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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

シナプス小胞:神経伝達物質放出する仕組み解明=京都大学

2007年05月14日 | 脳、神経
 京都大大学院の森泰生教授(生物化学)らの研究チームは、記憶情報などの神経伝達物質を取り込んで神経細胞間に伝える「シナプス小胞」が、伝達物質を放出する仕組みを解明したと発表した。神経細胞内にある小胞を、細胞膜付近にとどめるための“綱”や、綱を巻きつけて細胞膜から離れないようにする“杭(くい)”の役割を果たす2種類のたんぱく質が働いていることが分かった。

 森教授は「神経伝達物質の放出量が減少して起きる、アルツハイマー病の症状を改善させる薬剤開発につながる」と話している。成果は13日、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。

 運動調節や記憶、感情などの情報は神経伝達物質に組み込まれてシナプス小胞に詰められ、神経網を伝わる。小胞は細胞の端に達すると、表面が細胞の膜と融合して開き伝達物質を放出。細胞間の連結部分・シナプスで次の細胞に中継される。

 チームは、神経伝達物質の放出にかかわることが既に知られているたんぱく質「RIM1」を人為的に10倍以上増やしたラットの培養神経細胞では通常より多く融合が起き、神経伝達物質の放出量が2.5倍になったことを確認。また、“杭”役のたんぱく質とRIM1の結合を人為的に妨げると、小胞と細胞膜の融合は約6割に減少したことから、RIM1が“杭”役のたんぱく質と結合することで、小胞を細胞膜近くにつなぎ留め、融合を導いていることを確かめた。

 RIM1の働きを強める薬剤ができれば、神経伝達物質の放出を安定化させ、アルツハイマー病の症状を改善する効果が期待できるという。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年05月14日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070514k0000m040142000c.html

亜鉛に免疫系細胞の情報伝達作用=理化学研究所、大阪大学

2007年05月14日 | 創薬
 体内にある微量元素の亜鉛が、免疫系の細胞で情報を伝達する役割を担っていることを、理化学研究所と大阪大の研究チームが突き止めた。

 研究が進めば、新たな薬を生み出す手がかりになりそうだ。成果は21日付の米専門誌「ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」に掲載される。

 亜鉛はたんぱく質の合成や傷の治癒、抗酸化作用といった重要な働きがあり、不足すると免疫低下や発育不全などをもたらすことは昔から知られていた。しかし、他の役割についてはよくわかっていなかった。

 研究チームは、免疫機能に重要な役割を果たす「肥満細胞」の内部で、亜鉛がどう働いているかに注目。肥満細胞を刺激して特殊な顕微鏡で観察した結果、刺激から数分で、細胞内部の小胞体という器官のあたりから亜鉛が大量に放出されることを突き止めた。

 研究チームによれば、肥満細胞が活性化すると、炎症物質が放出されるが、亜鉛はこうした物質を作る遺伝子調節にかかわるとみられる。平野俊夫・大阪大大学院教授は「細胞内で情報伝達を担う物質には、カルシウムや脂質など約10種類が知られている程度。他の細胞でも亜鉛放出が起きていれば、細胞を制御する新たな手段となりうる」と話している。

[読売新聞 / 2007年05月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070514i414.htm

理化学研究所 プレスリリース
 亜鉛が細胞内の情報伝達役を担っていることを発見
 - 外的刺激によって細胞内に亜鉛ウエーブが発生 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070514/index.html

(図2 亜鉛は新たな細胞内セカンドメッセンジャー)

脳プロジェクト:川島隆太教授がスタート 約4億円資金に

2007年05月14日 | 脳、神経
 東北大加齢医学研究所は14日、毎日新聞「脳を鍛えたい」で指南役を務める川島隆太教授が産学連携で得た収入を投じ、脳の動きの解明を目指す新プロジェクトをスタートさせたと発表した。まずは06年度に得た約4億4000万円を研究資金に計上している。

 川島教授は任天堂のゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」などに研究成果を提供。昨年度得た監修料のうち、大学などの収入を除き、約4割を投入する。世界で3台しかない「2光子顕微鏡」を購入し、6月初旬にも本格的な研究を始める。プロジェクトの資金のほとんどを産学連携による収入で賄うケースはまれといい、川島教授は「(商品を購入した)世の中の人たちとのかかわりによって研究を発展させることができるのは大変な喜び」と話した。

 2光子顕微鏡は、従来の顕微鏡では不可能だった大脳皮質の深い部分の神経活動を観測できるといい、最終的にはヒトの心と脳の動きの関係の解明を目指すという。【青木純】

[毎日新聞 / 2007年05月14日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070515k0000m040079000c.html