いわずと知れた、硬骨のスキャンダル誌「噂の真相」の創刊から休刊までを編集発行人である岡留氏がつづったもの。
大変面白かった。いちいちあげていると細かすぎるが、2,3点。
僕は実をいうとジャーナリストの誇りなどというものはそんなに志の高いものではなく、自己の売り込みの一便法だ、ぐらいに思っていた。しかし、この本を読んでジャーナリスト魂なるものに少しは敬意を払ってもよいかな、と思った。岡留氏が戦ってきた2大戦場、つまり対検察と対マスコミは容易な戦場ではない。というか、現在のわが国で最強の権力者たちではなかろうか。そこにあえてかみついてゆくすがすがしさ、かといってきれいに敗れて散る、などというセンチメントとは無縁のしぶとさ。ともにすばらしい。
第二点として学んだことは公人と私人の区別だ。やはり僕の偏見として、スキャンダル報道に関しては「何を嬉々として他人の問題をあげつらうんだ」という思いがあった。しかし、岡留氏の言うように公人・オピニオンリーダーはその資格を吟味されても仕方がないし吟味すべきである。そのひとつが私生活であり、また意見の一貫性である。こうした中からスキャンダル報道も正当化される。それはそのとおりである。別にスキャンダルでへこむ必要はないが、そういうものをさらした上で公人として、オピニオンリーダーとして人々の審判を受ければよいのだろう。
第三点は、その過激な姿勢にもかかわらず、噂の真相は黒字経営であったということだ。これには岡留氏のしぶとさと経営的センス、バランス感覚が大いに寄与している。率直に言って、岡留氏が「まともな人」であることにはちと驚いた次第。小企業の経営にも大いに参考にすべき事例である。志を曲げず、かといって経営的にも破綻せず。その方法が結局は志を最大に生かすのである。
いま岡留氏は沖縄を本拠に暮らしている。その血気は収まったとはいえないようだが、一時代を画す雑誌を作り育て、これから緩やかに引退に入ってゆくのだろう。うらやましい限りである。もう一人の侍を見た思いである。こっちは佐藤優氏よりはしぶとくたくましいが(笑)。