BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBO世界フライ級タイトルマッチ

2012-01-30 22:04:13 | Boxing
王者 ブライアン・ビロリア VS 挑戦者 ジョバンニ・セグラ

ビロリア 8ラウンドTKO勝利

考察 ~ビロリア~

ゴング直後から一気呵成に攻勢を奪われたが、
初回残りちょうど30秒時点で当てたカウンターの左フックは
実は相当にダメージを与えていたのではないか。
流れが全てそこから逆転していたようだ。
また2ラウンド開始直後の相手の右に合わせる左フックのカウンターは
観る者にcompatriotのN・ドネアをイメージさせ、試合の流れを決定づけたようだ。
3ラウンド以降は相手のアッパーに対してクロスアームブロックを採用するなど
漫画のごとき攻防の妙味が随所にちりばめられていた。
勝負を決めたのもカウンターの左フック。
タイミングとしては早いが、勝負ありとするには十分。

ボクサーは大別すると
コンスタントに力を発揮するタイプ
対戦相手の力量によってキレキレからナマクラにまで変化するタイプ
の2種類があるが、ビロリアは明らかに後者。
評価は取り戻したものの、この特徴から長期政権はやはり難しいか。
日本ボクサーにとっても攻略しがいのある王者である。


考察 ~セグラ~

そのメンタルは100%攻めで構築されており、
ファイトスタイルにおいても引く(≠退く)ことがないため、
浜田氏の言うとおり、もらうパンチの威力が「10の力が20になる」。
自身にとっての打ち易さ(ガードのルーズさ)が
相手にとっての当て易さにならなかったのは何故か。
ひとつには攻撃力そのものが威嚇として作用していた。
もうひとつは階級がライトフライ級であったということ。
前者については高度に情報化されたボクシング界においては
格好の研究・攻略対象であるし、
後者については近年崩されつつあった「階級の壁」が
頑として存在することをあらためて印象づけた。

近年のボクシングはディフェンスの良し悪しが
特に勝敗に直結しているように思えてならない。
「攻撃は最大の防御」という思想は現代ボクシングではもはやタブーか。

Recapitulation 2012

2012-01-01 01:32:27 | Boxing
☆ Fight of the Year ☆

○ ノニト・ドネアがフェルナンド・モンティエルを2ラウンドTKO

普通、他項目でノミネートされたものは年間最高試合には選ばないものだが、
たまにはいいだろう、というか今年はこれ以外はちょっと選びにくい。
ひょっとすると我々は『フィリピンの閃光』に本物のNextパッキャオを
見ているのかもしれないのだ。
パッキャオがモラレス、バレラ、マルケスと拳を交えたように、
ドネアもモンティエル、アルセ、ジョニゴンと次々と撃破していくのかもしれない。

次点:八重樫東がポンサワン・ポープラムックを10ラウンドTKO

次々点:ビタリ・クリチコがトマス・アダメクを10ラウンドTKO


☆ Knockout of the Year ☆

○ ノニト・ドネアがフェルナンド・モンティエルを2ラウンドTKO

この栄誉も文句なしにドネアで決まり。
ダルチニャンをKOしたあの左カウンターは実際にリングマガジンで
年間最高KOかつ年間最高番狂わせともなったが、
こちらのパンチもそれに勝るとも劣らず、
F・モンティエルを痙攣せしめたこの左フックのカウンターは
近年ではパッキャオがハットンを失神させた左、
S・マルチネスがP・ウィリアムスを気絶させた左に並び称される。

次点:ジョニー・ゴンサレスが長谷川穂積を4ラウンドKO

次々点:内山高志がホルヘ・ソリスを11ラウンドTKO


☆ Decision of the Year ☆

○ 西岡利晃がラファエル・マルケスに12ラウンド判定勝利

不可解な判定やレフェリングが横行した年だったように思うが、
思い返せば不可解な判定が出ない年などないわけで、
ノックアウト決着ではなく、かつ合理的な判定決着試合から選ぶなら
この結果に落ち着くしかない。
ハイライトを見て改めて思ったが、I・バスケスのプレッシャーというのは
とんでもないものがあったと間接的にそちらの評価も上昇した。
いやいや西岡はバスケスと同世代、というか年長だったな。
ま、同じ尼崎市民ということで来年こそは鶴橋はまる徳前でばったり出会ってみたい。


