BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界バンタム級タイトルマッチ

2011-08-31 21:58:53 | Boxing
王者 亀田興毅 VS 挑戦者 デビッド・デラモラ

亀田 判定勝利 

考察 ~亀田~

基本のプランは2つだけ。
相手の入りばなに右のカウンター、
相手の打ち終わりに左のカウンター。
3ラウンドは、もしかしてTKO負けか?との予感濃厚な中、
よくダウンで盛り返した。
攻め込まれて相当なパニックに陥っていたところで、
右の感触から瞬時に左につなげたところで確かな成長を感じさせた。
……と信じたのも束の間、何度もここで書いてきたが、
心身に染み付いた亀田スタイルの復活ですべてご破算。
あれだけ上半身、下半身ともに筋肉を緊張させたまま戦っては
スタミナが消費されるだけでなく、乳酸が溜まる。
→ 動けなくなる → 余計に相手を見る → 打たれる 
→ ガードを締める → ますます疲労する という悪循環。 
あれで12ラウンド戦うのだからフィジカルは世界トップレベルだろう。
惜しむらくは、自身も知らぬ間にガードを上げたままダッキングしたり、
ノーモーションではなくノールックで左フックを打ったりするところ。
これはもう矯正・修正の対象ではなく、興毅の持つ様式美と捉えるしかない。
階級に無理があるからではなく、Sフライに下がっても同じと断言できる。

最後に今さらどうこう言いたくないが、これだけは言わせて欲しい。
ロープ・ア・ドープもできない(またはする勇気がない)のに、
わざわざ打ってこいと吠えてまでロープに下がらないで欲しい。
そこで相手のラッシュをブロックせず、ボディワークで凌げと言いたい。
威嚇的なパフォーマンスは頂けないが、技術的な魅せるパフォーマンスなら
ミーハーファンはもちろん、マニアも歓迎する。
いつかのアリ・シャッフルが理解されず、テクニカルなパフォーマンスはやめたのか?
だとすれば残念としか言いようがない。

参考までに管理人採点を上げておくと以下のようになる

亀 10 10 10 9 9 10 10 9 9 9 9 10
 
デ  9 9 8 10 9 9 10 10 10 10 10 10

7と12を10-10にした上でのドローなので、
最低でもどちらかのラウンドを振り分けねばならない。
12ラウンドの興毅の2度のラッシュは印象的だったが、
ラウンド全般の手数とヒット数ではデラモラ。
7ラウンド、両者手数が少なく、ヒット率は五角。
手数はややデラモラ、主導権はやや興毅。
この記事を読んだ皆さんの採点はいかがでしたか?


考察 ~デラモラ~

試合全体を見終わっての第一感は、世界前哨戦の前哨戦レベルかなということ。
我々がメキシカンに(勝手に)抱いているイメージは、
若い頃のバレラのような野獣性、モラレス、マルケスのような闘志と技巧の融合、
マルガリートやアルセのような不屈の精神など。
ミハレス、カサレス、ロハスのような小憎らしいテクニシャンも印象深い。
フィジカルではアゴが強く、左がダブルトリプルで出て、よく伸び、またコンパクトであるなど。
このデラモラはそのいずれにも当てはまらず、強いて言えば下田を下したR・ラモスか。

陣営からしつこく「イダドー!」の掛け声が聞かれたが、
実際に王者に相対してみると、二重の遠さから効果的に打てなかった。
序盤は脚がよく動いていたので、物理的にボディが遠く、
亀田スタイルは自分からくの字に丸まってから懐に入るという掟破りのスタイルなので、
いつも打っている場所にボディがないという、ある意味心理的な遠さ。
その分、中間距離での手数に活路を見出し、実際に手数もパンチの
landed/thrownのstatsも圧倒したようだ。
また、ダウンもフラッシュノックダウンに近く、その後のラウンドでも
ダウンを食った間合い、タイミングでのラッシュを繰り返した。
これは挑戦者のアゴの力ではなく、王者のパンチのなさだろう。
では挑戦者の攻撃力は?
がちゃがちゃの接近戦における左のショートアッパーは0発、
右のショートアッパーは10発に届かず。
メキシカンということで期待があったが、そもそもそのパンチを持っていなかった。

