BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界ミドル級タイトルマッチ

2012-09-17 20:17:34 | Boxing
王者 フリオ・セサール・チャベスJr VS 挑戦者 セルヒオ・マルチネス

マルチネス 判定勝利

考察 ~マルチネス~

初回終了ゴングと同時に相手をねめつける様に
ふとシントロン戦を思い起こした。
あの試合もえらく emotional になる瞬間がいくつもあった(当たり前!)が、
この試合では、試合にこぎつけるまでに相当emotionalなコメントが聞かれた。

クールにキレるメンタルがボクシングには重要だが、
ホットにキレてしまうとしばしば自滅してしまう。
これまでそういうボクサーは掃いて捨てるほど存在した。
セルヒオもそうなってしまうのか……という懸念は杞憂であり現実だった。

punishすると華々しく宣言してはいたものの、
ゴングが鳴ってみればいつもどおりのセルヒオ。
フリッカー気味のジャブに&「肘を少し上げてからの独特の左スト」(by村田)
で組み立てる出だし。
打つ場所が見つからなくともジャブで距離を保ち、
隙間を縫うようにパンチを見舞っていくテクニックはまさにMaravilla。
ただし、本当に表面を縫うようなパンチで、
これまでの防衛戦で見せたようなダメージングブローは打てな/打たなかった。
それが変わったのは4ラウンドの終わり際に叩き込んだ左ストレート。
Jrの鼻はあれでちょっと潰れたのでは?
以降、打ち合いに応じつつ、右フック、左ショートアッパーを引っ掛けながら、
懐からするりと抜け出し、小刻みでリズミカルなサイドステップと
ジャブで距離をコントロールする様はまさにバレリーナ。
11ラウンドの右フック被弾から、ロープ際に押し込まれた際の猛反撃で
Jrを後退させた時には、小泉純一郎並みに「感動した!」
そしてマルガリート戦のストップ負けを思い起こさせる12ラウンドの攻防。
私的に年間最高試合候補としたい。

それにしても何というドラマチックなラストラウンド、ラスト1分だったことか。
久々に本当に言葉そのままの意味で手に汗握った。
勝利の代償が骨折に靭帯損傷で、場合によっては手術とは……
ダイレクトリマッチなら歓迎するが、1年後の再戦は不要。
このまま勝ち逃げしていい。


考察 ~チャベスJr~

乱暴ながらも一言で試合を評すなら、大人と子どもの戦い。
ただし翻弄、応戦、蹂躙されたというわけではなく、
上り調子の若竹と下り坂に差し掛かろうかという古兵のあるべき交錯と言おうか。
Jrはキャリアのリセットがここからまだまだ可能だが、
マルチネスはキャリアの11ラウンドに差し掛かってしまったと言うべきか。

立ち上がりから、まるでフライ級時代の亀田興毅を見るような展開。
忖度するに試合前から相手に恐怖を感じていたのかな。
2ラウンドぐらいで早くもパフォーマンスを見せたが、
ああいうのは7~8割は余裕のなさの裏返し。
毎ラウンド開始時に相手にスツールをいやいや立っているように見えたし、
あまりのnon-agressivenessにセルヒオが業を煮やしたのも2度3度ではなかった。

それでも時折振るう左右フックはdecapitatingなパワーが込められ、
事実11、12ラウンドとそれが火を噴いた。
もっと早く攻めていればと思われるが、それは結果論。
先に攻めていれば、先に倒されていたかもしれない。
ただポンサクレック相手に結局最後まで手が出なかった興毅とは違い、
土壇場で見せ場を生み出せるのは「持っている男」の証左に他ならない。

11、12ラウンドのどちらかは Round of the Year に選ばれるだろう。
長嶋一茂には月見草チームに入るという不幸があったが、
JrはS・マルチネスと同時代に生きたことを悔やむ必要などない。
ゲストのOlympic Gold Medalist村田の言葉
「強いやつと戦ってこそ証明できるものがある」
は深く、重く、正しい。

予想は的中せず。
それもまた愉しからずや。

JCC Jr has finally earned my respect.

