御託専科

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「瀬島龍三 参謀の昭和史」 保阪 正康

2005-05-17 15:06:25 | 書評
古い本だ。87年にもともとの本が出て、91年に文庫になった。それから12版を重ねている。それなりに読まれたようだ。瀬島龍三については、最初の職場での上司(N部次長)が「やっぱり参謀なんてやってると肝っ玉が据わるんですかねえ」と、接客の際に語っていた記憶がある。あの当時(80年代半ば)は、「偉大な人」として一般には見られていたようだ。上司の述懐が本心からそう思ったことなのか、会話の流れでちょいと相手に合わせたことなのかは定かではない。

僕の世代は当時20台半ば~後半、瀬島を云々するような知識も興味もなく同世代では大して話題にはならなかったと思う。ただ、たまに賞賛記事とかが話題になると、「へたくそな戦をして負けた軍隊の中枢にいたことは、恥や負い目になることであっても、名誉なことでも箔がつくことでもない」と僕は偉そうに言っていた。今回読んでみてまさにそう思った次第。やはり、恥を知る人ならば、あれだけへたくそな戦争指導をして人を無駄に死なせて、それに知らぬ顔をして世に現れることはしないだろう。それが末端責任であるにせよ、だ。

ところでこの無恥漢はまだ生きてるのかと思いWebをひいてみたら、2003年に「日本の証言」という本が出ていた。昔とかわらぬつまらぬ紹介が出てた。こういう厚顔無恥でイメージ戦略だけには頭がまわる男はしばしばいるわけだが、それを賞賛してしまう連中はいったいどういうつもりなのかね。瀬島の教訓は、こんな男を再び世に出さないようにする仕組みを考えよう、ということかな。ま、わりとそうなってきているとは思うが。