダメージングブローにはならなかったが、ポイントを奪う一助として機能した。
これは終盤近くになって見せ始めた左アッパーについても当てはまる。

力が落ちたとか、調整失敗だとかではなく、peace of mindを失ったことが苦戦の最大の原因。
ボクシングにおいて psychological game はしばしば策として弄され、
実際に心理的に乱されて勝てるはずの試合を落とした選手は歴史的に多い。
最大の例としてはやはりキンシャサの奇跡(アリの"You've disappointed me!")。
そのフォアマンに敗れた人間機関車ジョー・フレイジャーが試合前に追悼されたのも
パッキャオの縁と言えるのかもしれない。


考察 ~マルケス~

本人としては完璧なプランで臨み、そして完璧にプランを実行したのだろうが、
あと一歩が足りなかった。
パッキャオを懐まで踏み込ませないまでは確かに完璧。
しかし、攻め込ませていてはポイントを取り切れるものでもない。
ジャッジに対して圧倒的な(=三者が一致するような)印象を与えなければ
今のパッキャオから判定を奪えるものでもない。

それでもプラン自体は素晴らしく練り上げられており、
なぜマルケスがパッキャオに分が良く、他のボクサーはそうではないのか
という疑問に一定の答えが出たようにも思う。
まず異口同音に語られる「パンチが見えない」について。
これは少し前述もしたが、パンチを見るのではなく、
踏み込みの予兆を見ることでかなり解決する問題ではないか。
パンチを時速40km、ボクサー間の距離を1mとしたとき、
そもそもパンチに反応できるものではない。
マルケスは他のボクサーが勘で把握できない部分を超えて
パッキャオを視ているのだと考えられる。

もう一つはガードの置きどころについて。
ハットンは残念ながら論外、クロッティは全く逆ベクトルで論外。
コット、マルガリートらとマルケスを比較するに、
前者はガードをアゴ、テンプルにがっちりと貼り付け、
後者は打ち易さだけでなくパリーも意識した、どちらかというと
キックボクサーにも見られるようなガードの位置。
これが実はパッキャオにとって攻略しづらい、
いわば先回りする空間ガードになっているような気がする。

当日150lbでよくバランスを崩さないものだと感心するが、
年齢以外の要素でやはりスタミナを減じていたようだ。
ライト級に帰る気はどうもなさそうだね。
Chapter 4 はさすがに勘弁して欲しい。

WBOウェルター級タイトルマッチ予想.

2011-11-11 19:09:04 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ファン・マヌエル・マルケス

予想:パッキャオ判定勝ち

パッキャオ本人やローチ、陣営の面々は早い段階でKOすると息巻いているが、
どうもマルガリート戦のように後半流す展開になるような臭いがする。
なんだかんだでパッキャオのgentlemanhoodは変わらないと思う。
もちろんダウンの一度や二度は奪うことは簡単に予想されるが、
不慣れなことをやろうとすると往々にして大失敗というのが
ボクシングのビッグマッチにおけるジンクスになっている。
ただし、それらは同じ階級の選手同士の場合だ。
今回も一応ウェルター級を少し割るキャッチウェートで、
両者同じ条件ではないか、と思うことなかれ。
この契約体重がパッキャオ、マルケスのどちらに利するかは
両者の直近の試合を比較すれば答えは出たも同然である。

最近、リング外での手練手管(拳ではなく実弾)に長けた輩が
またぞろ跋扈し始めた日本ボクシング界だが、
これも世界標準の腐敗の程度に追いついてきたと見るべきか。
八重樫vsポンサワンがFight of they Year候補だと
堂々と海外で語られる時代に、承認団体による世界戦認可など
貴族政治、殿様政治に過ぎない。
YouTubeやboxrecなどを土台にファンが直接運営するような
民主的な承認団体をネット上に築けないものか。
チャンピオンという称号にアルファベット云々の接頭辞など不要。
チャンピオンはpeople's championであるべきだ。
今という時代は地域格差はあるにせよ、
peopleが最も声高に叫ぶことができる時代なのだ。

