御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

福冨健一「重光葵 連合軍に最も恐れられた男」

2011-08-21 12:32:21 | 書評
終戦記念日前後の読書として買った。この時代の外交に関しては岡崎久彦氏の「東郷・重光とその時代」という名著があったことをあとで思い出したが、この本はこの本で重光の剛毅な様子をよく知ることが出来てよい本だった。
まっとうな見解を持ち、それを実現させるべくぶれず正直に剛毅に物事を進める。小細工をしない。とても気持ちがよい仕事の進め方である。大東亜会議の実現など現時点でもっと見直しが入ってもよいような話だと思う。戦後の吉田軽武装ドクトリンからの修正をもくろんでいた点も含め、あれこれ現在を照らす視座を提供する。

それにしても正直言ってうらやましいと思ったね。重光はエリートであり、戦前も戦後も常に一定の活躍の場を与えられている。そこが傍流を走ったため猟官をしたり鳩山と裏切りの約束をした吉田とは大きく違う。小生の社会人生活は、剛毅に過ごせば常にぶつかるし、また多くの場合剛毅に過ごすために力を入れようとしてもなかなかフルスイングが出来ない砂地や泥地に悩まされた感がある。このあと書く「メタボラ」の若者なんかもはるかにひどいよね。フルスイングできる環境を整えるのも力量のうち、といわれればそれまでだが、少々思うところはある。

コメントを投稿