ブログ人 話の広場

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月明かり

2011-10-13 10:24:03 | 日記・エッセイ・コラム

 昨夜、ベッドルームの窓から見える夜空は美しいと思いました。どこかまだ漆黒の闇といった暗さがなく、ぽっかり浮かんでいる雲に月の光が照らし出し、真綿のような厚みを見せながらゆったりと北のほうに流れて行きました。その向こうに輝く星が瞬きするかのように煌いていました。

 ふと少年時代に連れて行ってもらった映画「黒水仙」にでてくる夜空を思い出していました。ストーリーも出演者も記憶の彼方に消えてしまっていますが、どうしたわけか、この夜空だけはしっかり憶えているのです。恐怖にも似た暗い夜空だったかも知れませんが、ただ訳もなく時々思い出すのです。

 この空は以前映画で見た空と似ているなあ、とただそれだけなのです。

 ときどき、所要で夜間帰宅するときなど、いつも空の色を眺めています。この色はとても絵には描けない、とかどんな色にすれば描けるのだろうか、と考えることはままあります。

 そして月明かりの素晴らしさにふけっていると、多くの著名な日本画家がこのシーンを題材にした絵を思い出したりします。ほんの少し、自分を忘れる一瞬なのかもしれません。やがて夜の帳(とばり)はすっかり落ちて静かな暗闇になっていきました。

やさしいタイガー