御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

奥田 英朗「ララピポ」

2009-02-15 22:05:47 | 書評
性風俗系の話を軸とした6人のせつない人たちの物語。口述の原稿起ししかしていない一流大学卒のライター、その上に一時期住んでたキャバクラのスカウト、ごみ屋敷にすむ淫乱主婦、気が弱くて物事を断れないカラオケ店のアルバイト、高校生買春にのめりこむ官能小説家、男を連れ込んでは隠し撮りして裏DVDとして流す口述の原稿起しをしているデブの女の子。

最後の方でデブの女の子がいってるのがせつない。
「かえりに渋谷の町の歩いた。・・・ファッションの町だけあってみんなおしゃれだが、本当にかっこいいのはごく少数だった。大半はその他大勢で、二割程度は華やかな景色を壊す異物がまぜっている。それは単純な美醜ではなく、全体からかもし出される雰囲気がさえないのだ。人から見れば、自分もその仲間なのだろうけれど。
この人たちはどうしているのかなーー。ふとそんなことを思った。世の中には成功体験のない人間がいる。何かを達成したこともなければ、人から羨まれたこともない。才能はなく、容姿には恵まれず、自慢できることは何もない。それでも、人生は続く。この不公平に、みんなはどうやって耐えているのだろう。」
ほんとせつないね。
もっと最後のほうでは、
「渋谷の町を歩く。道行く人たちをぼんやりと眺めた。みんな、どんな人生を送っているのだろう。みんな、しあわせなのだろうか。
考えるだけ無駄か。小百合は鼻息を漏らした。泣いても笑っても、どの道人生はつづいていくのだ。明日も、明後日も。」
と、同じことがなんとも詩的に語られる。いや、奥田さんは才能がある人だなあ、と思う。

途中まで読んでて、こんなんとてもそのまま映画に出来ねえよ、と思っていたが、うまくやればとても切なく素敵なものになるだろう。特に渋谷の雑踏の絵と小百合のせつない上の独白を重ねた場面はとても素敵な哀愁の絵となりそうだな。

1 コメント

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Unknown (藍色)
2009-05-01 00:20:03
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