御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

篠田節子「仮想儀礼」

2009-02-15 21:42:12 | 書評
失職した中年2人組が、そのうちのひとりが書いたロープレゲームのアイデアを参考にしつつ新興宗教を興し、最初細々とやっていたのだが強力なスポンサーを得て信者7000人を数えるに至るのだがさまざまな悪意や不運に見舞われて没落、最後に残った純粋にして狂信的な女性信徒とともに旅に出て、その間殺人を犯して仕舞う。最後はまあおとなしく警察に捕まり、法の裁きを受ける。最後の最後は最後まで純粋だった信者の女性と更迭された有力スポンサーの経営者が高齢者向け給食センターを始め、教祖の出所を待つ、という意外にほんわかとした終り方であった。

さて、どう評価すればいいかなあ。恐らく最大の特徴はきわめてリアルであるということだろう。現実に集会所を手に入れる過程から始まって信者の寄進から発生する税負担、スポンサー企業の具体的な様子、政治家の圧力のかけ方や仏具商の姿をした闇ブローカーの様子、マスコミの乱心とも言えるエスカレートぶり、中核信者たちの抱えるそれぞれの重い事情、信者同志の人間関係などがとても具体的であり面白い。

万一僕自身が新興宗教をやるとすれば、マニュアル替りに読み直すだろうな。宗教という事業の現実が実に良く描かれている。


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