PS.
関西では清水の試合放送されず。
無念。

WBC世界Sフライ級タイトルマッチ

2011-08-29 19:23:05 | Boxing
王者 トマス・ロハス VS 挑戦者 名城信男

ロハス 判定勝利

考察 ~ロハス~

序盤、中盤、終盤と山場がなく、いや、あったかもしれないが、
自分には見えなかった。
終盤に近づくにつれて手数が少なくなったのは、スタミナの消費もさることながら、
常に相手よりも手数を多く出すことを意識していたからだ。
相手の手数が減れば、自分の手数も当然減る。
本人のイメージとしては河野戦が近かったのではなかろうか。
河野は打たせて、かつ、当てさせてくれたが、
名城は打たせるほどには当てさせなかった。
ただし、両者とも王者に決定的なパンチは当てていない。
(河野の12ラウンドをどう評価するか…… 仕留められなかったからなあ)
中間距離でのフックもアッパーもジャブも切れる王者なので、
日本の伝統的なファイターでは苦労するのが目に見える。
ただ本当に警戒すべきはアッパーのみ。
河野がしこたま喰らい、名城が無意識の内に怖がったのはこれだけ。
1ラウンド目で腰が引けてしまえば、それだけでアッパーを半分封じたことになる、
と思っていたら、スリヤンが来た見た勝った!!!
日本人選手トホホ。
だが、扉はむしろ近くなったかもしれない。
開きやすくなったかどうかまでは分からないけれど。


考察 ~名城~

今更詳細にレポートするのもアレなので簡単に所感のみ。

「自分のボクシングが世界の採点基準に合わないのか」という疑問(正確には不満)を
今頃になって表明するのははっきり言ってどうかと思う。

徳山の言をいかに聞くか。
リードを磨かなければならない。
そしてリードはジャブだけではない。
リードがあればボクシングが無限に拡がる。
途中で「もっと我武者羅に」という言葉があったが、
これについては最近面白い本を読んだ。
野球の野村克也と将棋の米長邦雄の著作。
単なるがむしゃら、やけくそ、開き直りには理がない、
そこに理外の理を求めなくてはならない、と。

それにしても格段にムニョス戦から比べて格段に打たれ弱くなったようだ。
アゴが脆くなったというよりも、被弾に対する心理的・精神的な予備力に
余裕がなくなってきたという方が正しいか。
濃すぎるマッチメークのツケが現れてきたのかもしれない。

それにしても真田幸村はイカンだろ。
確かにここ関西のみならず日本中で古くから愛されてきた武将ではあるが、
大坂夏の陣は壮絶な負け戦だったのに。

IBF世界Sミドル級タイトルマッチ

2011-08-29 18:45:28 | Boxing
王者 ルシアン・ビュテ VS 挑戦者 ブライアン・マギー

ビュテ 10ラウンドTKO勝ち

考察 ~ビュテ~

サウスポーのテクニシャンで、タイミング抜群の倒し屋という浜田評で
すべて説明がついてしまいそうなボクサーになったなあ。
この前後の試合まで考えるに左アッパーを顔面とボディに入れるタイミングについては
完全に自信がり、その技術もあり、練習でイメージでき、試合中に微調整できるのか。
最適なカウンターを取るための位置取りがそのままディフェンス意識の向上に
直結しているので、不用意にパンチをもらうことがない。
テクニシャンは概して距離を置いて、パンチを打たせないが、
この王者は距離が遠すぎず、パンチを打たせるが、当てさせない。
サンデーパンチの左アッパーはそのモーションからインパクト~フォロースルーで
右ガードを下げざるを得ないが、この「当てさせない」哲学が危険性を減じている。

スーパー6が激戦と凡戦の繰り返しになっているのを横目に淡々粛々と
防衛を重ねていく姿には批判と称賛の両方があるが、私的にはビュテを評価したくなってきた。
なぜなら見れば見るほど、底が見えないから。
ほんの数年前に階級最強・最高か?と思われたミハレスのような怒涛の勢いと一掬の不安が
同居している。


考察 ~マギー~

王者がすでに自らのスタイル、パターンを確立していることは分かっている。
ならば対策は立っていたはずだが、ある意味魅入られるように上へのアタックに
固執したのは斜に構える王者の懐の深さのためというよりも、
王者の巧まざるフェイントによるものと考えられる。
高度なフェイントというのはやっかいなもので、たとえばJ・テイラーや徳山のボクシングを
思い起こしても分かるように、自分が動いても動かなかくても主導権を握られてしまう。
もらった瞬間にゲロ吐きそうなパンチを幾度となく喰っていたが、アレは後に引きそうだ。
ボクサーというのは勝っても負けても、まずは寝て起きて食うのが三手ひと組みの営為になるが、
消化器へのダメージで、三日間はストレス発散できるほどには食えなかったのではなかろうか。

