客寄せパンダ

　深夜の2時、お客さんはカラオケの苦情で警察が来た時に居てたTさんと、久しぶりに来たAさんだけ残った。

　客T「最近、苦情で警察来(け)ーへんか？」
　私 「ああ、苦情は無いわ。何でか知ってるか？」
　客T「何で？」
　私 「Tさんが唄えへんからや」
　客T「何やねん、それ。ほんだら俺、何か唄うわ」
　客A「何を唄うのん？」
　客T「エグザイル唄うわ」
　客A「エーッ、ヒキガエル？」
　客T「違う、エグザイルの“あなたへ”を唄うねん」
　私 「63歳のTさんがエグザイルを唄うてか？ここで笑いを取ろ思て」
　客T「いや、真剣に唄うで」
　そして、Tさんが“あなたへ”の1番を唄い終えた。
　客A「オー、唄えたやん」
　私 「Aさん、この曲を知ってるの？」
　客A「いや、知らん。初めて聞いたわ」
　私 「これも作戦や。誰も知らん歌を唄(ウト)うたら、間違(マチゴ)うてるかどうか分からんからなあ」
　客A「マスター、それを言うたら身もフタも無いで」
　私 「Tさんは気にせーへん。ほれな、2番唄(ウト)うてるやろ」
　途中の間奏の時にTさんが一言「この曲長いやろ」と言って続きを唄う。
　私 「ええ、まだ辛抱せんなアカンのかいな」
　客A「マスター、笑うわ」
　約5分後、Tさんはようやく唄い終えた。
　客T「これで終わりや」
　客A「よかったよかった」
　私 「終ってよかった～」
　客T「俺の歌は面白いてか？俺、客寄せパンダになったからお金おくれ」
　私 「その歌では客が来(コ)んと、警察が来るわ」

　一句：ヘタ歌の　客寄せパンダじゃ　客来ない
　謎かけ：人気の客寄せパンダとかけて、日本人と解く。どちらも(Oh、客が多い・O脚が多い)です