御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

「日本のお金持ち研究」橘木俊詔 森剛志

2005-05-22 11:43:36 | 書評
大変面白かった。さすがは本格的学者の本、面白い素材が、深く面白く、しかし冗言少なく引き締まったまとめ方がされている。以下は一部。

・国税庁「全国高額納税者名簿」2000、2001年版の両方に記載されている、2001年の年間納税額3千万円以上の人6000人にアンケート送付。500人から回答あり。回収率8%。
・金持ちは意外に普通、意外に饒舌。
・医者(全国)と経営者(大都市)が2大金持ち職業。医師は内科外科以外の「ニッチ系」が儲かる。
・弁護士は意外に儲からない
・遺産相続はほとんど関係ない。
・高いといわれる日本の所得・相続税率は実は普通。

多分、橘木さんはこの結果を踏まえてより包括的・思弁的論文・本を書くと思う。楽しみだ。


「農で起業する!-脱サラ農業のススメー」 杉山経昌

2005-05-22 11:12:01 | 書評
昨日の昼過ぎにアマゾンの宅配が来て、ちらと眺めるとそのまま面白くて最後まで読んでしまった! 外資系サラリーマン、という話だったので、ストックオプションやらなんやらで濡れ手に粟で稼いだ人が道楽として自分の思いを語るってな本だったらすぐゴミ箱に持ってゆこうと思ってたが、なんのなんの、現実的で勇気のある人の真っ当で創造的な生き方の見本を見せ付けられた。
細部をあげればきりがないのでよしておくが、全体として言いうるのは、農業にはまだまだ合理的な考え方を持ち込む余地があるということのようだ。それをひとつひとつ試し実践してゆく著者の勇気と想像力と勤勉さには感心するほかはない。
実をいうと農業に限らない広い範囲で合理性と合目的性を問いなおすべき話は多いのではないか、と改めて思った次第。
エコロジー・有機農法などに対する考え方などもとてもよく理解できた。書家の石川九楊が言ってた、「農業とは自然そのものではなく、自然を意図的に傷つけ、その回復力から収穫を得る産業である」ということばが具体性を持って見えてきた気がした。