WBA世界ライト級タイトルマッチ

2011-08-12 21:11:20 | Boxing
王者 ブランドン・リオス VS 挑戦者 ウルバノ・アンティロン 

リオス 3ラウンドTKO勝利

考察 ~リオス~

ひたすら強いですねえ。
前に見たときカチディス戦が観たいとか書いたけど、あれは撤回します。

とにかくパンチングパワーが図抜けていて、それでいて手数が多く、
accuracyもprecisionもあるとなると、まともな打ち合いでは勝てませんね。
一発打たれると3発返さないとおさまらないというfun to watch & hard to controlな
ボクサーもいいが、一発もらって一発返せば収支はプラスになるという
この冷静かつ自信にあふれたファイトスタイルはどうだ。
最初に奪ったパンチの構図に近いものは、最近だとパッキャオがマルガリートに
10ラウンド終了間際に食らわせたカウンターの右フック。
これは文句なしに効く。
ローブに詰めても、アッパーで起こして顔面を突いてボディをえぐるという
憎いコンビネーションを決めるところなど冷静と情熱が同居している。

ひょっとしてU・ソトよりも強い?
リナレスがやりたいって?
止められる立場ではないが、しかし……


考察 ~アンティロン~

一度目のダウンはカメラの角度の関係でよく見えなかったが、
二度目のダウンはグローブの手のひら側からキャンバスに
手をつけられずに倒れたように見えた。
人間よほどのことがない限り反射行動というものがとれるように出来ており、
それができないとすると原因は脳のダメージということになる。

ストップ直前、何もないところで脚がカクンとなったが、一応歩いてはいた。
小脳の姿勢保持反射は生きているが、大脳による随意運動が一瞬切れたわけで、
これは危ない兆候。
レフェリーのストップは最適のタイミングだった。

それにしてもこの選手はソト戦でそうだったが、拳で濃密な会話をしますねえ。
よく試合前に"I will let my fists do all the talking"とか言う選手がいるけど、
怒りに任せて拳を振るうだけのことが多い。
きれいなワン・ツーやカウンターが決まる直前をスローVTRで観たりすると
両選手が「よっしゃ、もらった」とか「やべ、当たる」とか目で語っていることが多いが、
拳でコミュニケーションしっぱなしというのは非常に珍しい。
そういう意味でこのアンティロン、貴重な選手と言える。
Fight of the Year candidateだね。

クルーザー級4回戦

2011-08-12 20:38:30 | Boxing
マイク・リー VS マイケル・バースマーク

リー 3ラウンドKO勝ち

~リー~

最初のノックダウンで思わず浜田氏が「4回戦というのはこうでないとイカンですよ」
まったく同感だが、帝拳ジム所属のグリーンボーイにも同じことを言えるかな?
浜さんは思い入れの強い選手には時に感情移入しすぎるきらいがあり、
また平素は中立平等客観的(どこかの国営放送局か!)であろうとするために逆に頓珍漢になったりもする。

明後日のスター候補とか無視して、メインをもう一回フルで流せよとか思ったけど、
浜さんのかわいいオッサンの素顔が見れたから良しとしようか。


~バースマーク~

この顔、体型。
まさにアメリカン・キッド。
管理人の同級生にもいたなあ。
野球部に入ったら即4番打者。
5試合で安打3本、そのうち2本がホームランとか、
次の日にはいきなりアメフトに目覚めてたりね。
パンチは別にスイングではなかったが。
最終的にボディで沈むあたり、jobberだった。

Sウェルター級10回戦

2011-08-12 20:24:37 | Boxing
カーミット・シントロン VS カルロス・モリナ

モリナ 判定勝ち

考察 ~シントロン~

相手との比較もあるが、よくよく見れば実にボクサーらしい体型だ。
長身、広い肩幅、厚い胸板、逆三角形の上半身、長い手足。
もしも足りないものがあるとすればメンタル面。
そしてその弱点は存在する。
ボクサーがファイターの飛び込みに対してとるリアクションは
大きく3つに分けられるように思う。

1.カウンターで迎撃
2.バックand/orサイドステップで回避
3.ダッキングからクリンチ

1の好例はマルケス兄のライト級タイトル防衛戦を見ればいい。
ドネアがダルチニャンを沈めた試合でもいい。
メンタル的に負けていないことの証左でもある。
2について代表的なのはメイウェザー、(現在の)西岡など。
精神的な動揺を表に出そうとしないタイプだ。
3には徳山、オットケなど例外もいるものの最近ではD・ヘイの
クリチコ弟戦が記憶に新しい。
メンタル面で負けている場合だ。