WBO世界Sフェザー級王座決定戦

2012-09-17 13:07:53 | Boxing
ミゲール・ベルトラン VS ローマン・マルチネス

マルチネス スプリットディシジョンで勝利

考察 ~マルチネス~

以前にディフェンスに難があると評したが、
幾分改善されているように見えた。
それでも決定的なパンチを食ってしまうあたり、
まだまだ改善の余地ありと言える。

具体的に言うならば、額を擦りつけあった際の
相手の息遣い、足捌き、体重移動を読む力。
さらなる経験を積むことで、より被弾を減らし、
命中率を上げることができる。

効かされながらも手数と気迫で上回り続けたのは見事。
だが公式採点は?
パシャパシャの手打ちを効果的な連打と見るか、
それともリングサイドで観ればいい音がして
汗や血も飛び散ってくるのだろうか?
あの足や腰のふわふわ具合からはとてもそうは思えなかったが。

まあ、年に何度かある疑問(疑惑未満)の判定というやつですな。
かのCliff Rold氏から激闘王、名勝負製造マシーンとしての評価が高いので、
今後とも頑張って欲しいもの。


考察 ~ベルトラン~

左アッパーと左フックの軌道がメキシカン特有のそれで
打ち出しのスピードと引きのスピードが一致している。
これで右スト(顔面)→スマッシュ気味に左ボディ→左フック(顔面)の
コンビネーションが入れば気分爽快だろう。
実際、ジムのミット打ちでは入念にコンビネーションを磨いているはず。

ただし、決まりきった型でしか能力を出し切れないというか、
悪い意味でのキャリア(技の引き出しの開け方)の浅さが見えた。
詰めるべきときに詰めるのは将棋とボクシングの共通点。
勝ち方よりも勝つほうが大切との見方もできるが、
ボクシングはそう言い切るにはあまりにentertainment性が強過ぎる。

アステカの戦士の系譜に名を連ねられるかどうかは
レバンチャを来年中に成し遂げられるかどうかによる。

ミドル級10回戦

2012-09-17 00:22:38 | Boxing
ジョアシム・アルシン VS マシュー・マックリン

マックリン 1ラウンドTKO勝利

考察 ~マックリン~

まあ、普通に実力者ですな。
S・マルチネス戦は相手が悪く、F・シュトルム戦は運が悪かった。
ミドル級として標準以上の体格、パワー、スピードと
紳士然とした顔立ちと物腰。
優等生ボクサーもよろしいのだが、
どこか破天荒というか破滅型の方が往々にして人気を博すのがボクシング。
地味・地味対決でギールあたりを狙うか?

考察 ~アルシン~

ファーストコンタクトどころか軽量後のFace-Offで
彼我の力の差を知っていたのだろう。
開始直後の斜向かいになりながらの緩慢なサークリングに
こりゃ精神的に負けてるかな?との予感を得たが、そのとおりだった。

カーンと同じくunder the earへの被弾で実質的に勝負あり。
正面からかち合ってはいけないと思い込むがゆえに、
正面に立ち、じっくりと見てしまうという陥穽にハマったが故の被弾。

アングロに破れ、レミューには勝つも、マックリンに敗れたことから
世界のミドル級ランクでは1.5線級というところか。。
ビッグマッチの暖気運転役は立派に果たしたと評価できる。

WBC世界ミドル級タイトルマッチ 予想

2012-09-16 01:14:50 | Boxing
王者 フリオ・セサール・チャベスJr VS 挑戦者 セルヒオ・マルチネス

予想:チャベスJrの判定勝ち

所用あってライブで観ることができない。
普通に考えれば、マルチネスの判定勝ちだが、
セルヒオがいつになくemotionalなコメントを繰り返していること、
また管理人が内藤大助vs亀田興毅の前に感じたイヤ~な予感に似たものが
この試合にも漂っているように感じられてならない。

チャベスJrは前半はポイント度外視で
ボディにだけ狙いをつけてくるだろう。
Jrは耐久力とパンチ力で、というか総合的にも
K・パブリックを上回ると勝手に見積もっている。
決して楽な相手ではない。

WOWOW視聴者の予想割合が気になる。

WBA・WBCスーパーライト級統一戦

2012-09-14 00:43:05 | Boxing
WBC王者 ダニー・ガルシア VS WBA王者 アミール・カーン

ガルシア 4ラウンドTKO勝ち

考察 ~ガルシア~

初回の印象だけでいうならスピードに翻弄されながら
気がついたら試合が終わっていた、という展開になるかと感じたが、
2ラウンドにはすでにadjustmentを見せた。
現代ボクシングはスピードを重視するが、
その部分でこれだけ相手に上回られているのに
冷静に立て直せるのは自身のパンチ力と相手の耐久力の無さを
分析済みだかろうなのだろう。
結果論に過ぎないが。