次点:ウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイに12ラウンド判定勝利

次々点:テーパリット・ゴーキャットジムが亀田大毅に12ラウンド判定勝利


☆ Upset of the Year ☆

○ 石田順裕がジェームス・カークランドを1ラウンドTKO

痛快さという点で群を抜くのがこの試合。
石田の次戦が1ラウンドKOであることは全くプラス評価にならず、
カークランドの再々起路線が光れば光るほど、石田の勝利が輝く。
2月にはやや落ち目のポール・ウィリアムスとの対戦も内定している。
新年明けて早々に2年連続Upset of the Year受賞決定のチャンスがあるわけで、
善戦すればカークランドとのリマッチも射程内だ。

次点:ジェームス・カークランドがアルフレド・アングロを6ラウンドTKO

次々点:アントニオ・デマルコがホルヘ・リナレスを11ラウンドTKO


☆ MVP ☆

○ ノニト・ドネア

戦慄走るノックアウト劇に2階級制覇王者に完勝。
すでにバスケスJr戦、そして西岡戦が内定しており、
言葉の本当の意味においてパッキャオの後継者となれるかどうか、
その真価を問われる一年となろう。

次点:西岡利晃

次々点:井岡一翔

WBA世界フェザー級タイトルマッチ

2012-01-01 00:53:54 | Boxing
王者 セレスティーノ・カバジェロ VS 挑戦者 細野悟

カバジェロ 判定勝利

考察 ~カバジェロ~

はっきり言って舐めていたか、あるいはそもそも練習段階から手を抜いていたとしか思えない。
そんな出来だった。
実況が絶叫していたように疲れてはいたが、それは打たれ疲れでもダメージでもなく、
調整不足から来る単純な疲労のせいだったようにしか見えなかった。
それともWOWOWで観ていると舞台の華やかさや実況、解説の影響で
ボクサーを過大評価してしまうという陥穽にはまってしまうのだろうか。
ガードの真ん中を強引に割っていくジャブ、
かと思うと相手のテンプル目掛けてオープンブローなんのそのの左右フック連打。
これらが見られなかったのは、細野のプレッシャーがそれほどキツかったからなのか?
とてもそうは思えなかったが……

ディフェンスではその長身のおかげで顔面がナチュラルに相手のパンチから遠く、
なおかつ斜に構えてダッキングと戻りのバネでのスウェーまでを駆使するのだから
並みのフェザー級では届くものでもない。
SフェザーでJ・リッツォーに判定で完敗し、そのリッツォーがA・ブローナーに瞬殺と
間接的に株は落ちていたが、この勝利でもその株は戻らない。
敵地で戦ったとはいっても、この王者はもともとフーテンの寅さんばりに
世界を転々としているからだ。


考察 ~細野~

作戦の骨子はインサイドでのボディ攻撃だったと推測するが、
クリンチの際にラビット気味に手が出てしまうのは癖なのだろうか?
クリンチを念頭に置いて戦うのならば徳山とホプキンスのビデオを
擦り切れるまで(今はDVDかBDか)観なければならない。
駄々っ子のごとく相手のアゴを拳でグリグリするのは悪印象しか与えない。
まあ、それだけ必死だったということなのだろうけどね。

最大の敗因はジャブの欠如(≠不足)。
相手は本質的にカウンターパンチャーではなく、
体にもさほどキレがなく精神的にもなまくらだった。
それを追い詰められなかったのは自分自身にもキレがなかったからだ。
バズーカとはいっても「当たらなければどうということはない」
カバジェロほどの身体的特徴を持つ選手対策には
当然それ相応の長身スパーメイトを呼んだものと思うが、
試合になってそれがスコーンと頭から抜けたとも思えない。
結局、練習段階から工夫がなかったわけで、
訳が分からず密着してしまったのは最適な距離を測れず、
また作れてもいなかったから。
それとも相手を苛つかせる作戦が……?
いずれにせよ、意志を込めたジャブであれば相手がそれにかぶせてくることは
99%無いのだから、そこから展開を作るべきだった。
良いパンチを限りなく食い、明らかに効いた場面でも乗り切った
tenacityとresillienceは亀田大毅を上回るものがあったが、
気持ちで勝負が決するのは技術、体力、作戦において五分に近かった場合だ。
これらを無視した精神論は禁断の神風アタックに過ぎない。