BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC・WBA世界ミニマム級王座統一戦

2012-06-21 01:45:16 | Boxing
WBC王者 井岡一翔 VS WBA王者 八重樫東

井岡 小差判定勝ち

考察 ~井岡~

ジャブのスピードでは上手だったのみならず、右もリングサイド徳山の言を借りれば
”恐ろしいぐらい切れている”。
初回から右をクリーンヒットさせて八重樫の左目を腫らしたのは見事。
ただし、その先の展開には個人的に不満あり。
オーソドックス同士の対戦では理外の動きになるとはいえ、
リングをcounterclockwiseに使いながら不意の逆サイドステップを交え、
float like a butterfly, sting like a beeというボクシングも
選択肢としてセコンドは抱いていなかったのだろうか?
テレビ音声を聞く限り、そういった指示は出ていなかったようだが。
受けて立つ姿勢は王者のメンタリティとも言えるが、
一歩間違うとR・ベイリーに痛烈KOされたM・ジョーンズのように
優勢な終盤にバタンと倒れることにもなりそうだ。
それでも苦しい時こそ得意のジャブに立ち返るのは素晴らしい。

予想を上回る精神のタフネスと腫れにくい顔面が確認できたのは
ファンにとっても本人にとっても確かな収穫だ。
加えてミニマムでの打たれ強さも。
ラウンド終了間際にまともに被弾する場面もあったが、
直後のコーナーでも目は死んでおらず、受け答えも的確。
呼吸も乱れていなかった。
hypeに見合う試合は少なく、hypeを超える試合は希少で貴重だ。
まだ6月だが年間最高試合に選んでよいだろう。


考察 ~八重樫~

尋常ではない左目の腫れにかつての大橋、内藤を彷彿させた。
金田、武市、ポープラムック戦と確実に激闘王の路線を歩み始めたと言える。
大橋ジムは川嶋、細野そして八重樫と力戦志向の激闘型を育てる手腕に長けている。

中盤からの右アッパーと左フックは確実に対抗王者にダメージを与えていた。
スピードで劣ると予想したが、前後の出入りではむしろこちらが勝っていた。
そして近接戦での効果的な左右アッパーと命中しないものの威嚇になったスマッシュ。
前戦を上回る名勝負だった。
ストップされてもおかしくない目の腫れだったが、
日本拳闘史上初の統一戦だからという安直な理由で続行を許可するような
藤田先生ではない(このDr.はボクシングファンであってボクサーファンではない)。

接近戦に活路を見出し、終盤の打ち合いのチャンスで
先にクリーンヒットを奪っていたのはこちらだった。
管理人採点では115-113で八重樫勝利だった。
師・大橋を越える名勝負製造機としてまだまだ一線で戦える。

PS.

TBSは様々な意味で最低だったな。
4ラウンド終了後の採点をドローと言ったり(ジョー小泉なら即訂正しただろう)、
井岡のガッツポーズやクリンチの回数を間違えたり、
極めつけは採点読み上げ直後に井岡のKO勝利のテロップを出したり。
そしてゲストの辰吉のよれよれトーク。
こちらはドクター藤田ならずともドクターストップだ。

WBC・WBA世界ミニマム級王座統一戦 予想

2012-06-20 11:54:04 | Boxing
WBC王者 井岡一翔 VS WBA王者 八重樫東

予想:井岡 判定勝ち

ミニマム級の統一戦は歴史的にかのR・ロペス以来となる。
だからといって勝者がロペスの並び称されるわけではないが、
少なくとも快挙の達成者としてのrespectを得ることになろう。

勝負を決めるtoolとして

1.パワー
2.スピード
3.ディフェンス
4.経験
5.精神力

を挙げる。
これに減量・調整能力、ゲームプラン、セコンドのコーナーワーク、
さらには観客の声援がジャッジに与える心象などが絡み合う。

管理人的に井岡が優るのは1.2.3.
4.はさすがに八重樫。
5.は互角と見ている。

スコアは微差となるだろう。
立ち上がりにかけては互いのスピードを警戒しあい、
ジャブとフェイントによる地味な駆け引き、
中盤以降からは足を止めて打ち合う選択を両者が選んでいく。
その中でフィジカルで優位に立つ若き井岡が判定をものにする。

WBOウェルター級タイトルマッチ

2012-06-10 18:16:32 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ティモシー・ブラッドリー

ブラッドリー スプリットディシジョンで勝利

考察 ~パッキャオ~

明らかに相手のスピードに戸惑い、手を焼いた序盤。
軽く(見えた)ヒットで突如相手が失速した中盤。
打ち疲れからか、調整失敗からか、報じられていたボクシング以外の心労からか、
明らかに足も体も重たかった後半戦(≧終盤)。
打ってこいという再三再四のアピールも追うのがしんどいからか。

4~6ラウンドにかけては攻めに転じた瞬間にブラッドリーがパタンと倒れる姿が
目に浮かんでいたが、そこで前に出られなかった、左を伸ばせなかったのが敗因。
またこの辺りから意識的にtime managementをしていたが、結果的にこれも裏目に出た。
コット戦後半はラウンド開始1分半を相手に譲り、残りの1分半で攻勢を印象付けたが、
この日はラウンド開始2分を相手にspareし、残りの1分でポイントをコントロールする、
もしくは「したい」という意図(というか願望)があったようだ。
結果論だが、これも裏目に出た。

