御託専科

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村上龍「ヒウガウイルス」、ついでに「5分後の世界」も

2015-10-24 08:25:41 | 書評
「5分後の世界」を先日再読、というか3回目の読み直しをしたのでついでに読んだ。というか、「5分後の世界」ではアンダーグラウンドのことが十分にわからなかった部分がありそれを詳しく知りたいと思ったからだ。
で、感想はちょっと微妙だなあ。CNNの女性記者・カメラマンの目からアンダーグラウンドの兵士たちを見るという視線の設定はなかなか良くて、また戦闘などの動的場面の記述は相変わらず全くすばらしい。これは前作と変わらないところだ。使命へ向けた迷いのない兵士たちの様子もナイスだし、それを取り巻く世界の猥雑さもいい。

でも何か物足りないのは、アンダーグラウンドの兵士たちの使命がいまいち納得がいかない点である。ビッグバンに行って金持ちを解放するだって?まあ外交的要素も含めればそういうことって結局は役に立つんだろうがなんだか傭兵っぽくて好かん。その一方で途中で国連軍1個師団を壊滅させたりしている。なんかわけがわからん。実は「5分後の世界」の後半もそんな感じがないわけではなかった。ワカマツはなんであんなところでコンサートをしたのか。もっと安全な場所を用意させることはできたろうに。小田桐を特定の場所に届ける使命は多くの兵士を犠牲にするほど重要だったのか?それはなぜ?

崇高な目的のために戦う、精鋭のみから成る迷いなき最強の戦闘国家、という姿を見たかったんだな、僕はきっと。それは「5分後の世界」の前半で終わっているといえば終わっているかもしれないな。4回目にまた読むときもあるだろう。そのときはどんな感想を持つだろうか。。。

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