ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

脳内メカニズム解明 写真見て「痛い」=群馬大学、岡崎・生理学研究所

2007年05月01日 | 心のしくみ
 肉体的な痛みを連想させる写真を見ると、実際には痛くなくても脳は「痛い」と感じる――。群馬大学大学院医学系研究科の斎藤繁教授らが、人が痛みを感じるときに特徴的な脳の活動を発見し、米国の脳科学専門誌に発表した。味覚など他の感覚と比べて、痛みには感情の動きが大きく関与しているためらしい。

 男子学生10人に、注射針が刺さった腕の写真を5秒間見せ、「痛み」を想像してもらった。この時、機能的MRI(fMRI)と呼ばれる装置で脳の活動を調べると、10人全員で、本当に痛みがあったときに興奮する側頭葉の一部などが興奮していた。この部分は情動をつかさどっているとされる。

 一方、花畑や湖の「平和的」な風景写真を見せた場合は、視覚野しか反応がなかった。

 傷が治った後でも痛みを訴え続けたり、心理的に強いショックを受けて「心が痛い」と訴えたりする患者がいる。しかし検査で異常が見つからず、痛み止めの薬なども効かないため、治療が難しい場合が少なくない。

 共同研究者の一人、自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県)の柿木隆介教授らは痛みには感情の動きが深く関与している可能性を考えており、「今回の結果は、『心の痛み』に対する治療に役立つのではないか」としている。

[朝日新聞 / 2007年05月01日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200705010002.html

鳥インフルの新ワクチン開発 サルでは効果確認=北海道大学、滋賀医科大学

2007年05月01日 | 創薬
 ウイルスの遺伝子が自然に組み換わる「遺伝子再集合」という方法で鳥インフルエンザのワクチンを作り、カニクイザルの実験で効果を確かめたという研究結果を北海道大と滋賀医大が30日までにまとめた。医薬品メーカーなどと協力、ヒトで安全性を確かめる試験を進める。

 世界で170人以上が死亡しているH5N1型ウイルス用に作った。日本では、遺伝子の一部を人為的に組み換える操作で開発されたワクチンが国に承認申請され、審査中だが、厚生労働省は「新型インフルエンザ対策の選択肢が広がる」と話している。

 遺伝子再集合で既に、HとNの組み合わせで135種類あるウイルスの大半を作っており、新たな種類が流行しても短期間でワクチン開発に取り組むことができるという。

 喜田宏北海道大教授(ウイルス学)らがワクチンを開発、小笠原一誠滋賀医大教授(免疫学)らが実験した。



【遺伝子再集合】 宿主に2種類のインフルエンザウイルスが同時に感染した際、増殖する過程で遺伝子の一部で組み換えが起き、新しいウイルスができること。人から人に感染する新型ウイルスができる原因の一つで、過去に大流行したインフルエンザは、ブタの体内でヒトと鳥のインフルエンザが遺伝子再集合した可能性が指摘されている。

[産経新聞 / 2007年05月01日]
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070501/knk070501000.htm

脳疾患による記憶障害、将来の治療に一筋の光 - フランス=マサチューセッツ工科大学

2007年05月01日 | 遺伝子組替マウス
【パリ 30日 AFP】
将来、アルツハイマー病などの進行性脳疾患による記憶障害を薬物治療によって回復させることが可能になるかもしれない。そんな研究結果が29日、英科学誌『ネイチャー(Nature)』で発表された。

 この論文はマサチューセッツ工科大学(Massechusetts Institute of Technology、MIT)のLi-Huei Tsai教授が主導する研究チーム5人によるもの。研究チームによると、症例によっては「記憶障害」という定義そのものが誤った呼び方となる可能性もあるという。

 たとえば病気のせいで失われたファーストキスの思い出も、実際はただ神経経路が遮断されたため、記憶にアクセスできなくなっただけかもしれない。

 実験では、遺伝子操作でヒトの認知症と同じタイプの脳障害を持った状態にしたマウスが、以前の記憶を取り戻すことに成功したという。

 リハビリ期間に精神的な刺激を与えると、マウスは脳の神経経路の一部の損傷が原因で「忘れていた」タスクを行えるようになった。同様の回復効果が薬物治療でも見られた。

 同様の治療方法がヒトにも適用できるかどうかについては実証されていないものの、今回の研究はいくつかの神経障害について「患者の長期記憶が回復する可能性」のあることを示唆している。

 神経変性疾患は、身体の動きや記憶の蓄積をつかさどる脳や脊髄の一部で発症する。脳細胞は機能が低下したり壊死(えし)した場合には再生しない。ただし、先行研究で精神を刺激する活動や薬物投与などによって健康な神経細胞を活性化し、再構成が可能なことが分かっている。

 Tsai教授の一連の研究成果は、進行性脳疾患によって発生した「重大な脳委縮と神経細胞の欠損」を同様の手法で補うことで、神経経路が遮断されたためにアクセスできなくなった記憶の「解放」が可能であることを証明する画期的な実証結果となった。

 写真は、フランス・リヨン(Lyon)の病院の神経科病棟。(c)AFP/JEAN-PHILIPPE KSIAZEK

[AFP通信BBニュース / 2007年05月01日]
http://www.afpbb.com/article/1554585?lsc=1&lc=3