それにしても2ラウンドの右フック、
3ラウンドの左フックはパーフェクトだった。

スピードに煽られないというのは
スピード以外の勝負術があるということ。
ボクサーとしての各種能力を数字に置き換えでもしてみれば、
カーンには大差で負けるだろう。
そこが実際の試合内容や結果に反映されないのが
ボクシング(というかスポーツ全般)の面白く、奥深いところ。
パッキャオのファイナルを飾る選手たる可能性なきにしもあらず、か。


考察 ~カーン~

パッキャオがR・ハットン(復帰って本気で?)を失神させたパンチは
chinとjawの中間にズドンと命中させた感じで、
knock out または knock unconsciousという表現がふさわしかった。
カーンの今回のKO負けは実際にどこかで目にしたように思うが、
knock Khan sillyがきれいに当てはまる。
under the earは効くと言われるが、それをまさに証明してみせた形だ。
効かされてequilibriumを失った際の対応をいかに練習するかについて
前にブログのどこかで書いたと記憶しているが、
結局、効果的な練習方法など無いに等しく、
やはりボクサー当人のinstinctに頼る部分大だろう。
プレスコット戦は交通事故と言えなくもなかったが、
直近2戦は実力差による敗北と受け止めるしかない。
本人がそれを受け入れるかどうかは不明だけれども。

どうもF・ローチと組んでからのリナレスの上昇 → 墜落 → 炎上
という負のサイクルにハマってしまっているようだ。
やはりトレーナーを替えるべきでは?
このスタイルのまま一線級で戦い続ければ28歳引退プランが
台無しになる可能性がある。

WBAスーパーフライ級タイトルマッチ

2012-09-02 22:57:39 | Boxing
テーパリット・ゴーキャットジム VS 挑戦者 名城信男

テーパリット 2-0判定勝利

考察 ~テーパリット~

意外というか当然というかジャブが冴える。
フィリピン人はあまりジャブを打たず、その代わりに左右とも伸びる印象。
タイ人はストレートこそ伸びないが、ジャブを間断なく出し、左右フックが鋭い。
一発は(強く打てば)名城よりもありそうだ。
ディフェンスは時にルーズで、アゴの強さでも持ちこたえている部分もあるが、
ボディを嫌がるところはこれまでにも少し見せてきた。
ムエタイ出身ではないのかな?
大毅戦でも清水戦でも左フックに大して上下共に無防備になる瞬間があり、
今後の挑戦者は間違いなくその瞬間を突いてくる。
若い割には終盤に失速傾向があり、スタミナに問題ありなのか、
ペース配分に改善の余地ありなのかは、次戦で明らかになりそう。
2度のテーピング直しの時間稼ぎから見て8割がたスタミナ難だろうが。

fightnewsでジョー小泉が過去10年では最高のタイ人の一人で、
スピード、技術、パワーでポンサクレックを上回ると評し、
チャチャイもしくはウィラポンの再来になるかもしれないと述べている。
そこまで絶賛されるべきかについては現時点ではやや懐疑的だが、
デンカオセーンみたいになる雰囲気は嗅ぎ取れない。
若さとは常に可能性と同義だからか。
年末に亀田兄弟といずれと対戦してもKO~大差判定勝ちが期待できそうだ。


考察 ~名城~

厳しい見方を押し付ければ、名城が取ったのは1、2、12ラウンドのみ。
これが管理人の採点。
最初の2ラウンドこそジャブをバシバシと打ち、
右を打った切り返しのモーメントで左フックをボディに効果的に当てていたが、
王者が大毅、清水戦でも見せたサイドステップからのジャブ連打でのリズム作りからは
どっぷりと相手のペースにハマってしまった。

解説の徳山が苦言を呈していたとおり、とにかく判で押したように正面でジャブを食い、
ジャブを食うほどに、それを食わないようにと正面で見すぎてしまう。
結果、手が出ない、足が止まるという悪循環。

最短で世界を獲得してしまった故に、ほぼ世界戦と陥落後の調整試合だけで
キャリアを形作らざるを得ず、技術、戦術に幅と深みが足りない。
それらを生み出すためのマッチメークをする余裕がなかったということだろう。

最終盤の王者陣営の時間稼ぎ策に声を荒らげていたが、
そんなところで体力を使ってどうする。
よく攻めてはいたが、ジャブもフェイントも見られなかった。
世界戦レベルではそれでは当たらない。
フライデーだかの八重樫のインタビューを読んだが、
フロッチ同様に「クールにキレる」メンタルが強いボクサーには不可欠。
残念ながら名城にはそれが無い。

これ以上は体を痛めつけるだけ。
グローブを吊るして若い世代に道を譲ってほしい。
愚直さはリング内では必ずしも美点たりえるわけではないが、
今後の人生においては必ず美徳となるはずだ。