ミドル級10回戦

2011-11-08 00:54:46 | Boxing
アンディ・リー VS ブライアン・ベラ

リー 判定勝利

考察 ~リー~

時計回りしたら罰金でも取られるのかというぐらい反時計回りに徹底した。
Irish Warriorというのは激闘型だけではないのだ。
パワーに欠けるというけれど、強く打とうと思えば強く打てると思う。
ライトパンチャーの代表格だった坂田健史も、
プロに成り立ての頃はミットを相当強く打っていたとか。
この選手も同じで、パンチの威力を犠牲にこのスタイルを構築というか
完成させていくと考えられる。
サウスポーにおける鍵となるパンチには第一に右フックがあり、
これはオーソドックスにおけるワン・ツー・スリーのスリーよりもpriorityは高い。
なぜならこの右フックはワンにもツーにもスリーにもなりうるから。
リーにとってはこれが本来のワンというよりは、この試合用のプランだろう。
ナチュラルな体格(身長、リーチ、細い脚)を活かしたボクシングをするのなら
ワン・ツー主体の方が汎用性が高いだろうから。
右フックの引っ掛けは相当練習してきたのだろう。
面白いように決まったのは、相当期するところがベラにあったからだ。
またベラ対策なのか試合中に掴んだのかは判断できないが、
ディフェンスも随所で光った。
クロスレンジで左右連打を浴びるところですらもボディワークが渋く、
左右の肘の上下動のリズムを見るに相手の打ってくるパンチが完全に読めていたようだ。
次戦が純粋に楽しみだ。
何故か試合刈れの石田なんかアメリカという舞台でお手頃だと思うが、さて。

考察 ~ベラ~

入り込んで右を一発は出せても、
相手の右フックの引っ掛けに最後の最後まで対応できなかった。
前戦がどういう内容だったのかは知らないのだけれど、
サウスポーのジャブ、ストレートへの過剰なまでの意識の逆を突かれた格好か。
それでも左ストのカウンターはこうやってもらえという
お手本を見せてくれるあたり、showmanshipも忘れない。
カークランドやマックユーワンに敗れていて、
S・モーラに勝っているなど、一定の能力を有していて、
なおかつ不安定なボクサーというところか。
世界ランクの番人的存在としてあと2年ぐらいは重宝されるのだろう。

ミドル級12回戦

2011-11-08 00:41:16 | Boxing
セルヒオ・マルチネス VS ダーレン・バーカー

マルチネス 11ラウンドKO勝利

考察 ~バーカー~

顔形からEnglishmanには見えず、やや奧目なところはどちらかというとゲルマン系。
これ以外の試合を観たことがないので推測するしかないが、
顔の印象から安全運転主体のボクサーかというステレオタイプを抱いた。
そしてそのimpressionはある意味正しかった。
ガールフレンドか嫁さんに「脇を締めたアナタが素敵」とか言われているのか、
打っても守っても両の脇が緩まないし、撓まない。
ただ西岡と戦ったR・ムンローも固そうな体で固いブロックに長けていたことから
英国ボクシングも大陸の風に吹かれていることが伺える。
N・ハメドまでの英国ボクサーの系譜はそのまま変則ボクサー列伝とも言えるのだが、
21世紀はボクシングにおいても(文化的なシステム同様に)均質化が進むのだろうか?

ジンジルクを左右逆にしたようにイメージで見たとして、
マルチネスは西岡と同じくサウスポーを得意にするサウスポーだと推測できる。
また王者に久しぶりに右ストをスパーンと決めるところを見て
変則を攻略することができるのは正統派であるということも再確認させられた。
vice versa(逆もまた然り)。
この選手の最大の長所は捨てパンチを打たないところ。
当たるパンチを当たる距離とタイミングで打ち続けるのはスキルと同時に精神力を要する。
これが例えばスキルがあって堪え性の無いボクサーなら、
バッティングのカウンターを狙いたくなるところだ。
偶然のバッティングが2度だけだったというのは
この選手のスキルとポリシーの証明だった。
唐突に見えたKOも、見返してみると納得。
10ラウンドに既に事切れたいたのだ。