この日のシントロンは当然のごとく3のモード。
好戦的なメキシカンというだけで過去の亡霊が蘇ってくるようだ。
マルガリート戦Ⅰ、Ⅱともにがっぷり四つから徐々に押され、
最後は叩きのめされた反省からテクニカルなボクシングを身につけるべく
スタイルチェンジした(厳密にはマルガリートとのリマッチでもその萌芽はあった)が、
往時の良さもあわせて消えてしまったと言える。
よく背中が丸まると言うが、これは逃げ腰になると言い換えてもいいかもしれない。
モリナ、もとい無理な態勢から打てばヒットポイントもずれる。
事実、右のクロスはすべて相手のテンプルをかすめるように通過するばかりだった。
減量が相当きついのだろうか?
フレームからしてミドルでもやれるとは思うのだが。
なんにせよ、次戦もSウェルター契約で早々に決まった。
結構好みの選手なので復調を待ちたい。


考察 ~モリナ~

風貌、体型、ボクシングスタイルまで含めてJ・ディアスを彷彿させる。
ボクサーは体脂肪率ひと桁%とかは明らかに不自然で、
ほどよく皮下脂肪がのった体の方がよく動き、また耐久力も高いように思う。
チャベスJrにドロー、ララとも疑惑のドローということで、
浜田氏ふうに言うならば「お手並み拝見といきますかな」
冒頭に書いたとおりJ・ディアスの大型バージョンなのだが、大きな違いはディフェンス能力。
パンチを伴わない前進をしばしば当ブログで禁断の神風アタックと断じてきたが、
メキシカンを筆頭にラテンアメリカン、ヒスパニック系ファイターは
攻撃(≠前進)を防御にする術に長けた選手が多い。
ボディ攻撃や顔面への右ストレートも目立ったが、
最も効果的だったのはインサイドでのショートアッパー。
シントロンの鼻血は初めて見たかもしれない。
また、これだけ激しく前進し、全身をフルに使ってコンパクトなパンチを
連打し続けていたにもかかわらず、10ラウンド終了後もスタミナはかなり残っていた。
息をハッと吐いて脇をグッと締めて打て、とか指導するばかりの日本の指導者は
スタミナを根性で補うより、スタミナに余裕をもたせるリズミカルな攻撃、
それによって確保される一定の呼吸のリズムの理と利を知るべきかと思う。
(坂田とか川嶋はあれが限界。つーかちょっと前までの粟生やこの前の下田やがな)

狂犬アングロやレイザー・ジンジルクとの対戦を観てみたい一人である。

WBC世界ミニマム級タイトルマッチ 

2011-08-10 23:38:41 | Boxing
王者 井岡一翔 VS 挑戦者 ファン・エルナンデス

井岡 判定勝利

考察 ~井岡~

試合全体を見終わっての第一感は「スケール小さいなあ」だった。
しかし細部に注目すれば光るところも気になるところも見つかった。
まず内藤が居酒屋のオッサン口調で褒めるボディ打ち。
前傾姿勢でも背中を丸めていないから軸を決めて打てる=威力がある。
そしてディフェンス。
基本的にはガードを高く保ち、ブロッキング主体だったが、
体型とリーチを活用して相手のアッパーとボディブローの両方を防いでいた。
特に中盤からはアッパーに対して肘を閉めずにグローブ部分で受け止め、
相手のボディ打ちに対してエルボーの位置を動かさなかった。
ボディは自分は打っても相手には打たせない方針ということ。
さらにフットワーク。
これまた内藤が酔っ払った口調で「相手と平行に平行にね」と指摘したが、
動き回る相手に正対して一瞬足が揃う瞬間が幾度もあり、
フラッシュノックダウンを食いそうな気配は常に感じられた。

イーグルや新井田とは現時点では比較できないが、
八重樫や黒木との対戦に脈があるのなら是非見てみたい。
スピードはないが、意外なパワーがあり、耐久力もある程度試され、
スイッチしてのサウスポースタイルに戸惑いも見せなかった。
また9、11ラウンドにKOチャンスが巡ってきたのにも飛びつかず、
じっくり自身の体力回復を優先し、カウンター待機になる点も老獪だ。
泡沫王者ではない、安定王者の雰囲気はある。
ただ本人がビッグマッチ志向なので次戦はLフライ進出か。