『衰え=パンチが出ない』という図式に当てはめて考えるなら
パッキャオにも黄昏が訪れたということ。
biblical studies(!)を唐突に始めたり、夫婦仲にヒビが入ったり、
チーム内にdisharmonyが生じたり、政治活動が忙しかったりと、
後から探せばネガティブな材料もたくさん見つかるものだ。
先ごろ、W・ライト、S・モズリー、A・マルガリートが引退を表明したが、
パッキャオという伝説的ボクサーもグローブを吊るす時が来たと言っていいかもしれない。


考察 ~ブラッドリー~

スピード、クイックネスともに近年のパッキャオの対戦相手では最高レベル。
連打力、スタミナも申し分ない。
ただし、パンチ力は標準以下。
頭を第三のパンチとして活用する男として私的評価は高かったが、
パッキャオ相手に判定をかろうじて拾えるとはゆめ思わなかった。

ファイトプランは徹底したclockwise footwork。
さらに相手の右リードに自身の左ジャブを、
相手の左には左フックをカウンターするというプランには
どこまでも時計回りで左から遠ざかる意図を見て取れた。
底抜けに能天気なパッキャオをして初回からナーバスにさせたのは
スピードと同時に相手の嫌がるプランを綿密に実行するだけの
determinationを誇示したからに他ならない。

それにしても4ラウンドの攻勢の最中からのカウンター被弾一発から
中盤にかけて何度トラブルに陥ったことか。
終盤の入り口にはスツールから立てないのではないかとまで予感した。
視聴者、観衆の誰もが、あの突然止まった足、トロンとした目つき、
バランスを欠いた状態の上下動(≠ダッキング)だけのディフェンス。
よくぞ試合を投げず、持ち直したと褒めるしかない。
チャンピオンシップラウンドを失速することなく
むしろ初回以上のスピードで乗り越えた報酬はあまりにも大きかった。

ただ…… この選手がたとえば往時のクロッティやモズリーに優るとは
とても思えないし、見えない。

フェザー級10回戦

2012-06-10 16:01:50 | Boxing
ホルヘ・アルセ VS ヘスス・ロハス

2ラウンド・ノーコンテスト

考察 ~アルセ~

スタートから無謀と言えるほど自信満々に飛ばすのが持ち味とはいえ、
いきなりの左フック一閃には度肝を抜かれた。
アルセの左の真骨頂は額をこすり合わせる距離でのボディにあるはずで、
出会い頭気味とはいえ、最適外の距離から
ベストパンチをヒットさせるのはon a rollにある証明とも言える。

しかし、その後のyounger lionの逆襲には
完全に飲み込まれる寸前にまで追い詰められていたように見えた。
打って良し打たれて良しというのも千両役者の器量(?)と言えよう。

そして注目の2ラウンドの立ち上がり。
わずか1.5秒間であらゆる反則を喰らい、さすがのタフガイもダウン。
フェザーはいくらなんでもウェートが馴染まない。
リマッチはSバンタムでなら観たい。


考察 ~ロハス~

初回いきなりの被弾にダメージと精神的動揺が無かったはずがなく、
老獪にして豪快な相手に一息に攻め落とされても不思議はなかったが、
言葉の正しい意味での開き直りによる反撃が奏功し、壮絶な打ち合いへ。

そして運命の2ラウンド。
バッティング、ローブロー、キドニーブローという
悪の三位一体コンビネーションで相手がひるんだところへ
躊躇なく、間髪入れず鼓膜破壊の左フックを叩き込んだ。
童顔に見えてやること言うこと(インタビュー)が結構えげつない。

どこかの島国の三階級獲得王者も休養などせず、
この相手とスパーして悪童ボクサーの何たるかを教授してもらうべきだろう。

IBFウェルター級王座決定戦

2012-06-10 15:21:21 | Boxing
マイク・ジョーンズ VS ランドール・ベイリー

ベイリー 11ラウンドKO勝利

考察 ~ベイリー~

一発を打つのに必ず下準備を必要とし、
距離・角度の測定、前後のステップ、フェイントを毎回行うのは
律儀というよりも、それがルーティン・ワークだからだ。
本人としては手数が少ない意識はあまりなく、
必要なことを必要に応じて行なっているまでなので、
手数で劣っていても劣勢であるという認識もない。

ボディ攻撃をあからさまに嫌がる素振りも見せたが、
目のフェイントで追撃を免れるのがベテランの妙味。
相手のメンタルのひ弱さに助けられた面も大きいが。

効かされた次の瞬間にガードの隙間を突き刺すストレートに
攻勢に出る相手とのジャブの差し合いから、試合初めてのアッパーで止め。
デラホーヤがF・バルガスを仕留めたのも温存していた左ショートアッパー。
それを彷彿させた。
puncher's chanceという言葉の正しい意味を体現してくれたわけだ。

それにしてもオッサンの男泣きというのは、何故これほど胸を打つのやら。


考察 ~ジョーンズ~

カラス戦初戦はドロドロベタベタな試合だった。
再戦はタッチボクシング。
ジョー小泉の言うとおり、ここにturining pointがあったのだろう。

逆三角形の上半身にスラリと伸びた四肢。
ボクサーならずば陸上選手かと思わせるフィジカルには、
しかし、強靭なメンタルは宿っていなかった。

かといって敗因はメンタルだけに帰すことはできない。
2度のダウンはいずれもガードの間隙を破られたもので、
これはパワーではなくタイミングの問題。
もっと言えば目に映りにくい技術的・心理的な駆け引きの部分。
相手の一撃への恐怖心を過剰に抱きすぎていた。

ボクサーは一試合で飛躍することもあれば崩れることもある。
スター候補のまま終わると以前に予想させてもらったが、
残念ながらその通りになりそうだ。