王者 ノニト・ドネア VS 挑戦者 ラウル・マルチネス
ドネア 4ラウンドTKO勝利
考察 ~ドネア~
パンチとは良い角度と良いタイミングでナックルを当てることだ、
という哲学があるかのようなボクシングだ。
左フックは左の足首、膝、大転子から腸骨までを無理なくスピンさせ、
その運動モーメントが左肩、左肘、ナックルまで閃光の速さで伝わる。
といっても、元々が左利きなのだからこれができるのもある意味だ。
見るべきは左肘の開きの角度で、これを約135度で振るうが、
相手は自分より身長が低く、左ジャブでは入ってこないが、
右で潜り込んでくる。
その際の相手の頭の位置を瞬時に知覚し、ベストの軌道で左フック、
または左アッパーを叩き込むのは溢れるセンスと豊富な練習の両方を物語る。
長谷川がウィラポンを再戦で右フックに斬って落としたが、
その際に伸ばした左は肘をを180度まで開いており、
またパッキャオがハットン沈めた際の左フックも、
伏線の右は肘を伸ばし切っている。
ドネアの場合は右を必要最低限度だけ伸ばしながらも、
左フックとアッパーをベストのタイミングで超速で叩き込む。
これは体幹の使い方の非凡さを雄弁に物語っている。
この試合では右ストレートと右アッパーに新境地を見せ、
フライ級では敵はまさに己の体重とモチベーションだけとなる。
それにしてもこの男がアルセ、モンティエル、ミハレスと絡めなかったのは
様々な事情があったとはいえ軽量級ボクシングの損失だ。
亀田興毅も正体不明選手と意味不明な試合をするぐらいなら、
さっさと日本を飛び出してドネアに乾坤一擲の勝負を挑んでみてはどうか。
相手が減量苦であれ何であれ、勝てれば西岡に並ぶよ。
考察 ~マルチネス~
4ラウンド経過するまでに4回ダウンでは、
たとえ余力が残っていても、ストップにケチはつけられない。
アメリカで育った無敗のフライ級とはいえ、
そのボクシングは特徴に乏しく、高いガードはメキシカンを思わせるが、
ドネアにはいとも簡単に間を破られ、あるいは吹き飛ばされた。
無敗とはいえ、キャリアを構築できるような相手との対戦に欠けていたのだろう。
日本のフライ級ランカーでも楽々勝てる相手に思えるが、
世界ランクをゲットするために呼び寄せるのも、
こちらから乗り込むのも得策ではなかろう。
すでにこの敗戦でランクも価値も暴落している。