長谷川と同じく、観る者を感動させるボクサーではなく、
感心させるボクサーを目指すべきだと個人的には思う。


考察 ~エルナンデス~

王者にはやや厳しい見方をしたが、この選手は良い選手。
初回の右アッパーに、日本人王者のお家芸である「指名挑戦者相手に陥落」を
熱心なボクシングファンには感じさせたことと思う。
メキシカンに限らず中南米のボクサーというのは総じて動き回りながら
ジャブの距離から左フックが飛んでくる。
タイミングだけを見るなら、サルガドがリナレスを一発でダウンさせたようなフックも何発かあった。
ガードの上だったが。
中盤以降はやたらコーナーから「ワン・ツー打て」とか「ジャブだ、ジャブ打て」という
Espanolの怒声が響いていたとおり、左に攻撃の比重を置きすぎる悪癖があった。
それを解消せんがための小刻みなスイッチだったと推察するが、
ボディを効かされてからはあからさまに右を下げ、反時計回りのサークリングに
修しせざるを得なかった。
顔の彫りの深さ、輪郭から勝手に打たれ強いと想定していたが、
ボディに脆さがあったとはね。
goodな選手ではあったけれどもcampeonはbetterだったということですね。

WBC世界Sウェルター級タイトルマッチ

2011-08-07 15:43:54 | Boxing
王者 サウル・アルバレス VS 挑戦者 ライアン・ローズ

アルバレス 12ラウンドTKO勝利

考察 ~アルバレス~

王座決定戦の経緯がアレだったので、この試合は多くのファンやメディアから吟味されなければならない。

この選手はボクマガだかで数年前に白黒写真で16、7歳の頃に紹介されていたが、
体自体がそのころのシルエットと大きな変化がない。
もちろん、大きく成長してはいるが、骨格は10代半ばで完成されていたようだ。
ボクサーは時に応じて体が変わり、当然のようにボクシングスタイルも変わる。
今、高校野球を観ているが、現プロ野球選手の高校時代やプロ初期を思い起こせば分かりやすい。
例えばイチローは振り子打法で一躍名を馳せたが、オリックスで3もしくは4番を打つ頃には
完全に振り子ではなくなった。
逆に骨格が出来ていたので高校時代から30を超えるまで基本が変わらない選手もいる。
松井秀喜とかはそうだろう。
あのアゴをくいッと右に向けてピッチャーを見据えるバッティングフォームは
高校、ジャイアンツ、メジャーと変化が見えない(専門家や本人には見えるだろうが)。
アルバレスは松井タイプで、骨の太さはそのままに肉だけついていくのだろう。

ボクサーで若くして体ができているということは、技術的な面(攻撃と防御)が課題となる。
攻撃においては基本はコンビネーション。
3~4発を軸に、最後は左ボディというのがこの選手ならずメキシカンのセオリーか。
モラレスやバレラのような不自然でない太さの胴回りのせいで意外に見えたが、
ジャブも伸びる。
ただ、右の打ち下ろしがそれ自体フィニッシャーではなく、左ボディもしくはスマッシュに
つなぐパンチとしてしか意識していないように思えた。
随所に光るものが感じられるけれども、なべて言えばやや単調か。
ディフェンスはブロッキング主体で、これも自身の腕力への自信。

ただ、このタイプは相手が自分より下だと思った時にしか伸び伸びとやれない気がする。
同じ年代の実力者との連戦、もしくは統一戦でもしないことには、
こじんまりとまとまっていく予感が振り払えない。


考察 ~ローズ~

試合全般を通じてぼんやりと見えてきた構図がある。
ディフェンシブなジュダーが攻撃的なクロッティと戦っている図だ。
スキンヘッドのブリティッシュ・マンは一種独特の凄みや雰囲気があるが、
ローズにもやはりその気配は漂っていた。
打ち合いになればパワー差で必ず劣勢になるものの、
左フックはこう当てるんだ小僧、と言わんばかりの一発は
打たれ弱い相手ならそれだけで後退させられるだけの威力を秘めていた。

相手はボディ打ちに執心なのは中盤までに読めていて、
序中盤には何度か効かされたが、タイミングを掴んだことと慣れ
(顔面は分かるが、ボディも慣れるものだ)
で判定まで持ち込めそうだったが、突然のセコンドのタオル投入。
直に接している者にしか分からないダメージか、古傷の再発か。
いずれにせよ、この判断は尊重されるべき。
youtubeで観たなにかのローズの映像で、盛んにcomeback kidとか呼ばれてたから
もともと爆弾持ちだったのかもしれない。

私信

今度の月曜日はWOWOWが観れない、嗚呼……
最近更新が不定期ですが、ボクシングが観られないほど
不健康になっているわけではありませんので。
かといって健康でもないのが、頭の痛いところです。