考察 ~マルチネス~

キャリアの中で鼻血流血ファイトの経験など皆無だろうし、
そもそもパンチを食いそうで食わないことが最大の長所だったはずだ。
インタビューで、効いたパンチはマルガリート、パブリック、ウィリアムスからしか
食ったことがないなどと、人を食ったようなコメントを出してもいたが、
年齢的に大幅な上積みが見込めないだけに、コンディショニングが重要になる。
だからこそOxnardという温暖な土地を選んだとも聞いている。
100%に仕上がっていなかったのはコンディショニングの問題や
モチベーションの低下もあるかもしれないが、一番は対戦相手の力量の読み違いだろう。
ビッグファイトの後、もしくは直前というのは意外と仕上がりが悪くなるボクサーは多い。
マルチネスもどうやらそうらしい。
それでもスピードとスタミナ以上にパワーを証明するこの結果は
パウンド・フォーパウンド・ベストに連なるボクサーならでは。
head movementでガードオープンを誘い、開けてこないならばこじ開けるぜと
言わんばかりのストレート連打は、パブリック戦の9ラウンドを彷彿させた。
地力はまだまだトップクラスだ。

Sウェルターにlucrative optionsが見当たらずミドルに転級。
今になってカークランド、アルバレスなどが浮上してくるとは
どこまでもツキがない。
階級の上げ下げは得策ではない(体脂肪率6%らしいし)。
ベストの選択はミドルでパブリックとの再戦なのだが、そうは問屋が卸さない。
やはりツキがない。

リングサイドの女性はモニーク・マクライン……ではなくモニーク・マックリンさん。
http://www.boxingscene.com/sergio-martinez-being-champion-outside-ring--43845
リングの外でもチャンピオンであることを称賛された記事。

閑話休題。
日本では芸能人やスポーツ選手が重病人や障がい者への訪問やイベント・観戦招待を
行うという美談が時折マスコミに報じられるけれども、これは実は斡旋業者がいたりする。
アメリカという(経済にとどまらない)格差を許容させられる社会で行われる
著名人らによる慈善・奉仕活動にも、斡旋業者が存在するのだろうか?
いじめに関しては日本では内藤が発言していたが、半分は言わされた感があった。
徳山のワン・コリアというメッセージも賛否両論というか賛2否8ぐらいだったか。
ボクシングは社会的なメッセージを強く発することのできるスポーツだと思うが、
日本ではどうしてもエンターテインメントの部分だけにスポットライトが当てられる。
何故なのだ?

フェザー級12回戦

2011-11-03 21:21:34 | Boxing
ユリオルキス・ガンボア VS ダニエル・ポンセ・デ・レオン

ガンボア 8ラウンド負傷判定勝利

考察 ~ガンボア~

この選手の特長はスピードもさることながら
射程の長さ、ヒットポイントの遠さ、懐の深さにもあると思われる。
それらはスピードがあるからこそではないかとも感じるが、
体格、リーチを考えると最適なパンチのヒットポイントがこの遠さであることは驚異的だ。
特に右ストレートは踏み込みとの二段構えで、
この長さと比較できるパンチはポンサクレックの左ストレートぐらいしか思いつかない。
ただ、ポンサクレックは最適なボディメカニクスを駆使していると考えられるが、
ガンボアは生得的なathleticismでこれを行なっている(ように見える)。
肉体的にあまりにも恵まれていることは幸福なことだが、
その反面で精神的なムラがあるようにも感じられる。
どこかというとディフェンス。
自分の打ち終わり、相手の打ち終わりともにガードが低く、
見切っているという確信にも近い自信がそうさせるのだろうが、
カウンターの左フックを見るほどに、
ドネアのようなエキサイティングな見切りではなく、
恬淡とした見切りのカウンター。
まあ、報酬面か相手の実力か、とにかくモチベーションが今ひとつだったようだ。
アフロアメリカンにありがちなメンタルのひ弱さはないにしても、
この精神的なムラっ気はどこかで代償を支払わされる予感がする。
ライト級まで行くとか言ってるけど、軽く通用してしまいそうだ。
もちろんそのためには、本人のモチベーションの充実が不可欠なのだが。


考察 ~デ・レオン~

明らかに本来のファイトスタイルを封印、あるいは改造して臨んでいた。
そういう試合は大体為すすべなく敗れるもの。
ただし、改造したとしても本性が消せるはずも無く、
左フックの一撃に光明を見出したくて仕方がないようにも見えた。
スピードスターには相性悪しだが、打ち合いに応じる相手なら
Sバンタムだのフェザーだの関係なかろう。
ドネアのフェザー転級時の試運転候補となりうる内容だった。
長谷川の再起路線に立ちはだかって欲しいとは思わないけれど。